トップPDF 教育者・研究者・舞台人・日本文化のよき理解者としてのジョンソン先生の思い出 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

教育者・研究者・舞台人・日本文化のよき理解者としてのジョンソン先生の思い出 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

教育者・研究者・舞台人・日本文化のよき理解者としてのジョンソン先生の思い出 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

教育研究舞台日本文化よき理解としてジョンソン先生思い出(和田) 1   教育研究舞台日本文化よき理解として           ジョンソン先生思い出

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アディナ ヘンリー・ジェイムズ 著 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

アディナ ヘンリー・ジェイムズ 著 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

 「さあ」と私は言った。「あの石を手放しちゃったことを後悔するは分かるよ。誰かが君に 話して納得がいかなくなったんだろう。」  「それこそみんなですよ!僕はどうしようもない馬鹿で、何て馬鹿なことをしたか黙っておけ ないんだと。十一スクードを持って帰って、使い切れないくらい金を持っていると思ってい たんです。最初にしたは行商から金メッキ髪どめを買って、それをニネッタにプレゼン トしたんです ─ 村女の子で仲良くしていたんです。その子はそれをおさげに挿して、鏡で 自分様子を見ていました。それから、どうして突然僕がこんなにお金持ちになったか聞く んです!それで『そうさ、僕は君が考えているよりお金持ちなんだ』って言ったんです。それ で持っているお金を見せて、石話をしたんです。その子はとても頭いい子で、頭いい奴 がちょっと一言いえばすべて分かっちゃうんです。彼女は私に面と向かって大笑いし、私が何 てまぬけで、あの石には少なくとも五百スクード価値はあっただろうし、その外国はひど いペテン師だって言うんです。私はそれを持って帰ってきて、兄や信頼できるに見せるべき だったって。結局、彼女言うことは正しかったんです。私は大きな富を手にしていたのに、 それを犬に与えてしまったんです。彼女はこのありがたい話を終わらせようと、頭から髪どめ を外してそれを私顔めがけて放り投げたんです。彼女は二度と私に会おうとしませんでした。 そんなことするくらいなら、道端で出会った目不自由な乞食と結婚する方がましだと考えた だと思います。私に何が言えるでしょうか?彼女には、ローマで貴婦人 ─ 公爵夫人なんで すが ─ 侍女をしている姉がいるんですが、その夫人が、ローマ平原で見つかった古い宝石 で作った高価なネックレスをお持ちなんです。僕はうなだれてその場を立ち去り、自分愚か さを呪いました。僕は自分金を地面に放り投げて、その上につばを吐きかけたんです!フォ リエッタを飲みに酒場に行きました。そこで三、四知り合いに会ったんです。僕はみんな に酒をおごって回りました。自分持っている金が憎くて、全部使ってしまいたかったんです。 もちろん彼らもどうして僕がそんなに羽振りがいいか知りたがりましたよ。ですから正直に 話したんです。あのニネッタような雌ギツネよりはもうちょっとましなことを言ってくれる んじゃないかって願ってましたけど。でも、彼らはグラスをテーブルに叩きつけて声をそろえ て僕ことを馬鹿にしたんです。どんな間抜けなロバでも、草をはんでいるときにそれだけ 宝物を鼻で掘り出したら、口にくわえて飼い主ところに持って帰るだろうにって。何慰め にもならない慰めでしたよ。僕はワインで怒りを流し込み、瓶を次から次へと空にしていきま した。生まれて初めて酔っ払いましたよ。あの夜は最悪でした!次日、私は残った金を叔父 ところに持って行き、それを貧しいたちに与え、教会ために新しいろうそくを買い、そ して不敬な僕魂を償うためにミサ言葉を述べるよう頼みました。叔父はその金を真剣に見 つめて、それを邪な方法で手に入れたではないだろうなと質しました。僕は叱られる覚悟 ができていましたので、彼 4
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福井先生との翻訳の仕事 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

