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8万人はいた。それゆえ、上限の問

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(1)

はじめに

台湾は日本と同様、資源が乏しい。原油などの燃料資源や工業原料などの大部分を海外 から輸入して、それを加工・製品化して輸出する加工貿易を得意として経済成長を遂げて きた。1990年代初頭、台湾は、経済が発展するに伴い、労働力不足が深刻化してきた。

1991

年7月から始まる「国家建設

6ヵ年計画」の実施に支障をきたしかねない重大な問題と

なった。

台湾では、すでに1989年末、労働力不足解消のために外国人労働者を受け入れるべきか 否か、そして受け入れるべきであるならば、いかにして合法的に受け入れるかが、政府と 国民の間の論点となっていた。論議が展開されている最中においてすら、外国人労働者は すでに台湾の労働市場に参入していた。非公式な統計ではあるが、1980年代末、外国人不 法就労者は少なくとも8万人ないし10万人(1)いると言われていた。

1990

年10月下旬、台湾行政院において「14項重要建設工程人力需求因応措施法案」が成 立し、外国人労働者を合法的に受け入れる法的根拠ができた。それを受けて中華工程公司 は、翌1991年2月にタイ国人労働者を受け入れた。この受け入れに対する当時の社会の反応 はおおむね肯定的であった。失業率が1―

2%

台と低かったこともあり、ひとつの社会的事 実として許容された。しかし、受け入れるとは言っても無制限というわけではなく、差し 当たり3万人を上限にし、必要に応じ上限の調整を行なうとしていた。だが、上述のように 当時の台湾には外国人不法就労者が少なく見積もっても

8万人はいた。それゆえ、上限の問

題よりも、すでに台湾に滞在する不法就労者を含む外国人労働者をどのように処遇するか が、当時の重要な政策課題となっていた。

本稿では、まず1990年代以来、外国人労働者の受け入れが進んだ時代背景と要因を明ら かにする。また、受け入れる際の法的規定と条件、さらに仲介会社を介する受け入れの仕 方を説明する。そののちに、現行の外国人労働者受け入れにみられる問題点、および今後 の課題と行方について論述を試みるつもりである。なお、本稿で扱う台湾の「外国人労働 者」とは、特に断らない限り、二国間協定を締結した国々(2)から渡台してきた、いわゆるブ ルーカラー(台湾では「藍領」と称される)の勤労者である。つまり製造業、建築業、看 護・介護業務等に従事する単純労働者や肉体労働者である。

(2)

1

外国人労働者受け入れの背景

台湾では

1970

年代、1980年代を通じて著しい経済発展が進み、一躍アジアの新興工業 国・地域(NIEs)の一角を占めるようになった。さらなる持続的な発展を図るために、台湾 政府は各種の重大な国家プロジェクトを積極的に推進してきた(3)。台湾は元来、勤勉で質の 高い労働力に恵まれていたが、経済発展に伴い労働力不足が社会問題となり、その解消の ために外国人労働者を受け入れるようになった。

労働力不足が深刻化した主な原因は、出生率低下による人口減少である。国民所得の向 上により、高等教育への進学率が高まった。特に女性の進学率が上がり、晩婚化が顕著と なり、少子化も進んだ。そのため、若年労働者の労働力市場への参入が減少した。また、

いわゆる単純労働・肉体労働を嫌う「3K(キツい、汚い、危険)現象」も現われてきた。資 本・技術集約的産業への転換は順調に進んだが、単純労働に従事する労働者の不足は深刻 化し、社会問題となったのである。

労働力の源泉は人口である。労働力を増すためには、人口増加、すなわち出生率の増加 は不可欠である。ところが、台湾では

1964

年に産児制限を実施して以来、3.5%前後の高い 出生率が徐々に低下し、外国人労働者受け入れ問題が論議されていた1989年当時の出生率 はついに

1.57%へと低下した。減少傾向はその後も続き、2004

年には

1%

を下回る

0.96%ま

で下がった。いわば台湾の人口構造は、先進国型すなわち「人口転換論」的な現象がみら れ、「第

2の人口転換」と称されることもある

(4)

台湾政府は、

1970

年代に「十大建設」、1980年代には「十二大建設」を実施してきたため、

台湾経済は大いに飛躍し、国民の生活水準は質・量ともに向上した。しかしその反面、労 働力不足はますます深刻化し、その労働力不足を補う不法就労者が、冒頭で述べたように、

1980年代末にはすでに8

万人から10万人存在していた。

1991

7

1

日から実施された台湾の公共事業プロジェクト「国家建設6ヵ年計画」は、

莫大な投資金額(3000億米ドル)が示すように、非常に大規模なものであった。だが投資金 額をいかに調達するかということよりも、この計画の実施に必要な労働者をいかに調達す るかのほうが深刻な問題であった。

外国人労働者の合法的受け入れに関しては、社会的観点からは反対意見、もしくは懐疑 的意見が多く、経済的な側面からは賛成意見が多数を占めた。だが、経済的観点からの反 対意見もあった。例えば以下のようなものである。外国人労働者を合法的に受け入れたの ちの台湾労働市場での労働力補充効果そのものの効能は限られており、十分な効果は得ら れそうもない。なぜなら、労働集約的な産業部門における外国人労働者の受け入れは、た とえ一時的に生産コストの重圧を緩和する効果をもったとしても、長期的な経済発展の観 点からみたとき、労働集約的産業部門の延命は、それほど大きな利益にはならない。産業 構造の高度化は台湾の経済発展における既定の政策であり、台湾経済の未来にかかわる重 要な課題である。本来、台湾経済の国際競争力の優位性を考えると淘汰されてしかるべき ある種の労働集約的産業が外国人労働者を受け入れつつ延命を図ることは、大局的にみれ

(3)

