自動車業界における
4 半期財務諸表の損益分岐点分析
A1342289
4
年 原田 洋平要旨
•
四半期財務データを用いて、費用の分解分 析を行った。•
回帰分析によって算出された結果が符号条 件を満たさなかった。• ROA
と変動費率には、有意ではないが負の相 関が推定された。目次
1.
はじめに2.
先行研究3.
変動費と固定費4.
最小二乗法5.
分析結果6.
考察7.
参考文献1. はじめに
•
企業の固定費と変動費を算出し、パラメー ターの有意性を考察する。•
各企業の変動費率とROA
を比較する。•
その業界内で各費用の高低が、どのような原 因から起因しているのかも検証する。2. 先行研究
1.
小林 (2005
):固定費がマイナスになる時の要因2.
桜井・小野(2013)
:四半期財務諸表における損益分岐 点と営業レバレッジの推定。回帰分析を使用。3.
塘 (2012
):固定費の変動費化が損益分岐点に与える 影響4.
福嶋・新井 (2012
):企業レベルでCVP
分析を行うことの 問題点研究の背景・動機
•
企業の費用構造の中には,売上高に左右されない「固 定費」と,売上高に比例して増加する「変動費」が存在す る.•
この二つの要素は,企業の損益を決定する重要な要 素となる.•
財務諸表から各費用の品目ごとに,固定費と変動費 を分割することは不可能.•
最小二乗法による固定費と変動費率の推定を行う.桜井 小野 (2013)の分析
•
固定費変動費分解をする時、四半期財務 データを用いることによる有効性を2つの 手法で推定。1.
総費用法2.
回帰分析
結果:回帰分析の方が有効。本研究での対象企業( 59 社)
東証コード 企業 東証コード 企業 東証コード 企業
T3116 トヨタ紡織 T7235 東京ラヂエーター製造 T7271 安永
T3422 丸順 T7236 ティラド T7274 ショーワ
T3434 アルファ T7238 曙ブレーキ工業 T7276 小糸製作所
T5949 ユニプレス T7239 タチエス T7277 TBK
T5989 エイチワン T7240 NOK T7278 エクセディ
T6470 大豊工業 T7241 フタバ産業 T7282 豊田合成
T6493 日鍛バルブ T7242 KYB T7283 愛三工業
T6584 三桜工業 T7244 市光工業 T7284 盟和産業
T6995 東海理化電機製作所 T7246 プレス工業 T7287 日本精機
T7208 カネミツ T7247 ミクニ T7291 日本プラスト
T7212 エフテック T7248 カルソニックカンセイ T7292 村上開明堂
T7213 レシップホールディングス T7249 尾張精機 T7294 ヨロズ
T7214 GMB T7250 太平洋工業 T7296 エフ・シー・シー
T7215 ファルテック T7251 ケーヒン T7298 八千代工業
T7217 テイン T7254 ユニバンス T7299 フジオーゼックス
T7218 田中精密工業 T7255 桜井製作所 T7312 タカタ
T7220 武蔵精密工業 T7256 河西工業 T7313 テイ・エス テック
T7228 デイトナ T7259 アイシン精機 T7315 IJTテクノロジーホールディン
T7229 ユタカ技研 T7260 富士機工 T7551 ウェッズ
T7230 日信工業 T7264 ムロコーポレーション
3. 固定費と変動費
•
固定費(Fixed Cost
)とは、生産量にかかわら ず発生する費用のこと例)
…
人件費、減価償却費•
変動費(Variable cost
)とは、売上に比例して 変動する費用のこと例)
…
材料費、外注費3. 固定費と変動費(続き)
0 20 40 60 80 100 120
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
変動費
固定費 売上高 費用
売上高・生産高 損益分岐点
3. 固定費と変動費(続き)
•
総費用をX
、固定費をF
、変動費をV
とする時、損益分 岐点は以下のように表せる。X = 𝐹𝐹
1 −
𝑉𝑉𝑋𝑋X =
固定費1 −
変動費率※分母は貢献利益率とも呼ばれる
導出は補足を参照4. 単回帰モデル
• 𝑌𝑌 = α + β𝑋𝑋 + 𝑢𝑢
• 𝑌𝑌
は被説明変数、𝑋𝑋
は説明変数• α
、β
は回帰係数、u
は誤差項1.
仮定1𝑢𝑢
𝑡𝑡の平均は0E( 𝑢𝑢
𝑡𝑡)=0
2.
仮定2𝑢𝑢
𝑡𝑡の分散は一定E( 𝑢𝑢
𝑡𝑡2)= 𝜎𝜎
23.
