成木弘子
(1)平成28年度活動報告
超高齢社会を迎える中で地域ケアを効率良く,効果的 に転換するために地域包括ケアシステムを始め様々な地 域ケアシステムの構築が求められている.本地域ケアシ ステム研究分野では,保健活動,特に保健所や行政保健 師が地域ケアシステム構築においてどのような役割や機 能を果たす必要があるのか検討したり,実践知から理論 を生成したりしている.
これらの研究成果は,本院における公衆衛生看護関連 の研修で還元している.また,ポジティブな側面からの 健康づくりを活用した健康教育の開発やヘルスプロモー ションを推進する地域組織活動についても取り組んでい る.
平成28年度の研修においては「統括保健師研修」を研 修主任として新たに立ち上げ,保健師現任教育の充実に 努めた.
1) 調査研究
①研究課題 1:ラフター(笑い)ヨガクラブ参加者の健 康状態に関する縦断的観察研究厚生労働省科学研究費 補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研 究事業)笑い等のポジティブな心理介入が生活習慣病 発症・重症化予防に及ぼす影響についての疫学研究
(研究主任:大平哲也)の分担研究として取り組んだ
中で結果を引き続き分析した.
【目的】本研究では,東京都内等における“ラフター(笑 い)ヨガクラブ(以下,LYC)参加の健康への効果を明 らかにすることを目的とした縦断的観察研究でありる.
【方法】ベースライン調査は平成25年12月,追跡調査 は平成27年11月に実施した.実質配布は222名,回収数 216名(回収率97.3%)であり,有効回答数205名(有効 回答率92.31%)を分析対象とし,LYC参加期間からA群
(24か月以下),B群(25-47か月),C群(48か月以上)
の 3 群に分け,心の状態(LOT-R:改定版楽観性尺度)
の変化の差を比較することによって, LYCの参加と心の 状態との関連を探究した.
【総括】LOR-Rの 6 項目と総合得点を 3 群別に比較し 表 1 に示した.有意に前後で差があったのは,B群 3 項 目,A群 4 項目であったが,A群では有意差は見いださ れなかった.追跡調査においてLOR-Rの 7 項目において,
A群との有意差は,B群の一項目,C群では 7 項目全てで 見られた.LOR-Rの全ての項目(前後とも)で,C群は A群に比較し優位高い得点であったが,全誤差の比較で はいずれの項目においても有意差は見られなかった.各 群の前後の変化を図 1 ~ 3 に示した.LYCへの継続的な 参加は,ポジティブな心理状態をより高めると考えられ る.
人数 平均 値
平均
順位 人数平均
値 平均 順位
A群との差 (p値)
①最も良い期待をする※ 202 .011* 201 .001**
中断者群(A群) 39 3.05 82.9 37 3.22 78.4 .201
中期間継続者群(B群) 78 3.22 97.4 .363 79 3.44 92.3 .269 .032* .993 長期間継続者群(C群) 85 3.55 113.7 .009* * 85 3.83 116.2 .001* * .011* .911
202 .105 201 .006* *
中断者群(A群) 38 3.33 91.4 37 3.28 79.2 .825
中期間継続者群(B群) 78 3.38 96.2 .960 79 3.61 98.2 .179 .032* .467 長期間継続者群(C群) 86 3.63 110.7 .015 85 3.91 113.1 .005* * .008* .305
203 <.001* * 201 <.001* *
中断者群(A群) 39 3.14 77.4 37 3.32 72.1 .127
中期間継続者群(B群) 77 3.56 97.5 .139 79 3.69 95.2 .067 .226 .786 長期間継続者群(C群) 87 3.92 117.1 <.001* * 85 4.08 119.0 <.001* * .088 .843
204 .220 202 .003* *
中断者群(A群) 39 3.03 91.8 38 2.95 76.2 .827
中期間継続者群(B群) 78 3.37 110.4 .160 79 3.35 101.3 .064 .836 .803 長期間継続者群(C群) 87 3.14 100.2 .523 85 3.56 113.0 .002* * .011* .154
202 .035* 202 <.001* *
中断者群(A群) 38 3.01 83.1 38 3.01 76.3 .867
中期間継続者群(B群) 78 3.27 99.5 .378 79 3.37 94.8 .240 .400 .877 長期間継続者群(C群) 86 3.49 111.4 .018* 85 3.8 119.0 <.001* * .121 .306
203 <.001** 202 <.001* *
中断者群(A群) 39 3.34 70.6 38 3.36 74.4 .068
中期間継続者群(B群) 78 3.79 100.6 .021* 79 3.94 69.7 .108 .127 .785 長期間継続者群(C群) 86 4.11 117.4 <.001* * 85 4.25 118.1 <.001* * .121 .714
196 <.001* * 191 <.001* *
中断者群(A群) 37 19.09 71.2 35 19.6 61.7 .425
中期間継続者群(B群) 76 20.57 95.8 .086 79 21.4 95.4 .007* * .022* .816 長期間継続者群(C群) 83 21.43 113.1 <.001* * 85 23.4 120.0 <.001* * <.001* * .350
前後の差
(p値)
※各々の群の前後比較:wilcoxon【“符号付き”順位和】検定