ば、かえって産業構造高度化の好機を逸することにつながり、望ましくないのではないか。

このような批判的見解もあったものの、外国人労働者の受け入れは進められた。外国人 の雇用と管理に関する規定を包括する「就業服務法」が台湾行政院労工委員会で審議され るなかで、外国人労働者の受け入れが正式に開始された(この法律が公布されたのは

1992年 5

月8日、その後12回にわたり一部条項の修正が加えられた)。

外国人労働者受け入れの背景には、やむをえない事情も少なからずあった。それは

1991

年7月から始まった「国家建設6ヵ年計画」の大型プロジェクトに関連して、急遽「14項重 要建設工程人力需求因応措施法案」が1990年9月下旬に行政院を通過したことであった。結 局、この法案が「就業服務法」に先駆けて外国人労働者受け入れの法的根拠となり、1991年

2月、中華工程公司が初めて正式にタイ国人労働者を受け入れたのである。あくまでも政府

が重要な大型プロジェクトを早急に完成させるための応急的な措置としての外国人労働者 受け入れだった。これに対し、世論はおおむね肯定的であった。タイ国人労働者の受け入 れは、結果的に、ひとつの社会的事実として世論に支持されたと受け止められたのである(5)

政府がとったこの措置は、重要な公共事業プロジェクトを予定期間中に完成させたいが ための策であり、あくまでも短期的な対策にすぎなかった。しかし、その後、民間からの 外国人労働者に対する需要が増え、政府はやむなくそれに応じ、外国人労働者の受け入れ 範囲を拡大することになった。外国人労働者を受け入れたのちの管理・運用や社会的コス トの増大への対処は、その後、あとづけ的に行なわれた。すなわち、外国人労働者に対す る厳格な出入国管理、労働条件および賃金支払いの監視、健康保険の整備や日常生活への こまごまとした支援などに関する規定は、遅ればせながら

1992年に公布された「就業服務

法」に網羅されることとなった。

2

外国人労働者に関する重点政策

台湾の外国人労働者に関する政策は、原則的には補充性に基づくものであり、代替性で はなかった。そして、全面的に外国人労働者を受け入れるものではなく、不法就労も認め なかった。外国人労働者の雇用と管理については、「就業服務法」および「外国人聘 許可 及管理 法」に定められている。以下はその概要である。

1)「就業服務法」について

1992年 5月に公布された就業服務法は全 7

章69条からなる。このなかで第5章の第

41条か

ら第57条までが、外国人労働者の雇用および管理に関する規定であり、外国人労働者政策 の基本的原則となっている。

第1に、台湾人労働者の就業権を保障し、外国人労働者受け入れの際は、台湾人労働者の 就業機会、労働条件、国民経済の発展と社会の安定を妨げない(第41条)。第

2

に、台湾人 の就業権を保障するため、外国人労働者は雇用主の申請・許可なく、台湾国内において就 業はできない(第42条)。第

3

に、台湾人の就業権を侵さないため、外国人労働者を申請・

雇用する前に、雇用主は国内向けの求人広告を出さなければならない(第

43

条)。第

4

に、

雇用主が外国人労働者と労働契約を結ぶときは、台湾の労働基準法の規定に準じて行なう

(4)

(第

43条)

。第

5

に、外国人労働者の雇用期間は最長

2

年、ただし、必要な場合はさらに

1年

未満の延長は認めるが、再延長は認められない(第49条)。第

6

に、外国人労働者は勝手に 雇用主と職種を変えてはならない。また、雇用主は外国人労働者を雇用する際に就業安定 費と保証金を納める。これは台湾人の雇用促進に使われる(第48条と第50条)。第

7

に、雇 用主は自分の名義で申請した外国人労働者を他者の仕事に従事させることはできない。違 反した場合、雇用主が処罰を受けるだけでなく、その外国人労働者も直ちに強制送還され、

それ以降、台湾での再度の就業は一切認められない(第

53条と 54条)

。第8に、外国人労働 者は入国前と入国後3日間以内、および

6

ヵ月、18ヵ月、30ヵ月の前後

30日間以内に健康診

断を受けなければならない(当前外籍勞工政策重点、2007年6月

20日公布)

。第9に、雇用主は 外国人労働者が3日連続して無断欠勤し、連絡がとれない場合、もしくは雇用関係が消滅し たときは、速やかに警察および所管機関に連絡する義務がある(第52条)。第10に、雇用主 が外国人労働者を雇用する際、納めた保証金は、警察関連機関の規定による外国人労働者 の帰国旅費、もしくは収容期間と強制送還の必要費用として当てられる(第

55条)

以上のように、守るべき厳格な規定と禁止条項が設けられ、外国人労働者受け入れは厳 しく管理されている。

2) 雇用対象となる外国人労働者

台湾国内において就業が認められる外国人労働者は、「就業服務法」が別に定めるものを 除けば、以下のとおりとされた(第

43条)

①専門的・技術的な業務に従事する者。

②台湾政府が認可した華僑、または外国人が投資、もしくは設立した事業の経営者。

③国公私立大学の教員、もしくは外国人学校の教師。

④補習教育法によって設立した短期補習校の外国語教師。

⑤スポーツのコーチ・監督、スポーツ選手。

⑥宗教、芸術、演芸に従事する者。

⑦家政婦(家事労働者)。

⑧国家の重要な建設プロジェクト、もしくは経済・社会の発展のため必要であると、中 央主管機関が指定した業務に従事する者。

⑨他の業務上特殊な原因で、国内では該当する人材が不足し、業務上どうしても外国人 を雇う必要があると、中央主管機関が審査し決定した者。

上記9項目のうち、①から⑦までは、台湾国内で外国人労働者が従事しうる業務内容を具 体的に表わしている。他方、⑧や⑨では、抽象的で具体的でない業種名を記述しているが、

