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■医療ガバナンスをめぐる変化

ドキュメント内 10年02月号日病雑誌pdf (ページ 37-40)

 ちょっと前後しましたが,舛添さんの政治手法は,

これから,若手議員も使います。60歳以上の国会議 員は医療を特殊科目,族議員のシマだと思っていま すが,若手議員は違います。若手議員はみんな,医 療は必修科目だと思っています。

●マスメディアによる裏ネタ報道

 2008年10月10日の日経の1面に,次のような記 事が載りました。

 「今年6月,救急医療の不備といった問題が相次 ぎ,厚労相の舛添要一は,医師不足の解消策づくり に悩んでいた。そんなさなか,『こんなことをもう 一度やったら,絶対に許さない』。舛添が,医政局長 の外口崇を大臣室に呼び,叱責した。医師不足解消 を主導しようとした舛添に先回りするかたちで,文 部科学省に出向中だった医学教育課長三浦公嗣らが,

東大など主要大学の医学部にかけた電話はこういう 内容だった。『医師はなるべく増やさない方向で頼 みます』」。

 この記事が出るまで,マスメディアにはこういう 裏ネタは出ていません。ところがこれ以降,堰を切 ったように出ます。実は8月の段階で,多くのマス メディアはこれを記事にしたかったのです。「医学 部長,証言してくれ。1面でいく」と言っていまし たが,それができず,日経のこういう企画ものとし て出たわけです。これ以降どうなったのかというと,

『朝日新聞』のオピニオン に,厚労省の木村もりよさ んの記事が出ます。

 (ス ラ イ ド2)こ れ は

『選択』2009年4月号の記 事です。日本のサンクチュ アリといえば,国立がんセ ンターがまさにそうでした。

この記事は,旧ソ連の末期 に官僚が叩かれた仕組みと まったく同じです。30兆円 のプライスコントロールを しているのが実は300人で,

この人たちはどうもおかし いという話になる。餌食に なっているのです。今月の

『選択』には「舛添の700

スライド22

日」というのが出てきます。

 なぜ,医系技官なのでし ょうか。厚労省のほかのと ころを敵にしないで済むか らという見方もできますが,

政治だから複雑です。医療 が国民の最大課題であり,

かつ,比較的少ない人数で やっている,そしてそこが 弱いとなると,こうなりま す。たぶん,このガバナン スはもう確実に崩壊します。

つまり,国民がおかしいと 思い始めたものは,もうも たないのです。そのあとを どうつくるかは私たちのあ り方次第です。

 医系技官ガバナンスは崩

壊します。別の例でいうと,多くの財団は,2年後 には改革で役所の所管がなくなります。ということ は,常務理事が1人だけいて24人がアテ職というよ うな財団の,常務理事がいなくなる。そうなると,

本当の理事たちでやらなければ金も何も回らなくな

ります。同じように,医療制度が今のガバナンスを 続けるからには,必ず崩壊するのです。

●新しい動き――千葉の事例

 (スライド2)では,どんな萌芽があるでしょう か。例えば,千葉の竜先生です。彼は知事選に立候 補しようとしましたが,たぶん家族の反 対でやめました。ところが,この竜先生 はくじけません。千葉市長選では赤シャ ツを着て,熊谷さんを応援しました。熊 谷さんは,連合の応援もありませんでし たが当選しました。彼は今,千葉市の医 療に最も影響力を持つ人になっています。

 千葉県の医療はどうかというと,たぶ ん日本一ひどいのです。県の南半分で産 科の面では亀田だけで,銚子はなくなり ました。成田ではシニアレジデントが一 斉にやめました。成田市は最も金を持っ ている市の1つです。金はいくらでもあ りますが,医者がいません。たぶん,開 業医が少ないのでこういうことが起きて いるのでしょう。分析はしていませんが,

金を入れるだけでは,もうここの問題は 解消しなくなっている。結構,深刻なの です。

 スライド2の右下のグラフは,日本政 策投資銀行の年末のレポートで,患者あ

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たりの医師数の順位です。2005年と,高齢化が進む 2025年が示されていますが,2025年にひどくなるの

は埼玉・千葉・神奈川・東京です。

 2030年には団塊の世代が80代,団塊ジュニアが 60代になり,その世代で3,000兆円の金融・非金融 資産が流れます。そのときに一番人口が多い地域が 崩壊します。

 そこで地元の人たちが「医療構想・千葉」を立ち 上げ,試行錯誤を続けておられます。おそらく千葉 には,今後,若い医師が最も集まるでしょう。例え ば私の大学の後輩で,血液内科医やっている男がい ます。東大を出て,亀田病院のベストレジデントに 2年連続で選ばれました。彼は帝京市原病院でやっ ています。本郷には来ないのです。なぜなら,こち らのほうがアンビシャスだからです。情報を開示す れば,若い医師は僻地に必ず行きます。しかも優秀 な人が行きます。

