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自動車廃棄物班論文

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自動 動車 車廃 廃棄 棄物 物班 班論 論文

Inspire the Future

慶應義塾大学  経済学部 山口光恒研究会  自動車廃棄物班

岩崎  友彦 沈  陽 西岡  直保 根本  隆史

2001 年 3 月

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Ⅰ章.なぜ自動車廃棄物が問題なのか?

現在使用済み自動車のリサイクルは、他の製品に比べ回収ルートも整備されリサイク ル率も現在約75〜80%と高く、自動車工業会の自主的行動計画などによりさらなるその向 上が促されている。しかし、今日のELV1は年間約500万台で、この内年間約80万トンが シュレッダーダストとして廃棄されており、これは最終処分場の逼迫と資源制約という観 点からもさらなる改善が必要であり重要視されている。以下では、まずは今日のシステム がどのようになっているか確認した上で、この最終処分場の逼迫によって生じる様々な問 題を分析する。そして、最後にそれらの問題を解決する方法とさらなるリサイクル率を向 上させる方法を提言していく。

Ⅱ章.現在の使用済み自動車処理システムの流れと問題点

現在、日本の使用済み自動車は付図1のように処理されている。

ここでフローに基づく各主体の現状及び各主体の持つ問題点について述べたい。

図1、使用済み自動車のフロー図

ユーザー(一般消費者、自動車使用業者)約 7,000 万台 

自動車販売業者、整備業者など(取次ぎなど)約9万社 

自動車解体事業者(収集、解体、プレス)約 5,000 社 

シュレッダー事業者約140

埋立処分業者 電炉メーカー・製 専門業者による再生処理など 中古車輸出 中古部品市場 500万台/年

(約500万トン/年)

約 75%

使用済み自動車

約 25% 

20〜25%  50〜55%

シュレッダーダスト    70〜80 万トン/年

廃タイヤ、バッテリー、 

廃油・廃液 

20%〜30% 

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①:最終ユーザー

最終ユーザーは、図のように自らが使用した自動車を販売会社である新車ディーラーあ るいは中古車ディーラーに持ち込むほかに直接解体事業者に持ち込むことになるが、不法 投棄という形で手放す場合もある。一般的には各ディーラーおよび解体事業者は最終ユー ザーに対して対価を支払うが、廃車手続きには諸費用が必要になるため、現在ではここで 逆有償になるケースも多く、この逆有償化を原因として不法投棄が発生している。(逆有償 の意味とその問題点については外部要因と内部要因で詳しく触れることとする。)また、日 本の自動車登録制度には登録を解除する際に一時抹消と永久抹消の二種類があるが、法の 網の目をかいくぐり、解体証明書が不要で逆有償の際でも費用の掛からない一時抹消を利 用して「永久抹消」としてしまうケースも存在している。これも結果的には不法投棄に結 びついている。

②:新車ディーラー及び中古車ディーラー

各ディーラーはユーザーより引き取った ELV を解体事業者へ持ち込む。解体事業者か ら見てELVは資源の塊であるため、これまでは有価物として引き取られてきた。しかし、

現在では上記同様逆有償化が起こり、ディーラーはユーザーから処理料金を受け取り、そ の一部を利益とする一方で処理費用を支払った上で解体事業者に引き取って貰うケースが 存在している。そのため、ディーラーの中には解体事業者へ処理料金を払わず、不法投棄 してしまう業者が存在してしまう。また、中古車ディーラーは中古車あるいは廃車という 形で海外への輸出も行っているが、この中古車輸出は逃げの手段としても受け取れる。そ れは、ELVの最終的な処理を他国に委ねることに他ならないからである。

③:解体事業者

解体事業者は、引き取った ELV から有用な部品や、非鉄金属、バッテリーなどを抜き 取り、また、問題視されているフロンガスやエアバックについては、メーカーから処理費 用を徴収して処理している。有用な部品は中古利用(以下リユース)、あるいは海外へと輸 出され、非鉄金属、バッテリーは素材としてリサイクル(以下マテリアルリサイクル)す る。これらのリユース製品やリサイクルされた製品の販売収入が解体事業者の収入となる。

こうして解体された ELV はシュレッダー事業者や簡易プレス業者に引き取られる。しか し、ここでも逆有償化により一部の解体事業者はシュレッダー事業者にその処理費用を支 払うことが出来ず、ELVを不法投棄してしまう場合がある。なお、解体事業者にてリユー ス・マテリアルリサイクルされる割合は自動車一台全体の中で25%程度となっている。ま た、日本には解体事業者が約5,000 社存在するといわれているが中小企業や零細企業が主 体であり、その解体過程における設備が貧弱であり、環境にもたらす悪影響が懸念されて いる。

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④:シュレッダー事業者

  シュレッダー事業者とは、主にマテリアルリサイクルを行う主体であり、全国に約140 社存在すると言われている。具体的には、解体事業者から引き取ってきた ELV をシュレ ッディングすることにより、鉄、アルミなどの非鉄金属、樹脂類を分別する。可能な限り 鉄、非鉄金属を分別した後の残りの樹脂類などは、シュレッダーダストと呼ばれる産業廃 棄物となり、最終処分場にて埋め立てされる。実際は埋立処分事業者へ処理費を支払い、