外国人労働者に関する統計資料や関連する諸々の文献・論考をみる限り、この両項の具体 的な業種や業務は、製造業、建設(営造)業、看護・介護業務等である。台湾は、⑦の家事 労働者(家事メード)を含め、これらの業種・業務に従事する外国人労働者を、「就業服務 法」の規定を根拠に過去二十数年間受け入れてきた。

3) 外国人労働者を雇用する条件と人数(6)

A

製造業の場合

(5)

①条  件

(a)非伝統的な産業(非従来型産業)の製造業が、10億台湾元以上の投資を行ない、そのうち 機械設備に工場建設費を加えた金額が5億台湾元以上であれば、雇用を認める。

(b)伝統的な産業(従来型産業)の製造業が、5000万台湾元以上の投資を行ない、そのうち機 械設備に工場建設費を加えた金額が2500万元以上であれば、雇用を認める。なお、伝統的な 産業であるかどうかは、中央主管機関と中央目的事業主管機関合同で認定を行なう。

②人  数

(a)非伝統的な産業の製造業が申請する人数は、中央目的事業主管機関が見積もった、その製 造業に従事する労働者数の10%を超えてはならない。もしくは台湾人の全労働者数の

10%を

超えてはならない。

(b)伝統的な産業の製造業が申請する人数は、中央目的事業主管機関が見積もった、その製造 業に従事する労働者数の

15%

を超えてはならない。もしくは、台湾人の全労働者数の15%を 超えてはならない。

(c)自由貿易港区内の製造業が申請する外国人労働者数は、自由貿易港区管理機構が見積もっ た全労働者数の40%を超えてはならない。すなわち、台湾人労働者は、全労働者数の

60%を

下回ってはならない。なお、外国人労働者

2

名を受け入れた場合は、台湾人労働者を

3

名雇 用しなければならない。

B

建設業の場合

①条  件

(a)行政院管轄の

12

項目建設の重大公共事業、あるいは、行政院認定の国家重大経済建設工事 で、その事業総額が1億台湾元以上。

(b)上項以外の政府発注の建設工事で、工事総額が2億台湾元以上、かつ工期が

1

年半以上を 要するもの。

(c)中央目的事業主管機関の案件として契約した民間投資による公共事業工事で、その工事総 額が

2

億台湾元以上で、工期が1年半以上を要するもの。

(d)政府が民間投資を奨励し許可した公共工事、もしくは民間機関が参加した公共事業のうち、

資金総額が2億台湾元以上、かつ工期が

1

年半以上を要するもの。

(e)上記各項の公共工事にかかわり、その付属として非土木建設工程にかかる資金総額が

5000

万台湾元以上で、工期が1年半以上を要するもの。

(f)公・私立学校、もしくは医療機関の建設工事で、総額が1億5000万台湾元以上、かつ工期 が1年半以上を要するもの。

(g)公・私立社会福祉施設の建設工事で、総額が

1

億台湾元以上、かつ工期が

1

年半以上を要 するもの。

(h)製造業の重大投資案件のうち工場を建設するもの。

②人  数

外国人労働者の雇用人数については、上記各項の事業工事に参加した業種につき、政府があら かじめ定めた外国人労働者の枠(比率)に応じて定める。すなわち

A+級(35%)

、A級(25%)、

B級(20%)

、C級(15%)、D級(10%)という比率に応じて雇い入れる。

C

施設看護・介護の場合

①申請資格

(a)中度以上の心身障害者、精神疾患および認知症患者を長期収容する看護機関、養護施設、

(6)

養老院、もしくは財団法人社会福祉施設。

(b)療養施設、慢性疾患医院、あるいは慢性疾患病床や呼吸器疾患病床を設置している総合病 院・医院、専門病院等の医療法人。

②人  数

(a)①(a)に該当する機関においては、実際に収容した人数

3

人ごとに外国人労働者を

1名を雇

用できる。

(b)①(b)に該当する機関、あるいは病院においては、法律に基づき登録した病床数に合わせ、

5

床ごとに1名を雇用できる。ただし、外国人労働者の人数は、台湾人看護師の人数を超えて はならない。

D

家庭(在宅)看護・介護の場合

①申請条件

(a)心身障害重度と判定された者(障害者手帳を所持する者)。

(b)医療機関の医師団の専門的な判定によって、24時間の看護・介護を必要とする者。

(c)Barthel Index(機能性評価)60点以下の者のみに限る。しかし、60点以上の認知症患者や 精神疾患患者であっても看護の安全上の観点から外国人労働者による介護を必要とする場合 も申請を認める。

②申 請 人

(a)ア、配偶者 イ、直系の血縁者 ウ、3親等以内の傍系血縁者 エ、2等親以内の姻戚者、

例えば祖父母の孫嫁、あるいは祖父母の孫婿。

(b)台湾に親戚縁者がいない場合は、患者本人を申請人とする。

E

家事労働者の場合(本国人と外国人のそれぞれの家庭がメードを必要とする場合)

①本国人の申請資格―申請資格を有する者の家族が申請する。

(a)6歳未満の直系

1親等の親族。

(b)満

75歳以上の直系親族、すなわち、祖父母、外祖父母と1

親等の姻戚親族。

(c)家に後期高齢者、あるいは

3

人以上の子供がおり、雇用主と戸籍を同じくし、かつ子供が

3

歳以下であれば申請は可能である(ただし、3つ子の場合は特別案件として処理する)。

(d)外国人メード受け入れの資格点数計算表のもとで、点数が

16

点を超え、かつ共に同居生活 する者。

②外国人の申請資格

台湾に在住する外国企業の社長、もしくは管理職級以上の者は、外国人労働者を雇うことが できる。しかし、その条件は以下のものでなければならない。

(a)会社資本のうち、台湾での投資資金が1億台湾元以上の企業の外国籍の社長以上の人員、も しくは台湾での投資資金が

2

億台湾元以上の企業の外国籍の管理職級以上の人員。

(b)前年度の台湾での営業額が

5

億台湾元以上の企業の社長以上の職位の外国籍人員。もしく は申請年度の営業額が

10億台湾元以上で外国籍の部門管理職級以上の人員。

資格点数表

点数 幼 児

高齢者 年齢

点数 年齢

1歳以下 7.5 90歳以上

7.5

2歳以下 6 80歳以上

6

3歳以下 4.5 79歳以上

5

4歳以下 3 78歳以上

4

5歳以下 2 77歳以上

3

6歳以下 1 76歳以上

2

75歳以上

1

(7)

