いろいろお話をしてきて,最後になりますが,私 も1986年から2001年に社長になる寸前までキリン ビールの医薬品事業におりました。後半の7,8年 はそのリーダーをやっていたわけですが,医薬品の 世界に入って皆さん方,病院の先生方,スタッフの 方々に接するたびに思ったのは,病院,医療の世界 の方々は人に見えない努力をものすごくされている し,時間的にも普通のサラリーマンに比べたらはる かにシビアな仕事をされているということです。世 間から皆さんは大変尊敬されているということでも ありますが,しかし,ただ尊敬だけでは合わないよ と先生方もよくおっしゃるように,本当に医療の世 界は,一般の人には良いところしか見えなくて,実
際にご苦労されている姿が見えない社会です。そう いうなかで本当に努力されている。
しかしいろいろな意味で社会情勢も大きく動いて きていますので,皆さん方も,こう考えているのに どうして患者さんはわかってくれないのかというこ とがおありだと思います。もちろん,患者さん1人 ひとりと話すということは当然なさっていると思い ますが,そういうコミュニケーションを含めて,い ろいろなかたちで,患者さんと治療する側,それを サポートする側という関係だけではなく,1歩突っ 込んだ人間対人間のコミュニケーションというもの をいろいろな機会になさると,患者さんにも病院の ご苦労,ありがたさがわかってくると思います。た だ「わかってくれよ」と言っても,それはむしろわ からないのでありまして,お忙しい毎日のなかで大 変とは思いますが,ぜひそういうことを心掛けてい ただくことが大事なのかなと,経験豊富な皆さん方 を前に説教できる立場ではないのですが,そういう ふうに思います。
会社も,外からご覧になると,そんなに揺れてい ないと思われるかもしれませんが,やはりものすご く揺れております。この社会の変化のなかで,どう すれば自分たちが一所懸命に毎日働けるか,そして 充実感を得られるか,そしてお客様に喜んでいただ けるか――このサイクルが非常に大事だということ を,日に日に1人ひとりがより深く認識するように なってきております。このサイクルがなければ,会 社の繁栄はない,お客様から信頼される会社にはな り得ないということで,ずっとやってきました。
ビール会社なんて勝手なことばかり言っていると お思いになるかもしれませんが,なかではこういう 努力もしているということで,ぜひ皆さんとまた,
ビールだ,飲料だという場面だけではなく,いろい ろな意味でコミュニケーションをとらせていただけ れば,大変ありがたいと思いますし,それがお互い にプラスのものをもたらすことがあれば幸いです。
今日お招きくださいました日本病院学会の関係者の 皆様に厚くお礼を申しあげます。ご清聴ありがとう ございました。
質疑応答 座長 どうもありがとうございました。リーダー シップに大変富んだお話で,病院の経営や各部署の
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﹀お 客 様 視 点 を 重 視 し た 企 業 経 営
あり方を考えるうえでも非常に役に立つお話だった と思います。せっかくの機会ですから,質問をいた だいてもよろしいでしょうか。どなたかお聞きした いこと,ございますでしょうか。
●アサヒビールとのライバル関係について
荒蒔 この業界というのは当然競争がありますし,
競争がないところに生きたことはないのですが,先 ほどお話ししたようにアサヒビールさんが非常に苦 労された時期から,スーパードライをきっかけにこ こまでリーダーになられた,その間の変化を私なり にずっと感じています。
特に1990年くらいから2000年にかけての10年間 は,まさに躍進の10年で,その間アサヒビールさん は経営の品質ということを相当リーダーが考えられ て,会社を挙げて,それから一緒に働いていらっし ゃる関係会社の方や取引先を含めて,質の向上に努 力された。日本経営品質賞というものがあるのです が,それを確か1997年度に受賞されました。そのと きにお話をうかがって,そこまでやっているのかと 感心しました。やはりお客様が原点ということが徹 底されていました。
私どもは,その間,少しずつ売り上げが減ってき たのですが,まだ上にいたものですから,なんとか なると思っていた人も多かった。しかし2001年に 逆転され,そのときに社長になりまして,やはりア サヒビールさんの改革といいますか,人の心を大事 にして人とつながる,お客様と対等な立場,メーカ ーが上にいるのではない,そうしたことが浸透して いる体制には,絶対学ぶべきものだと思いました。
私が今日いろいろ申しあげたことは,このときの 思いにも根差しているのですが,ある意味では,良 きライバルがいるから我々もお客様に対してより真 剣にお話ができるし,しなければいけないと思う。
切磋琢磨と言いますが,ある意味ではライバルは良 い存在なのではないかと思いますね。いなければ楽 だとは思いますが,やはり正直なところ,良い存在 だと感じます。
座長 まだいろいろご質問があるかと思いますが,
時間の関係でこの辺で終わりたいと思います。荒蒔 先生,本日は我々の経営,運営にとって示唆に富む お話をいただきまして,誠にありがとうございまし た。
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座長 皆さん,おはようございます。私は中野総 合病院の理事長をしております池澤と申します。今 日は特別講演として「医療の質の向上と効率化の同 時達成は可能か―求められる医療の質の可視化」
について,東京医科歯科大学教授の川渕孝一先生に ご講演いただきたいと思います。
最初に川渕先生のご略歴を申しあげます。現在は 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 医療経 済学分野の教授であります。昭和58年に一橋大学 を出られまして,昭和60年にはシカゴ大学の経営大 学院修士課程に入学されておられます。2年後にご 卒業なさってから日本に戻ってこられまして,民間 企業を経て,厚生省の国立医療病院管理研究所,現 在の国立保健医療科学院でございますが,そこの医 療経済研究部勤務をなさっております。その後国立 社会保障人口問題研究所 東京社会保障応用分析研 究部主任研究官を併務となりまして,やがて平成 10年に厚生省を退職なさっておられます。私が川渕 先生にはじめてお会いしたのは,平成8年頃ではな かったかと思います。いろいろなところでお会いし たことがございます。その後,平成10年には日本福 祉大学経済学部経営開発学科の教授となられまして,
平成12年にはその大学を退職後,同じ年に東京医科 歯科大学の教授となって現在に至っているというの が先生のご略歴でございます。
プログラムのなかに大体のサマリーが書いてあり ますけれども,川渕先生は,今日はそれを離れて自
由にいろいろなデータをあげながらお話ししたいと いうことでございますので,皆さまどうかよろしく ご清聴お願いしたいと思います。それでは川渕先生 よろしくお願いします。
川渕 池澤先生には過分なご紹介,感謝申しあげ ます。栄えある第57回日本病院学会でこのような お話ができることを感謝申しあげます。私,今ご紹 介いただきましたように,東京医科歯科大学で医療 経済学の教鞭をとっております。医師でも歯科医師 でもない無資格者ですが,今日は経済学者の立場か らお話しできたらと思っております。
60分の時間をいただいたのですが,スライドを見 ますと40数枚入っておりまして,少し早口かと思い ますけれども,医療の質の向上と効率化の同時達成 は可能ではないか,ということを申しあげます。あ 日
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﹀医 療 の 質 の 向 上 と 効 率 化 の 同 時 達 成 は 可 能 か
︱ 求 め ら れ る 医 療 の 質 の 可 視 化
特別講演