以上の通り、コーポレート・ガバナンスに関し、平成
13
年の商法旧法は、監 査役機能の強化を図り、平成14
年の商法改正法は、コーポレート・ガバナンス に関し、委員会等設置会社制度を導入した。これにより、株式会社のうち大会社 及びみなし大会社は、平成15
年4
月1
日から、取締役会と代表取締役で構成す る経営機構とこれを監査する外部機関たる監査役(会)が並立する従来型(監査役設置会社)と、経営機構として業務執行を行う執行役とこれを監督する取締役
会を分離し、取締役会の監督を強化するため取締役会の中に社外取締役が過半数 を占める指名・報酬・監査の各委員会を設置し、一方、監査役(会)は廃止する という米国型(委員会等設置会社)を選択できることになった。米国型を採用する 場合には、定款を変更する必要がある。
コーポレート・ガバナンスの改革を考える場合には、従来型か米国型のどちら を選択するかということに問題を単純化するべきではない。まず、従来型に米国 型を加味した混合型というものが、様々に考えられる。次に、従来型に固執する
序章 コーポレート・ガバナンスと機関を中心とする大会社関連の改正
としても、色々な改革が考えられる。また、米国型を採用する場合でも、これを より徹底する案も考えられる。このように、それぞれの型に多様な改革案が存在 しうる。平成
14
年改正法の施行を機に、既に相当数の会社がコーポレート・ガ バナンス改革を実施している。ここでは現行法のポイント・問題点を簡略に指摘 するに留め、詳細については後述する(1)。(1) 参考文献として、拙稿・末永敏和=長谷川俊明=稲葉陽二編「委員会等設置会社・重 要財産委員会導入の実務」中央経済社、末永・ジュリスト、末永敏和「検証!革新す る企業が選んだガバナンス・システム」ビジネス法務2004. 4. p47-54.他。
Ⅱ.平成 14 年改正の大まかな内容と法的問題点
1
.重要財産委員会制度①内 容
大会社またはみなし大会社で取締役
10
人以上で1
人以上の社外取締役がいる 場合に、取締役会決議で置くことができる(1)(2)。取締役3
人以上で構成する(商 特1条の3第3項)。登記事項である(商特1条の5)(3)。その権限は、商法260
条 第2
項1
号・2
号の決定を行う(商特1条の3第5項)。なお委員会等設置会社は、重要財産委員会を設置することができないものとされる。その会社においては、
執行役に大幅な業務執行の決定権限が委ねられるものとされているからである
(4)。
②問題点
重要財産委員会への委任の範囲等が問題となる(一括委任か一部委任も可能か)。 また他の重要な業務執行にもあたる場合、委任できるか(例えば子会社株式の全部
譲渡の場合)、取締役会との関係(重要財産委員会の決定の前に取締役会で決定できる
か。委員会の決定を取締役会で覆せるか)、監査役は全員、出席義務を負うか(1人出
席すれば足りるか)、そもそも重要財産委員会は必要か(取締役化のスリム化で対応可
能か)等の問題点が指摘される(5)。
(1) 改正商法特例法は、重要財産委員会の設置の適用会社等について定めている。始関
「平成14年改正商法の解説[Ⅰ]」商事法務No. 1636. p12.。
(2) 重要財産委員会の内容、問題点等に関しては、後述する。末永教授は、重要財産委
二 商法改正とコーポレート・ガバナンス改革の現状と課題 法上の大会社およびみなし大会社であって、①取締役の数が10人以上であること、お よび②取締役のうち1人以上が社外取締役であることを要件とする。①の要件は、取 締役の人数が多くて機動的な取締役会の開催が困難な会社に対して設置を認めるのが 合理的であり、一方、取締役の員数が少ない会社にまでそれを認めることは取締役会 の形骸化を伴うおそれがあり、合理的でないと考えられたためである。商法特例法上 の大会社に対象を限定するかどうか改正前議論になっていたが、改正法では上記のよ うに限定している。また、取締役の数が一定数、例えば10人以上の株式会社に限定す べきかどうかについても、議論があったが、改正法においてはやはりそのように限定 をしている。また、②の要件は、取締役会の監督機能の強化が前提となると考えられ たからであるとされるが、設置の趣旨からすると必ずしも説得的ではない。中間試案 の経営委員会制度---に対しては、反対意見としては、取締役会として、取締役会が 有名無実化し、その位置づけが不明確となるとか、責任の所在が不明確になるなどの 理由が挙げられた。改正法では、その名称を実態をあらわすように改め、権限も明確 にし、また設置の適用要件についても、上記のように限定する以上、反対意見の理由 として挙げられている問題も解決されていると考えられた。重要財産委員会の権限に ついて、商法260条第2項各号のうち1号および2号に限定したのは、商法260条第 2項各号はその2項の柱書きの記載から重要な業務執行の例示として掲げられているも のであって、それをまとめて委員会の権限としてしまうことは、取締役会自体の権限 との関係で、形骸化を招くものとして不適当と考えられたからである。さらに、商法 260条第2項各号のほかに、新株の発行や社債の発行など個別的に取締役会の決定事 項とされているものまで委員会の権限とすることは、なおさら不適当と考えられた。