引き渡す形となる。この際、直接埋め立てされるケースと焼却された後に埋め立てされる ケースがある。焼却するメリットは嵩密度の低いシュレッダーダストを密度の高い廃棄物 とするだけでなく、焼却時に発生する熱エネルギーを回収することである。リサイクル率 向上にはこの熱エネルギーの回収が必要不可欠であり、このため現在電炉や高炉の新たな 設置やその改善が望まれている。一方、シュレッダー事業者の収入は鉄、非鉄金属の販売 によることになるが、埋立処分事業者へ払う処理費用をその収入で賄えず、シュレッダー ダストを不法投棄してしまうケースもある。また、シュレッダー事業者が存在する一方で 簡易プレス業者という主体がある。これは、シュレッダー事業者のような資源の分別をお こなわずにギロチンと呼ばれる簡易プレスによって処理をおこなう。この簡易プレス処理 はシュレッダー処理に比べコストこそ低いものの鉄や銅の純度を著しく下げてしまうとい う欠点があり、問題視されている。

現在、日本では ELV は焼却による熱エネルギー回収を含めると約 75%がリサイクルさ れており、最終的にはELV の約 25%がシュレッダーダストとして処分されていることに なっている。ELVのリサイクルは上述のように、そのシステムがある程度出来上がってい る。また、リサイクル率も他の廃棄物と比較するとかなり高いことがわかる。しかし、ELV に関してはこれ以外にもさまざまな問題があり、近年それが顕在化している。それら問題 については以下のⅢ章にて詳しく検証する。

Ⅲ章.使用済み自動車処理における問題点の詳細な分析

  Ⅱ章では現在の使用済み自動車処理システムと問題点について簡単に述べた。本章では、

上記の問題点を外部要因と内部要因とに分けて詳細な分析を行う。

外部要因

  外部要因として挙げられるのは、最終処分場の逼迫と鉄スクラップ価格の下落である。

(1) 最終処分場の逼迫

最終処分場の残余容量は全国平均で一般廃棄物は約8年、産業廃棄物の場合は約 3 年と非常に厳しい状態にある。さらにシュレッダーダストからの汚染排水の問題 をふまえた環境対策面から、96年4月からダスト(産業廃棄物)の処分が安定型埋

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め立て処分から、管理型埋め立て処分に改定された。管理型処分場は、埋め立て地 から生じる浸出液による地下水および公共の水域の汚染を防止するため、遮水工(埋 め立て地の側面、底面にビニールシートなどを設ける)、浸出水を集める集水設備、

集めた浸出液の処理施設を必要とする為処分費用が高い。また管理型処分場の数は 全国で非常に少ないので、シュレッダーダストを処分できる処分場はさらに限られ ることになる。安定型処分場であれば 5、000〜8、000 円/tの処分費をシュレッ ダー業者が支払えばよいが、管理型処分場へ支払う処分費は 25、000/t に高騰し ている。2この費用は処分場サイドによって一方的に決められてしまう。

図2  最終処分場の残余容量       単位(千 m3) 

209,840 207,670 210,039

157,885

107,616

0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000

H7 H8 H9 H10 H11

経済産業省 

※平成 10 年後の数値は推測値である 

(2) 鉄スクラップ価格の下落

シュレッダー業者によって分別され、鉄鋼業者に販売される鉄スクラップ価格が、

不況の煽りをうけて下がっている。1985年プラザ合意を受けた円高を契機として鉄 スクラップ価格は下落の一途をたどり、85年以前には 20、000〜30、000円/tだ った価格が現在では8、000円/t代まで落ち込んでいる。

(1)、(2)から、シュレッダー事業者は処理費用を自らの収入でまかないきることができ ず、解体業者から処理費用をシュレッダー事業者に支払ってもらい、処理をすることにな る。これによって最終的に最終ユーザーが処分費用を負担することになる。これが逆有償 化であり、ELV処理の様々な問題の原因となっている。

  逆有償化の問題点としてまず、最終ユーザーがリサイクル費用、処分費用を全額負担し、

メーカーが処理費用を負担しないため、メーカーにリサイクル率を向上させるインセンテ ィブが働かないということが挙げられる。また、本来資源の塊であるELVは有価物とし

2  現在地方もそのコストが上昇しており、関東、関西、九州ともに 1 トンあたり 2 万円台を越え始めている。 

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図3  鉄スクラップ価格の推移

鉄スクラップ価格の推移

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000

1972年 1974年 1976年 1978年 1980年 1982年 1984年 1986年 1988年 1990年 1992年 1994年 1996年 1998年 単位:円/トン

鉄源協会  

て扱われ、ELVを事業者に渡す際は対価が得られるはずであるのに、逆有償化することに より、最終ユーザーや解体事業者、シュレッダー事業者は処理費用を出資して ELV を引 き取ってもらうこととなる。この逆有償化によって最終ユーザーや解体事業者、シュレッ ダー事業者は処理費用負担を避けるために不法に処分場でないところに ELV を捨ててし まうという不法投棄、路上放置の問題が生じさせている。このように逆有償化以降、静脈 産業の問題点が表面化しその不透明性などが問題視されている。

内部要因

  内部要因としてはメーカーに ELV の処理責任がないこと、モニタリングシステムの不 完全性、静脈産業が未発達、環境意識の低さが主として挙げられる。以下で詳しく検証し たい。

(1)自動車メーカーのELV処理責任

現在、日本の自動車メーカーには ELV の処理責任はなく、基本的には自動車を生 産し、売り払ってしまった後については何ら関与しない。つまり、自動車メーカーの 行為は一方的で自動車リサイクルの循環に組み込まれていないといえる。これによる 問題としては消費者である最終ユーザーがリサイクル費用、処分費用を全額負担して しまうことによって、不法投棄が発生するだけでなく、自動車メーカーは処理費用を 負担しないため、自動車メーカーにリサイクル率を向上させるインセンティブが働か ないことが挙げられる。現在、自動車メーカーは自主行動計画によってリサイクル率