福井先生との翻訳の仕事 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

21 ペンを走らせている。「…後は何て言った?」そこでやっと私に聞く。福井先生がペンを走ら せるスピードは並大抵ものではない。しかも、乱れた字ではなく、後からでもちゃんと読め る。その上、私が訳した内容を確認しながら書いている。神業である。お互いにかなり集中 力を用いる作業なので、途中で何度か息抜きを入れる。訳し終わった箇所について話し合うこ とが多い。訳し終わった部分を今度は福井先生が家でコンピューターに打ち込む。打ち込みな がらさらに日本語調整をする。次週に会うと前回翻訳した箇所で先生が書き直したところ、 わかりにくかったところなどについて話し合う。そしてまた次箇所を訳す作業に入る。これ 繰り返しである。2013 年外国学部紀要』第 9 号からほぼ毎号で翻訳した部分にコメン トをつけて掲載している。その校正際にさらに翻訳内容に修正を入れ、訳を磨いている。  1959 年に出版された Anthropologist at Work をなぜ今さら翻訳しているか疑問に思う も多いかもしれない。文化人類学分野はその後発展を遂げているし、1959 年から世の中は大 きく変わっているだから、1930 年代から 1940 年代にベネディクトが書いたことなど現代社 会にはあまり意味を持たないではないかと思うもいるだろう。もしそうだったら、私もこ 翻訳作業に加わらなかったと思う。また、この本がベネディクト研究にのみ重要な資料で あるとしたら、これまでベネディクトとは関わりを持ったことがない私がこの翻訳をすること にはならなかったと思う。なぜ今この本を訳しているか。それは、この本に書かれたことが 今社会に通じるところがあるからである。そして、ベネディクトが生きた社会中でベネデ ィクト、あるいは彼女師であるフランツ・ボアズが学者として貫いた姿勢を心から尊敬し、 私もこの本を訳すことによって彼らと同じように今社会に一石投じたいと思うからである。 これは、私と福井先生共通思いだ。
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アントニー・スティーヴン・ギブズ先生 ―仰ぎ見る存在として― 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

アントニー・スティーヴン・ギブズ先生 ―仰ぎ見る存在として― 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

外国学部紀要 第 14 号(2016 年 3 月) 2  先生は、遠州流茶道直門上席師範を経て、家元師範代という高い立場に昇られており、茶 道に関する論考や、茶道語彙に関する研究も多数発表されてこられた。また、日本語日本 文学についても、その分野で修士学位( Oxon )を取得されて以来、継続して研究を続けら れている。しかし何よりも私個人印象に残るは、その英文法教授に関する論考である。全 10 章からなるこの一連論文群と、それを発展させた書籍ドラフトを先生から数年前に見せ て頂いた時には、そのユニークなアプローチに大いに感銘を受けた。40 年にわたり、日本大 学生と向き合った経験があるからこそ、生まれてきた考え方だと思われる。日本人にとって痒 いところに手が届くようなこの論考さらなる充実と、早い出版が待たれるところである。ま た先生は、発音や韻律教授法に関しても一家言をお持ちであり、90 年代にはこの分野でも一 連論文を書かれている。陳腐な言葉かもしれないが、マルチな才能とは彼ような人物こ とを言うであろう。まさに仰ぎ見る存在と言わざるを得ない。
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「ボアズの片腕としての歳月」に見るミードの想い 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

「ボアズの片腕としての歳月」に見るミードの想い 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

 グラディス・ライカード、ルース・ブンツェル、そしてエスター・ゴールドフランクは娘 ような立場となり、ボアズは彼女たち仕事に関することや個人的な問題に対して心配性お 父さんかおじいさんように彼女たちことを気にかけた。  しかし、ルース・ベネディクトは彼女たちとは少し違うカテゴリーに入っていた。彼女は部 外として外から入ってきて、ボアズから手助けも求めず、ボアズが彼女責任をとること も期待せず、同時にボアズ男子生徒がよくやったように、断固として彼に反対したり、嫌々 ながらボアズ意見を受け入れたりするようなこともしなかった。ボアズとベネディクト関 係は、二全く異なる過去を映し出しているところがあった。ベネディクトは子ども時代か ら年老いた男性は、賢く、そして死に近い存在であるというイメージをもっており、ボアズは 子ども時代、友達と会うことはめったになく、欲求不満幼少時代を過ごした。ボアズ長男 は医者になり、二番目息子は 1925 年に列車事故で亡くなった。自分娘たち夫に対するボ アズ関心から推察すると、ボアズはヨーロッパユダヤ人文化に則って、自分後継に息 子ではなく義理息子を考えていたではないかと思わざるを得ない。しかし、ボアズが何度 彼らを自分仕事に引き込もうとしても、彼らはボアズ仕事に興味を持たなかった。  時間においても空間においてもボアズ文化人類学領域は膨大な広がりを持っており、そ うち数箇所しかまだ明かりが灯されてはいなかったように思えた。ボアズが死んだ後には、 それらすべてを統括できるは彼以外にいないではないかという思いが私たちにあった 8) 。
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フランス語教育に必要とされる文法知識 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

