平成
25
年度理学融合基礎概論P ow ers of T en - Time and Space - 自然現象と微分方程式論
川下美潮 (広島大学大学院理学研究科数学専攻) 平成25
年4
月22
日(月)はじめに
1.
微分方程式とモデル2.
モデルによる説明の元祖は?3.
微分方程式の初期値問題4.
常微分方程式論で扱う問題5.
時定数6.
スケーリングと微分方程式1.
微分方程式とモデル 独立変数x
と未知関数y ( x )
およびその導関数y
( x ) ,y
( x ) ,...,y
(n)( x )
が満たす関係式F ( x, y , y
,y
,...,y
(n))=0 ··· (1)
のことを常微分方程式という。方程式(1)
を恒等 的に満たす関数y ( x )
を方程式(1)
の解といい、 方程式の解を見つけることを微分方程式を解くと いう。(1)
をn
階常微分方程式という。 例y
= ay
( a
:定数) y ( x )= e
ax とおくと各x
に対してdy dx ( x )= ay ( x )
を満たす。i.e. y ( x )= e
ax は解である。∵ d dx e
x= e
x と合成関数の微分法d dx f ( g ( x )) = f
( g ( x )) g
( x )
より分る。◎定数
C
に対してy ( x )= Ce
ax もy
= ay
の 解である。 ●定数C
は決まるのか? あるx
0を一つ選びx = x
0におけるy
の値y
0を ひとつ指定すればよい。y
= ay (
方程式) y ( x
0)= y
0(
初期条件) ··· (
初期値問題) y ( x )= y
0e
−ax0e
ax は上の初期値問題の解方程式
y
= ay
の由来: 時刻t
における◯◯◯の単位時間あたりの変化 量がその時刻t
における◯◯◯の量に比例する。(
以下、y = y ( t ) , y
( t )= dy dt ( t )
とx
の代わり にt
を用いることにします。)
● 定数a
は比例定数を表す。a> 0
:a< 0
:a =0
:方程式
y
= ay
の由来: 時刻t
における◯◯◯の単位時間あたりの変化 量がその時刻t
における◯◯◯の量に比例する。 時間が経つとa> 0
:増える←増殖(
人口、細胞の数)
、成長a< 0
:減る←崩壊(
放射性物質) a =0
:変化なし ◎ 最初の状態が決まれば、どう増えるか(減る か)が分る。∴
一階微分方程式の初期値問題y
= ay (
方程式) y ( x
0)= y
0(
初期条件) ··· (
初期値問題)
の解はただ1
つだけ存在する。自然現象の記述の際に一階微分方程式はよく表 れる。 時刻
t
における◯◯◯の単位時間あたりの変化 量がその時刻t
における◯◯◯の量に比例する。||
時刻t
における◯◯◯の単位量が単位時間あた りに変化する量は一定である。↓↓
より一般には、 時刻t
における◯◯◯の単位量が単位時間あた りに変化する量は時刻t
における◯◯◯から決 まる。y ( t )
:時刻t
における◯◯◯の総量↓↓ 1 y ( t ) dy dt ( t )
:時刻t
における◯◯◯の単位量が 単位時間あたりに変化する量∴ 1 y ( t ) dy dt ( t )= g ( t, y ( t ))
1 y ( t )
dy dt ( t )= g ( t, y ( t )) g ( t, y )
:法則から決まる• g ( t, y )= a (
定数)
:比例• g ( t, y )= a ( t ) (
定数とは限らない)
: ◯◯◯の量には関係しない。• g ( t, y )= a − by
:ロジスティック ◯◯◯が増えると単位量が単位時間あたりに変化 する量は減っていく。a> 0 , b> 0
とする。y
=( a − by ) y
ロジスティック方程式k = a/b
とおくとy
= b ( k − y ) y .
これを積分してy = kC C − ke
−at( C
:任意定数)
定数C
を決めるには「初期条件」y ( t
0)= y
0が 必要。i.e. y
0= kC C − ke
−at0である。これをといてy
0=0
ならC =0 , y
0=0
ならC
−1= y
0− k y
0e
at0∴ y ( t )= k 1+( k/ y
0− 1) e
−a(t−t0)( y
0=0
のとき) y ( t )=0 ( y
0=0
のとき)
y ( t )= k 1+( k/ y
0− 1) e
−a(t−t0)( y
0=0
のとき) y ( t )=0 ( y
0=0
のとき)
上の解の形から分ること• y
0<k
のとき単調増加で、いつでもy< k , • y
0= k
のときいつでもy = k (
一定), • y
0>k
のとき単調減少で、いつでもy> k , • t
が大きくなるとy
はk
に近づく。y
= yg ( t, y )
と成長モデルとの関係:1.
