論 両博 士の 報告 の後 の﹁ 討論
﹂は
、こ のシ ンポ ジウ ムの 企画 の趣 旨が
、﹁ 当初 民法 と商 法と にま たが る
( )
問題
﹂を 論
70
じる こと に存 した ため か、 全体 とし ては
、商 法五 二六 条の 不特 定物 売買 への 適用 の可 否に 終始 した 感が ある
。そ の よう な中 で、 両博 士の 報告 を踏 まえ た意 見と して は、 加藤 一郎 博士 の次 の指 摘が 注目 され る。 すな わち
、﹁ 理論 の 根本 にお いて は﹂
、柚 木・ 末川 両博 士の
﹁考 えが 違う よう
﹂だ が、
﹁実 際の 結果 にお いて はあ まり 違わ ない
﹂と す る。 とい うの も、 一方 では
、末 川博 士の よう に、
﹁瑕 疵担 保の 規定 が不 特定 物売 買に 適用 があ る﹂ とし ても
、﹁ 代物 請求 権が 慣習 によ って 認め られ る﹂ ので あれ ば、 柚木 博士 の見 解に
﹁近 づ﹂ く。 また
、他 方で は、 柚木 博士 や我 妻 博士 のよ うに
、債 務不 履行 責任 の効 果を 信義 則に よっ て制 限す ると
、末 川博 士の 見解 に﹁ 近づ
﹂く から で
( )
ある
。
71
右の 加藤 博士 の意 見は
、﹁ 効果 の面 から 両説 を調 和さ せた もの とし て、 結果 も妥 当﹂ であ り、
﹁多 くの 同感 を得 た﹂ との
﹁推 測﹂ がな され て
( )
いる
。し かし
、こ のシ ンポ ジウ ムの 四年 後に は、 次章 で述 べる 比較 法学 会の シン ポジ
72
ウム にお いて
、法 定責 任説 は、 全く 新た な視 点か ら、 厳し い批 判に さら され るこ とと なる
。 三
小 括 昭和 三二 年の 日本 私法 学会 のシ ンポ ジウ ムは
、瑕 疵担 保責 任に 関す る﹁ 戦後 にお ける わが 学説 の発 展﹂ の﹁ きっ かけ
﹂と なる もの であ
( )
った
。し かし
、柚 木博 士と 末川 博士 の見 解は
、い ずれ も法 定責 任説 をそ の出 発点 とす るも の
73
であ り、 その 意味 では
、法 定責 任説 の中 での 見解 の相 違で あっ た。 とこ ろが
、右 に触 れた よう に、 昭和 三〇 年代 半ば 以降
、国 際的 な立 法の 動向 を背 景と して
、債 務不 履行 責任 説が
登場 する
。そ の法 定責 任説 に対 する 攻撃 は苛 烈を きわ め、 柚木 博士 も、 債務 不履 行責 任説 への 応接 を余 儀な くさ れ る。 しか し、 その 問題 は、 次章 にお いて 論じ るこ とと し、 次款 では
、大 審院 判例 の延 長線 上に 位置 づけ られ る、 最 高裁 昭和 三六 年判 決を 検討 する
。
( ) 星野 英一
﹁瑕 疵担 保の 研究
︱日 本﹂
﹃民 法論 集第 三巻
﹄︵ 有斐 閣、 一九 七二 年、 初出 一九 六三 年︶ 一七 三頁
。 ( 45 ) 柚木 馨﹃ 債権 各論
・契 約総 論﹄
︵青 林書 院、 一九 五六 年︶ 一四 八頁
。 ( 46 ) 柚木 馨﹃ 売主 瑕疵 担保 責任 の研 究﹄
︵有 斐閣
、一 九六 三年
︶二 九六 頁。 なお
、同
﹃注 釈民 法︵
︶﹄
︵有 斐閣
、一 九六 六年
︶二 三五 頁。 47
14 ( ) 柚木
﹃研 究﹄ 前掲 注︵
︶二 九六 頁、 柚木