仮定3𝑢𝑢
𝑡𝑡は説明変数𝑋𝑋
𝑡𝑡と無相関E( 𝑢𝑢
t𝑋𝑋
𝑡𝑡)=0
4.
仮定4𝑢𝑢
𝑡𝑡はたがいに無相関E( 𝑢𝑢
𝑡𝑡𝑢𝑢
𝑠𝑠)=0( 𝑡𝑡 ≠ 𝑠𝑠 )
5.
仮定5𝑢𝑢
𝑡𝑡は正規分布に従う𝑢𝑢
𝑡𝑡~𝑁𝑁(0, 𝜎𝜎
2)
最小二乗法
∑ �𝑢𝑢 2 (
残差)
の二乗和を最小にすること→
最小二乗法
最小二乗推定量は不偏性と一致性をもつBLUE
になる。推定量の特徴
•
不偏推定量…
推定したパラメーターの期待値 が真の値•
一致性…
標本数を無限大にしたときにパラ メーターの値が真の値と一致すること
最小二乗法で求めた推定量は 不偏性と一 致性をもつ決定係数
•
モデルの適合度をはかる指標のこと=
推定した被説明変数と標本平均の差の二乗和 被説明変数と標本平均の差の二乗和= 1 −
残差二乗和被説明変数と標本平均の差の二乗和
有意性の検定
•
回帰分析で得られた値が経済的に意味のあ る値であるか否かを検証する検定。•
帰無仮説をH 0 : β 1 = 0
とおく。•
対立仮説をH 𝐴𝐴 : β 1 ≠ 0
とおいて、両側検定を 行う。•
帰無仮説が正しければ、β � 1 −0
𝑉𝑉 � β 1 ~ N(0,1)
が成 立する。有意性の検定(その2)
•
分母を標準誤差で置き換えると次の関係が 成立する。𝑡𝑡 = 𝑆𝑆𝑆𝑆 � β � 1 − 0 β
1 ~𝑡𝑡 (𝑛𝑛 − 2)
→
自由度n-2
のt分布に従う。•
今回の分析ではサンプル数が59
社と多いの で正規分布を使い、棄却域は±1.960
とする(有意水準は
5
%)モデル
•
直近の16
四半期分の四半期データに基づく最小 2乗法(2012
年6
月から2016
年3
月分まで)費用 = 固定費
+
変動比率×売上高
⇒
Y = 𝛼𝛼 + 𝛽𝛽 × X
ただし、0 < α かつ
0 <
β< 1
の符号条件が存在。
費用を従属変数,固定費を切片α,変動費率を βとして算出.5. 分析結果
•
回帰分析を行った結果、以下のことが判明し た。1.
変動費率(回帰式の係数β
)は、59社すべて0.1
%水準で有 意な結果が出たが、固定費(回帰式の切片α
)は半分以上 が有意な結果にならない。2.
マイナスの固定費、1
を超える変動費率の結果があった。
回帰分析の式自体に何かしらの問題がある。有意水準(%) 固定費 変動費率
0.05 4 0
0.01 11 0
0.001 10 59
有意でない 34 0
n=59 有意水準と企業数
5. 分析結果詳細(その 1 )
固定費 t値 変動費率 t値
T3116 トヨタ紡織 81429.3 3.316 0.906 46.567
T3422 丸順 -966.0 -0.215 1.011 14.125
T3434 アルファ 10579.6 2.756 0.753 9.717
T5949 ユニプレス 10888.9 1.058 0.901 25.711
T5989 エイチワン -7659.1 -1.506 1.021 35.797
T6470 大豊工業 10098.4 5.796 0.847 46.968
T6493 日鍛バルブ 4763.4 1.998 0.832 14.039
T6584 三桜工業 1615.8 0.823 0.944 55.686
T6995 東海理化電機製作所 24835.1 2.538 0.874 39.010
T7208 カネミツ 473.6 1.573 0.859 21.771
T7212 エフテック 5773.2 1.400 0.932 39.164
T7213 レシップホールディングス 3770.7 4.400 0.754 14.761
T7214 GMB -1288.7 -0.641 0.999 29.946
T7215 ファルテック 8090.4 3.206 0.855 26.676
T7217 テイン 790.1 3.694 0.726 11.692
5. 分析結果詳細(その 2 )
固定費 t値 変動費率 t値
T7218 田中精密工業 201.5 0.110 0.962 24.744
T7220 武蔵精密工業 36765.9 8.497 0.696 24.155
T7228 デイトナ -6.1 -0.147 0.931 235.968
T7229 ユタカ技研 -14649.9 -4.825 1.023 54.165
T7230 日信工業 17767.3 3.322 0.836 29.000
T7235 東京ラヂエーター製造 152.7 0.115 0.932 20.407
T7236 ティラド -837.1 -0.218 0.979 24.823
T7238 曙ブレーキ工業 -22793.2 -1.991 1.080 23.245
T7239 タチエス 18675.1 2.316 0.907 27.568
T7240 NOK 78471.0 3.772 0.810 25.365
T7241 フタバ産業 34848.1 3.211 0.908 34.112
T7242 KYB -4511.5 -0.146 0.979 10.961