マルサスの法則(1798)
g ( t, y )= a ( a> 0 :
定数) ⇒ y ( t )= y
0e
a(t−t0)⇒
どんどん増え続ける 現実と合わない!!2.
ヴェアフスルトのモデル(1837) g ( t, y )= a − by ( a, b > 0)
現実に合うことも結構ある。 合わないものもある。 3.スミス(1963)
バクテリアの増殖 「食料が抑制された効果を入れたモデリング。」g ( t, y )= a − F , F
:栄養素を消費する割合F = by + cy
( a, b, c > 0) :
定数∴ y
= y a − by 1+ cy
これをといてy ( by − c )
1+c/b= Ae
at( A
:任意の定数) y =??
だが、 グラフはS
字形曲線になることは分る。モデルによる自然現象の説明(解釈) 1.考えたい自然現象をモデル化する。 2.法則を定式化して数式表現を行う。 3.数学の問題として扱い、解く。 4.出てきた結果をもとの自然現象から見て 自然かどうかを確認する。
•
自然であれば、うまく説明できたと見る。•
自然とは思えなければ、最初の考え方が悪 いと見て、より良い定式化を考える(
1.または2.に戻る)
。2.
モデルによる説明の元祖は? 質問 1.前ページの「モデルによる自然現象の説明 (解釈)」のような発想が最初に適用されたのはど んな自然現象だと思いますか。 2.微分法が現れたのはいつ頃でしょうか。 3.微分法を考案した人は誰でしょうか。 4.微分法はなぜ開発されたのでしょうか。1.は置いておいて、 2.微分法が現れたのは1600年代後半 3.微分法を考案した人は
2.微分法が現れたのは1600年代後半 3.微分法を考案した人は IssacNewton(1642-1727) GottfriedWilhelmLeibniz(1646-1716) Leibniz(1684)『無理量でも適用可能な極大、極小、 および接線に関する新しい方法とその特殊な計算法』 Newton(1711)『無限項を持つ方程式による解析に ついて』(←原稿は1669年にできていた!!) (1734)『流率法と無限級数』(←1671年完成) 『プリンピキア』(1687) =『自然哲学の数学的諸原理』
1.前ページの「モデルによる自然現象の説明(解 釈)」のような発想が最初に適用されたのはどんな自然 現象だと思いますか。 1.前ページの「モデルによる自然現象の説明(解 釈)」のような発想が最初に適用されたのはどんな自然 現象だと思いますか。 自信はありませんが、多分これから述べることだと 思います。
JohannesKepler(1571-1630) TychoBrahe(1546-1601)による火星の運行に対す る観測データを数学的に解析し、次の3つの法則を 発見!!