他方委員会等設置会社において、その業務の決定を大幅に執行役に委ねているのは、
取締役会自体の監督機能が大幅に強化されているからであるという。前掲・始関「平 成14年改正商法の解説[Ⅸ]」商事法務No. 1646. p5-6. 。商法260条第2項1号・
2号においては、「重要なる」財産の処分または譲受または「多額の」借財が掲げられ、
その範囲が必ずしも明確ではなく、したがって、どこまで取締役会で決定しなければ ならないか明確でないという問題が指摘されていた。また、これらの事項については、
機動的な決定を要する場合が多いと考えられる。そこで、これらの事項については、委 員会に決定を委ねても不都合ではなく、またその必要があると考えられた。重要なる、
あるいは多額のという範囲が明確でないという疑問は残るが、できるだけ広く重要財 産委員会で決定すべきという。あいまいなものは、代表取締役ではなく重要財産委員 会に決定させるべきであるとされる。しかし、重要なる財産の処分または譲受、多額 の借財などという概念は、同盟や提携関係の樹立といった素早く展開されるべき現代 的企業活動を汲んだ概念からはほど遠く、これらの決定のみを目的とした機関の設置 理由があるのかが疑問とされる。末永・ジュリストNo. 1229. p26-28.。
(3) 改正法では、委員会設置と委員の氏名が登記事項とされている。
(4) 前掲・始関「平成14年改正商法の解説[Ⅸ]」商事法務No. 1646. p6-7.。
(5) 機動的な業務執行の推進という観点からは、取締役会の員数そのものを思い切って 10名程度に縮減し、取締役会の実質化、活性化を図る方が適当であろう。また、重要 財産委員会には、監査役も出席・意見陳述義務があるから、その機動性にも、疑問が あるといえる。重要財産委員会の運営についても、委員会の招集権者に関し、委員会 を招集すべき取締役を定めることを想定する規定(商259条第1項但書)を設けるか
序章 コーポレート・ガバナンスと機関を中心とする大会社関連の改正
どうか問題になるが、少数の取締役による機動的な業務決定をすることにその機能が あり、その機能を働かせるためには、機動的に開催される必要があるから、そのよう な規定を置かず、各自が自由に招集できることとされる。委員会のメンバーでない取 締役も委員会議事録の閲覧等をすることができる。その監視または監督義務を果たす ために必要だからである。前掲・末永参照。
2
.委員会等設置会社に関する特例①内 容
委員会等設置会社とは、大会社またはみなし大会社であって、商法特例法
2
章4
節に規定する委員会等設置会社に関する特例の適用を受ける旨を定款に定めた 会社をいう(1)(2)。取締役会内に指名委員会、監査委員会、報酬委員会を置く(商 特21条の5第1項)(3)。各委員会は、過半数の社外取締役を含む3
名以上の取締役 で構成する(商特21条の8第4項)(4)。監査役を置くことができない(商特21条の 5第2項)(5)。1
人以上の執行役を置き、業務執行を担当させる(商特21条の12)(6)。一定の事項については、業務の決定を委ねることができる(商特21条の7・21 条の12第1号)。委員会等設置会社制度の導入の目的は、執行と監督を分離し、
3
つの委員会によって取締役会の監督機能を強化し、それを前提に執行役への大幅 な権限委譲を認め、迅速・機動的な意思決定を可能とすることである(7)(8)。②問題点
委員会等設置会社の問題点を掲げる(9)。
(
a
)監査委員会と監査役(会)との異同(10)監査委員会は妥当性監査も行うが、適法性監査は弱くなっていないか等が問題
となる(監査委員会は業務執行の内部機関だけに違法性の指摘はしにくい)。そもそも監
査委員会は組織的監査を原則とし、一方、監査役(会)は独任制を原則とする。
また監査委員(取締役の任期)は
1
年と短く(監査役は4年)、監査委員の決定は取 締役会で行われる(実質的に指名委員会)。取締役会、監査委員会の決議について の監査は、自己監査の危険もある。また社外取締役が多数で機能するのか、常勤 監査委員も必置でないこと(常勤性と社外性とは矛盾しないか)、実査を監査委員が 自ら行うことは予定されていないのかどうか等が問題点として指摘されよう。最近、米国の監査委員会の権限に近付ける解釈がある。そこでは、内部統制部 門の充実が強調される。しかし、権限に関する規定の上では、監査委員会と監査