﹃注 民﹄ 前掲 注︵
︶二 三五 頁。 48
47
47 ( ) 柚木
﹃研 究﹄ 前掲 注︵
︶一 六七 頁、 柚木
﹃注 民﹄ 前掲 注︵
︶一 七一 頁。 49
47
47 ( ) 柚木
﹃研 究﹄ 前掲 注︵
︶一 七三 頁、 柚木
﹃注 民﹄ 前掲 注︵
︶一 七五 頁。 50
47
47 ( ) 末川 博﹁ 売主 の瑕 疵担 保責 任﹂
﹃民 法上 の諸 問題
﹄︵ 弘文 堂書 房、 一九 三六 年、 初出 一九 三五 年︶ 二三 一頁
。 ( 51 ) 末川
・前 掲注
︵
︶二 三一
︱二 三二 頁。 52
51 ( ) 末川
・前 掲注
︵
︶二 三二 頁。 53
51 ( ) 末川
・前 掲注
︵
︶二 三二 頁。 54
51 ( ) 末川
・前 掲注
︵
︶二 三二
︱二 三三 頁。 55
51 ( ) 末川
・前 掲注
︵
︶二 三五 頁。 56
51 ( ) 末川
・前 掲注
︵
︶二 三三 頁。 57
51 ( ) 末川
・前 掲注
︵
︶二 三三
︱二 三四 頁。 58
51 ( ) 末川
・前 掲注
︵
︶二 三六 頁。 59
51 ( ) 私法 一九 号三 頁︵ 一九 五八 年︶
。 ( 60 ) 私法
・前 掲注
︵
︶三
︱四 頁。 61
60 ( ) 私法
・前 掲注
︵
︶六 頁。 62
60 ( ) 私法
・前 掲注
︵
︶七
︱八 頁。 63
60 ( ) 私法
・前 掲注
︵
︶七 頁。 64
60 ( ) 私法
・前 掲注
︵
︶一
〇頁
。 65
60 ( ) 私法
・前 掲注
︵
︶一 一頁
。 66
60
( ) 私法
・前 掲注
︵
︶一 二頁
。 67
60 ( ) 私法
・前 掲注
︵
︶一 五︱ 一六 頁。 68
60 ( ) 私法
・前 掲注
︵
︶一 六頁
。 69
60 ( ) 私法
・前 掲注
︵
︶一 一頁
。 70
60 ( ) 私法
・前 掲注
︵
︶一 八頁
。 71
60 ( ) 星野
・前 掲注
︵
︶一 七三 頁。 72
45 ( ) 星野
・前 掲注
︵
︶一 七三 頁。 73
45
第三 款 最高 裁昭 和三 六年 判決 とそ の評 価 一 昭和 三六 年判 決の 概要 不特 定物 の売 買に 瑕疵 担保 責任 の規 定が 適用 され るか 否か に関 して は、 最高 裁判 決が 待た れて いた
。と いう の も、 昭和 三二 年の 日本 私法 学会 での 議論 が学 説の 関心 を呼 ぶと とも に、
﹁全 く新 しい
( )
構成
﹂で ある 債務 不履 行責 任
74
説が 台頭 しは じめ
、こ の問 題が 学界 の焦 点と なっ てい たか らで ある
。こ のよ うな 状況 にお いて 公に され たの が、 次 の最 高裁 判決 であ った
。し かし
、こ の﹁ 判決 をど のよ うに 理解 する かは
、か なり に困 難な 問題
﹂で あり
、多 くの 評 釈が 存在 する が、 その
﹁理 解は 様々
﹂で
( )
ある
。
75
︻一 三︼
最判 昭和 三六 年一 二月 一五 日民 集一 五巻 一一 号二 八五 二頁 Xが 有線 放送 業を 営む Yに スピ ーカ ー︵ 不特 定物
︶を 販売 した とこ ろ、 その 機械 に隠 れた 瑕疵 があ り、 数回 の修 理に もか かわ らず 修復 でき なか った
。そ こで
、X から の代 金︵ 手形 金︶ 請求 に対 して