ケプラーの法則(Kepler’slaws) I(楕円の法則)惑星は太陽を焦点のひとつとする楕円 軌道を描く。 II(面積速度一定の法則)太陽と惑星を結ぶ線分が単位 時間あたりに通過する面積は一定である。 III(調和の法則)惑星の軌道を表す楕円の長半径の3 乗は、この惑星が軌道を1周するのにかかる時間(周 期という)の2乗に比例する。 I、II(1609「新天文学」) III(1619「世界の調和」)
問題(ケプラー問題) ケプラーの3法則を説明する理論を構築せよ。 ◎次の2つの問題に分けられる。 順ニュートン問題 ケプラーの3法則から惑星にかかる力を求めること (すなわち逆2乗法則を導くこと)。 逆ニュートン問題 「運動の法則」と力の逆2乗法則からケプラーの法 則を導くこと。
●Newtonまでに知られていたこと GalileoGalilei(1564-1642) 1604「落体の法則」、「慣性の法則」の発見! ReneDescartes(1596-1650) 「解析幾何学」の創始者(デカルト座標) 1644「哲学原理」で運動の法則を提唱 (1)慣性の法則 (現在の形と同じ) (2)運動量保存の法則 (と呼ばれている。) (3)物体の衝突に関する法則(後にニュートンにより修 正される)
●Newtonまでに知られていたこと (1)天体間の引力は距離の関数であらわされる。 (2)円運動の場合は引力の大きさは距離の2乗に反比例 する(逆2乗法則)。 (Wren、Hooke、Halleyらも知っていた) (3)1665 万有引力の法則の着想を得た(Newton) ●Newtonまでにまだできていなかったこと 順ニュートン問題、逆ニュートン問題 ◎ニュートンによる運動の法則◎ 1.「慣性の法則」にあたるもの。 2.「運動方程式」((運動量)=(質量)×(速度)) にあたるもの。 3.「作用反作用の法則」 注:1.2.はGalileiによるもの(とNewtonは言っ ている)。
『プリンピキア』(1687) =『自然哲学の数学的諸原理』 次の仮定のもとで「順ニュートン問題」を解決! ›天体間の引力は距離の関数であらわされる。 ›「ニュートンによる運動の法則」が成り立つ。 ◎万有引力の法則を確立F=GMm r2 ◎「逆ニュートン問題」を解いたかどうかについては 賛否ある。
Newton(1711)『無限項を持つ方程式による解析に ついて』(←原稿は1669年にできていた!!) (1734)『流率法と無限級数』(←1671年完成) 『プリンピキア』(1687) =『自然哲学の数学的諸原理』 Leibniz(1684)『無理量でも適用可能な極大、極小、 および接線に関する新しい方法とその特殊な計算法』 Leibniz(1689)『惑星の運動の原因についての試論』 「プリンピキア」を途中まで読んでから書いた。 ▲ どちらが先に微積分法を発見したかについてもめ 事になる。
ニュートンの理論の数学的側面 「極限の幾何学」と呼べるもの 達人的な技能が必要→難解すぎてあまり発展せず ライプニッツの理論の数学的側面 「代数的な(微分)演算処理法」の開発 「形式」を習得すれば理解可能 (「普遍記号法」の創出を目標) ›新しい記号法、表現様式、すなわち、 新しい思考法、思考様式の創出 ›微分方程式による法則表現につながる その後、「微分」を用いた力学の整備が行われる。 PierrVarignon(1654-1722) JakobHermann(1687-1733) JohannBernoulli(1667-1748) LeonhardEuler(1707-1783) DanielBernoulli(1700-1782) JosephLagrange(1736-1813) WilliamRowanHamilton(1806-1865) ニュートン力学の解析化による整理、発展 → 解析力学(ラグランジュ、ハミルトン) → 量子力学の数学的形式の元を与えた
◎◎「力学の整備」対応 ,「微分積分学の整備」 ◯◯◯の単位時間あたりの変化は 「微分」を用いて表すことができる。 + 様々な自然現象は微分方程式を用い て表すことができます。 + 微分方程式の解を見れば自然現象が 理解できるかも知れません。 4.微分法はなぜ開発されたのでしょうか。 「速度や加速度などの運動を表す量を表現したかった から。」などよく言われます。しかしもう少し理由があ るように思います。
Newtonのころに扱われた問題 ›二つの曲線の交わる角度の計算(デカルト) ›望遠鏡(ガリレイ)と時計(ホイヘンス1673)の製作 ›関数の最大・最小を求めること(フェルマー1638) ›運動の速度と加速度を定義すること (ガリレイ1638、ニュートン1686) ›惑星の運行について(ケプラー、ニュートン) 『プリンピキア』(1687)
Newtonのころに扱われた問題 ›二つの曲線の交わる角度の計算(デカルト) ›望遠鏡(ガリレイ)と時計(ホイヘンス1673)の製作 ›関数の最大・最小を求めること(フェルマー1638) ›運動の速度と加速度を定義すること (ガリレイ1638、ニュートン1686) ›惑星の運行について(ケプラー、ニュートン) 『プリンピキア』(1687) 共通点は、 曲線y=f(x)の各点xにおけるこの曲線の傾きと か、接線や法線について知りたい。
関数y(t)の微分y0 (t)=dy dt(t) dy dt(t)=lim h!0y(t+h)`y(t) h :tが単位あたり変化したときのyの変化の割合 :tが単位あたり変化したときのyの変化率 y0 (t0):関数y(t)グラフ上の点(t0;y(t0))における 接線の傾きを与える。 現在では「変化の割合や変化率」「接線の傾き」を与 える道具として認知されている。
ヴィエート(1540−1603):解と係数の関係 ネピア(1550−1617):対数関数 ガリレイ(1564−1642) ケプラー(1571−1630):ケプラーの法則 デカルト(1596ー1650):解析幾何学 (式と図形) ホイヘンス(1629−1695) バロー(1630−1677):Newtonの先生 フック(1635ー1703) ニュートン(1642ー1727) ライプニッツ(1646−1716)
3.