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の向上など環境負荷の軽減に取り組んではいるが、これはあくまで自主的な行動であ り、義務ではない。

(2)モニタリングシステムの不完全性

日本ではモニタリングシステムとしてマニュフェスト制度が存在する。このマニフ ェスト制度とは、排出事業者(最終ユーザー)が ELV の収集運搬、処分を委託する 事業者に対してマニフェスト(管理表)を交付し、処理状況を確認するものである。

排出事業者はマニフェストに必要事項を正確に記入し、処分業者・処分方法などを委 託業者に伝えなければならない。こうすることで静脈産業をモニタリングすることが できると考えられて、ELVへのマニフェスト制度は平成11年12月1日から始まった が、諸々の問題が見えてきた。マニフェストは、解体事業者によって ELV が部品取 りされた後プレスされ、「ガラ」となった時点で、どのELVに対して発行されたもの か全く判断できなくなり、事業者はただ盲判を押すだけとなっている。また、排出事 業者によるマニフェストの交付率も非常に低く、交付率が高い排出事業者との取引が 多い解体事業者にとっては競争力がそがれる原因となっている。さらにマニフェスト を交付し記入する業務上のコストもかかる。マニフェスト本来の目的である廃棄物の 適正処理や不法投棄防止には全くかなっておらず、逆に無駄な紙を増やしているに過 ぎない。

(3)静脈産業が未発達

メーカーのように資源を消費して生産する側を一般に動脈産業と言い、これに対し て、生産物を処理・解体することによって再資源化を行う産業を静脈産業と言う。ELV においてこの再資源化を行う産業としては解体事業者とシュレッダー事業者が当ては まるだろう。以下でその各々が持つ問題点を指摘したい。

①  解体事業者

事業者が解体を行った後、ヤードに屑が不法投棄されている。解体事業者は戦 前からいたクズ屋が鉄の需要が高いことに目をつけてはじめたのがきっかけで、

基本的に零細であり、アウトローが多い。よって事業者全体の処理状態等に関す る情報を把握する事は大変困難であるし、また健全なビジネスとして成り立って いない。解体作業は職人芸的な人手中心の業態となっている。家内工業的な小規 模業態が特徴的であり、業界全体の団体を持たないため行政とのつながりや施策 の伝達も難しい。全国に3、500〜5、000 社の解体業者が存在するが、そのうち 1、500社程度しか稼動していない。最近では、事業者が解体後シュレッダー事業 者に処理を依頼するだけでなく簡易プレス後そのまま輸出したり、ギロチン材と してギロチン機に投入し、あるいは直接鉄鋼メーカーに出荷したりするケースが 増加してきている。シュレッダーでは選別機能が発揮されるがその他の場合、不 純物が混入されたまま電炉業者が炉に投入することになるので、鋼の質を低下さ せる問題がある。シュレッダーで処理されることを主とする従来のリサイクル体

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系が多様化してきている。これは、前述した逆有償化による費用支払いを避ける ためだと考えられる。リサイクル率向上や不法投棄防止をしていく上で自動車解 体業の働きが重要になってくるが、残念ながら、解体事業者の持つ歴史的背景か らもなかなか手をつけられていないのが現状である。

②  シュレッダー事業者

管理型処分場の絶対的な不足からシュレッダー事業者は 25、000/t の処分費 用を処分場サイドの一方的な出し値で支払っている。このコストをシュレッダー 事業者のみが負っている点が問題である。さらに、バブルがはじけ、電炉メーカ ーの恒常的な減産によって設備過剰になり、全国にある140基(1999年4月現 在)のシュレッダーの稼働率は60%を下回っていると見られている。鉄スクラッ プ価格が下落していることもシュレッダー事業者の経営難に輪をかけている。ま た、シュレッダーダストの中で今注目されているのが銅である。銅山から取れる 銅の純度は0、9%にすぎないのに対して、シュレッダー内から検出される銅の純 度は3%にも達する。現在、自動車リサイクルでは非鉄金属が従業員の手作業で 分別されているが、従業員の手でも分別出来ない銅線が現在の車両には非常に多 く使われている。これがリサイクルされずにいると自動車保有台数が増えていっ たときに銅の資源量が足りなくなるのではないかと懸念されている。

その他の問題点

ア、中古車、中古部品輸出における問題点

輸出後の ELV や、自動車部品の海外での廃棄までの流れは不透明であり、不安定で ある。したがって輸出された ELV が輸出先で十分な処理がなされていない可能性があ る。また、たとえば輸入国が突然製品の輸入を禁止すると上記のように静脈産業の整備 が不十分な日本は周辺環境の突然変異に耐え得る強さを持ち合わせていない。鉄スクラ ップ価格の下落でシュレッダーダストの処理費用が高騰したことはいい例である。リサ イクルシステムを十分に整備出来ないと、廃棄を輸出に依存していた分を国内で処理し きれなくなり、適正処理ができなくなる。よって安易に輸出すべきではないと言える。

イ、燃費とリサイクル率のジレンマ

近年の自動車は燃費向上の為リサイクルしにくい樹脂の使用が増加している。リサイ クルが容易な鉄の使用量が減っている。これは燃費とリサイクル率のジレンマである ウ、離島での問題

