た。同時に、それらが管理教育の結果とみなされ、不登校児童生徒の出現が社会問題化したのであ る。たしかに、不登校現象は学校に起因するものが多い。だが、不登校の要因は多種多様で、不登校 児童生徒自身さえその原因が分からない場合があることはデータからも確認できる。平成19年(2007 年)度学校基本調査では、不登校児童生徒数は小中学校で12.3万人、高等学校では6.7万人を超え、依 然として多くの不登校児童生徒が存在している。国民は等しく教育を受ける権利を有するにもかかわ らず、不登校児童生徒は、事実上学校教育を受けることができない。現代の不登校は『学校教育』が 抱える最大の課題であり、同時に教育を受ける『権利問題』の現れでもある。この課題を集約的に表 現しているのがフリースクールである。
(2)登校拒否を考える運動
1980年代後半、増加し続ける登校拒否や家庭内暴力で悩む親の悲痛な叫びに付け込む民間施設で、
悲惨な戸塚ヨットスクール事件、不動塾事件、風の子学園事件が起きた。このような人権を侵害する 矯正施設ではなく学校の外に、父母が安心して通わせることができる登校拒否の子どもの居場所が必 要となった。
不登校を病理・逸脱と捉える記事、稲村博氏の治療論『20代30代まで尾を引く登校拒否症、早期発 見しないと無気力症に』が朝日新聞夕刊一面(1988年 9 月16日)に掲載された。その記事の抗議のた めに『登校拒否は病気じゃない』と、直ちに『登校拒否緊急連絡会』を日本教育会館で「登校拒否を考 える会」代表奥地圭子氏ら800人が開催した。また、同年11月には文部省発表『登校拒否は怠け』の報 道があり、その反論・対抗として「登校拒否を考える」運動が活発になり、各地に不登校の子どもの 親の会やフリースクール等が次々と誕生した。
教育は学校で受けるものとの既存の価値観があるが、明治以降の硬直化した学校教育が敬遠され、
その原因が従来の学校教育における「教育くささ」「学校くささ」にある。とすれば、それは学力向 上競争の強制や集団生活のあまりにも細かなルールの強制である。それらの脱臭を目指した学校が フリースクールである。家庭内暴力、脅迫神経症、拒食過食、外出不能、リストカット、昼夜逆転、
ゲーム漬け、パソコン依存、入浴拒否、頭痛・腹痛、蕁麻疹、不眠、不安、緊張、引きこもり状態、
登校圧力等などから救済し、学校とは違う安心して過ごせる居場所と楽しい学びの場や育ちの場を提 供する。1980年代になって、その保護者と一体となって行うフリースクール運動は活発になった。
現在、NPO 法人フリースクール全国ネットワークは、正会員49団体・支援会員フリースクール等 団体は20団体に及ぶ。さらに、NPO 法人登校拒否・不登校を考える全国ネットワークは68団体。こ れらの NPO 法人が、2011年 7 月23日〜 24日高知県鷹匠町において高知県教育委員会・高知市教育委 員会と高知新聞社・RKC 高知放送の後援を得て「夏の全国合宿」を開催した。このように全国レベル でフリースクールの交流が盛んであることを、公教育は受け入れざるえない。この運動は不登校・登 校拒否への偏見・誤解を解き、真に子どもの最善の利益に相応しい居場所・学びの場を提供するた め、保護者とフリースクールスタッフによって、今後も力強く継続されていくだろう。それに対し て、政府・自治体はそれらを「反学校運動」として対立するのではなく、地道な教育実践を通じて教 育を受ける権利を保障する義務教育におけるもうひとつの学校(オルタナテイブ・スクール)として の同調し支援することが求められている。父母負担の軽減、民間のフリースクールへの公的な財政支 援を求める運動、フリースクールに通所する発達障害を持つ児童生徒への支援運動として、保護者と 一体となって行政へ提言する運動も現れている。
(3)政府・自治体の取り組み
①全般的な動向
政府は各自治体へ「民間施設との積極的な連携」などを通達し、フリースクールとの連携を謳って はいるが、憲法89条と学校教育法により、フリースクール等の運営費には補助することができない。
それでも文部科学省は、フリースクールやフリースペースなど学校外の居場所への公的支援事業を、
研究委託「不登校等への対応における NPO 等の活用に関する実践研究事業」との名称で、NPO との