微分方程式の初期値問題 1階常微分方程式の初期値問題 ( y0 =f(t;y)(方程式) y(t0)=y0(初期条件)´´´(C) ◎これまでに挙がった例: (i)f(t;y)=ay(a:定数) (ii)f(t;y)=(a`by)y(a;b>0定数) (iii)f(t;y)=ya`by 1+cy(a;b;c>0定数) (C)の解はただ1つだけ存在する。 本当にそうか? 例(バネの運動) y(t):時刻tにおけるバネの伸びの長さ (Newtonの運動方程式より) (バネ)( y00 =`!2 y(運動方程式) y(t0)=y0;y0 (t0)=y1(初期条件) 方程式y00 =`!2 yの解は例えば y(t)=sin(!t)とか、y(t)=cos(!t) である。重ね合わせの原理 y(t)=C1cos(!t)+C2sin(!t) C1,C2は任意の定数 も方程式y00 =`!2 yの解になる。 初期条件より y0=C1cos(!t0)+C2sin(!t0) y1=!=`C1sin(!t0)+C2cos(!t0) これを解いて C1=y0cos(!t0)`y1 !sin(!t0) C2=y0sin(!t0)+y1 !cos(!t0) )y(t)=y0cos(!(t`t0))+y1 !sin(!(t`t0)) (バネ)の解が求まった。 ★解はありましたが、これだけなのでしょうか。 ☆それはそうでしょう。自然現象を表した方程式だか ら解があって、一つしかないのは当たり前で、解がど んな形をしているかが問題なんじゃないのですか。
★でも、上の解き方を見ると方程式の解は、 y(t)=C1cos(!t)+C2sin(!t) C1,C2は任意の定数 の形に限定しちゃっています。他の格好をした解が あったらまずいんじゃないですか。 ☆まあそうかも知れませんが、もともとこの初期値問 題は由緒正しい自然現象を運動方程式を使って正しく 表されたものですよね。だからそんなことを気にする 必要はないと思いますよ。 あなたはどちらにより共感を覚えますか。
定義n階常微分方程式 F(t;y;y0 ;y00 ;:::;y(n) )=0´´´´´´(1) の解で、n個の任意定数を含む解を一般解と呼ぶ。一 般解の任意定数に特定の値を代入することにより得ら れる解を特殊解と呼ぶ(一般解の定義は本によって少 し異なることがある)。 一般解y=y(t;C1;C2;:::;Cn) (C1;C2;:::;Cn:任意定数)の形の解 特殊解一般解のC1;C2;:::;Cnに特定の値を入れ ることにより表される解のこと
例 y0 =ay (a:定数)の一般解は y(x)=Ceax (C:任意定数)で、y(t0)=y0を満 たすy(t)=y0e`at0eat は特殊解である。 例 y0 =(a`by)y (a;b:定数)の一般解は y=kC C`ke`at(C:任意定数)で、y(t0)=y0 を満たすようにした y(t)=k 1+(k=y0`1)e`a(t`t0) は特殊解である(C=(k=y0`1)`1 eat0)。 例 y00 =`!2 y(!:定数)の一般解は y(t)=C1cos(!t)+C2sin(!t)で、 y(t0)=y0を満たすようにした y(t)=y0cos(!(t`t0))+y1 !sin(!(t`t0)) は特殊解である。 注意:C1,C2は次のように置くと良かった。 C1=y0cos(!t0)`y1 !sin(!t0) C2=y0sin(!t0)+y1 !cos(!t0)
定義n階常微分方程式 F(t;y;y0 ;y00 ;:::;y(n) )=0´´´´´´(1) の解で、一般解の任意定数に特定の値を代入すること によっては得られないものを特異解と呼ぶ。 特異解が現れる例 y0 =`2ap y(a>0:定数) y=(at`C)2 (C:任意定数)とおくと y0 =2a(at`C) )t5C=a)y0 =`2ajat`Cj=`2ap y そこで任意定数Cを含んだ関数yを次で定める。 y=( (at`C)2 (t5C=a) 0(t>C=a)(C:任意定数) このyはy0 =`2ap yを満たす(一般解である)。 一方、y(t)=0(全てのtについて)もy0 =`2ap y を満たす。 ◎Cをどう選んでもy(t)=0は出てこない!! この解は特異解である。
( y0 =`2ap y(方程式) y(t0)=0(初期条件)´´´(初期値問題) の解は一意ではない!! y0 =`2ap yのような変なものを考えるからだめな のでは?