※3群の比較:Kruskal-wallisの検定および多重比較(Steel-Dwass) *p<0.05.**:p<0.01 H25:ベースライン調査
②たいてい悪いことが起きる※
③いつも自分の未来に楽天的※
④自分の思い通りになると期待しない※
⑤良いことが起こると当てにしない※
⑥悪いことより良いことが多く起こる※
⑦上記の合計点※
表1:LYC参加延べ月数別グループの笑いと心の状態(前後比較) LOT-R(改訂版楽観性尺度) n=205
H27:追跡調査 前後変化量の比較 A群との差
(p値)
A群との差 (p値)
表1 LYC参加延べ月数別数グループの笑いと心の状態(前後比較) LOT-R(改訂版楽観性尺度) n=205
統括研究官(地域ケアシステム研究分野)
2)研修報告
短期研修では,①~⑥の研修を担当した.①エイズ対 策研修の主任として研修の企画・運営,本省との調整を 担当した.また,「全国の保健所における研修の実施体 制に関する実態調査」結果を全国の保健所へ発送し,研 修に留まらずエイズ対策の実践活動を支援した.公衆衛 生看護研修では,②中堅期研修および③管理期研修の副 主任とし企画・講義・演習に参画した.中堅期研修では
「遠隔教育:地域ケアシステム構築の基礎知識」「講義:
地域ケアシステム構築における実務リーダーの役割」「演 習:地域ケアシステム構築」,管理期研修では「講義:
地域ケアシステム構築における公衆衛生看護管理者の役 割」「演習:人材育成計画策定」を担当し研修内容の向 上に努めた.④平成28年度から新規に開催された統括保 健師研修では,研修主任として研修の立ち上げを厚労省 保健指導室と連携して実施し,関係機関等へのPRにも 努力した.その結果,定員25名のところ応募者が61名に 上った.生活習慣病対策研修では④計画編,および⑤評 価編の計画策定から関わり運営や演習を担当した.また,
②~④の公衆衛生看護関係の研修においては,「標準的
なキャリアラダーによる自治体保健師の能力の自己評 価」調査も実施し,平成29年度の公衆衛生学会で報告す る予定である.⑥歯科口腔保健研修では副主任として「講 義:PDCAサイクルに基づく地域保健活動」を担当した.
これら①~⑥の 6 本の研修は,いずれも定員を上回る応 募者があり,研修生からの満足度や役立ち度に関しての 評価も非常に高いものであった.
長期課程では,①保健福祉行政分野および地域保健福 祉分野・専攻科におけるコア科目「ヘルスプロモーショ ンの実際」 ②精神保健活動論の科目責任者,③地域診 断の科目副責任者,④行動科学の科目副責任者および講 義「ポジティブアプローチ」,⑤地域保健活動論の講義「地 域組織活動論」を担当した.
当院における研修の運営や管理に関しては,「教務会 議委員」「専門課程委員会委員」「内部評価委員会委員」「利 益相反管理委員会委員」「職務発明審査会委員」「人事委 員会委員」として教育訓練の向上に努めた.
外部の研修では,厚労省が実施主体で開催している「市 町村保健師能力育成研修事業」への支援を行った.
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(2)平成28年度研究業績目録
1)学術誌に発表した論文(査読付きのもの)
総説/Reviews
成木弘子,松本珠実,奥田博子,森永裕美子,他 2 名.
国立保健医療科学院における保健師人材育成体制の現状 と今後の取り組み.保健医療科学.2016;65(5):501-509.
惠上博文,石丸泰隆,成木弘子.医療介護連携におけ る保健所の役割及び展望.保健医療科学.2016;65(2):154-165.
松本珠実,成木弘子.統括保健師の現状と担うべき役 割 地域の健康レベル向上を推進する機能の強化をめざ して.保健師ジャーナル.2016;72:984-990.
2)学術誌に発表した論文(査読のつかないもの)
抄録のある学会報告/Proceedings with abstracts 成木弘子,福本久美子.ラフター(笑い)ヨガクラブ 参加期間と「こころの状態」の関係.第 5 回日本公衆 衛生看護学会学術集会;2017.1.21-22;仙台.同講演集.
p.31.
成木弘子,星旦二,福本久美子,大平哲也.ラフター ヨガクラブの参加と参加者の健康状態の関連―参加中断 者と継続参加者の比較―.第75回日本公衆衛生学会総 会;2016.10.26-28;大阪.日本公衆衛生雑誌.2016;63(10 特別附録):437.
堀井聡子,横山徹爾,杉田由加里,成木弘子,他 6 名.
データを活用した効果的な生活習慣病対策の「人材育 図1 A群前後の順位の変化 図2 B群前後の順位の変化 図3 C群前後の順位の変化
成プログラム・実践ガイド」の開発.第75回日本公衆 衛生学会総会;2016.10.26-28;大阪.日本公衆衛生雑誌.
2016;63(10特別附録):411.
横山徹爾,堀井聡子,杉田由加里,成木弘子,他 6 名.
自治体における生活習慣病対策推進のための「データ活 用マニュアル」の開発.第75回日本公衆衛生学会総会;
2016.10.26-28;大阪.日本公衆衛生雑誌.2016;63(10特別 附録):412.
尾形佳代,成木弘子,藤井仁.重症心身障害児在宅療 育支援事業利用者の実態と保健師の支援の在り方に関す る研究.第75回日本公衆衛生学会総会;2016.10.26-28;
大阪.日本公衆衛生雑誌.2016;63(10特別附録):540.
研究調査報告書/Reports
熊川寿郎,岡本悦司,成木弘子,福田敬,玉置洋,小 林健一,森川美絵,松繁卓哉,白岩健,大多賀政昭,宮 宇地裕美,平塚吉宗.日本医療研究開発機構委託費長 寿・障害総合研究事業「エビデンスに基づく地域包括 ケアシステム構築のための市町村情報活用マニュア ル作成と運用に関する研究」(研究代表者:熊川寿郎.
15dk010714h000)平成28年度総括研究報告書.2017. p.4-12.
統括研究官(水管理研究分野)