Ⅳ章でも述べたように,木更津市は
21
世紀に向けて地域としての役割機能が大きく 期待され,新産業創出や市場拡大のチャンスが高まりつつある地域である。そのような ことから,筆者が木更津市で前述の地域振興シンポジウムを開催する前から木更津商工 会議所や関係機関等に対して,特産品開発事業を提案していたところ,具体化すること────────────
25 TMO(Town Management Organization)とは,商店街の組合・行政・街づくり会社・その他中心市街地
に係わる様々な組織の調整の場となって,中心市街地の活性化・維持のための活動を街づくりの観点か ら総合的に企画・調整し,その実現を図る機関である。中心市街地活性化法に基づく基本計画が策定さ れている市町村の商工会議所等においては,TMOを商工会議所等に設置する方向で準備を進める必要 があるとされている。木更津市の場合,筆者が中心市街地活性化基本計画策定委員長を務め,TMO立 ち上げまでの基礎作りは出来ている。
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になった。
本稿では,先ず,同市における特産品開発事業のための資源調査事業の概要を示す。
次に,その成果を受けて地域内の事業者が具体的に商品化を進めるにあたり,「木更津 らしさ」をイメージアップする観光資源候補の中にある「證誠
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寺」に因んだキャラクタ ー商品を積極的に開発する事業者候補が見当たらなかったため,委員会の意向を受けて 筆者が代表取締役であるクリエイト・スタッフ(有)によって企画開発した木更津オリ ジナル商品の事例について述べる。
1.特産品開発事業における地域資源調査の意義と目的
平成
11
年度に千葉県木更津商工会議所の地域特産品開発事業の一環として,筆者が 委員長で木更津市地域資源調査事業を実施し27
た。この事業は,後の特産品開発のための 基本構想を策定することを目的とするものである。
地域特産品開発事業は,地域固有の自然・歴史・文化,産品,技術等の資源を掘り起 こし,新たな視点から商品開発を行い,販売を促進する事業である。そのため,地域特 産品開発事業は,地域の資源と労働力を活用する自立的な産業起こしを通じて地域振興 を図る有効な方策として期待され,各地で取り組まれている。しかし商品競争の激化や 消費者の商品選択意識の高度化に伴い,単なる珍しさや旧態依然とした名産品では売れ ない時代となってきた。特産品開発では,地域資源にゆかりのあるこの地域ならではの 商品,地域住民が愛着の持てる商品,安全で水準の高い品質,適正な価格などの条件を 満たす商品を企画する能力に富んだ企業が求められている。
地域資源調査事業からスタートする特産品開発は,地域の未利用資源,観光資源等を 活用した新たな特産品開発,観光開発等のための調査,研究,実施計画等を策定し,特 産品の試作,商品化,市場開拓までの推進を図り,地域への波及効果を高めるためのも のである。地域資源調査から特産品開発,さらに流通・販売促進活動を通して行政機関 の役割やネットワーク体制による支援活動を強化することによって地域への具体的な波 及効果をもたらすことを目的としている(第
13
図)。2.地域資源調査の方法と結果
木更津市の資源調査は,①自然資源,②歴史・文化資源,③農林・水産資源,④観光 資源,⑤伝統工芸・技術資源,⑥スポーツ・レジャー資源,⑦祭事・神事・イベント資 源,⑧既存特産品の
8
分類に沿って先ず,文献調査を行った。次いで,その調査資源リ────────────
26 證誠寺の狸と和尚にまつわる伝説に目をとめて,大正時代に野口雨情作詩,中山晋平作曲による童謡
「証城寺の狸ばやし」が世に出され,今でも知られている。
27 平成11年度「木更津市地域資源調査報告書」木更津商工会議所,1999年。
地域振興への商品学の実践(川) (677)63
ストを添付したアンケート調査を実施した。
アンケート調査は,①階層構造分析法(AHP : Analytic Hierarchy
28
Process)によるア
ンケート調査,②一般質問方法によるアンケート調査の
2
つの調査を行った。① 階層構造分析法によるアンケート調査
AHP
の構造を簡単に示すと次のようになる。AHP
は,階層構造全体を1
とし,比率尺度による一対比較をもとに,全体としての 項目間の比率尺度を決定する方法である。つまり,ウェイト(重要度)の大きいものほ ど重要(優先度)となる。解析する際は「絶対重要」を
9,
「かなり重要」を7,
「重要」を5,
「少し重要」を3,
「同じ」を
1
として計算している。)調査の目的
木更津市の各種資源を活用し,特産品開発,観光開発を通して地域の活性化に役 立てるためとした。
最終目標 特産品・観光開発 ………これの総和が1
↓
意思決定者 アクター ………これの総和が1
↓
評価項目 各種資源 ………レベル3の総和が1
↓ ………レベル4の総和が1 選 択 肢 有効,保留,有効でない ………これの総和が1
────────────
28 ひとが利害が相反する選択肢を判断することを迫られたときに,判断した項目をある程度数量化でき,