(c)企業の外国人管理職級以上の者で、前年度の台湾での所得税納入額が300万台湾元以上、も しくは申請年度の月収が25万台湾元以上の者。

以上は製造業、建築業、施設看護・介護、在宅看護・介護と家事労働(メード)について、

外国人労働者の雇用を申請できる資格と条件を法規に従ってごく簡単に説明をしてみた。

しかし実際の手続きでは、非常に書類繁多、複雑であり、一般の個人雇用主にとっては、

なかなか対応が難しく時間もかかる。製造業や建築業の場合は、企業としてのしっかりし た体制と組織があるから対応できるとしても、在宅看護・介護や家事労働の場合は、すべ て雇用主1人で処理しなければならないが、実際上、これは大変困難である。結局は、民間 のサービス会社、すなわち仲介会社に代行してもらったほうが得策という場合がほとんど である。まして必要な労働力が国内で調達できれば補充は比較的簡単であるが、国内で調 達できない場合は、海外から補充するしかなく、個人の力ではこれは非常に難しい。海外 から労働者を受け入れるにはルートが必要であるし、雇用主と被雇用者の互いの要望が合 致しなくてはならない。それゆえ、外国人労働者の受け入れや管理を行なう人材仲介会社 が必要となる。

3

人材仲介会社

台湾の雇用主が外国人労働者を雇用する場合、一般的に人材仲介会社を利用することに なる。そもそも人材仲介会社の始まりは、民間の職業紹介所ではないかと思われる。1980 年代半ばから、台湾経済が発展するに従い、人材の需要が多様化し、それまでのような伝 統的な職業紹介所では対応しきれなくなった。そのような状況のもと、旧来の人材仲介会 社(職業紹介所)が専業的に外国人労働者の仲介を行ない、人材派遣一般を扱っていた会社 は、インターネット技術の発達によって、人材銀行を含む多元的な人材派遣業務をグロー バルに展開し、新たな市場を開拓するようになった(7)

こうして

1992年「就業服務法」が制定された後、人材仲介会社に対する需要が日増しに

増大するようになり、ついに外国人労働者受け入れを担う仲介業が合法化され、正式に民 間就業服務機関の一部になった。

外国人労働者の受け入れ業務を営む企業は、「就業服務法」第

35条の規定により、主管機

関である行政院労工委員会の許可および許可証の発給を受けてはじめて会社の設立が認め られ、許可なしでは就業服務業務に従事することはできない。また、主管機関は、各企業 に、決められた資格をもつ数人の就業服務専業従業員を置き、業務に当たらせなければな らない(第37条)。さらに、決められた各種書類・資料の保存を行ない、かつその保存のた めの設備を備え、主管機関が監査する際に、忌避、妨害、あるいは拒絶することはできな い(第

38条)

最後に、第39条では職業の紹介、もしくは求人の際、以下の行為が禁じられている。(1)

不実な広告や掲示、(2)欺瞞や事実に反する労働条件の提示、(3)求職者の身分証等の書類 の差し押さえ、(4)求職者の財物の押収、(5)求人、求職の機会を利用して不当な金品を騙 しとる、(6)保証金や規定以外の費用をむやみに徴収する、(7)求職者に公共秩序や良好な

(8)

風俗に反する仕事をさせる。

以上の禁止事項からわかるように、第

39

条では、商業倫理・道徳に違反する行為を厳し く規制している。加えて、就業者である外国人労働者を保護するため、仲介会社の担当者 には、中央主管機関が自ら行なうか、あるいは委託・認可した講習会に参加し、検定試験 を受け、就業服務専業人員の資格証明書を取得することを義務づけている。この証明書の 有効期間は

4

年、期間満了前

3ヵ月以内に、最近 2

年内に参加した講習会の合格証明証書を もって新しい資格証明書を申請し更新しなければならない。もし、規定どおりに更新しな かった場合、中央主管機関はその証書を取り消せる(8)

さらに、外国人労働者受け入れ主管機関である労工委員会は、仲介業各社のサービスの 品質の維持・向上のために、毎年、各社に対し評価・判定(台湾では評鑑と言う)を行なっ ている。この制度は

2003年に試行され、そして、2007

9

月に法制化、そののちに正式に 実施されることとなった。

①評鑑の法的根拠:「私立就業服務機構許可及管理 法」第

13

条の1により、主管機関は 人材仲介業に従事する私立就業服務会社(仲介会社)が、常に経営管理に注意し、サービス の品質向上を図るように求める。これによって仕事に従事する外国人労働者仲介市場の秩 序を維持し、「奨優汰劣(優秀のものを推奨し、悪劣のものを淘汰する)」を基に雇用主、また は求職者が仲介会社を選考する際の参考資料となりうるように、本評鑑規定を特に定めた。

②評鑑執行人:主管機関である行政院労工委員会は、公開評定方式をもって商工業界に 委託し評鑑業務を執行する。

③評鑑執行方法:主管機関である行政院労工委員会があらかじめ作成した評鑑指標を基 準に、執行人が仲介会社に出向き、実地で雇用主および仲介会社について聞き取り調査を 行なう。そのうえでサービスの内容と品質を評鑑する。評鑑指標の内容は、おおむね次の とおりである。品質管理(満点