例 断面積がSの円柱の形をした容器内に水を入れ る。容器の底の方に小さい穴を開けると水が噴き出す。 t:時刻、t0:水が噴き出し始めた時刻 y:穴から水面までの高さ、V:穴から上の水の体積 v:穴から流出する水の単位体積あたりの速度 ›dV dt=`v,V=Sy(S:一定))Sy0 =`v. ◎vとyの関係が必要!! Torricelliの定理v=p 2gy(g:重力加速度) (p+
1 22 jv=p+jgy:Bernoulliの定理)
)y0 =`2ap y(a=p g p 2S>0:定数). y t t0
y(t) t1 t1:穴の上の水が全部流れ出たときの時刻 ● t5t1の状態を知らない人がある時刻t2(>t1) における情報だけから過去の状態を知ることができ るか? ◎自然現象を表すものはただ一つ。 同値 )過去の状態が分かる。 y t t0
y(t) t1t2 ( y0 =`2ap y(方程式) y(t2)=0(初期条件)´´´(初期値問題)の 解は一意ではなかった。 )分からない!!
☆まあそうかも知れませんが、´´´´´´ですよね。だ からそんなことを気にする必要はないと思いますよ。 ★でもやっぱりどんな条件のもとで、初期値問題の解 が存在してただ一つになるのかということについて考 える必要があると思います。 1800年代以降、 ›学校で教える必要性(ナポレオン(1769-1821)以降) ›間違いや矛盾がないようにしたい。 これらを契機に微分方程式の理論的な考察が行われる ようになった。)微分方程式論
4.
常微分方程式論で扱う問題 1階常微分方程式の初期値問題(Cauchy問題) ( y0 =f(t;y)(方程式) y(t0)=y0(初期条件)´´´(C) 注意:単独の高階微分方程式はベクトルに対する1階 微分方程式に変換できるので、yやfはベクトル値関 数にすればすべてを含むことになる。 例 y00 =`!2 y)z=y0 とおくと d dt„ y z
« =„ y0 z0« =„ z y00« =„ z `!2 y
«
( y0 =f(t;y) y(t0)=y0´´´(C) 考えるべき問題(1)(C)の解が存在するか。 (2)(C)の解が存在するとすれば、それは一意か。 (3)(1),(2)正しいとき初期値y0を動かすと解はどう なるか。 (1),(2)正しいとき(C)の解をy(t;y0)と表す。 (3),y1がy0に近いときy(t;y1)はy(t;y0)に 近いか?