フランス語教育に必要とされる文法知識 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

例文及び練習問題、日本語訳など様々な言語資料・メタ言語資料を通して学習に徐々に概念 化される仕組みになっていると言えよう。 5 )記述文法と学習文法から見た問題点  入門・初級フランス語教材に提示された複合過去形は「過去」というテーマと強く結びつ き、用例も過去用法中心であった。複合過去形物語テクストにおける役割、時間表示や「長 さ」を感じさせやすい状態性高い事行が複合過去形使用を妨げるものではないことは、教 育文法ではすでに取り入れられている事項であるが、今回分析で明らかになったように、一 律にすべて教材に反映されていたわけではなかった。教材に反映されていると思われる場合 も文法規則として明示されていたは Alphabetix 「出来事 vs 背景説明」のみだった。もち ろん、上記事項が反映されていない教材が複合過去形学習における問題点を無視している わけではあるまい。本稿 1 章ですでに見たように、教材に記載された文法事項は教授方針、 学習段階、コミュニケーション目標など様々な要素を考慮しつつ分析しなければならない。 豊富な学習時間が期待できない大学第二外国学習現状を想定した上で、少しでも運用を 目指して作られた教材は、1 つ文法項目に関して網羅的に文法規則を記述することはないか らである。特に半過去形を学習項目に入れていない教材では 2 つ時制形を対比させる必要が ないので、複合過去形意味が機能的に示されないことが多い。たとえば、『話してみようフラ ンス』では複合過去形が教科書最後課に現れ、長さを感じさせる時間表現と共起も、 状態性高い事行と組み合わせも確認されていない。これは少ない学習時間を考慮して「単 純明快」に複合過去形形態的特徴と過去用法典型的な例を学習しようという方法論的結論 と言えるだろう。
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物語理論と翻訳 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

物語理論と翻訳 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

 語り手はいつでも語り手として物語言説に介入できるだから、どんな語りも、定 義上、潜在的には一人称でおこなわれていることになる…。 (287) すなわち、すべて物語は原理的には一人称物語であり、そこに何らかの区別があるとすれ ば、それは「物語内容を語らせるにあたって、『作中人物』を選ぶか、それともその物語 内容には登場しない語り手を選ぶか、という選択」(287)のみであるということです。物語 水準と人称問題をひどく乱暴にまとめてしまうと、「水準」は「誰が語っているか?」とい う問題で、「人称」は「誰が見ているか?」という問題であると言うことができます。  ヘンリー・ジェイムズ作品に『メイジー知ったこと』という小説があります。この小説 は少女「視点」から出来事が眺められているわけですが、この物語を語っているは少女で はありません。一読するとお分かりいただけるように、幼い女の子がとうてい使わないような 語彙や文構造が頻繁に出てきます。つまり、見ているは女の子であるけれども、語っている は成人、しかもかなり高度な言語運用能力を備えた大人ということです。そして、現実には あり得ないような『メイジー知ったこと』物語言説こそがこの小説魅力でもあるわけです。  逆に、J. D. サリンジャーに『ライ麦畑でつかまえて』という有名な小説があります。この を眺めているは成人した「僕」ですが、物語語りは高校生だったとき「僕」という構 造になっています。つまり、『メイジー知ったこと』とは逆に、「視点」方が大人で「語り」 方が子どもだというわけです。そしてそのことが、この小説持つ魅力となっているわけで す。このように、物語における「語り」や「視点」問題は、単なる形式的な問題ではなく、 物語内容と深く結びついているということがお分かりいただけると思います。
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想い出すことども 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