22点)

、違反処分(満点

10点、ただし、違反1

件につき5―10点 を引き、マイナス30点を限度とする。無違反の場合は逆に

10

点を加える)、サービスの内容と項 目(満点54点)とその他事項(14点)、合計

100点で評価し、公表する。

④評鑑対象:当該年度の前年度12月

31日以前に設立した仲介会社とその支店。

⑤評鑑範囲:当該年度1月1日から12月31日までの間に処理した雇用主と外国人労働者に 関連する資料。

⑥評鑑執行期間:次年度の1月1日から7月31日まで。

⑦労工委員会は「私立就業服務機構評鑑諮詢小組」(評鑑諮問小委員会)を設置し、9人の 委員を置き、本評鑑執行に協力し、諮問や審査等の業務を任務とする。委員長と副委員長 は委員間の互選によって決める。

⑧評鑑結果:仲介会社に対する評鑑結果をA、B、C 3等級に分け公表する。各級の評鑑 点数は、以下のとおりである。

A

級:評鑑指標の規定に達し、成績が90点以上のもの

B

級:評鑑指標の規定に達し、成績が

70点以上で90

点未満のもの

C

級:評鑑指標の規定に達し、成績が

70点未満のもの

(9)

評鑑の結果を本委員会および本委員会職業訓練局のウェブサイトにて公表し、雇用主の 参考のために情報を提供するとともに、仲介会社への管理強化を求める際の根拠とする。

⑨仲介会社を奨励するため、評鑑成績が以下の条件を満たしたものについて、インター ネットを通じて褒揚する。

(a)評鑑成績がA級のもの。

(b)評鑑の年の

1

月1日から公開褒揚日までの期間内において、いかなる違法処分も受 けていないもの。

(c)家事労働や在宅看護の仲介会社が、当該年度において家事労働者、看護・介護者を 仲介した人数が、仲介した全外国人労働者数の

50%

以上を占める場合、あるいは事 業(産業)関係の仲介会社が、当該年度において海洋漁労、製造、建築および施設看 護・介護に従事した外国人労働者数が、仲介した全外国人労働者数の

50%

以上を占 める場合、これらのなかから評鑑成績優秀な上位

5

社のもの。

⑩仲介会社が設立の許可を再申請するとき、公開評鑑成績が最近2回にわたりC級のもの は、「私立就業服務機構許可及管理 法」第15条の規定に依拠し、不許可とする。また、同 法の規定により以下の場合は不許可と処する。(a)評鑑を断る、(b)評鑑執行機関から評鑑の 期日を通知があるにもかかわらず、期日変更を申請せずに、当日の評鑑を拒否した場合、(c)

期日変更を申請し執行機関の同意を得たが、当日の評鑑を拒否した場合、(d)評鑑中に評鑑 委員、もしくは執行人員に対し恫喝、罵倒、威嚇、嘲弄、録音や録画等を行ない、制止し たにもかかわらず停止しなかった場合等々(9)

以上のように、雇用主と外国人労働者の利益を保護するため、諸々の厳しい規定や規則 を設け、違反したものには重い罰を科すると同時に、許可を取り消すことになっている。

もともと台湾における外国人労働者の受け入れは、民間人材仲介会社に任せ、政府当局 はただ認可する、いわば認可制度をとっている。例えば、上記の評鑑制度についても、主 に民間の商工業界に委託して評鑑を実施させ、評鑑成績をインターネット上で全仲介会社 について公表する。しかし例えば評鑑成績

C級だから直ちに会社の存在を否定するというわ

けではない。あくまでも外国人労働者を受け入れる際、雇用主がどの仲介会社を選ぶかの 参考資料として提示し、雇用主の自由選択に委ねる。ただし、上記の禁止条項、重大な違 反事故を起こした場合は、当然のこととして会社の営業許可が取り消される。ちなみに、

2007年に法制化された評鑑作業の執行は、2010

年までは「中華民国工業協進会」に委託し、

2011

年には「中華民国工業区廠商聯合総会」に委託替えし、1023社の仲介会社が評鑑を受 け、行政院労工委員会職業訓練局私立就業服務機構の公式サイト上に2011年度評鑑結果の 評鑑成績付きで会社名を発表している(10)

以上、私立就業服務機構、すなわち民間の仲介会社各社が、外国人労働者の仲介に当た って守るべき厳しい法的規定や厳格な賞罰等々を取り上げ、それらについて簡単に論述し てきた。ところが民間の仲介会社を通じて外国人労働者を受け入れる際に、「費用が高く、

時間もかかりすぎる」といった苦情が多く、トラブルも少なくない。そこで雇用者側の要 望もあり、行政院労工委員会が、ついに外国人労働者を受け入れるための直営の仲介業機

(10)

関、すなわち「直接聘 (雇用)聯合服務中心」を立ち上げた。そして、2007年12月

31日

に、最初のサービスセンター(服務中心、いわば本店)を台北市に開設した。その後、さら に東部、北部、中部、南部、高雄の

5

つのサービス・ステーション(服務站、いわば支店)

を設け、いっそうのサービス充実に努めた。

労工委員会職業訓練局外労管理部の高愛玲がこの公的機関の設立経緯を書いた「直接 聘 聯合服務中心的意義及効益」という論文(季刊『台湾勞工』13号、2008年5月)によれば、

同機関は、「省時」、「省銭」、「省件」をキャツチ・フレーズに掲げ、各サービスセンターを 利用すれば雇用主は、時間、金銭、書類を最低限に抑えることができるという効用を強調 している。高は、サービスセンターを開設してから3ヵ月間に5947件の問い合わせと718件 の申請案件があったと記述し、雇用主にとっていかに吸引力があったかを示し、今後の申 請案件の継続的な増加を期待すると結んでいる。

