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■医師不足問題をどう考えるか

ドキュメント内 10年02月号日病雑誌pdf (ページ 32-37)

 (スライド1)もう1つ,医師不足問題を挙げま しょう。自民党は「政策BANK」のなかで,医師不 足問題について,「今年度は医学部定員を約700人増 員したが,今後も医療確保のために医師数を増や す」と述べています。

●自民党の方向転換と「舛添ビジョン」

 従来,医師数の抑制に努めてきた自民党ですが,

2008年に福田政権の「骨太の改革」でそれを見直し ました。これは撤回ではなく,なし崩しの見直しで 方向転換します。このときは福田政権の支持率が下 がっていました。 2008年3月,人事異動の時期に 産婦人科医の後任がいないという問題が 起き,これに関する情報が大量に総務省 ルートで福田総理に入りました。福田さ んから舛添さんへ,なんとかしろという ことで,舛添さんがソネット・エムスリ ーやロハス・メディカルに登場し,「医 師は訴訟させません」と言いました。実 際,彼のところに直接メールがたくさん 行って,産婦人科医がずいぶん異動して います。このときに舛添さんは従来から の医師増員を打ち出します。これは池田 勇人さんの所得倍増と似ています。5%

増では政治的メッセージがありませんが,

5割増を打ち出しました。

 そして,それをどうやってコンセンサ スにするかというと,舛添ビジョン会議 というものを開きます。これは小泉さん などがやる手法と同じで,テレビや新聞 で,自分が選んだ委員と役所が選んだ委 員とを闘わせ,どちらがいいかを国民に 判断させようというものです。

 そして「安心と希望の医療確保ビジョ

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ン」具体化に関する検討会で,5割増と いう判断をします。ここで出された「舛 添ビジョン」という私見の問題点は,自 民党として閣議決定をしていないことで す。自民党は予算を2年分積んだだけで す。福田総理にとってよかったことは,

単年度400億円で,新聞の一面を大量に 取れたことです。支持率が低迷すると新 聞の一面に記事が出ることを一番喜びま すが,それが400億円でできたのです。

 これは5割増にしても,3,000億円で す。3,000億円は,東大第二工学部をつ くる予算と大体同じです。余談になりま すが,財源規模でいうと100億円は大臣,

1,000億円は総理,1兆円が選挙です。

1,000億円単位は総理が動けばできます から,これは舛添・福田の決算なのです。

●民主党は「舛添ビジョン」+アルファ  今回,何が興味深かったかというと,

自民党が舛添案をどう扱うかでした。み んな非常に興味深く見ていましたが,結 局,党のコンセンサスにはならなかった ようです。マニフェストに入れていませ ん。そして,これをそのまま民主党が使 っています。実はもともと民主党のブレ ーンたちがつくった案を舛添さんが使い,

もう一度民主党が使っているという構

造です。先ほどの,舛添さんがアポイントしたドク ターたちは,もともと鈴木寛さんや仙谷さんたちが 親しくなった人で,舛添さんに優秀なドクターだと 推薦した。その人たちの案を舛添さんが使い,もう 一度同じ案を民主党が使っているわけです。

 医学部定員を10年かけて5割増やし,2025年以降 からは元に戻す。そうすると2025年から2030年に かけて医師数は2割増となり,人口1,000人あたり 医師数は2.45人,今のアメリカやイギリスと同じレ ベルになると。これは時間がかかる策ですが,必要 です。

 これにプラスアルファするものとして,民主党は 即効性のある政策を打ち出しています。国公立病院 の定員増,国公立病院の兼業(アルバイト)解禁で す。これで稼働率が高まります。これは法改正せず に通知レベルでできます。これは政策インデックス のなかに組み込まれています。

 やらなかったことは,ドクターフィー制度の導入 です。ドクターフィー制度にはおそらく日本医師会 が反対すること,そして,たぶん公立病院の事務方 の反対があるのでしょう。「舛添ビジョン」で提言 されたこのドクターフィー制度の導入には,自民・

民主両党とも触れていません。

●医師数増がコンセンサスを得るまで

 医師数の問題ですが,どういう議論を通じてコン センサスになったかをお話しします。

 スライド1は2008年6月の『読売新聞』に載った,

医師需要に関する検討会報告書です。大ざっぱに

『読売新聞』=自民党,『朝日新聞』=民主党という ようなかたちでこれまで議論され,新型インフルな どは典型的です。必要医師数と臨床医師数の将来推 計を見ると日本は2030年でピークに達する,だから 医師は余る,というのがこの検討会報告書(矢崎レ ポート)です。これについては,言論NPOなどが批

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判し,検証を求めています。この検証には,『東洋経 済』の編集長と,財務省出身の松田学さんという方々 の名前が挙がっています。松田さんは先般,財務省 のなかに10年ぶりに医療の検討会を立ち上げた人 です。財務省の人や経済誌編集長が検証しているの に,医療界は検証をしていません。たぶん国民はそ ういう人たちを信頼しないと思います。

 そして,ちょっと飛びますがスライド2,これが 矢崎レポートを打ち破った検証結果のグラフです。

ここに示すように,日本は44歳以下の医師がすでに 減っており,いつまで待っても勤務医においてこの 世代は増えず,増えるのは年寄りである。勤務医対 策は今のままやっても駄目だということが,このグ ラフ1枚で出ました。 このグラフは,私たちが研 究室で学生とつくったもので,普通にデータを見れ ば学生でもつくれるものです。ただ問題点は,役所 のどこにどんなデータがあるかで,開示はしていま

すが,使えない開示がされているのです。

●医学部定員削減の撤回へ

 (スライド1)医学部定員削減を撤回するための 舞台装置が,この「安心と希望の医療確保ビジョン」

のための作業委員会です。なぜ舛添さんがこういう ものをやるかといえば,国民に伝わるからで す。知り合いを通じて何かを頼まれたり言わ れただけでは,舛添さんは動けません。そん なことをすれば「暴君」とレッテルを貼られ ます。族議員になるか,国民的庶民派議員に なるかは,こういう装置をどう使うかにかか っています。頼まれて動くかたちにしないと いけないのです。

 ウィキペディアにも出ていますが,この作 業委員会で舛添大臣が,最後の検討会を伊豆 で泊まり込みでやろうと言い,そして予約し たホテルが偶然,奥さんと同じ姓だった。そ こでTBSが「おかしいじゃないか。嫁さんの 実家を使っている」となった。委員たちは,

「なぜこんな情報がメディアに伝わるんだ」

と怒りました。国立がんセンターの土屋さん が「うちの会議室を使おう」と言います。と ころがあそこは役所の出先です。足立運営局 長が「それはダメ。大臣に知れてもダメだ。

許可を取らなきゃ」と怒る。

 こういうやりとりがあればあるほど,メデ ィアはヒートアップします。「すごいですね。

ここまでやると思わなかった」と。そして,

注目を浴びたところで,「ビジョン」をバンと 打ち出すのです。

 (スライド1)これは当時の迷信です。「医 師数は毎年4,000人増えているが,それでも

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