想い出すことども 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

外国学部紀要 第 16 号(2017 年 3 月) を食べさせようとご配慮によるもの。  さらに、折にふれて、梅田近辺から北新地界隈にかけて、和洋中レストランに招待をうけ ることもある。いちど、第一ビル神仙閣でひらかれた新年会では、ドン・ペリニョン(ブリ ュット)、同(ロゼ)を含めて、何と時価 17 万円相当シャンパーニュをふるまわれ、度肝を 抜かれた。わたしは生来、下戸なだが、美酒はいくら飲んでも悪酔いしないことを、そのと き実感した。たしかに微醺を帯びただけれど、きちんと佳肴に舌鼓を打つことも忘れなかった。  七子先生が避暑に出かけられる由布院常宿、玉の湯別棟暮らし話を聞かされると、そ もそも住んでいる世界が違うと思い知らされるけれど、先生話は単なる自慢話で終わること はまれである。では、今度、いちど行ってみようか、という方向に発展することが多い。ただ し、玉の湯は、タクシーですぐ行ける距離ではないので可能性はうすいが、ひょっとしたらと 思わせるところが七子先生である。
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外国語教育における「翻訳」の再考 ― メタ言語能力としての翻訳規範 ― 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

外国語教育における「翻訳」の再考 ― メタ言語能力としての翻訳規範 ― 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

言語(英語)帝国主義的思想に対するグローバル化・多分化化・多言主義など学術的見解 を示している。 2 . 2  シラバスとカリキュラム  上 2 つ目的(問題)は、Cook 自身も解説するように、シラバスとカリキュラムという問 題に集約できる(Cook,2010,p.104)。外国教育に限って言えば、何を学生に教え、その 大目標は何なかといった問題はカリキュラムに関係する。それに一致が見られた時点で、実 際教室で実践に関する意思決定が必要になるが、こちらがシラバス問題になる。しかし ながら、Cook が言うには、言語学習に関しては、別言語を学ぶことが何にせよ「よいこと」 であるという共通認識が漠然と出来上がっているがゆえに、なぜそうなかという議論がほと んどなされていない( ibid. )。つまり、外国教育において「訳すこと」がタブーとされてき た事実は、教室シラバスから排除されていたと読み替えることができ、またそのような扱い を受けてきた理由は、カリキュラムに関係する問題であるわけだが、それもまた十分に議論さ れてこなかったということである。つまり日本大学における英語教育を考えた場合、カリキ ュラム問題、すなわち、そもそも目的やゴール設定が曖昧でないだろうかとも考えられる わけである。
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アントニー・スティーヴン・ギブズ先生のご退職によせる想い 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

アントニー・スティーヴン・ギブズ先生のご退職によせる想い 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

3 アントニー・スティーヴン・ギブズ先生ご退職によせる想い 福 井 七 子  私が初めてギブズ先生にお目にかかったは、関西大学文学部頃でした。先生は英文学科 に属しておられました。文学部時代はあまりお話をする機会もありませんでしたが、教授会 折、物静かな口ぶりでお話される先生を、いつも私は羨望まなざしで見ていました。  直接お話する機会をもったは、外国学部にお移りになってからでした。私はその時、英 で論文を書かねばならないという、まったく荒唐無稽な仕事を抱えていました。まがりなり ではありましたが、一応英語で原稿は書いておりました。手を入れてくだされば有難いという 思いで先生にお願いしました。先生は大学前喫茶店にほぼ時間通りお出でになりました。お 聞きすれば京都から新幹線をお使いになったということで、大いに恐縮したものです。しかし、 この恐縮は始まりに過ぎませんでした。一文一文、誠に丁寧に修正してくださり、最初は遠慮 がちに聞いておりましたが、だんだん厚かましくなり、「それとこれとニュアンス違いは何 ですか?」など先生にとってはあまりに稚拙すぎる難儀な質問を何百回もしてしまいました。 ギブズ先生は一つひとつ本当に丁寧に教えてくださり、無事論文は仕上がり、それは後にジョ ンズ・ホプキンズ大学出版から出版されました。残念ながら編集段階で若干修正がなされ ましたが、骨子については私も譲るわけにはいかず、何回も、何度も編集とやりとりをし、 出版までこぎつけることができました。
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オズボーンの復讐 ヘンリー・ジェイムズ 著 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