注意:上の(1)〜(3)を偏微分方程式についても考える べきだと問題提起したのがHadamardで、この問題を (C)の適切性「well-posedness」の問題と呼んでいる。 r;R>0とする。 D=f(t;y)jjt`t0j5r;jy`y0j5Rgとおく。 f:D上の関数、 M=maxfjf(t;y)jj(t;y)2Dg r0=minfr;R=Mg>0とおく。 定理1関数fがD上で連続ならば(C)を満たす解が 区間[t0`r0;t0+r0]で存在する。
定義(Lipschitz連続)D上の関数fがD上でyに関し てLipschitz連続であるとは定数L>0が存在して jf(t;z)`f(t;y)j5Ljz`yj((t;z);(t;y)2D) が成り立つことをいう。 定理2関数fがD上で連続に加え、D上でyに関し てLipschitz連続ならば(C)を満たす解が区間 [t0`r0;t0+r0]でただ一つのみ存在する。 ◎これまでに挙がった例で見ると (i)f(t;y)=ay(a:定数) (ii)f(t;y)=(a`by)y(a;b>0定数) (iii)f(t;y)=ya`by 1+cy(a;b;c>0定数) これらはDを適当に選ぶとどれも定理1、2の仮定を 満たす。
(iv)(バネ)( y00 =`!2 y y(t0)=y0;y0 (t0)=y1 z=y0 とおき w=„ y z« ;w0=„ y0 y1« ;f(t;w)=„ z `!2 y« とおくと( w0 =f(t;w) w(t0)=w0´´´(C)の形になる。 このfはDのr;Rどのように選んでも定理2の仮定 をすべて満たす。よって(C)の解はただ一つである。 ゆえに(バネ)の解はただ一つで、次で与えられる。 y(t)=y0cos(!(t`t0))+y1 !sin(!(t`t0)) (v)( y0 =`2ap y y(t0)=0の解は一意ではなかった。 D=f(t;y)jjt`t0j5r;jyj5Rg(r,R>0: 任意に選ぶ)とおく。関数fをy=0のときには f(t;y)=`2ap y)と定め、y<0のときには適当 に拡張してD上で連続になるように作る。 ●どのように拡張してfを定めても、fはD上でyに ついてLipschitz連続ではない。 )Lipschitz連続の仮定をなくすと (C)の解はただ一つとは限らない。
(3)y1がy0に近いときy(t;y1)はy(t;y0)に近い? 定理3関数fがD上で連続、D上の各点でyに関す る導関数@f @yが存在し、さらに導関数もD上で連続で あるとする。このとき十分小さな数j>0と閉区間 Ij(t0`r0;t0+r0)が存在してjy1`y0j5jな らば( y0 =f(t;y) y(t0)=y1を満たす解y(t;y1)が区間I 上で存在し、関数y(t;y1)は(t;y1)について f(t;y1)jt2I;jy1`y0j5jg上で連続となる。
注意:fが定理3の仮定を満たす。)定理2の仮定を 満たす。 例 上の(i)‰(iv)は定理3の仮定を満たす場合であ る。もちろん(v)( y0 =`2ap y y(t0)=0は定理3の仮定 を満たさない。 ◎◎微分方程式は解けないものが多い。◎◎ 例 y0 =e`t2 y=Z y0 dt=Z e`t2 dt=? :具体的な関数で表せない。
ちなみに “ R
1 `1e`t2 dt”2 =R1 `1e`t2 dtR1 `1e`s2 ds =R1 `1R1 `1e`(t2+s2) dtds =R1 0R2ı 0e`r2 rdrd„ =2ıˆ 2`1 e`r2˜1 0=ı )R1 `1e`t2 dt=p ıは求められる。 ◎◎微分方程式は解けないものが多い。◎◎ でも、解が存在して、ただ一つとなることは分かる。 さらに初期値についても連続である。 ☆☆数値解析(コンピュータによる解の近似計算) しよう(シミュレーション)。 ★★数値解析で得た結果を真の解と思っても良いか? ›N回のステップで得た近似yN(t)はN!1とす ると真の解y(t)に近づくか? ›誤差はどれくらいか。 ›Nをどれくらい大きくすれば満足できる近似になっ ているか。 いろいろと考えられています。
注意:(3)y1!y0に近いときy(t;y1)!y(t;y0) y0:真の値、y1:近似値、 ●(3)が成り立たないとしたら、近似計算のために選 んだ近似値y1を用いて数値計算した結果z(t)が、y1 に対する真の解y(t;y1)に近くできたとしても、z(t) が真の解y(t;y0)から離れているかも知れない。 i.e.(3)が成り立たないと数値解析する意味が薄れる。 ◎解の存在と一意性が分かっているときは精度を上げ ることを考えればよい!!「多倍長精度??(だった と思う)」
5.