しかしながら、労工委員会が発表した「2012年外籍勞工管理及運用調査」によると、92%

の企業はこの「聯合服務中心」を利用せずに、民間の仲介会社を利用していることがわか った。その主要な原因として民間仲介会社と異なり、雇用者自らが申請しなければならな い(68.1%)、受け入れ後の処理・管理等の代行サービスがない(60.1%)、手続きが煩雑と書 類繁多(50.4%)といったことが挙げられている(複数回答)。民間仲介会社を利用した企業 をみると、建築業が製造業よりも高い。また看護・介護と家事労働に至っては、在宅業務 がほとんどであるため、外国人労働者の受け入れから帰国までの処理とサービス、雇用主 と外国人労働者間のトラブル処理等をすべて代行してくれるため、その分の費用はかかる が、現在のところ民間仲介会社のほうが優位である。民間の仲介会社の負っている社会的 責任は重大である(11)

4

外国人労働者の労働市場と問題点

1) 外国人労働者の雇用状況

2013年 3

月現在、台湾の労働力人口は約1140万人で、労働力参与率は

58.28%、失業者数

は約47万人、失業率は男女合わせての平均が

4.17%

である(12)。1989年に外国人労働者を受 け入れた当時の失業率は1―

2%台であったが、その後の失業率は徐々に上昇し、2000

年以

第 1 表 台湾における外国人労働者数と国別状況

1994年 151,989 6,020 2,344 38,473 105,152

1995年 189,051 5,430 2,071 54,647 126,903

2000年 326,515 77,830 113 98,161 142,665 7,746

2005年 327,396 49,094 13 95,703 98,322 84,185 79

2010年 379,653 156,332 10 77,538 65,742 80,030 1

2011年 425,660 175,409 3 82,841 71,763 95,643 1

2012年 445,579 191,127 4 86,786 67,611 100,050 1

(出所) 行政院労工委員会統計資料庫簡易査詢、外勞査詢結果ウェブサイトにて参照、筆者作成。

年次

(単位 人)

総計 インドネシア マレーシア フィリピン タ イ ベトナム モンゴル

(11)

降は

4― 5%台と高い水準で推移している。

こうした状況のなか、本来ならば、本国人の就業機会を確保すべきところ、逆に、外国 人労働者の受け入れが徐々に増え、第1表のとおり、2012年末の台湾における外国人労働者 数は44.5万人に達している。これを国別でみるとインドネシアが約

19

万人で最も多く、次 に、ベトナム、フィリピン、タイと続く。また、業種別でみると、製造業が23万人で約半 数を占め、看護・介護に従事する者が約20万人で全体の

42%

を占める。残りは船員、建築 業、家事労働者の順になっている。なお、看護・介護者のうち、在宅看護・介護に従事す るものが圧倒的多数である。ちなみに、製造業部門のなかでは、金属製品製造業が最も多 く(19.5%)、電子部品製造業(17.1%)が続き、次いで機械設備製造業(10%)、紡績業(8.5%)

およびプラスチック製品製造業(7%)となっている(13)

2) 外国人労働者の失踪問題

外国人労働者の台湾での労働権益を積極的に保障するため、台湾政府は、現行の外国人 労働者政策の緩和を進めている。例えば、外国人労働者の台湾滞在人数に及ぼす影響がな い限り、元雇用主、外国人労働者と新雇用主の三者が合意すれば、あるいは、雇用許可が 取り下げられた外国人労働者と新雇用主双方間の合意があれば、外国人労働者は業種、雇 用主、あるいは仕事を自由に変えることができる。

それでも一部の外国人労働者は、雇用期間(在留期限と同じ)が切れても帰国しない、あ るいは、労働環境が合わない、その他の原因等で失踪してしまう。2011年

7

月から

2012

年6 月の間に発生した失踪状況は、製造業と建築業部門合計で18.6%(失踪人数を総外国人労働者 数で割る)であり、建築業のほうが製造業よりもその率がはるかに高い。これらの業界にお ける失踪原因をみると、「他の外国人労働者からの教唆や誘い」が最も高く58.4%を占める。

次に「雇用期間が残り少なくなった」(30.1%)、「もっと高い報酬を希望する」(22.4%)とい ったところである。また、看護・介護労働については、2011年7月から

2012

年6月までの失 踪者は3.3%であり、その原因は産業部門の製造業部門と建築業部門と同様に「他の外国人 労働者からの教唆や誘い」が

1

位の

68.3%

を占め、「雇用期間が残り少なくなった」が

2

(29.0%)、「意思疎通が難しい」が

3位

(26.3%)、「もっと高い報酬を希望した」が

4位

(19.1%)

となっている。

外国人労働者受け入れに当たって雇用主側が感じた困惑の原因について、産業部門と看 護・介護部門にそれぞれ尋ねたところでは、「言葉がよく通じないため、意思疎通が難しい」

第 2 表 国籍別の外国人労働者行方不明(失踪)者数

2000年 4,268 1,680 1,303 1,234 35 16

2005年  12,938 1,973 1,543 2,040 7,363

2010年  14,147 6,484 662 411 6,590

2011年 16,320 7,984 790 561 6,985

2012年 17,579 7,969 675 468 8,467

(出所) 行政院労工委員会統計資料庫簡易査詢、外勞査詢結果ウェブサイトにて参照、筆者作成。

年次

(単位 人)

総計 インドネシア フィリピン タ イ ベトナム マレーシア モンゴル

(12)

が1位で約

70%から80%を占める。しかし、看護・介護部門では、タイとベトナムからきた

外国人労働者の1位は、「電話などで、仲間同士で噂話や世間話ばかりしている」という回 答が約75%、2位は「言葉がよく通じないため意思疎通が難しい」で約

45%

となっている。

仲間同士の交流や会話がきっかけとなった失踪が最も多いことが推測できよう(14)