オズボーンの復讐 ヘンリー・ジェイムズ 著 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

 この話には誇張があることをオズボーンは最大限考慮した。女性というものは ― 彼は考え た ― 話を都合よくまとめ上げるが大好きである。特にそれが不幸ときは。しかし彼 は大変心配になり、ただちに長い手紙を書いた。その手紙中でオズボーンは、ドッド夫人 話がどこまで本当なかを尋ね、もしそれがかなり部分事実であるなら、気晴らしため にすぐに町に出てくるよう強く勧めた。グラハムは実際に姿を現すことでそれに応えた。そこ でオズボーンはすっかり安心した。グラハムはこの数ヶ月で今までにないほど健康で元気そう だった。しかし彼と話してみると、精神的には少なくとも彼が深刻に病んでいることが分かっ た。元気がなくぼんやりとして、思考がまったく働いていなかった。オズボーン問いにも援 助申し出にも反応がないので、オズボーンはそれを悲しい想いで受けとめた。彼は生まれつ き感傷的な悩みを大変なことだと考えるタイプではなかった。階下住人が失恋で引きこもっ ていても、だからといって階段を上がる自分足音に気をつかうような人間ではなかった。し かし、グラハムをからかっても何効果もないだろうし、楽しさというものは必ずしも他人に 感染するわけではないということをグラハムは証明しているように思われた。グラハムはオズ ボーンに、自分ことを恩知らずな奴だと思わないで欲しいということ、そして、今回こと が癒されるまでその件については触れないで欲しいということを懇願した。グラハムは今回 件を忘れようと決意していた。彼がそれを忘れることができたとき ― はそういうことを忘 れるものなので ― 少なくとも今回先端をうまく過去に追いやることができたとき ― このことについてすべてを話すつもりだと言った。当面間は、自分気持ちを他ことで紛 らわせなければならなかった。何をすればいいか決めるは容易ではなく、当てもなく旅を するも難しかった。しかし、この耐えがたい暑さ中でニューヨークにとどまるも不可能 だった。ニューポートになら行けるかもしれなかった。
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ビセンテ・ウイドブロ『北極の詩』(抄) 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

ビセンテ・ウイドブロ『北極の詩』(抄) 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

し長く、7 月から 9 月にかけてほぼ三ヶ月に渡っている 3) 。  一時的にせよウイドブロがフランス都を離れたは、パリに迫りつつあった第一次世界大 戦戦火を避けるためで、マドリードにたどり着く前には、トゥール近郊に所在するボーリウ・ プレ・デ・ロッシュで過ごしている。この時、避難生活を共に過ごしたが、リトアニア出身 彫刻家ジャック・リプシッツとスペイン出身画家フアン・グリスで、その僻村で彼らと家 族ぐるみ付き合いを持った。『北極歌』冒頭に載る二友人へ献辞は、その時思い 出に寄せたものである。
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日本語教育における学習者コーパスの構築とICLEAJ 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

日本語教育における学習者コーパスの構築とICLEAJ 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

 SLA(Second Language Acquisition, 第二言語習得)は外国や第 2 言語学習プロセスを支 配する原理を明らかにすることを主要目的にしているが、Ellis(1994: 670)はそのデータには 学習言語使用データに加え、文法性判断ようなメタ言語的判断や質問紙法や思考発話法 ような自己申告データなど 3 種類あるとしている。さらに、非統制言語使用データを非誘 導型、有統制それを誘導型、メタ言語的判断や自己申告データを内省型データと呼んで、優 れた研究は様々なデータソースを使用している研究であると述べている。そしてこれまで SLA 研究は、内省型や誘導型言語使用データを中心に行われてきたが、学習コーパスは非誘導 型言語使用データがもっている出現頻度や変数、回避といった問題を解決できる利点を十分 に備えていると述べている。
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ファーゴー教授 ヘンリー・ジェイムズ 著 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

