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図38 中央卸売市場(青果)の取引構造71)(出典)71)注。
(5)取引のタイプ
以上のように,卸売市場は,卸売業者が全国から集荷した大量の生鮮食料品を仲卸を通じて小売 業者に分配していく機能をもっている。大量に集荷した生鮮食料品を一カ所に集めて,分配し,需 給マッチングの上,適切に価格形成を進めていくことは,日々鮮度を要求され,消費される生産食 料品にとって社会的に要請されている。それを前日夜から早朝に掛けて済ませる必要があり,自ず から規格・等級,一定以上のロットを前提とせざるを得ない。図39農林水産省資料によれば,キャ ベツ156円/1玉(1
!
)の内訳は,生産者受取額67円(生産経費38円+生産者利益29円),生産者 負担額34円(集荷団体経費26円,卸売経費8円)であり,その一方で消費者負担は小売経費37円,仲卸経費17円となる。生産者利益率は19%,流通経費率は57%となる。全国から大量の生産食料品 を集荷し,分配していく流通経費負担が大きいのは,それだけ,卸売業者,仲卸業者など中間流通 業者の業務負担が大きいことを示していると見ることができる。
逆に,個人直売で見る場合,図39のとおり72),出荷額は120円,生産者利益率は53%と大幅に向 上するが,これは,卸売市場に出荷するなどの流通経費負担を自らが負担することによる利益と見 ることもできる。個人直売の場合は,結局は市場価格に左右されるとしても,生産者利益率は高く,
それだけ生産者にインセンティブが生れるものであることが分かる。
71)農林水産省「卸売市場をめぐる情勢」平成30年7月より転載。
72)農林水産省「卸売市場をめぐる情勢」平成30年7月。
図39 市場 直売による価格形成73)
(出典)72)注。
(6)北部市場経営改革プランの方向性74)
卸売市場の公共性は,次の三点に集約される。
!
農林水産物は,計画的な収穫が難しく,迅速な 出荷・販売を要するが,卸売市場は多様な品目を揃え,全国チェーンの量販店から中小小売店に至 る多様な小売業者を通して消費者に供給する機能を持っており,生産者から消費者へのきめ細かい 流通経路を要する生鮮品流通の基幹的な流通経路の役割を果たしている。"
農林水産物は,規格,等級,産地等々,きわめて多様な品目から構成されており,個々の生産者,消費者にとって,その 公正,妥当な価格を形成し,判断することはきわめて難しいが,卸売市場では,多様な流通業者が 参加する,伝統的な競りから相対取引など,多様な取引形態を通じて,公正,適正な需要と供給の バランス調整メカニズムが働き,商品価値に応じた価格形成の条件が整備されている。生産者にとっ ても,迅速な代金決済により代金回収リスクをほとんど懸念することなく,生産に専念することが 可能な場となっている。
#
さらに,卸売市場は,単なる生鮮食料品の取引の場であることに止まら ず,住宅地に近接した立地,食料品を常時備蓄している設備等々をすると,地震等々の災害時にお ける避難場所,緊急時の救援拠点としても有効である。近年の卸売市場経由率は,全体にやや低下傾向にあるが,野菜7割,果物4割,水産物5割,花 卉8割という水準にある。市場外流通が拡大しつつある。全体に量販店が増加,大規模化し,一般 小売店は減少傾向にある。一方消費者の消費状況は,一人あたりの品目量は,野菜93.2
$/年,果
73)注72に同じ。
74)川崎市「川崎市卸売市場経営プラン改訂版」平成31年3月に依る。
5,000 55,000 105,000 155,000 205,000 255,000 305,000 355,000 405,000 455,000
1000 6000 11000 16000 21000 26000 31000 36000 41000 46000 51000 56000 61000 66000 71000 76000 81000 86000
ฑ 27 ೧ ฑ 28 ೧ ฑ 29 ೧ ฑ 30 ೧
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図40 川崎市産品目取扱高(野菜,果物)
(出典)川崎市提供資料により筆者作成。
実38.1
! /年とほぼ横ばいの状況である。依然として生鮮食料品に対する安定した必需的な需要が
見られるものの,所得水準の伸び悩みを背景として価格志向の強さが見られる。そうした中で,北 部市場の取扱高は,青果は10万トン超,260億円の取扱高だが,特に水産物の取扱高の減少,市場 外流通の増加もあり,全体の取扱高は減少傾向にある。そのために,市場使用料,施設使用料が卸 売業者等の取扱高減少に伴って減少傾向にある一方,設備更新,再整備による事業費支出は増加し ていることから,効率的な市場運営を要する局面になっている。