時定数 時定数(じていすう、ときていすう、ときじょうすう) (緩和時間とも呼ばれるようです。) 増えるときと減るときの場合に応じて2通りの考え方 があるようです。 ◯◯◯の量が時間がたつと減っていくときもとの量か ら見てe`1 倍まで減るためにかかる時間fiのこと 最初はなかった◯◯◯の量が時間がたつと増えていく とき最終的にできる◯◯◯の量からみて1`e`1 倍 まで増えるのにかかる時間fiのことy0 =`ay+b(a>0;b=0:定数)´´´(トキ) 解き方の極意方程式にeat (積分因子)を掛ける!! ` eat y´0 =eat` ay+y0´ =beat eat y(t)`y(0)=Zt 0` eas y(s)´0 ds =Zt 0beas ds=h b aeasit 0=b a` eat `1´ )eat y(t)=y(0)+b a` eat `1´ i.e.y(t)=e`at y(0)+b a` 1`e`at´
◯◯◯の量が時間がたつと減っていくときもとの量か ら見てe`1 倍まで減るためにかかる時間fiのこと y0 =`ay+b(a>0;b=0:定数)´´´(トキ) でb=0!! )y(t)=e`at y(0)(y(0):もとの量) i.e.y(fi)=e`1 y(0))fi=1=a
例 放射性物質の崩壊 時刻tにおいて放射性物質の崩壊する個数はその時刻 における放射性物質の数に比例する。 `y0 (t)=ay(t)(a>0:定数) (トキ)でb=0の場合である。 半減期T:y(T)=1 2y(0)となるTのこと。 i.e.1 2y(0)=e`aT y(0)である。故に eaT =log2よりT=(log2)=a=filog2となる。 最初はなかった◯◯◯の量が時間がたつと増えていく とき最終的にできる◯◯◯の量からみて1`e`1 倍 まで増えるのにかかる時間fiのこと y0 =`ay+b(a>0;b=0:定数)´´´(トキ) の解はy(t)=e`at y(0)+b a` 1`e`at´ であった。 y(0)=0(*最初はない))y(t)=b a` 1`e`at´ . t!1のときy(t)!b a:最終的にできるものの量 )b a` 1`e`1´ =b a` 1`e`at´ .i.e.fi=1=a.
例 電気回路 E:起電力、Q:電荷量、I:電流 1.電流と電荷量の間にはdQ dt=Iの関係がある。 2.抵抗により電圧降下ERが生じる。オームの法則 よりER=RIの関係がある(R:抵抗)。 3.コイルがあると電磁誘導を起こし、電圧が降下す る。それをELとおくとEL=LdI dtとなる(L:イン ダクタンス)。 4.コンデンサーがあると電荷が蓄えられ、その分電 圧降下ECを起こし、電流が流れるのを妨げる。 EC=Q Cとなる(C:キャパシティー)。
電源(定電圧)と抵抗とコイルを直列につなぐ 各部分の電圧の代数和は零である(キルヒホップの 法則)より`E+ER+EL=0となる。 )`E+RI+LdI dt=0より dI dt=`R LI+E L 故に電流は始めの値にかかわらず、最終的には E L=(R L)=E Rに近づく。また時定数は (R L)`1 =L Rである。
電源(定電圧)と抵抗とコンデンサーを直列につなぐ 各部分の電圧の代数和は零である(キルヒホップの 法則)より`E+ER+EC=0となる。 )`E+RI+Q C=0である。またdQ dt=Iより dQ dt=`1 RCI+E R 故に電荷は始めの値にかかわらず、最終的には E R=(1 RC)=CEだけ蓄えられる。また時定数は (1 RC)`1 =RCである。
注意:違う現象でも、モデル化し、数式表現して同じ 方程式が出てきてしまったら、あとは同じことしか起 きない。特に、モデル化するときに既に扱われた別の 現象のモデルの類推で考えているときは前のモデルを 超える知見は何一つ得られないことに注意しよう。 モデルによる自然現象の説明(解釈) 1.考えたい自然現象をモデル化する。 2.法則を定式化して数式表現を行う。 3.数学の問題として扱い、解く。 4.出てきた結果をもとの自然現象から見て 自然かどうかを確認する。
6.