ファーゴー教授 ヘンリー・ジェイムズ 著 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

るさびれた裏通り入口にいた。むさ苦しい家屋が私たち前に並んでいた。アイルランド 浮浪児が家入口と溝間で六ばかり私たち足もとで寝そべっていた。 「分かった!分か った!」彼は叫んだ。「分かりました ― 分かりました!」「何が分かったですか?」という 問いに対して、彼は次ように答えた。 「科学が長年にわたって探し求めてきたものです ― 測 り知れないものに対する解答です!おそらく、私運命でもあります。間違いなく私永遠 生命です!急いで、急いで!消え失せてしまう前に書きとめなければなりません」そして彼 薄汚い宿に私を急がせた。戸口で彼は立ち止まった。 「今は話すことができません」と彼は叫ん だ。 「まず書きとめなければならないです。しかし、今晩公演を聞きにきて下さい。最初ひ らめきがやってきたとき、私は一気にお話しすることができると思います」公演には必ず行く と約束した。そのとき、大佐部屋窓から不吉なファーゴー教授顔が見えた。それまで私 は大佐情熱で興奮していたが、教授出現で体からさっと熱が引いた。大佐突然ひらめ きは素晴らしいものであったかもしれないが、自分宿屋根下で同僚に会ったというショ ックせいで、せっかくひらめきをつかみ損なうではないかと心配した。一瞬彼をそのま ま姿勢にしておくため口実を見つけ、教授姿が見えなくなってしまうを待った。次 瞬間扉が開き教授が入ってきた。彼は急いで帽子をかぶっただろう。ふんぞり返った彼い つもの歩き方究極ように勢いよく一方に傾いていた。エクセルシオール・ホールと きよりも明らかに彼は上機嫌だった。しかし、教授微笑もしかめ面も正直それではなか った。大佐と私に極めて寛容な微笑を向け、反対方向に帽子を傾け、前をとおり過ぎようと した。しかし、彼は突然思い直して立ち止まり、ポケットから黄色い小さなチケットを取り出 して私によこした。エクセルシオール・ホール入場券だった。
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碩学 平田 渡先生へ感謝を込めて 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

碩学 平田 渡先生へ感謝を込めて 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

 先生碩学ぶりは尋常でなく、ご専門であるイスパニア文学・文化話はもちろんこと、 日本文学・文化話、言語や教育話、さらには趣味海釣話や車、ワイン話まで、周り にいるものを圧倒する。読書量はおそらく大変なものだと推察される。ただ、先生は読書に使 われる時間と同じくらいに、若い教員と話す時間も大切にされた。その中で、文学面白さに 気づいたもの、日本語意識を高めたもの、新たな視点を得たものがいることを見ると、 を育てる際「対話大切さ」を、他誰よりも認識されていたではないかと思えてくる。  また、先生に感謝する言葉を惜しまない方でもある。作業をご一緒させていただいた 8 年前外国学部開設にかかる各種行事で、自ら様々に差配を振るわれたにも関わらず、「我 が勲なきがごとく」振る舞われ、下支えしたものに感謝をされていた。その姿を思い出すと、 ともすれば自らことばかり考えがちな大学教員中にあって、周りへ配慮を欠かさない先 生存在は希有なものであり、そして見習うべきものであると感じる。
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吉田健一と英文学 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

吉田健一と英文学 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

と続ける。吉田健一娘・吉田暁子が父・吉田健一を冷静沈着な態度で眺めたように、吉田健 一父・吉田茂に対する眼差しは、底に実父に対する敬愛念をたたえた清冽なものである。 父・吉田茂現実主義的政治手法を直視した上で、父・吉田茂にさらなる魂啓培場、すな わち「言葉世界」を提供したかったという息子切ない想いではないだろうか。父・息子両 生き方根底には実人生と緊密に絡んだリアリズムという精神が厳存していることに間違 いはないが、ただ、父・吉田茂にとってリアリズムというは、まさに非情な外交を主とし た生臭い現実政治を舞台にしたものを指す。そんな父に、軽妙洒脱で、考えること尊厳を重 んじる文化・知識たちと交遊を通じて感知できる、人間奥底にあるもうひとつ リアリズムにさらにもっと接して欲しかった、と吉田健一は述べるだ。なぜなら本来、父・ 吉田茂にはそれを受容するに足る資質があった、と吉田健一は思ったからである。また、長谷 川郁夫は、著書『吉田健一』(新潮社、2014 )なかで、父・吉田茂外務大臣就任に伴って 吉田健一は、「英語力」と「秀でた知力」とを買われ、しばらくあいだ父・吉田茂「秘書 役」と見られる立場にいたらしいが、それも短期間に終わった、と記す。そしてその後に続け て長谷川郁夫は、「父もまた、長男が政治に不向きなことを早々に悟っただろう。息子勤勉 な性質を知る父は同時に、ノンシャランな対応を認める余裕をもっていたものと思われる。こ 父と子情愛通うほのぼのとした関係は、何種かユーモラスな対談なかにも濃密にあら われている」(長谷川郁夫 229 )と、言う。父・吉田茂は、息子・吉田健一「勤勉な性質」 を見抜いていたである。ちょうど吉田健一娘・吉田暁子が父・吉田健一「勤勉な人生」 を見通していたと同じように。吉田健一は、しんそこ「勤勉な」学徒であっただ。  さて、実父・吉田茂からも実娘・吉田暁子からも「勤勉な」文学だと認められた吉田健一 英語教育に関する所見はと言えば、それは吉田健一著『近代詩に就て 英語と英國と英國 
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日本人学習者の目指す明瞭性()の高い英語発音とは 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