沖縄のような離島では廃棄物の処理がさらに困難な上、本州に運ぶためのコストが嵩 み処理システムを確立することも出来ないため、不法投棄が発生している。離島ではア ウトローな業者が鉄屑価格の高騰を待ち、処分しないで集めたものがゴミとなってしま うことが起きているが、この行為は取り締まりがなく、不法投棄によって徐々に染み出 すオイルなどの有毒物汚染が続いている。

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エ、環境意識

環境意識については環境問題全般での問題であるが、自動車廃棄物問題では特に重要 な要素であろう。例としては零細企業の多い解体事業者・シュレッダー事業者が挙げら れる。その多くは十分な環境意識がないせいもあって、施設への投資もおざなりで、適 正な処理がなされていない。リサイクル率向上のためには時間はかかっても、意識改革 は必須ではないだろうか。また、ユーザーの環境意識に関しては自動車に直結する教育 機関である自動車教習所がこの意識改革には適格であるが、その教習課程においては運 転に関する知識の教授のみしか行っていない。

以上の外部要因と内部要因を比較し、ELVの処理リサイクルシステムを確立する上で どこに刮目するべきであろうか。今まで表立っていなかった廃棄物問題が顕在化した理 由は外部要因にあり、その解決は非常に重要といえるだろう。しかし、外部要因である 最終処分場の逼迫と鉄スクラップ価格の下落、そしてその両者に起因する逆有償化を解 決し、ELVの処理システムを確立するのは非常に困難である。それは、第一に最終処分 場、特に ELV の廃棄が許される管理型処分場を増設するための用地を日本で十分に確 保するのは不可能であり、かつ処分場建設による ELV 処理システムは資源制約という 観点からも、根本的な打開策足り得ない。第二にプラザ合意に起因する鉄スクラップ価 格の下落は日本一国による問題ではなく国際的な観点からの対処が必要であり、それは 極めて難しいからである。そこで、我々は内部要因に解決の糸口を求めた。今日の問題 は外部要因によって、特に表面化したものであるが、その根本的な原因は内部要因にあ ると我々は考えた。つまり、逆に言えば根本的な原因である内部要因を解決できれば、

今日の様々な問題も解決できるのである。そして、我々は最終章でこの内部要因を解決 するための提言をする。しかし、その前に次章では現在それら問題点に対してどのよう な政策がとられているかを把握するため、現状把握を行う。

Ⅳ章.  現在の動き

現在、自動車廃棄物問題解決に向けて政府は法案を作成中である。自動車リサイクル独 自の法律を作成、施行することにより自動車廃棄物をさらに減らしていこうという根本的 な主旨がある。法案作成にあたって現在の議論を2つの視点から簡単に述べると、1点目 は自動車リサイクルシステムにおける役割分担についてである。2点目は費用徴収に関わ る問題で、様々な費用徴収パターンを考慮した上で良いと考えられるいくつかの方法に絞 っている。次にこれらの点について具体的に述べていく。

まず1点目の役割分担については大きく自動車メーカー、解体・シュレッダー事業者、

消費者、政府の4つに分けることができる。1つ目の自動車メーカーは、リサイクルシス テムの構築・運用について中心的な役割を担うとされており、設計段階からリサイクル率 向上に貢献する必要があるとされている。2つ目の解体・シュレッダー事業者については

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適確な使用済み自動車の引き取りと引き渡し、そしてなによりも適切な処理をすることが 必要とされている。3つ目の消費者の役割は、使用済み自動車を排出する際に不法投棄を せずに引取業者に適切に引き渡すことと、実際に自動車の恩恵を受けたものとしてのリサ イクル・環境負荷の発生防止に必要な費用を負担することである。最後に政府の役割とし ては、使用済み自動車のリサイクル・環境負荷の発生防止を円滑に進めるための法制化で ある。先に述べた各主体の役割が実際に行われるためにも枠組み作りが必要であり、その ために自動車の抹消登録制度やマニフェスト制度の見直しを踏まえた新たな法制化が必要 とされている。

次に、2点目の費用徴収に関わる問題である。産業構造審議会では、様々な費用徴収方 法をメリット・デメリットの点から比較した上でその中から経済的により効率的で公平的 であるという観点から3つの方法を取り上げた。1つ目は新車購入者から徴収し、車両価 格に上乗せする方法である。2つ目は使用過程の全ユーザーを対象として徴収し、リサイ クル券を導入する方法である。3つ目は最終ユーザーから徴収し、引取時に徴収する方法 である。このうち1つ目と3つ目の方法はそれぞれについて既販車についての対応可能性 を含めた負担の公平性、費用の徴収・管理の効率性等の観点から一長一短であるとされ、

2つ目のリサイクル券を使用した方法が有力視されている。そして現在それを利用した具 体的なリサイクルシステムが考えられている。ここで政府が検討中のリサイクル券を利用 したシステムについて具体的に触れてみる。最終ユーザーは ELV を引取事業者に渡す時 にリサイクル券を同時に渡さなければならない。リサイクル券は郵便局・コンビニで販売 されている。購入時期に制限はないので最終ユーザーではないユーザーでも購入できる。

例えば新車を購入した人はリサイクル券も購入して同時にディーラーに売ることもできる。

中古車を購入する時はリサイクル券がついているか否かで値段が異なる。また、リサイク ル券はマニフェストの役割も果たし、リサイクル券の費用は第3者機関にわたって、そこ で運営され、最終的に解体事業者等処理業者にその資金が行くという仕組みである。メリ ットとしてリサイクル券保有によってユーザーのリサイクル意識が高まろことや、費用を メーカー或いは第3者機関に納入することが1回ですむといったことが挙げられている。