スケーリングと微分方程式 –>0:任意の定数 スケーリング=スケール変換 ›時間のみ:t7!–t ›時間と空間の両方:(t;x)7!(–¸ t;–x) ◎スケーリング不変,小さい世界と大きな世界が 同じに見える。 例え(正確ではない)水面に石を投げることを考え る。水面(x-平面)のx=0のところにt=0のとき 石を投げると、tのときは波はjxj=ct(c:速度)の あたりにおおむね来ている。 このjxj=ctで決まる集合はスケール変換 (t;x)7!(–t;–x)で変わらない。 波の伝播+線型化)「波動方程式」˜u=0 ˜u=c`2@2 u @t2`“ @2 u @x12+@2 u @x22” x=(x1;x2)◎u–(t;x)=u(–t;–x)とおくと ˜u=0のとき˜u–=0 i.e.(t;x)のところと(–t;–x)のところには類似性が ある(同じように見える)。 ●スケール変換により微分方程式の解について分かる ことがある。 例 y0 =ay2 y–(t)=–y(–t)とおくとy0 –=ay2 – *(y–(t))0 =––y0 (–t)=–2 a(y(–t))2 =a(y–(t))2
ここでy0 =ay2 にスケール変換で不変な解(i.e. y–(t)=y(t)(–>0)となる解)があるかどうかを 調べよう。 あったとするとy(t)=–y(–t).t=1として y(1)=–y(–)i.e.y(–)=A –(A:定数) )`At`2 =aA2 t2よりA=`a`1 よってy=`1 at 注意:t=`C=aから見てスケール変換すれば y=`1 at+C(C:任意定数)を得る。
◎1次元熱方程式Pu=@u @t`@2 u @x2=0に対す るスケール変換で不変な解を求めてみよう。 u–(t;x)=u(–¸ t;–x)とおくと @u– @t(t;x)=–¸@u @t(–¸ t;–x), @2 u– @x2(t;x)=–2@2 u @x2(–¸ t;–x), だから¸=2)Pu–(t;x)=Pu(–2 t;–x)=0. )スケール変換で不変な解は次を満たす。 u(t;x)=–˛ u(–2 t;–x)(t;x:実数、–>0) 但し、˛は任意定数 ここで熱方程式の解は「総熱量保存」Z1 `1u(t;x)dx=Z1 `1u(0;x)dx を満たすことに注意する。よってついでにスケール変 換しても積分Z1 `1u(0;x)dxが変わらないとすると Z1 `1u(0;x)dx=Z1 `1u–(0;x)dx =–˛Z1 `1u(0;–x)dx=–˛`1Z1 `1u(0;x)dx となるので˛=1である。
)u(t;x)=–u(–2 t;–x)(t;x:実数、–>0) となるスケール変換しても不変な解が重要になる。 この解を求めてみよう。–=t`1=2 として u(t;x)=t`1=2 u(1;t`1=2 x), i.e.u(t;x)=t`1=2 g(x=t1=2 )1 p tg(x p t) @u @t=1 2t`3 2g(‰)+t`
1 210` g(‰)t 2
3 2x =
`1 2t
`´3 20 g(‰)+‰g(‰) 2 @ux`3=200 =tg(‰)(‰=p) 2@xt 11000 )g(‰)+‰g(‰)+g(‰)=0 22 `´11100000 g(‰)+‰g(‰)=g+‰g+g=0 222 10 ‰g(‰)=C:定数i.e.g(‰)+0 2`´220‰=4‰=4 )eg(‰)=Ce0 積分してZ 222‰=4`‰=4`‰=4 g(‰)=Ceed‰+Ce.01 Z1 jg(‰)jd‰<1としたいのでC=0.0 `1
)u(t;x)=C11 p te`x2 4t さらにZ1 `1u(t;x)dx=1としたい。 Z1 `1e`x2 4tdx=2p tZ1 `1e`x2 dx=2p ıt よってC1=1=(2p ı)となる。故に Gt(x)=1 2p ıte`x2 4t :Gauss核、熱方程式の基本解 が得られた。
◎熱方程式の初期値問題
8 > < > :
@u @t`@2 u @x2=0t>0;x2(`1;1); u(0;x)=f(x)x2(`1;1); の有界な解uはGauss核を用いて u(t;x)=Z1 `1Gt(x`y)f(y)dy と表すことができる。
◎◎非線型偏微分方程式においてもスケール変換して も同じ方程式を満たす場合を考えると、どのような空 間(解が入っているべき関数の集合のこと)に解が属 しているか、すなわち、解けるのかが予想できる。