3) 外国人労働者犯罪概況

外国人労働者の増加に従い、犯罪件数も増加傾向をみせている。第

3表には犯罪件数しか

記していないが、2012年を例に説明すると、総犯罪件数は

628件、犯罪の内訳は窃盗が 222

件で35.4%を占め、暴力犯罪は10件の1.6%にすぎない。残りの諸々の犯罪は

396

件で63.0%

を占めているが、ほとんどが軽犯罪ではないかと推測できる。犯罪にかかわった人数は総 計で663人、そのうち窃盗犯が

236

人で35.6%を占める。こうした在台外国人労働者の犯罪 件数と人数が第3表のとおり増加傾向にあるからと言って、一概に外国人労働者の受け入れ 問題に対し否定的な立場をとるものでなく、長期的な展望に立って総合的な検討が求めら れる。

5

外国人労働者受け入れに伴う課題

外国人労働者の受け入れ開始以降、その人数は急速に増加し、受け入れ当初の意図と異 なり、今では44.5万人を超える巨大な労働市場となった。近年、台湾における公共事業の減 少と製造業の中国大陸への進出増加により、建設業や製造業における外国人労働者の受け 入れは減少傾向にある。逆に、少子高齢化時代を迎える台湾の経済社会において、看護・

介護および家事労働に従事する外国人労働者は増加傾向にある。こうした変化は、台湾の 労働市場にどのような影響を与えているであろうか。

台湾はわずか二十数年という短い期間に外国人労働者を社会と企業が受け入れてきた結 果、外国人労働者の定着が進んでいる。まずは、この現象が台湾労働市場に与える影響を 今後の問題として考える必要がある。次に、台湾政府は外国人労働者を受け入れる際に、

受け入れ人数の制限および在留期間の限定という「限量限時」原則のもとで始めたが、今 では両方ともに緩和傾向にある。それが将来的に「外国人労働者の定住化問題」に発展す

第 3 表 外国人労働者犯罪件数と犯罪者数

1995年 169 0.089 241 0.127

2000年 126 0.039 147 0.045

2005年 192 0.059 242 0.074

2010年 268 0.071 297 0.078

2011年 289 0.068 326 0.077

2012年 628 0.141 663 0.149

(出所)1. 行政院労工委員会統計資料庫簡易査詢、外勞査詢結果より、筆者作成。

2. 犯罪は、窃盗、暴力犯罪、その他犯罪を含む。

3. 比率は、犯罪件数と犯罪人数を総外国人労働者数で割る。

年次 件 数 比率(%) 人 数 比率(%)

(単位 件数と人数)

合法的な外国人労働者の犯罪件数 合法的な外国人労働者の犯罪人数

(13)

る可能性は十分考えられ、この問題を台湾社会のなかでどのように調和させるのかも今後 の問題であると言わざるをえない。さらに、現行の外国人労働者受け入れシステムは、受 け入れ国と送り出し国のそれぞれの仲介会社を介して行なわれている。いわば「間接雇用 形態」(15)に近い需給システムである。公営の「直接聘 聯合服務中心」も仲介会社のひとつ とみることができよう。

これら仲介会社が忠実に双方の政府が定めた諸規定に則って、受け入れや送り出し業務 を執行・処理すれば自ずとトラブルなしでスムーズに展開するはずである。しかし、両国 のいずれかの仲介会社が、不当な利益を得るために規定に違反すれば必ず社会問題に発展 する。例えば、

2005年 8

月には台湾高雄市近郊で外国人労働者による暴動が発生した。また、

2002

12月にはインドネシア籍労働者の大量失踪事件が生じ、台湾政府が「インドネシア

人的資源局」の管理不十分を問題視し、インドネシアからの受け入れを一時凍結した事例 もある。いずれにしても現行の環境下では、国内外の仲介会社、雇用主、外国人労働者、

両国政府関係者が一体となって健全化に努めるしか方法はない。

看護・介護および家事労働に従事する外国人労働者の失踪者は特に目立つ。雇用主が提 供する労働条件への不満や、仲介会社の外国人労働者への説明不十分が背後にあるためと 考えられる。同時に、看護・介護および家事労働は、労働集約的な労働であり、誰しも労 働条件の良いところを希望する。しかしながら、雇用主側の家庭の事情の違いにより、職 務従事の際の労働条件は当然ながら異なってくる。また、外国人労働者が増えるに従い、

台湾国内に外国人労働者のネットワークが自然に形成され、拡大していく。そのなかで情 報が巡り、外国人労働者は、移動したり、行方をくらましたりするようになる。2012年の 台湾における失踪者は、全外国人労働者数の3.94%であり、比較的低い水準にあるが、今後 はこのような数値の悪化が予想される。早急に有効な対策を講じなければ、国内労働市場 における攪乱要因となる恐れは十分考えられる(16)

最後に、台湾における外国人労働者受け入れ問題について結論をつけるならば、かつて 台湾大学教授の薛承泰は、その著作のなかで、外国人労働者受け入れ問題に対し面白い比 喩を述べている。「この問題は、空腹になると食べ物が欲しくなるが、食べたら下痢をする 恐れがあるし、また体にもっと悪い問題を引き起こすこともある。良い解決方法は当然食 べないことではなく、『健康な身体』作りである。しかし、今の台湾はすでに問題があるか ら物を食べて栄養分を補充しようとしても、虚弱な身体では食べれば下痢は続くであろう」

と彼は言う(17)。いまなお打ち出せない適正な外国人労働者受け入れ政策を考えるとき、少な くとも現在の環境下では、国内外の仲介会社、雇用主、外国人労働者、両国政府関係機関 が一体となって健全化を図りながら外国人労働者受け入れをめぐる諸問題の解消に取り組 むしか方法はないと思われる。