ここで我々はリサイクル券をもちいたリサイクルシステムの問題点を検証する。まずリ サイクル券の価格の算定方法である。車種によって異なるならメーカーにリサイクルが容 易な自動車を設計するインセンティブを与えられることになる。しかし、価格決定をする 時期を決めることが困難である。販売時なのか十数年後の廃車時なのかを決める必要があ る上に、十数年後の費用計算は非常に困難である。次にリサイクル券は実は現金の変形で あり、果たしている役割は現金とあまり変わらないということである。リサイクル券を購 入する人は結果的に最終ユーザーが大半になってしまうのではないか、という懸念がある。

また中古車として輸出された車についているリサイクル券の取り扱いについて、仮に第3 者機関のプールに行くとすれば不公平が生じる。最後に、最大の問題点として費用負担割 合についての問題が挙げられる。政府の案は全て消費者の負担としている。メーカー負担

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にすることは、メーカーによる販売者への処理費用価格上乗せで最終的には消費者にも費 用負担はあるが、理論的には需要の価格弾力性によってメーカーと消費者の負担割合が決 まるはずである。政府の案だとメーカーに設計段階から廃棄物を減らそうとするインセン ティブ、つまりEPRを十分に与えることが出来ない。

Ⅴ章.自動車廃棄物処理システムの改善に向けて

  今まで、第Ⅰ〜Ⅲ章で自動車廃棄物システムの問題点について、そして、第Ⅳ章で実際 に現在新たなシステムの構築に向けて、政府がどのように動いているのか述べてきたが、

第Ⅳ章でも述べたように現在有力と見られているリサイクル券方式にもいくつかの問題点 を含んでいる。そこで私達は、このような現状のリサイクル券方式とは別の新たなリサイ クルシステムについて考えた。ここで私達は、すでにある程度既存のシステムが出来上が っている自動車廃棄物リサイクルシステムの特殊性を考慮し、できるだけ既存のシステム に沿った新たなシステムを模索した。既存のシステムに従うことは、既存の解体事業者や シュッレッダー事業者との摩擦も抑えられるであろうし、何よりまったく新しい何かを作 るよりはコスト的にも低減でき、より早いシステムの導入にもつながると考えられる。私 達が考えた新たなリサイクルシステムについて述べていくが、第Ⅲ章の最後でも述べたよ うに内部要因を解決することを目指し考えたものであり、法整備と市場原理の利用という 2つの観点から提言していく。

(1)法整備

静脈産業をビジネスとして競争原理を働かせ、適正業者が生き残れるようにしていけば、

社会的に最小の費用で適正処理ができる。しかし、その前に自動車から排出される廃棄物 の適正処理を行い、最終的にリサイクル率をあげていくには、自動車を設計し、製造する 段階からリサイクル、再資源化しやすいようにしていく必要がある。自動車は複雑な素材 や部品によって構成される商品であり、設計、開発段階からリサイクルのことを考え、リ サイクル率向上のイニシアティブを取れるのは自動車メーカーである。拡大生産者責任

(EPR)の原理に基づき、自動車メーカーに、廃棄物処理の「責任」を重点的に負わせる ようなシステムを作り上げれば、自動車メーカーに設計、製造段階からリサイクル、再資 源化を考えるインセンティブを与える事ができる。そこで自動車メーカーにも処理責任を 与えるような枠組みを法律でしっかりと定める必要があり、まずはその仕組みから述べる。

ただ、法律で定める必要があると考える部分は経済の活性化をできる限り阻害しないよう にするために、最小限度にとどめるようにした。

・自動車メーカーによるELVの無償引き取り

…現在、ELV の処理料金は逆有償化しており、最終ユーザーが処理料金を負担している。

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最終ユーザーもしくはディーラーが自動車を ELV と判断し、抹消登録した時点で、自動 車メーカーが無償でELVを引き取り、処理料金は自動車メーカーが負担するものとする。

このことによって、自動車メーカーは自動車販売時の価格に処理費用を上乗せすることが 考えられ、ユーザーは新車購入時に処理費用を含んだ価格を支払う。この処理費用の自動 車メーカーと新車ユーザーの負担割合は需要の価格弾力性によって決まり、自動車メーカ ーと新車ユーザーが処理費用を負担することになる。自動車メーカーは解体業者に料金を 支払って、その後の処理を委託するため、できる限り少ない料金に処理料金を抑えようと する。処理料金を低く抑えるためには、自動車の設計段階からリサイクルしやすい自動車 を製造する必要があるので、結果的に設計段階から廃棄物を減らそうとするインセンティ ブを自動車メーカーに与えることができる。もしくは業者に処理を依頼するより自らの設 立した施設で処理を行った方が安いと考え、静脈産業に積極的に参入することも考えられ る。これによって、既存の事業者との間に競争原理がおこり、結果的に適正事業者が生き 残ることになる。