連携事業として、財政的な援助事業を2005年度より開始した。委託内容は、コミュニケーション能力 向上のカリキュラム、家庭訪問や進路指導、高校中退、非行に対応したプログラムの開発研究などで ある。従来の不登校児童生徒対策は学校復帰が最重要課題としていた。しかし、「実績評価の一つに
『学校復帰』が含まれるが、事業目的は「不登校の子の自立のために多様な支援を探ること」である。
この事業は「学校復帰に向けた努力を続ける不登校児童生徒のために、相談指導学級の指導内容の充 実を図るとともに、民間施設を含め、関係機関との連携を図る」という従来の学校復帰に拘わる姿勢 からの大きな転換といえる。これは1992年、学校不適応対策調査研究協力者会議が「誰にでも起こり うる登校拒否」を報告し、文部科学省は公的な教育支援センターや適応指導教室のみではなく、フ リースクール等の民間施設への通いをも出席扱として認めたことに続く大きな進展だといえる。
『不登校等への対応における NPO 等の活用に関する実践研究事業』に応募した NPO 法人フリース クール札幌自由が丘学園、東京シューレなどが委託研究先に選ばれた。もっとも、この委託費は補助 金ではない。そのために、人件費、カウンセラー配置経費、スペースの移転、増設にともなう家賃の 増額分の経費などに用いることはできない。また、単年度単位のために安定的な収入にはなりえな い。それでも、今後の財政的支援に繋がる第一歩となった。
小泉内閣による構造改革特区の指定において「不登校児童生徒を対称とする教育課程の弾力化」に より学習指導要領の適用外の学校開設を認めた。2004年には、ついに公立のフリースクールを開校す る自治体が現れた。すなわち、教育相談センターや学校復帰を強制する適応指導教室ではなく、安心 して通える不登校児童生徒を支援する公的な居場所が誕生したのである。これは政府や自治体が、フ リースクールを不登校児童生徒ための学校外の一時的な避難所としてだけではなく、教育の場とし て、教育実践の内容・教育方針を認めたことになろう。学校とフリースクールが連携して子どもの学 び育つ権利を政府が保障したことになる。不登校児童生徒の学びの場と居場所の確保対策がようやく 公的政策となったのである。
②札幌市教育委員会
2011年(平成23年)10月26日(水)の北海道新聞朝刊第26面に『不登校、過去最多1.692人 昨年度 の小中生 心のサポーター配置へ 市教委』との記事が掲載された。その記事は10月25日の市議会決 算特別委員会での報告を報じていた。不登校児童生徒数は前年度比2.3%増。小学生は過去最多の298 人(前年度比 8 %増)、中学生1.394人(同1.2%増)。「フリースクール等で子どもを育てる親の会」が纏 めた札幌市の不登校児童生徒数1,600人は「おおよそ」合致する。親の会のまとめによると学校教育で は、相談指導学級が190人、教育相談センターで15人の計205人。生涯教育プラス福祉では、児童相談 所 7 人、民間フリースクール等で70人の計77人で、官民の支援を受けている者が約300人である。札 幌市の不登校児童生徒1,600人中1,300人の動向が不明である。何ら支援を受けていない放置されてい る1,300人を救済・支援が緊急を要する課題である。
2011年 4 月10日は統一地方選挙の投票日だった。そこで、上田文雄市長は札幌市長選で 3 期目の当 選を果たした。上田氏は Manifesto「うえだの約束」で「『うえだ』が、力をこめて実行する重点政策」
の中に「民間のフリースクールと積極的に連携し、子どもの育ちや学びを支える環境を整え、財政的 な仕組みを新たに創設します。」と掲げている。札幌市2011年度補正予算に「フリースクールの支援あ りかたを検討」する予算(1,550,000円)が計上された。教育委員会学校教育部ではなく、子ども未来 局子ども育成部の事業である。まさに不登校の子どもの未来にとって「子ども未来局」の取り組みを 注視しなければならない。ある札幌市議会議員の意見として「フリースクールを認めることは公教育 を否定することなる」との見解が出されていたが、それから大きく前進したといえる。
③大和郡山市教育委員会
平成13年度不登校児童生徒数は小学校31人(0.6%・国0.36%、中学校119人(4.3%・国2.81%)であ り、不登校出現率が全国を上回っていた。さらに、1997年(平成 9 年)に開設した適応指導教室「あ ゆみ」広場は学校復帰を目指す機関・場所であるが、学校復帰率は11.1%(過去 3 年間平均)に過ぎ