、Y は、 瑕疵 担保 また は債 務 不履 行に 基づ く解 除を 主張 した
。原 審は
、瑕 疵が 重大 なも ので はな かっ たこ とを 理由 に、 瑕疵 担保 責任 に基 づく 解
除を 否定 した が、 Xの 債務 不履 行を 理由 とす るY の解 除を 認め た。 Xは
、次 のよ うな 理由 で上 告し た。 すな わち
、 従来 の判 例は
、不 特定 物の 売買 にお いて は、 買主 によ る瑕 疵あ る物 の受 領の 前後 で区 別し
、そ の受 領の
﹁前 には 不 完全 履行 の責 任を
、後 には 瑕疵 担保 の責 任を 負わ せる
﹂も ので ある
。そ れゆ え、 Yが 物を 受領 した 本件 では
、﹁ も はや 不完 全履 行の 責任 を﹂ Xに 対し て問 うこ とは でき ない
。 最高 裁は
、次 のよ うに 判示 した
︵上 告棄 却︶
。す なわ ち、
﹁不 特定 物を 給付 の目 的物 とす る債 権に おい て給 付せ ら れた もの に隠 れた 瑕疵 があ った 場合 には
、債 権者 が一 旦こ れを 受領 した から とい って
、そ れ以 後債 権者 が右 の瑕 疵 を発 見し
、既 にな され た給 付が 債務 の本 旨に 従わ ぬ不 完全 なも ので ある と主 張し て改 めて 債務 の本 旨に 従う 完全 な 給付 を請 求す るこ とが でき なく なる わけ のも ので はな い。 債権 者が 瑕疵 の存 在を 認識 した 上で これ を履 行と して 認 容し 債務 者に 対し いわ ゆる 瑕疵 担保 責任 を問 うな どの 事情 が存 すれ ば格 別、 然ら ざる 限り
、債 権者 は受 領後 もな お、 取替 ない し追 完の 方法 によ る完 全な 給付 の請 求を なす 権利 を有 し、 従っ てま た、 その 不完 全な 給付 が債 務者 の 責に 帰す べき 事由 に基 づく とき は、 債務 不履 行の 一場 合と して
、損 害賠 償請 求権 およ び契 約解 除権 をも 有す るも の と解 すべ きで ある
﹂。 そし て、 Yは
、﹁ 一旦 本件 放送 機械 を受 領は した が、 隠れ た瑕 疵あ るこ とが 判明 して 後は 給付 を完 全な らし める よう Xに 請求 し続 けて いた もの であ って 瑕疵 の存 在を 知り つつ 本件 機械 の引 渡を 履行 とし て認 容 した こと はな かっ たも ので ある から
、不 完全 履行 によ る契 約の 解除 権を 取得 した もの とい うこ とが でき る﹂
。 この
最高 裁判 決は
、X の上 告理 由に 反し
、不 特定 物の 売買 にお いて
、売 主が 瑕疵 のあ る物 を給 付し
、買 主が
﹁こ れを 受領 した
﹂と して も、 それ だけ では 債務 不履 行責 任を 追及 でき なく なる わけ では ない とす る。 そし て、 買主 が
﹁瑕 疵の 存在 を認 識し た上 でこ れを 履行 とし て認 容﹂ した 場合 には
、売 主に 対し て、 瑕疵 担保 責任 を問 うこ とと な るが
、そ うで なけ れば
、受 領後 にも
、債 務不 履行 責任
︵完 全履 行請 求︶ を問 うこ とが でき ると した
。そ の判 旨の 検
討に 際し ては
、理 論構 成の 適否 とと もに
、結 論の 妥当 性を も併 せて 考慮 しな けれ ばな らな い。 二
最高 裁判 決の 理解