ただし、ここで注意すべき問題として新車販売時の価格上乗せの料金設定をどうするか と倒産したメーカーや輸入車、資金管理ができないほど小規模なメーカーの ELV の処理 費用を誰が負担するのかという問題である。まずは前者についてであるが、自動車がELV となるまでには十数年かかるので、価格を上乗せする時点で、その車の処理費用を計る事 はできない。よって我々は「年金方式」で、上乗せ費用を定める事を提案する。次に、後 者の問題についてであるが、メーカーの共同出資による第3者機関 マルク (まるく回る 社会である循環型社会になることへの期待を込めて命名)の設立である。このマルクの母 体となる機関として2000 年12月に自動車関係業界の各団体によって設立され、スタート した「(財)リサイクル促進センター」を利用すると考える(当センターは自動車メーカー や、その他自動車関係業界の出資で設立された。)また、このマルクについて詳しくここで 述べると、この機関はメーカーの出資によって設立され運営されるが、使用済み自動車の 処理費用については、国産車の場合は各メーカーから、輸入車の場合は輸入事業者から徴 収する。そして、そのより具体的な徴収方法としては、[基 準 価 格 × 重 量(ト ン)× リ サ イ ク ル 可 能 格 付 け = 徴 収 費 用]の方程式を使用する。ここで、言葉の説明をする。まずは基準 価格についてであるが、これは各地域ごとに見た1トンあたりの平均処理費用とする。次 にリサイクル可能格付けについては、マルクが各種類の自動車を評価し5段階に分ける。

ここで評価方法について補足しておくと、評価は物質面と解体面からする。物質面では、

鉄、アルミ、プラスチックの含有量を考慮し、どれだけリサイクルしやすいかを判断する。

また、解体面では、エアバックなどの危険物などを考慮し、どれだけ分解しやすいかを判 断する。これによって、各メーカーにとって公平であるとともに各メーカーによりリサイ クルしやすい車を開発するインセンティブにつながると考えられる。

・マニフェスト

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自動車メーカーは ELV の処理をより安い料金で済まそうとするので、必ずしも適正に 処理をしている事業者に処理を委託するとは限らない。単に安い料金でELVを引き取り、

部品だけ売り払って不法投棄を行う業者も十分に考えられる。必適正業者によって処理が 進められていくようなフローが出来上がらなくてはならない。そのためには、静脈産業の 事業者が適正な処理をしているかどうかをモニタリングする必要がある。そのためには、

現在使用されているマニフェストを、もっと実用的なものに改良する必要がある。

現在使用されているマニフェストは紙製のもので、6 枚つづりで事業者が記入していく 形態をとっている。前述したように、最終的に ELV が「ガラ」になった時点でどのELV に対して交付されたマニフェストか判断出来なくなるという問題点の他、排出事業者がマ ニフェストを発行するコストを考えるとき、月に20台の ELV を排出する事業者と、月 に100台の ELV を排出する事業者ではマニフェストを交付する業務上の手続きにも時 間にも大きな差が出る。また排出事業者内の下取り車、もしくは中古車の入庫・販売・在 庫管理システムが電子化されているところもあるので新たにマニフェストを交付するプロ グラムを作成し、運用するのは手間がかかる。また、マニフェストを発行してから、最終 的に排出事業者が回収するまでに長期間を要してしまう。このように、現行のマニフェス ト制度には様々な問題が起きており、本来の目的であるモニタリング効果を十分に発揮で きていない。

そこで、我々は電子マニフェスト制度を提案する。自動車が永久抹消登録され、ELVに なった時点でマニフェストの登録を開始する。静脈産業の各業者は、ELVの処理を引き受 けた時点で ELV に関する様々な情報をコンピューターの電子マニフェストに登録する。

登録した情報はホストコンピューターに保存され、ホストコンピューターはマルクが管理 するものとする。解体事業者に行き着くまでの ELV のマニフェストは1 台についての情 報として登録されるが、解体事業者がガラをシュレッダー事業者に引きわたす時点で、重 量ベースの換算に変更する。シュレッダー事業者は引き受けた廃棄物全ての重量をコンピ ューターに記録しておき、処分場に廃棄するシュレッダーダストの量と、電炉業者に販売 する鉄スクラップの量を足しあわせた量が等しいことを確認できるようにする。そのため に処分場で引き受けたダストの重量をマニフェストに記録する。紙マニフェストにおいて は、1 枚の紙に各業者が記入するだけなので、1 台1葉のマニフェストしか使用出来ない がマニフェストを電子化することにより、途中から重量ベースに変更して登録することも 可能になる。また発行や配送のコストを削減できる。さらに、マニフェストの進行状況が 常時確認できる為、状況把握も容易である。

ここで注目すべき点は、マニフェストによって処理状況のモニタリングができるように なり、適正処理が完全に行われるように一見思えるが、マニフェストはあくまで業者自身 が情報を登録するので、偽りの情報を登録することも十分に考えられるという点である。

実際は不適正処理、不法投棄を行っているのに、マニフェスト上では適正処理をしている ように見せかける事もできてしまう。そこで、各事業者に詳細かつ正確な処理方法をマニ

(15)

フェストに記入することを義務づけ、もし、これとは異なった処理が行われていたことが 発覚した場合には法的な処罰が与えられるものとする。それを検査する為に、ここで、廃 棄物処理法によって業許可を受けている事業者はマルクに登録を義務づける。マルクは年 1回の定期検査と、年1回の不定期検査を各事業者に対して行う。ここで、もし事業者が 不適正処理を行っていた事が発覚した場合、業許可を剥奪する権限をマルクに与えるもの とする。また、不適正処理や不法投棄が発覚した場合、マルクが処理責任を負うものとす る。マルクに登録していない事業者は、自動車メーカーからの処理料金を受け取れない。