北部市場としては,本来の多様な品揃え,適正な価格形成といった基本機能の強化,出荷者と生 産者との間の様々な商流,情報流,物流が円滑に機能することが前提にある。加えて,市場に求め られる社会的な機能の発揮と持続可能な経営の確保を目指していく。将来ビジョンとしては,「実 需者や消費者との距離が近い消費地市場として,今後人口増加が見込まれる開設区域内を中心に生 鮮食料品を供給する役割を果たすとともに,広い敷地や交通網の良さを活かし,卸売市場が少ない 広域への物流拠点機能も果たす市場を目指す。」としている。
品揃え,価格形成面では,商物不一致の原則の規制緩和,市場外取引の増加,相対取引の増加と いう状況を踏まえて,より適切な品揃え,価格形成を図っていくためには,その需要と供給の太い 流れ,調整メカニズムの「見える化」が必要になっていくこと,さらに中小生産者,小売業者にとっ ても,消費者ニーズに合わせた円滑な出荷,仕入れができる場としての機能を高めていくことが考 えられる。
(7)川崎市の農業にとっての意義
川崎産品の取扱高はセレサモスに比べて小さく,また,規格性・継続性のハードル,買手の顔が 見えないなど,少量多品種の生産を指向する都市農業者にはマッチングしにくい面がある。都市農 業者の中でも,相対的に規模の大きい農業者であれば,継続的に販路を市場で確保していく意義は 大きいが,その場合でも個人直売,共同直売との選択になる。
北部市場の価格形成は,競り,相対に関わらず,市場の需給を反映したものになっている。但し,
卸・仲卸を通じた流通取引は,長年の商慣行に基づいており,現行でも卸・仲卸にとっては恒常的
に運転資金を要する仕組みとなっており,ぎりぎりの状態。その流通経費を含めた価格形成は個人 直売の利幅と比べても厳しいものがあり,相当な規模で,それらの流通経費を吸収できるたけの規 模でなければ活用は難しい。とすると,やはり,事実上,規模をこなせる食品スーパー,小売業の 取引の場とならざるを得ない。
規格性・継続性を重視する卸売市場取引は個人農家にとってハードルは低くないが,利益率は高 くても販売量に限界のある個人直売を超えて,生産量を拡大していこうとする個人農家にとって,
それだけ販路を拡大しいくことも可能となる意味で,北部市場,地方卸売市場である南部市場の活 用は有効である。個人農家の立場からは,個人直売,共同での直売,JA共同直売所,中央卸売市 場といった形で使い分けが進むことが望ましい。注目すべき動きとして北部市場水産部門で川崎市 の知的財産交流事業の成果が生れている。今後は農業部門でも同様の動きが期待される。75)
7.事例!−1 中央卸売市場北部市場 卸売業者東一川崎中央青果株式会社
(1)価格形成における卸の役割76)
卸売市場において取り扱う農産物の特性は,すべてが均一な品質なものはなく,大中小,売りづ らいものも含まれていることにある。量販店はその中で売りやすい中心的なものを主に取り扱う。
それ以外のものは,仲卸や小売商を通じて取引され,さばいていかれる事になる。特に日本の場合 は,消費者の多様なニーズを背景に,多品種で細かい等階級と,変動しやすい産地の生産事情をう まく市場内で調整し,売りさばき,流通させることが必要になる。
30年前は多くの青果物が競り売りによって取引され,値付けがされていたが,現在では競り売り は市内産及び横浜市内産の移動競売程度に限られている。ほとんどの品目は産地側の事情,川下の 状況を勘案して相対売りで価格を決定している。委託品ではあるが全農,経済連,農協など出荷団 体から,産地側のこの価格で売ってほしいという産地希望価格もある。産地側,小売側の事情を取 りながら,価格を決めていく。産地希望価格とは,生産者が生産を維持していくために必要な経費 等を賄える希望価格であり,生産者側の希望にある程度沿った形で販売していくことである。日に よっては,産地側が1000円を希望しても,実際には600〜800円でしか売れないこともあるが,そう いった場合には日々産地側と協議をして決めていく以外にはない。競りと相対取引では価格差は歴 然としてある。
一般的には価格は数量が多ければ下がり,需要よりも供給が上回る状況では価格が下がるメカニ ズムである。また,台風など自然災害の影響を受けて数量が極端に減ると,価格が上がることにな る。卸としては,相対取引の場合は,各担当者が仲卸・買参者という需要側と供給側である産地の 両サイドの状況を見ながら,産地・仲卸と交渉し,価格を決めていく。北部市場には仲卸が19社あ るが,量的に大きく取り扱ってもらうところでは価格が多少下がることはあり得る。
競り売りも相対売りも品目によっては市況を勘案する。市況価格は日々変わっていくが,生産量
75)川崎市の知的財産交流事業の成果として,水産部門で新商品が開発されている。これは,平成30年12月に明治 大学と株式会社ミートエポックが開発・展開する,日本初の熟成製造技術「エイジングシート」(特許出願中)を 活用し,川崎北部市場水産仲卸協同組合が同社と共同して魚を熟成化した商品,川崎北部市場発のブランド「発 酵熟成熟鮮魚」として商品化されている。同商品は,明治大学と株式会社ミートエポックの共同開発による,肉 を熟成させるための「エイジングシート」の技術によるものである。
76)本項は主として卸の東一川崎中央青果株式会社への取材に依る他,農林水産省第5回「卸売市場流通の再構築 に関する検討会」(平成26年12月12日)資料に依る。