(1)「予算のうち,運営費不足の問題」と小グループ(4)「人材不足の問題」が,「受託し た法人」「提供」「サポート」「するしかない」というキーワードで共通性があると判断した.
これらのキーワードを基に,中グループ 1)「ひとり親家族支援センターの受託による受託 した法人の負担問題」という表札を作成した.また, 小グループ(5)「ひとり親の時間不 足の問題」と小グループ(6)「ひとり親のセルフ・スティグマの問題」が,「センターの支 援」「受けにくい」「センターに行くこと」「スティグマ化」というキーワードで共通性があ ると判断した.これらのキーワードを基に,中グループ 2)「ひとり親家族が抱える問題」
という表札を作成した.これ以上共通したメッセージはなかったため,小グループ(2)・
(3)・(7)はそのままとした.なお,本研究では,第2段のグループ編成の段階で解釈可能 なグループ数が抽出されたため,グループ編成は第2段階で終了した.
[表19] 第2段のグループ編成(中グループ化)
表札の
通し番号 中グループの表札 小グループの通
し番号とラベル 1) ひとり親家族支援センターの受託による受託した法人の負担問題 (1):⑥⑪⑲
(4):④⑬㉑㉒
2) ひとり親家庭が抱える問題 (5):⑤⑭⑮㉓
(6):⑩⑯⑰㉔
第3節 小括
3-1.健康家庭支援センターによる支援提供上の課題分析から得られる示唆
「健康家庭支援センターの利用を低下させるリスク要因」というメッセージと判断して 抽出された25個のラベルに対して2回のグループ編成を行なった結果,最終的に2つの中 グループと1つの小グループに集約することができた.編成された全てのグループは,健康 家庭支援センターの利用を低下させるリスク要因と考えられる.
ここでは,これらの結果に基づいて図解化し,要因間の関係について述べた上で,各要因 に対して考察を行なう.
3-1-(a) 図解化:センター利用を低下させるリスク要因としての直接,間接,媒
介要因
図解化した結果を[図7]に示した.
[図7] 健康家庭支援センターの利用を低下させるリスク要因の図解化
健康家庭支援センターの利用を低下させるリスク要因は,直接要因,間接要因,媒介要因 として説明できる.
要因ごとにみると,中グループ 1)「健康家庭支援センターの構造的問題」は,直接要因 でありながら(ルート⑴),小グループ(7)と中グループ2)を媒介して影響を与える間接 要因として働きかけていた(ルート⑷-①・②,ルート⑸-①・②).
中グループ2)「ひとり親家庭をめぐる問題」は,直接要因でありながら(ルート⑵),中
グループ1)の媒介要因として作用していた(ルート⑸-①・②).小グループ(7)「センタ
ーに対する認知の低さ」は,直接要因でありながら(ルート⑶),中グループ 1)の媒介要 因として作用していた(ルート⑷-①・②).
3-1-(b) センターの今後方向性に対する検討:リスク要因への取り組み
健康家庭支援センターに対する利用を低下させるリスク要因ごとに,考察を行なう.その 際に,本研究の結果であるリスク要因に関連したデータを根拠として提示することで,各リ スク要因を裏付けながら,その取り組みの重要性を強調する.
第 1に,中グループ1)「健康家庭支援センターの構造的問題」についてである.中グル ープ 1)「健康家庭支援センターの構造的問題」は小グループ(1)「予算不足の問題」と小 グループ(2)「人材不足の問題」,小グループ(3)「柔軟ではないマニュアル問題」で構成 されている.また,ひとり親家庭による健康家庭支援センターの利用を低下させる直接要因,
かつ間接要因として機能していた.詳細にまず,小グループ(1)「予算不足の問題」につい てである.2013年現在,独立型センター(149ヶ所のうち,116ヶ所)の平均予算執行額は 229,539,871ウォン(2016年6月14日の為替レートを基準とし,約20,783,936円)であ り,そのうち人件費は63.3%,運営費は16.2%,事業費は20.5%である(韓国健康家庭振
興院2014).そのなかで支援内容と実施有無に深く関連している事業費に着目するなら,決
して充分ではない.これには,自治体レベルの取り組みであった圏域別ひとり親家族支援セ ンターの事業費が全予算の約30.1%(150,000,000ウォンのうち,46,000,000ウォン)を 占めていたことが裏付けられる(A市2014).また,前記予算は,経常費補助金から77.1%,
別途・外部支援金から16.4%,法人負担金から6.5%を賄っている.一方,ひとり親家庭に 対する支援が含まれている多様な家族統合サービスの予算は,経常費補助金から 23%,別 途・外部支援金から70.1%,法人負担金から6.9%から執行されている45)(韓国健康家庭
振興院2014).このことから,ひとり親家庭に対する支援が含まれている多様な家族統合サ ービスは,他の支援に比べて予算安定性が弱い別途・外部支援金に依存しているということ である.それに加えてひとり親家庭に対する支援をするかどうかは,センターの裁量である
(姜 2015)ことを考慮するなら,ひとり親家庭に対する支援の予算は予算安定性が弱い別
途・外部支援金から執行されている推論できる.次いで,小グループ(2)「人材不足の問題」
についてである.「人材不足の問題」は,前述した「予算不足の問題」のように,具体的な データは見当たらない.だが,「職員が足りないため,ひとり親家庭に対する支援を分担し ている(ラベル③)」「待機する人が多い(ラベル⑯・㉑)」「40 ケースの半分はモニタリン グ水準に留まっている(ラベル⑰)」という面接内容から分かるように,確かに存在してい る問題である.最後に,小グループ(3)「柔軟ではないマニュアル問題」についてである.