図4  電子マニフェストの概念図   

情報の流れ  ELV の流れ 

・登録抹消制度

我々は、電子マニフェスト制度をうまく運用させるためにも現在の登録抹消制度を見直 す必要があると考えている。その見直し方法について述べる前にⅡ章で軽く触れた登録抹 消制度について、ここでもう一度確認しておく。現在の登録抹消制度には、永久登録抹消 と一時登録抹消の二種類があり、大半の使用済み自動車が一時抹消されている。今日の実 際の状況として、永久登録抹消は年約25〜50万件に対して、一時登録抹消は年約450 万 件である。このように一時登録抹消が多いのは、表1の比較から分かるように一時登録抹 消の方が解体証明書もいらずに自動車税を止めることができるためである。しかし、これ によって輸出されているのか、解体されているのか追跡できず、不法投棄や不適正処理さ れても分からないことが問題になっているのである。このような問題から、我々は登録抹 消制度、特に一時登録抹消について改正するべきだと考えている。具体的には、一時登録

マルク 解体事業者

排出事業者

シュレッダー事業者

行  政

処分事業者

(16)

抹消した場合、その有効期限を1年以内などとし、1年以上経つと再び自動車税がかかる ようにするのである。これによって、最終ユーザーや排出事業者から解体事業者までの間 に不法投棄がなされてしまうことも防止できるようになる。

表1       二つの抹消登録制度の比較

  永久抹消(15 条)  一時抹消(16 条) 

自動車の再使用の可否  不可能  可能 

解体証明書の要否  要  不要 

罰則規定  あり  なし 

抹消登録証明書の交付  なし  あり 

自動車重量税の還付  なし  なし 

自動車税の停止・還付  あり  あり  自賠責保険の停止・還付  あり  あり 

      (運輸省)    

 

以上のように法整備として、自動車メーカーによる無償引き取りとマルクの設立、電子 マニフェスト制度、登録抹消制度について見てきた。このような新しい仕組みやまた既存 の制度の見直しによって、自動車メーカーの処理責任に基づく適正処理の大きな枠組みを 整えることができる。次項では、これらに基づいた市場原理の動向について考察していく。

(2)市場原理の利用

・中古部品市場の活性化

鉄スクラップ価格の上昇が見込めない現状では、解体事業者にとって成長可能な収入源 は中古部品の販売である。そのためには、中古部品市場の活性化は必要であり、日本の中 古部品市場には発展する可能性が十分ある。中古部品市場の発達しているアメリカと比較 すると、アメリカの自動車保有台数は約2億台弱で、それに対する中古部品の年間売上は 5兆円にも上る。それに対して日本の保有台数は約7400万台で中古部品の年間売上は2000 億円にすぎない。このように日本の市場はアメリカの市場に比べてかなり遅れていて、拡 大する余地は十分にあるといえる。また、中古部品の価格は表2のようにほとんどが新品 の半分以下であり、その安さでユーザーに支持されている。実際に、現在日本の自動車中 古部品市場は活性化しつつある。折からの不況で、ユーザーは事故等での自動車の修理に おいて、新品の部品への入れ替えよりも安い中古部品に目を付けることが増えていること もその要因の一つである。リサイクルの概念として重要な「Reuse」という観点からも、

中古部品市場の活性化は非常に重要であると考えられる。

しかし、日本の中古部品市場の拡大にマイナス影響を持ついくつかの問題がある。それ は、車検を始め、リビルトの基準が多すぎるなど相対的に基準が厳しすぎることや中古部 品の質に対する信頼の問題などである。また、中古部品のネットワークも十分にできてい

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ないことも挙げられる。

以上より、中古部品市場を活性化させるには、まず規制の緩和が必要である。その上で 補助として中古部品販売事業者と保険会社の連携による中古部品に対する保証が必要にな ってくるである。最後に全国のネットワークを強化するために IT 化促進や流通方法の強 化が必要である。

中古部品の信頼は大事であり、規制を緩和するばかりでは、一度問題が起きると信頼を 失い中古部品市場の活性化に大きな支障をもたらすので十分気をつけなければならない。

フェンダーやバンパーのような、単純な機能をもった部品であれば中古部品の使用も差し 支えが無いとユーザーは考えるが、エンジンのような複雑な機能を持った部品を中古とし て使用する事は、安全面等からまだまだ使用を差し控えている部分が多い。そこで、中古 部品に対して、保険制度を設ける事を提案する。つまり、ある中古部品の価格に保険料を 上乗せし、保険料の一部はメーカーが中古部品の安全性を検査する費用に当て、残りを保 険会社の儲けとする。保険制度を適用する中古部品は、 マルク に登録している解体事業 者等のみとする。これによって、ユーザーの安心感を得る事ができるのと同時に、適正事 業者に対するアドバンテージを与えることができる。

また、ネットワークについては、現在の日本ではNGPや、ビッグウェーブを中心に中 古部品の在庫管理ネットワークを形成し余った在庫を融通しあうという動きが出てきてい る。3NGPは独自の中古部品在庫情報を全国的に完成・稼動している。地域内のネットワ ークを充実させることが重視されてきている。両社とも中古部品の融通機能というより中 古部品業者の情報交換ネットワーク機能としての比重が高くなってきている。しかし、日 本全体に渡るのネットワークはまだできていなく、中古部品市場に対する情報がまだ不十 分である。しかし、インターネットを利用して全国の中古部品の情報を簡単に確認できる ようにする必要がある。保険会社にとっても安い中古部品の使用をユーザーに促す方が都 合が良いはずである。

また、中古部品市場が活性化することによって確実に廃棄物を減らす事ができる。さら に中古部品の販売によって得られる利益が大きくなれば、ELVが有価物として取引される ようになり、逆有償化が解消されることも考えられる。ユーザーへの安心感を与える事を 定着させ、中古部品の使用を積極的にさせるようにするためにも、上記のような保険制度 の導入は重要である。