2008年に国民党政権が政権復帰した際の行政院労工委員会副主任委員

(現在は主任委員。

日本では大臣あるいは長官に相当)であった潘世偉が、外籍勞工通訊社(外勞社)記者である 黄秀娟の取材を受け、これからの外国人労働者政策の行方について次のように語った。「現 在の外国人労働者政策は十分開放的である」、「現段階の外国人労働者政策は既存の政策を維

(14)

持し、短期間には何の変動もない」、「あくまでも本国人の就業機会、労働条件、国民経済発 展および社会安定に悪影響を与えないという原則、そしてあくまでも不足分の補充である という原則のもとに、外国人労働者の受け入れを進める」。

潘世偉は、加えて、以下のいくつかの基本方針を明らかにした。それは、(1)長期的な看 護・介護体系が完成するまで、現在の看護・介護の申請資格を現状のまま維持する。(2)直 接聘 聯合服務中心の業務拡大は今後も続くが、完全に民間の仲介会社を代替することは 不可能である。それだけ民間の仲介会社は外国人労働者受け入れに重大な役割を担ってい るため、引き続き管理を強化する必要がある。(3)一部の外国人労働者送り出し国は、わが 国の政策に協力せずにいる。今後もそうした国とは協議を続けるが、送り出し国を現行の 数ヵ国に必ずしも限定せず、より協力的な国との新たな連携作りも視野に入れる。(4)農業 に外国人労働者を受け入れることは適当でない、等々である(18)

むすび

上述のとおり、本稿は外国人労働者受け入れ問題を論述するにあたって、受け入れ問題の 原因、経緯、規定、または措置等々について説明してきた。

外国人労働者の受け入れは少なくとも当分の間は必要であろうが、現行の方法で外国人労 働者を受け入れるしかないならば、疑いもなく、政府主管機関はいかに民間の仲介会社への 管理を強化・継続していくかを考えなければならない。いわば「雑草を除き青菜を残す(去 蕪存菁)」(19)ことで、仲介会社がプラスの効能を十分発揮できるように、大いに思考する必要 があると思われる。

1

火生「開放外籍勞工可能造成的影響及其因応措施」、中華民国全国総工会『全総会訊』第3 第4期(1991年8月1日)、18ページを参照。

2

) 現在、二国間協定に基づいて台湾に労働者を送り出している国は、インドネシア、フィリピン、

ベトナム、タイ、モンゴル、マレーシアである。なお、マレーシアは現在停止している。

3

) 台湾では、1970年代に「国家プロジェクト」の名のもと、「十大建設」、1980年代に「十二大建 設」をたて続けて行ない、インフラ整備の強化と国民生活水準の向上と充実を目的に大型公共事 業を推進してきた。十大建設計画では重化学工業建設に重点を置き、十二大建設では、十大建設 の重化学に農業、文化、地域発展を加え、国民生活の基盤整備の充実を図った。

4

) 台湾の合計特殊出生率は、2010年は

0.895

と世界で最も低く、2011年は1.065とやや持ち直し、

2012年には1.270

と改善されたとはいえ、それでも日本の1.41に比べるとまだ低い。「台湾行政院内

政部統計年報育齢婦女生育率

2013年」より。

5

火生、前掲論文を参照。

6

) 製造業、建築業、施設看護・介護、家庭看護・介護と家事労働についての外国人労働者受け入れ 人数と条件に関する資料は、すべて環久国際機構によるウェブサイトで開示したものを参照・引 用(http://www.uni-pro.com.tw/appform.php?intr_id=1、外労申請要件)

7

) 林 貝『台湾人力仲介業的商業倫理之探討』、台湾国立中央大学哲学研究所、民国

95

年(2006年)

6月、18

ページ参照。

8

) 同上、26ページ参照。

9

) 行政院労工委員会職業訓練局が掲示した「私立就業服務機構従事跨国人力仲介服務品質評鑑要點」

(15)

を参照・引用(http://www.evta.gov.tw/files/7/評鑑要點

2.pdf)

(10) 行政院労工委員会職業訓練局「私立就業服務機構査詢系統

2006年― 2011

年の評鑑結果」により 検索されよう(http://www.evta.gov.tw/files/7/97年評鑑成績5.pdf)

(11) 行政院労工委員会職業訓練局「2012年外籍勞工管理及運用調査」2012

12月(http://www.evta.

gov.tw/content/list.asp?mfunc_id=124&func_id=124&mcata_id=1044、統計資料欄)

(12) 台湾行政院労働委員会統計資料庫簡易査詢「経済成長率と失業率査詢結果」

(13) 行政院労工委員会職業訓練局、前掲「2012年外籍勞工管理及運用調査」、3ページを参照。

(14) 同上。22―

23、39

―40ページを参照。

(15) 厚生労働省職業安定局外国人雇用対策課の平成15年度委託調査結果。佐野哲、加藤秀雄両教授 で構成する調査研究委員会『台湾の外国人労働者の受け入れに関する調査研究報告書』より引用。

(16) 行政院労工委員会職業訓練局、前掲「2012年外籍勞工管理及運用調査」を参照。

(17) 薛承泰・林昭禎「外勞数量與台湾勞工就業的関係」『国家政策論壇季刊』2004

1月春季号(台

北市政府が2003年10月に行なった座談会における論文)、2ページより引用。

(18) 黄秀娟の潘世偉労工委員会副主任委員(当時)への取材記事「新政府上台百日、本社専訪潘世偉、

現段階外勞政策短期不会変動」(2008年8月29日)より参照(http://www.uni-pro.com.tw/edm.php?eid=

559)

(19) 成之約「外勞引進與管理政策的探討」、財団法人国家政策研究基金会『国政分析』(2006年10

11

日)、14ページより引用。

せ・あきお 福岡大学名誉教授

参照

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