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図4.5 第一ストローク前の強調

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第5章 手書き入力への視線集中を導く共有白板の試作

 本章では,前章で述べた仕組みを実装した試作システムについて述

べる。

5.1ベースシステム

 本試作システムのベースとして,東京理科大学伊藤研究室による,

大講義室におけるグループ討議のために開発された手書き入力の協 調学習支援システム(長谷川2007)を利用する。ベースシステムは 本分散協調学習環境と同様,個人作業空間と協調作業空間を持つ。

 ベースシステムは,Javaloにより実装されており,クライアント・

サーバ型アプリケーションである。その特徴は,遠隔にあるサーバと クライアントが相互にRMI(Remote Method Invocation)11によりメ ソッド呼び出しによって双方向通信を実現している点である。これに より,遠隔にあるサーバ・クライアントがあたかもそれぞれのメソッ ド12を呼び合う形でインタラクションを行わせることが可能となり,

開発を容易にしている。

 ベースシステムで実現される共有白板は,本共有白板と同様,地と なるワークシート(ベースシステムではWebサーバから提供される HTML文書)の上に,手書きで情報を書き込むことが可能となっている。

クライアントからサーバに対し,共有白板への書き込み要求がなされ るが,ベースシステムでは,複数のクライアントからの要求を考慮し

10Sun Microsystems社が開発したプログラミング言語。

11Javaで分散オブジェクト環境(異なるマシン問でオブジェクト同士がメッセー ジをやりとりできる環境)を実現するための手法。

12オブジェクト指向プログラミングにおいて、各オブジェクトが持っている自身 に対する操作。

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排他制御機構13を備えており,場合によっては,教師(役)のユーザ が適当なユーザに優先的に書き込みの権限を付与することも可能と なっている。なお,ベースシステムにおいては,書き込みを行いたい 場合に,「発言要求ボタン」を押し教師の許可を受けてから発言権を 得ることができる。図5.1は学習者Aが発言要求を出し,教師が発言 権をAに与える様子を表した図である。学習者Aに発言権がある場合 は,学習者Bが発言要求を出してもサーバによって却下される。この 発言制御により混乱のない学習展開ができる。

学習者Aに発言

◎⑨

教師

発言権

サーバ

発置 求

インタ ・

発言要求 発言要求

     【==ニ=コ       ==コ       1=====⊇

       学習者B    学習者C

   学習者A

      図5.1 発言制御の様子

13データの読み書きを一時的に制限すること。本システムでは,発言制御。

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 本共有白板とベースシステムの共有白板の違いとして,本共有白板

では,

(a)情報作成権限を持たないユーザからの手書き入力を共有白板上  で表示されるアバタ操作へと変換する機能

(b)クライアント側で受信した手書き入力のストロークの提示をア  ニメーションとして再現し,その書き始めを強調する機能

を持つ。

 (a)については,前章4.3節で述べた手書き情報作成者に受信者の視 線を知らせるためのものであり,また(b)については,前章4.4節で述 べた受信者の視線集中を導くためのものである。

 開発を容易にするという点において,本分散協調学習環境はベース システムに対し,(a),(b)を付け加えることで実装する。

5.2視線のメタファとしてのアバタ操作

 前節の(a)について,実装方法を本項で述べる。共有白板への手書き 権を持たないユーザからの要求は,前節の排他制御機構により手書き 入力としては排除されるが,アバタの提示とその移動として処理され

る。

5.3スレッドによる受信した手書きストロークの再生

 5,1節における(b)の機能について,本節で述べる。本共有白板に おいては,作成者のクライアントからサーバに送信された手書き情報 は,サーバを介し,受信者のクライアントへと送られるが,ここでべ        31

一スシステムとは異なり,書き始めを強調する形で手書きのストロー クをアニメーションにより再現していく。ここでは,スレッド14プロ グラミングにより,クライアントアプリケーションが自動的に強調と 再生を行う。具体的には,サーバからの手書きストローク情報を受信 したクライアントアプリケーションは,スレッドを作成し,スレッド から共有白板を構成しているGUIに対し,まずは書き始めの位置に ついて強調するプログラムを起動する。強調するプログラムでは0.2

〜0.3秒間,強調表示を行う。その後スレッドは,手書きストローク を構成している点について,順番に0.1秒毎に線を繋いでいくプログ ラムを順次起動していく。これにより,手書きのストロークをアニメ ーションとして再現することができる。

共有白板

♪・ ノ失

レ障>q

 ぴ       ノ

       !       1        !          /ア \

         ズ     は

        /  \

      ズ  へ    ち

        掬ゆ

         \ゾーノ

図5.2 スレッドによる手書きの開始強調と再生

14ソフトウェアの実行単位。例えば,微小な単位に分割した手書き情報をサーバ から受け取る作業と同時に描画していく作業を行うことでアニメーションとなる,

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おわりに

 本研究では,分散協調学習環境における協調作業空間(共有白板)

上にてリアルタイムなコミュニケーションによる学習を構成するた めに,手書き入力メディアの利用による学習支援システムを試作した。

 はじめに,手書き入力メディアの長短を検討するために,手書きさ れた情報が受け手に与える影響に関する基礎的な実験を行った。その 結果,手書きされた文字は,受ける側の情意面に対し好影響を及ぼし 短期的な記憶に効果を及ぼすという仮説は成り立たなかった。また,

手書きであるが故に生ずる読み取りの阻害についても影響がないこ

とがわかった。

 この結果と先行研究での知見を踏まえ,思考を中断せず,スピーデ ィなポインティングが可能という手書きのメリットを生かし,協調作 業空間上の学習支援システムとして,①共有白板上において,情報発 信者に受信者からの視線を知らせる仕組みの提案,②共有白板上への 手書き入力された情報へ視線を導くシステムの提案を行った。①につ いて,作成者(情報発信者)が行った板書等の行為に学習者がそれを 追随する機能を持たせることで,作成者の情意面がサポートされ,円 滑なコミュニケーションが促進される。また,②について,共有白板 上において,学習者(情報受信者)に書き始めの位置を強調させるこ とで,視線の集中が得られる。これらの機能により,情報の発信者と 受信者がダイナミックに入れ替わる協調学習において,情報の発信者 と受信者それぞれの存在感を導き,情意面の向上と正確な意見交換や 情報の伝達できるようになる。

 試作は,東京理科大学伊藤研究室のシステムをベースとして行った が,システムの評価実験には至っていないため,本研究で想定する協        33

調作業空間において,提案した機能による円滑なコミュニケーション に関する評価実験を行うことが今後の課題である。また,第3章で行 った実験は,単純化のために学習という文脈を排除している。そこで,

学習という文脈の中において手書きされた情報が受信者にとってど のような影響を与えるのか実験を行うことも今後の課題である。

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