健康家庭支援センターの支援は全ての家庭を対象として行なわれている.このことは,ひと り親家庭は健康家庭支援センターが実施している全支援の対象になれるということである.
しかし,逆にいうと,健康家庭支援センターが実施している全支援は,どの家庭でも参加で きる支援であるということで,それはひとり親家庭のみのニーズを反映していないことを 意味する.このような状況を踏まえ,健康家庭支援センターは多様な家族統合サービスの一 環として,特殊なニーズを抱えている家庭に合わせた支援を開発,または選定して行なって いる.しかし,前述したように,予算が少ないためにひとり親家庭に対する支援は限られて しまい,多様な家族統合サービス以外の支援の予算からひとり親家庭に対する支援を実施 しようとしても,「柔軟ではないマニュアル問題」で現実的に難しい状況である.以上のよ うに,「予算不足の問題」「人材不足の問題」「柔軟ではないマニュアル問題」は,健康家庭 支援センターの構造的問題として考えられ,今後,前記問題に取り組む必要があるだろう.
とりわけ,「予算不足の問題」によって「人材不足の問題」「柔軟ではないマニュアル問題」
が生じる可能性が少なくないことから,予算の見直しが急務であろう.
第 2 に,中グループ 2)「ひとり親家庭をめぐる問題」についてである.中グループ2)
「ひとり親家庭をめぐる問題」は小グループ(4)「ひとり親の時間不足の問題」と小グルー プ(5)「ニーズの偏り問題」,小グループ(6)「ひとり親家庭に対する偏見問題」で構成さ れている.詳細にまず,小グループ(4)「ひとり親の時間不足の問題」についてである.こ のグループを構成しているラベル⑤・⑭・⑲からも分かるように,ひとり親家庭における仕 事と家庭の両立問題は,新たな指摘ではない.実際に,仕事と家庭の両立問題を打開するた めに2012年に子どもケア支援法が制定されており,2005年に幼乳児保育法(第28条:保
育の優先提供)を一部改正することで,保育所などの利用に優先されるようになった.しか し,以前としてひとり親(養育者)の48.2%が一日に10時間以上を働いており,帰りの時 間として19時(19時から24時)以降が41.3%である(女性家族部2016b)と報告されて いる.次いで,小グループ(5)「ニーズの偏り問題」についてである.「ニーズの偏り問題」
は,前述した「ひとり親の時間不足の問題」のように,具体的なデータは見当たらない.だ が,教育支援より文化支援に関心が高く,それは支援の待機状況に繋がるという職員の発言
(ラベル⑨・⑪・⑮)と教育支援だけなら,参加しなかったという利用者の発言(ラベル⑫)
から分かるように,確かに存在している問題である.文化支援は,「経済的逼迫感」が「離 婚経験児の適応問題」に影響を与えるという報告(姜・黒木・中嶋2016)を勘案するなら,
経済的支援として意義をもつだろう.しかし,離婚後の親の役割及び養育に関連する教育な どの支援の必要性に対する指摘(姜・黒木・中嶋 2016)を考慮するなら,文化支援ととも に,教育支援は欠かせないものであろう.次いで,小グループ(5)「ひとり親家庭に対する 偏見問題」についてである.韓国社会において離婚,またはひとり親家庭に対する偏見は珍 しいものではない.それに関する間接的なデータとしてソウル市(2015)は,5 名のうち,
3名が離婚を深刻な問題として捉えており,離婚は絶対してはいけないものと認識している
割合は8.9%,最後まで避けるべきと回答した割合は32.8%であると報告している.以上の
ように,「ひとり親の時間不足の問題」「ニーズの偏り問題」「ひとり親家庭に対する偏見問 題」は,ひとり親家庭をめぐる問題として考えられ,今後,前記問題に取り組む必要がある だろう.たとえば,ひとり親(養育者)は平日に時間がとれないことから,週末を活用する 必要がある.また,それに先立ち,健康家庭支援センターは「人材不足の問題」を抱えてい ることから,人材を増員するための予算確保が行われなければならない.子どもを対象とす る支援であれば,センターに行く時に子どもケア支援と連携した派遣職員による同行など が考えられる.その場合は,子どもケア支援の利用料を軽減する方法も同時に検討されるべ きであろう(姜2016).また,教育支援に対する参加を前提とした文化支援とともに,教育 支援の重要性に対する説明を頻繁に行なうことで,ひとり親家庭の参加を促す必要がある.
なお,ひとり親家庭に対する偏見は,短時間で解消できる問題ではないだろう.現在,ソウ ル市ひとり親家族支援センターがひとり親家庭に対する認識改善事業を展開している.健 康家庭支援センターでも関連事業を展開していく必要があると考えられる.
第3に,小グループ(7)「センターに対する認知の低さ」についてである.健康家庭支援 センターは,健康家庭基本法が制定された2004年に3ヶ所に過ぎなかったが,徐々に増え