 (スライド2)そして,地域医療対策のあり方が 問題です。先ほどお話ししましたが,これは3,100 億円を基金とするか,診療報酬の増額とするかです。

千葉県には重要な問題です。

●東京のいびつな医師分布

 東京について少しお話しします。産科救急がどう いうことでアジェンダに上がってきたかというと,

伊藤隼也さんのレポート(スライド2)からです。

彼はフジテレビのコーナーを持っており,『週刊文 春』で書きます。今回は眼科の近視の手術をやりま した。その前は国立循環器医療センターの心臓事故,

その前は墨東病院と杏林のたらい回しを出し,キャ ンペーンを張りました。こういうキャンペーンが一 番効くのです。これを見てみんな動きます。

 その後どうなったか。スライド2は「サンデープ ロジェクト」の特集です。この濱木さんは北大出身 で,我々と同じ血液内科の医師で,墨東病院で働い ています。週刊誌が叩いた場合はテレビが反対を打 つというかたちで必ずカウンターバランスが働きま す。このときも,墨東病院の悲惨な勤務医の状況を

「サンデープロジェクト」が取り上げたことによっ て,カウンターバランスが働き,国民は複数の案を 見て,妥当なところに落ち着きます。

 民主党のマニフェストのなかには「医療計画の抜 本見直し」と書いてあります。政権を取れば見直す のでしょう。80年代半ばの医療計画で病床は規制さ れました。

 東京の医師の分布を見てみると,スライド27のよ うになります。人口10万人当たりの医師数です。

このように,大半の地区は全国平均以下です。医師 が多いのは中心部です。

 東京は3段階に分かれて開発されました。 明治 期に開発されたのは山手線の内側です。この時代に 3種類の病院ができます。1つは軍隊の病院です。

海軍病院は今の国立がんセンター,陸軍病院は今の 国立国際医療センターや成育医療センター等々です。

 例えば国立がんセンターはどのような経緯ででき たかというと,勝海舟が海軍練兵場をつくり,それ を明治政府が接収して海軍兵学校・医学校をつくる。

後に海軍兵学校は江田島に行きます。昭和20年,米 軍は,爆撃目標からはずしたと言われる聖路加病院

スライド25

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スライド26

と海軍病院を,戦後速やかに接 収し,医療施設にします。旧海 軍軍人は突然,米軍のスタッフ になり,サンフランシスコ講和 条約後,元の厚生省に戻ります。

そこで,国立がんセンターがで きます。たぶん雇用対策だった と思います。

 国立がんセンターや成育医療 センターの特徴は,総長に有名 教授を持ってくることです。旧 宮様と同じです。運営局長は,

参謀本部から出向する若手官僚 です。そして政策医療,国策遂 行,治験推進などを出します。

組織とはなかなか性格が変わら ないもので,今もそのまま同じ ことをやっているのです。

 その国立がんセンターが2,000億円の借金を棒引 きしてもらいます。仙谷さんが取り上げ,衆議院予 算委員会で与謝野さんが明言したということは,お そらくそれなりの情報開示があって,古い体質も変 わるでしょう。なぜなら,借金を棒引きしてもらっ て原因究明がないということはあり得ませんから。

 国立がんセンターの時価は,バブル時は1兆円を 超えていました。打って出ていくというのはあり得 ます。モデルは癌研有明病院です。大塚から有明に 行って一躍,有明のある江東区の色が青から緑にな りましたし,癌研は患者も増えました。いろいろな シナリオがあります。

 もう1つは都立病院です。全部,山手線沿線にあ ります。駒込病院はかつて伝染病隔離のための病院 で,避病院と言いました。豊島病院は,ロシア皇太 子来日の際に貧民を隔離するためにつくりました。

松沢病院は精神医療患者施設です。こうした病院を 山の手線の周辺,東京の街の周辺につくります。

 残りの患者を診たのは私立大学です。吉岡彌生さ んの東京女子医大や,高木兼寛さんの慈恵医大のよ うに,私立大学が患者のいる所に病院をつくってい きます。

 大正期の東京は震災があり,その後の復興でもあ まりインフラ整備ができていません。

 戦後,人口が増えた所,私鉄沿線に昭和大学と東 邦大学が出ていきます。また,日本大学と帝京大学

が行きます。1980年代以降の開発では,ディズニー ランド,多摩地区等々です。武蔵野,多摩地区は病 床規制があって,出ていけません。そこで,人口 1,000人あたりの医師数が1人以下という江戸川問

題が起こり,たらい回しが発生します。

 この分布図は,東京都議選のとき,議員にお見せ しました。センターをつくれといっても無理。医師 がもう足りない。東京は,金はあるが規制があるか らできないと。先生方はびっくりしておられました。

 そうすると,今年(2009年)はナショナルセンタ ーの問題があり,さらに衆議院選と都議選があり,

新聞紙上では都知事選があり得ると言われています。

東京再編ということが起こり得る年です。こういう 背景があって,今,地域医療計画見直しという議論 が出ており,民主党のマニフェストにも書かれてい ます。

ドキュメント内 10年02月号日病雑誌pdf (ページ 37-40)