T7244 市光工業 13981.2 2.631 0.838 14.662
T7246 プレス工業 5123.1 0.981 0.922 33.286
T7247 ミクニ 7466.5 2.137 0.881 23.724
5. 分析結果詳細(その 3 )
固定費 t値 変動費率 t値
T7248 カルソニックカンセイ 69519.7 9.610 0.895 115.425
T7249 尾張精機 -1375.8 -1.184 1.048 14.050
T7250 太平洋工業 9194.9 4.256 0.839 37.332
T7251 ケーヒン 37053.8 1.101 0.831 7.924
T7254 ユニバンス 2522.1 0.613 0.950 14.828
T7255 桜井製作所 -110.2 -0.284 1.064 11.434
T7256 河西工業 16603.9 4.730 0.863 48.690
T7259 アイシン精機 1348.9 0.023 0.942 46.853
T7260 富士機工 1288.9 0.367 0.927 27.803
T7264 ムロコーポレーション 2878.2 5.567 0.756 25.153
T7271 安永 -1867.5 -0.625 1.053 11.136
T7274 ショーワ 6650.3 0.112 0.927 4.008
T7276 小糸製作所 42701.7 3.693 0.844 48.351
T7277 TBK -7264.4 -1.494 1.099 10.342
T7278 エクセディ 3980.7 0.558 0.908 30.765
5. 分析結果詳細(その 4 )
固定費 t値 変動費率 t値
T7282 豊田合成 -5864.5 -0.356 0.949 40.501
T7283 愛三工業 127.2 0.037 0.951 55.639
T7284 盟和産業 3319.7 2.778 0.813 13.435
T7287 日本精機 11386.8 1.046 0.877 17.864
T7291 日本プラスト 10065.1 3.259 0.896 34.728
T7292 村上開明堂 5961.0 3.415 0.821 29.776
T7294 ヨロズ 2757.1 0.747 0.922 36.295
T7296 エフ・シー・シー -13314.4 -1.489 1.016 16.954
T7298 八千代工業 -28144.7 -10.926 1.091 82.707
T7299 フジオーゼックス 452.4 0.264 0.898 8.727
T7312 タカタ 21037.1 3.428 0.914 88.637
T7313 テイ・エス テック 17192.7 1.219 0.878 26.545
T7315 IJTテクノロジーホールディン 357.7 0.189 0.970 80.104
T7551 ウェッズ 2533.7 5.936 0.836 56.172
5. 分析結果
0 2 4 6 8 10 12
変動費率 変動費に関する基本統計量
平均
0.90981512
標準誤差
0.01177139
中央値
0.90750826
最頻値
#N/A
標準偏差0.09041777
分散
0.00817537
尖度
-0.0980366
歪度
0.01434103
範囲
0.40302749
最小
0.69610191
最大
1.0991294
合計
53.6790918
標本数
59
�β
変動費率と ROA の相関分析
y = -0.0345x + 0.0667 R² = 0.0241
-0.040 -0.020 0.000 0.020 0.040 0.060 0.080 0.100
0.600 0.700 0.800 0.900 1.000 1.100 1.200
β ̂
今後の課題
•
固定費変動費の分解を行うにあたり、原価数 値の同質性が維持されることが前提となる。•
今回用いたデータは時系列であるため、より 正確な分解分析には物価の変動率や販売量 変化率のデータが必要になる。7. 参考文献
•
小林 健吾 「損益分岐点分析での要素価格変動の影響」Aoyama journal of business 40(3), 83-102, 2005-12
•
黒住英司 「計量経済学」 東洋経済新報社pp.2-15, 54- 70
•
桜井・小野 「四半期財務諸表における損益分岐点と営業レ バレッジの推定」 神戸大学経営学研究科Discussion paper 2013
・14, 2013-04
•
塘 誠 「固定費の変動費化に関する損益分岐点分析による アプローチ 」Seijo University economic papers (198), 199-
213, 2012-12
7. 参考文献
•
羽森森之 「ベーシック計量経済学」 中央経 済社pp.1-34
•
福嶋・新井 「企業レベルでのコストビヘイビ ア推定 」Hirao School of Management
review 2, 1-7, 2012-03-30