日本人学習者の目指す明瞭性()の高い英語発音とは 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

 母語話者が学習発音上エラーをどの様に認識しているか、また、どのタイプエラー がコミュニケーションに支障をきたすかを探ろうとする研究は数多い。母語話者に比較的受け 入れやすいエラーもあれば、コミュニケーションに重大な障害を及ぼすものもある。英語母語 話者話す第二言語( L2 ) について、そのエラー重大度( error gravity )を調べたものに、 ドイツについては( Delisle, 1982;Politzer, 1978 )、スペインでは( Chastain, 1980; Guntermann, 1978)、フランス語に関しては(Ensz, 1982;Piazza, 1980)がある。 Hughes and Lascaratou(1982)はギリシャ英語を扱っている。前述研究では、そのほとんどが学 習作文から抽出した「書きことば」サンプルを分析対象としている。その内、Piazza (1980)は例外的に、「書きことば」のみならずテープに録音した被験「話しことば」も言 資料としてフランスに提示し、その「理解しやすさ」と、発音を聞いた際に感じる「いら 立ち度」(degree of irritation)を調査した。「外国なまり」を含む発話を母語話者が聞いて理 解する際には、認知過程において情報処理作業に当然負荷がかかる。聞き手は、すんなり理解 できないため、それが心理的負担となり「いら立つ」ことがあると考えられる。その心理的負 担が、学習話す英語に対する言語態度(language attitude)にも反映されるである。
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博識無双の凛然たる人、北村裕教授 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

博識無双の凛然たる人、北村裕教授 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

 1994 年(平成 6 年)4 月発足本学総合情報学部英語専任教員として、英語教育風雲 児たる北村先生に白羽矢が立ったは、至極当然である。英語教育工学ならびに認知言語学 専門家として新設総合情報学部で辣腕を振るうお姿は、すぐれて「知」そのものであ った。北村先生は、常に自己抑制を心がけておられたようで、御専門以外事はあまり活字に はされなかったが、私知る限り、英米文学や文化に造詣が深かった。だからこそ、海向 こう研究とも対等に勝負できただと私は確信している。実際、古典も含めて、現代英米 文学作品をよく読んでおられた。やはり間違いなく北村先生根っ子には、本学文学部佳き 学統が存在する。
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福井七子教授 略歴および主要研究業績 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

福井七子教授 略歴および主要研究業績 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

「ルース・ベネディクトが遺したもの」(1996)新潟県長岡市特別文化講演会 「ルース・ベネディクト研究をめぐって」(1997)立命館大学言語文化研究所 「『菊と刀』著者ルース・ベネディクトからメッセージ」(1999)市整会研修会 テーマ『日本・日本人を探る IV』「『日本人行動パターン』を読む」(2003)中央市民大学教 養講座

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外国語教育研究(紀要)第11号〜第17号|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

外国語教育研究(紀要)第11号〜第17号|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

 「複数外国教育を統合的に推進するため考察」− 訳者による背景説明  グローバル化が進むなか、日本を初め多く国で外国教育が社会的課題として認識されて いる。統合が進むヨーロッパでは、欧州連合が多言語・多文化尊重を基本原則としているが、 他方で共通言語として英語へ高い関心が寄せられていることも事実である。しかし欧州連合 は1995年『知識基盤型社会へ向けて』という教育問題に関する白書中で「母語プラス 2 言語 /外国」を原則とする「欧州市民 3 言語主義」を提唱した。それは多言・多文化社会で生 きる個人資質として「複数言語能力」を求め、「異文化対応能力」や「生涯にわたり外国 を学習する能力」を重要だと認める見解である。「複数言語主義」(Plurilingualismus)考えは、 具体的には「母語プラス 2 外国能力を学校教育で育成するというやり方で、各国で検討 乃至は導入されていっている。
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