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(1) 対象者の特性

本研究の調査を実施した地域の高齢化率や対象者の男女比に加え,主観的QOLに独自に 正の関連性が認められた経済状況,SOCなどについては,内閣府資料(平成30年版高齢社 会白書)や先行研究による全国調査の結果(山崎ら2017:47)など,標準的な高齢者集団 と近い値を示していた.

(2) 開発を試みた主観的QOL自己評価尺度の使用可能性の検討

1) 信頼性の検証

尺度全体のクロンバックのα係数は0.898であった.I-T相関では,生命の質がα=0.781,

生活の質がα=0.866,人生の質がα=0.751であった.また,項目削除時のα係数を算出し たところ,生命の質がα=0.869,生活の質がα=0.795,人生の質がα=0.894であり,尺度全

体の0.898を超すものはみられなかった.

以上のことから,主観的QOL自己評価尺度は一定の内的一貫性を有することが明らかと

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2) 内容的妥当性の検証

洗い出しコードを抽出し,サブカテゴリ,カテゴリに分類して,質的帰納的に繰り返し分 析することで検証した.その結果,生命の質では【自分のすることがうまくいくとき】,【自 分や家族が元気なとき】,【好きなことをして,楽しく過ごすとき】,【人に気を遣わず過ごす とき】,【人の役に立ったり,助けてもらうとき】のカテゴリを抽出した.生活の質では【も のごとがうまくいっているとき】,【病気の有無にかかわらず,調子良く過ごせているとき】,

【人の助けも得ながら,自分の思うように過ごせているとき】,【人と会って話していると き】,【人が助けてくれたり,よくしてくれているとき】のカテゴリを抽出した.そして,人 生の質では【病気があったとしても,健康に過ごすことができているとき】,【他人を介して,

嬉しい気持ちや恵まれている気持ちになるとき】,【家族と元気で順調に過ごせているとき】,

【自分の心にも,周囲の環境にもゆとりがあるとき】,【好きなことをして,穏やかに過ごせ ているとき】,【まわりの人に助けてもらえるとき】のカテゴリを抽出した.これら3つの質 の抽出したカテゴリは,ともに本研究における主観的QOLの定義に沿った内容を示してい ると推察され,内容的妥当性が概ね確認できたと考える.

3) 構成概念妥当性の検証

t検定,一元配置分散分析,相関分析,階層的重回帰分析により,役割があることや経済 状況が良好であること,PHCS,ソーシャルネットワーク,SOC などに正の関連性を認め た.

先行研究において,役割が有ると(丹羽ら2001),経済状況が良好であると(濱島1994;

川本ら1999;籔脇ら2007;武田2010;谷口ら2013;石毛ら2014),ソーシャルネットワ ークが良好であると(川本ら1999;流石2001;籔脇ら2007;武田2010),SOCが高いと

(Monica Eriksson et al. 2007;石毛ら2014),主観的QOLも高いといった報告がされて いる.先行研究との比較からQOLと関連のある要因とされてきたものと一致しており,概 ね構成概念妥当性が確認できた.

以上より,本研究で開発を試みた主観的QOL自己評価尺度の信頼性と内容的妥当性・構 成概念妥当性が概ね確認でき,使用可能性が示唆された.

(3) 主観的QOLの高さに関連する要因の検討

Total QOLを従属変数として階層的重回帰分析を行った.その結果,「経済的に十分なゆ

とりがある」(P=0.005,β=0.392)と「暮らしに必要なものや,まとまったものは大体買え る」(P=0.009,β=0.437),有意味感(P=0.001,β=0.359)に強い正の関連性が認められた.

また,ソーシャルネットワークは有意味感が媒介変数となり,これらが高いと有意味感も高

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く,その結果主観的QOLも高いといった結果が得られた.

経済状況については,経済的に十分とまではいかなくても,暮らしに必要なものやまとま ってものが大体買える程度の経済状況にあると,主観的QOLも高いことが示唆された.

有意味感については,疾病や障害を何とかやりくりできている一方で,それ以外の生活や 人生にも意味を見出すことができており,その結果,高いQOLが得られていると考えられ た.

(4) 障害がありながらも主観的QOLを高く保てている者の特徴

Barthel Index中群と低群におけるTotal QOL高群は30名であった.その者たちは,ど のようなときに「生き生きと」「快適に楽しく」「豊かで幸せに」過ごせているか,自由回答 の結果から洗い出しコードを抽出して概観し,本研究における質的分析にて行ったサブカ テゴリへの分類から一致する内容を抽出した.その結果,好きなことを他者からの支援を得 て行えているときや,他者と自身を比較するとき,疾病や障害がありながらも調子よく過ご せたり動けたりできているとき,経済的に不自由を感じないとき,家族が健康で過ごせてい るときや孫の成長を感じるとき,家族などから支援を受けているとき,などに高い主観的 QOLが得られていた.

これら6つの心理社会的にポジティブな特徴は,主観的QOLを高めるための十分条件で あると考える.なかでも,親しい家族などからの支援を受けるなど,相手を大切に思い,思 ってくれている他者の存在が大きく関与しており,V.E.Frankl理論(牧野2012)でいわれ ているものと一致する内容であった.

また,質的分析の結果において,生命の質における【自分や家族が元気なとき】や,生活 の質における【病気の有無にかかわらず,調子良く過ごせているとき】,人生の質における

【病気があったとしても,健康に過ごすことができているとき】などのカテゴリを抽出した.

Barthel Index中群と低群における Total QOL高群 30名の洗い出しコードにおいては,

“ALSやけど呼吸器や消化器系とかは問題ないし家族も助けてくれるとき”や,“足の痺れ とかで歩けやんかと思うけどしっかり歩けるとき”,“体の痛みが無いとき”,“脚が痛くなく て外とか歩くことができるとき”,“(心臓が悪いので)息苦しさがないとき”など,疾病や 障害がありながらも調子よく過ごせている様を示すコードがみられた.さらには,各量的分 析の結果より,Barthel Index(ADL能力)と主観的QOLに関連性はみられなかった.こ れらより,障害がありながらも主観的QOLを高く保てている前提には,疾病や障害がコン トロールできていることがあるのではないかと考えた.これができていると,不安に悩まさ れることなく,心に余裕ができることで他のことに目を向けやすくなるのではないかと考 えられる.そのため,主観的QOLを高めるには,risk factor(疾病や障害がコントロール できていないこと)を取り除くことが必要条件となり,医師や看護師,リハビリセラピスト などの専門職による支援は大きな意義があると考える.

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