2 . 数列の収束と発散
科目: 基礎解析学I及び演習(1‐3組)
担当: 相木 前回のプリントの補足
上限・下限の定義
A⊂Rとα ∈Rに対して
• αが以下の2つをみたすときにα をAの上限とよぶ.
1. ∀x∈A, x≤α
2. ∀ε >0, ∃xε∈A s.t. α−ε < xε
このとき,α= supAと書く.
• αが以下の2つをみたすときにαをAの下限とよぶ.
1. ∀x∈A, α≤x
2. ∀ε >0, ∃xε∈A s.t. xε< α+ε このとき,α= infAと書く.
上限・下限の別表現
A⊂R,α∈Rとする.
• Aが上に有界ならば
supA= min{M ∈R| M はAの上界}
• Aが下に有界ならば
infA= max{M ∈R |M はAの下界}
アルキメデスの原理
自然数全体の集合Nは上に有界ではない
これは言い換えると,「∀M ∈R, ∃n ∈Ns.t. M < n」と同じである.
否定命題
ある命題が与えられたとき,「その命題が成り立たない」ということを表現する必要が でてくる.例えば
∀x∈R, x∈N (1)
という命題を考えてみる.これは「任意の実数は自然数である」という意味になるが これは明らかに間違いである.なぜなら具体的に1.1∈Rであるが1.1̸∈Nという例が 存在するからである.ここで,本質的なのは1.1という具体例そのものではなく,(1) の反例が少なくとも1つ存在しているということである.つまり,
∃x∈R, x̸∈N (2)
が成り立っているのである.(2)を(1)の否定命題という.ある命題に対して,その否 定命題が真であるということは元の命題が偽であるということと同じである.
否定命題は,より一般的な命題に対しても構成することができる.それらを構成す る上での基本となるのが次の2つである.以下では集合Xの要素xに関する命題Q(x) の否定を¬Q(x)と書くことにする.
1. ¬(
∀x∈X, Q(x))
≡ ∃x∈X, ¬Q(x) 2. ¬(
∃x∈X, Q(x))
≡ ∀x∈X, ¬Q(x)
ここで,≡は命題として同義(真偽が一致する)であることを表す.1.は「(任意の x∈ Xに対してQ(x)が成り立つ)の否定」を「あるx∈ Xが存在してQ(x)が成り 立たない」で定めており,2.は「(あるx∈Xが存在してQ(x)が成り立つ)の否定」
を「任意のx∈Xに対してQ(x)は成り立たない」で定めているのである.
この授業で扱う命題は,基本的に上の2つを組み合わせることによって否定命題を 構成できる.
もう少し複雑な例:
∀x∈N, ∃y∈R, xy ≤1 の否定命題は
∃x∈N, ∀y∈R, xy >1 である.
注意:命題の真偽と否定命題を作ることは別物である.上の例では元の命題が真であるの で否定命題の方が偽になっている.命題が与えられたときに,その真偽に関わらず否定命 題を作ることはできる.それらの真偽は別に議論するものである.
数列の収束・発散
化」は,のちに扱う関数の連続性や関数の微分にも現れるので各自よく復習すること.
数列の収束
{an}∞n=1を数列とし,α ∈R とする.以下が成り立つときに数列{an}∞n=1はαへ収束 するという.
∀ε >0, ∃Nε∈N s.t.∀n ≥Nε, |an−α|< ε.
このとき,αを数列{an}∞n=1の極限値といい,
nlim→∞an =α と書く.
この定義を少し噛み砕いて考えてみよう.ここでも第1回のプリントで解説した論理記号 の順番に注意する必要がある.
• まず「∀ε >0」とあるので任意の正の実数ε をとる.
• 次に「∃Nε∈N」と続くので,最初に選んだεに応じて自然数Nε が存在し,
• 最後に「∀n ≥ Nε, |an −α| < ε」とあるのでNε以上の全ての自然数nに対して
|an−α|< εが成り立つ.
という意味になる.|an−α|という値はαとanの「誤差」を表すような値であるので数 列の収束の定義を言葉で表すと
「どんなに小さなε >0を取ってもそれに応じたNεがあり,Nε番目以降のanは全てαの 近くにある 」
となる.∀ε >0と言ったときにεは必ずしも小さいとは限らないが,収束の定義において
はεが小さいときが本質的である(教科書p.17参照).以上を踏まえると,数列{an}∞n=1
が与えられたときに,それがαへ収束することを示すためには,∀ε > 0に対して上の条
件をみたすNεが存在することを証明しなくてはならない.
収束列
数列{an}∞n=1に対して
nlim→∞an =α
となるα∈Rが存在するときに{an}∞n=1は収束列であるという.
数列の発散
数列{an}∞n=1に対して以下が成り立つときに{an}∞n=1は∞に発散するという
∀L >0, ∃NL∈N s.t.∀n≥NL, an> L.
また,以下が成り立つときに−∞に発散するという
∀L >0, ∃NL∈N s.t.∀n ≥NL, an<−L.
どちらかが成り立っていることを総称して「数列{an}∞n=1 は発散する」と言ったりも する.
注意:教科書(p. 23)では数列が発散するときに
nlim→∞an=∞ や lim
n→∞an =−∞
(3)
と書いている.数列の収束の定義において記号 lim
n→∞anは極限値を表すために導入したが,
∞および−∞は実数ではないため,実数列の極限値が実数でないものと等号で結ばれて いる(3)のような表記はいささか変である.しかし,数列が発散することを(3)のように 表すと記述の簡略化や統一化を図れるという点において便利であるのもまた事実である.
したがって,この授業においては(3)のような表記を許容することにするが,使用す る際には上に述べた注意を常に念頭に置いておく必要がある.くどいようであるが∞と
−∞は実数ではないため(3)を「数列{an}∞n=1は無限大に収束する」と決して言ってはい けない.また,人や書籍によっては(3)の記法を許容しない場合もあるので注意が必要で ある.
予約制問題
(2-1) 「数列{an}∞n=1がα ∈ R に収束しない」を論理記号を用いて表せ.(これが「数列
{an}∞n=1がα∈R に収束する」の否定命題である)
(2-2)数列{an}∞n=1がan= 1
n2 で与えられているとき,lim
n→∞an= 0であることを証明せよ.
(2-3) 数列{an}∞n=1,{bn}∞n=1 がα, β ∈Rに対して lim
n→∞an =α,lim
n→∞bn =βをみたすと き,lim
n→∞(an−bn) =α−β であることを証明せよ.
(2-4)「数列{an}∞n=1が∞に発散する」の否定命題を作れ.
(2-5) 数列{an}∞n=1がan = n
n+ 1 で与えられているとき,この数列が「ある極限値へ収 束する」,もしくは「発散する」ことを証明せよ.
早いもの勝ち制問題
(2-6) 数列{an}∞n=1がan =n2 で与えられているとき,この数列が∞に発散することを 証明せよ.
(2-7)数列{an}∞n=1は∀n∈N に対してan>0であるとする.このとき,以下の2つは同 値であることを示せ.
• {an}∞n=1は ∞に発散する.
• lim
n→∞
1 an = 0.
(2-8) 数列{an}∞n=1とα ∈Rに対して lim
n→∞an=αのとき,以下の命題が成り立つことを 示せ.
∃N0 ∈N, s.t.∀n≥N0, |α|
2 ≤ |an|
(2-9)以下の命題の否定命題を作れ.
(i) ∀n ∈N,∃x∈R, |x| ≤n
(ii) ∀x∈R, ∀y∈R, ∃z ∈N, x+y−z <0