判断した妥当性を分析出来る調査方法である。
第13図 地域資源調査事業の目的と波及効果
(筆者作成)
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)調査の時期:平成11
年11
月24
日(水)〜12月20
日(月) )調査の対象:木更津市民(会社員,サービス業,日本団体生命,主婦等,地元産 業(JA,金田漁業組合,自営業など),自治体および団体(市役所,公務員,商工 会議所,教育委員会,団体職員など) )有効回答数:40(配布数:99) )集計結果の概要:地域資源を活用し,特産品・観光開発をすることによって,地 域(木更津市)の活性化につながると考えている人が過半数以上で,この傾向は,地域住民,地元産業,地域行政の各アクターが共通している。
アクターが圧倒的に重要視している資源分野は,祭事・神事・イベント資源で,特に 祭りやイベントが重要視されている。次いで観光資源では,名所・旧跡,神社・仏閣,
国際交流施設,歴史・文化資源では,民俗文化財,農林・水産資源では,海産物,自然 資源では,干潟,伝統工芸・技術資源では,陶芸,版画がそれぞれ重要視されている
(第
5
表)。② 一般質問方法によるアンケート調査
)調査の目的:木更津市内の資源を調査発掘し,特にその中から「木更津らしさ」
をイメージできる資源に関する市民の意見を聞き,今後の特産品づくり,観光開発 に活用するためとした。
)調査の時期:平成11
年11
月24
日(水)〜12月20
日(月) )調査の対象:木更津市民,木更津市役所職員,木更津商工会議所会員 )回収率:(有効回答数188:配布数 200)
)集計結果の概要:アンケート回答者が木更津市の8
分野の資源の中で特に「木更 津らしさ」のイメージアップに役立つものと回答したものを割合の多い(注目度の 高 い)順 にA(50% 以 上)
,B(約40%)
,C(約30%)の ラ ン ク で 示 す と,第 6
表の通りであった。第5表 重要度の高い具体的資源
順位(優先度) アクター:地域住民 アクター:地元産業 アクター:地域行政 第1位
第2位 第3位 第4位 第5位 第6位 第7位 第8位 第9位 第10位
祭り イベント 民俗文化財 名所・旧跡 海産物 神社・仏閣 陶芸 干潟 版画 国際交流施設
祭り イベント 民俗文化財 海産物 名所・旧跡 干潟 神社・仏閣 陶芸 版画 国際交流施設
祭り イベント 民俗文化財 名所・旧跡 海産物 神社・仏閣 陶芸 干潟 版画 国際交流施設
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A, B, C
ランクに次ぐ資源項目を参考までに示すと,海苔(26.1%:農林水産資源), 中島の梵天立て(25.2%:歴史文化資源),切られ与三郎(24.0:歴史文化資源),金鈴 まつり・狸まつり(21.3%:祭事・神事・イベント資源),すだて(21.3%:スポーツ・レジャー資源),梨(17.6%:既存特産品)となっていた。
木更津らしさのイメージアップに役立つ項目として,「潮干狩り」,「港祭り」,「珍味 あさり」が上位を占めていたことから,東京湾随一の小櫃川河口干潟とその周辺に位置 する潮干狩り場の存在価値,そして古き時代より安房・上総の物資を江戸に運ぶ港町と して繁栄した地域特性を強く反映している。また,DNA 研究所の立地する「かずさア カデミアパーク」が約
40% の割合を占めており,情報や技術の国際交流地域のイメー
ジアップにも活かすことのできる資源として注目できる。さらに,観光農業で成長性の 高い「梨」や,童謡で歌われている「證証寺」に関連する「狸」などが次のランクに位 置し,歴史・文化と観光資源にも関心が向けられていた。これらA, B, C,全体の内容
をみると,木更津らしさのキーワードは,港町・漁師町,寺町,狸ばやし,歴史ロマン の街,自然・文化・祭りに恵まれた国際観光の街などと,回答者の間で木更津らしさを 演出するにふさわしい資源を豊富にイメージしていることが窺えた。3.特産品開発の基本構想
木更津市の資源調査結果と評価を踏まえ,次のステップである特産品開発に向けての 基本コンセプトを次のように策定した。
第6表 更津市のイメージアップ資源
ランキング イメージアップ評価
役立つ項目(%) 資源分野
A 潮干狩り(69.7)
港祭り(59.0)
珍味あさり(51.6)
スポーツ・レジャー 祭事・神事・イベント 既存特産品
B かずさ焼(45.7)
あさり(45.2)
焼海苔(44.7)
木版(42.0)
わくわく市場(40.4)
アカデミアパーク(39.4)
伝統工芸・技術 農林・水産 既存特産品 伝統工芸・技術 スポーツ・レジャー 観光
C 證証寺(34.0)
福たぬきシリーズ(33.5)
梨(17.6+16.0)(33.6)
木更津ばやし(33.5)
小櫃川河口干潟(32.0)
太田山公園(31.4)
八幡神社例大祭(29.3)
観光
伝統工芸・技術 既存特産品・農林・水産 歴史・文化
自然 自然
祭事・神事・イベント 同志社商学 第54巻 第5・6号(2003年3月)
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