3  既存のネットワーク:ビッグウェーブ、日本グッドパーツ(NGP)、九州部友会、札幌システムグループ、システム オートパーツグループ等 

ビッグウェーブ:  正加盟店が 100 社、準加盟店が 10 社ほど。今後の注力分野をリビルトパーツとして、今後はビッ グウェーブ本部でリビルトパーツの内製化研究を進めていく方針である。また、品質管理の徹底と、

商品の信頼性の確保に力を入れている。中古部品には、独自の保険制度(住友海上と提携)による 保証も設けている。 

NGP グループ:  加盟店 121 社、計 160 拠点を全国展開する、業界最大の中古部品流通ネットワークとなっている。

主なネットワークには、「スーパーラインネットワーク」、「スーパーライン・プラス 1」「スーパ ーメイト」等がある。また、NGP グループの主体は中古パーツであり、売れ筋商品はエンジンであ る。一方リビルトパーツの売れ筋はドライブシャフトとなっている。 

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表2中古部品の価格 

  新品価格  中古価格 

エンジン  660,000 円  100,000 円 

フロントドア  32,000〜48,000 円  8,000〜30,000 円  フロントフェンダー  16,800〜67,300 円  7,000〜30,000 円  バンパー  14,200〜42,000 円  8,000〜25,000 円  トランスミッション  126,000〜261,000 円  20,000〜160,000 円  オルタネーター  62,400〜77,000 円  8,000〜23,000 円  ウインドガラス  48,000〜204,000 円  12,000〜80,000 円  ラジエーター  46,400〜88,100 円  10,000〜35,000 円 

      (清水商会提供) 

・市場競争原理の利用

現在まで、動脈産業と静脈産業が分かれていることで動脈産業と静脈産業はお互いにあ まり関係せずに独自の活動をつづけてきた。しかし、この結果不法投棄や不適正処理等の 問題が生じてきたと考えられる。

このような問題を解決するためには、「静脈産業の動脈化」が必要であると私達は考えて いる。つまりは、静脈産業をもっとひらけたものにし、法整備を充実させて適正な事業者 間での市場原理を導入するのである。またゴミ処理においてメーカーが生産し、それを自 分で処理するようになる可能性も考えられる。これによって、メーカーは処理しやすいも の、また自分で再利用しやすいものを作るようになり、リサイクル率も伸びると考えられ る。現在、ELV処理において逆有償化という現象が起こっている日本の静脈産業において、

料金を支払って処理を委託してしまえば後の処理に責任はなく、それでよいという考えが うまれてしまう状況を改善するために、法律と市場原理を有効に活用して、適正処理を促 しリサイクル率を上げるシステム作りを提言した。

マルクの設立による自動車メーカーの無償引き取り制度、電子マニフェスト制度による適 正処理の管理、マルクによる適正処理の検査というシステムを作り上げた上で、各業者間 で適正処理をさせるインセンティブを与え、市場の競争原理でより低コストで適正処理を する事業者が成長し、生き残る環境を作る必要がある。

以上が、我々が使用済み自動車処理における問題点を解決するためのシステムの提言だ が、これは短期的な解決策であると言える。長期的に考えれば、ユーザーから静脈産業の 事業者に至る自動車に関わるすべての人が、廃棄物問題を真剣に考え、問題解決の為に協 力しようという姿勢をもつことが最も重要である。問題に対する意識が高ければフリーラ イダーも存在しないし、不法投棄も存在しない。そのために必要なのは「教育」である。

廃棄物問題に対し関係事業者に危機感を持たせるために、たとえばユーザーに対しては自 動車教習所における教育の徹底、静脈産業においては事業者間での会合や研修等を政府の 援助で積極的に行っていく必要がある。そしてなによりも、自動車業界において最も強大

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な位置を占める自動車メーカーが、大量生産による利益重視の企業経営を改め、資源の有 効利用と環境負荷の低い自動車の生産に日々尽力を注ぎ、業界全体に利潤追求と環境負荷 の低減を両立させるという指針はっきりと示していくべきである。つまり「産業の環境化」

である。ディーラーに教育を徹底させ、ユーザーへの情報提供、適正解体業者を選択する ことを徹底させることなどが必要である。

21世紀を迎えるにあたり、自動車という乗り物は人類の日々の生活に不可欠な商品と なっている。自動車が利便性だけを追求する時代は過ぎた。地球環境との調和を図るため に、廃棄物問題だけに限らず、自動車業界の果たすべき役割は大きい。我々の提言が自動 車業界の進むべき正しい道のりの手助けとなることを願い、この論文を締めくくることと する。

*お世話になった方 

・昭和メタル  代表取締役  栗原昭  様 

・財団法人  自動車リサイクル促進センター  齊藤和紀  様 

・京葉自動車社長  日本ELVリサイクル推進協議会  会長  酒井清行  様 

・株式会社ユーパーツ  代表取締役  清水信夫  様 

・メタルリサイクル株式会社  顧問  高橋征  様 

・株式会社自研センター  代表取締役  竹内啓介  様 

・ 社団法人  日本自動車工業会  環境統括部  原田和昌  様      (五十音順) 

   

*参考文献 

・エクセレント・ビークルの時代1、2/渡辺 昇治 

・高度技術集約型産業等研究開発調査/日本自動車研究所 

・グッズとバッズの経済学/細田衛二 

・クオータリーてつげん/社団法人日本鉄源協会 

・使用済み自動車自主行動計画/社団法人日本自動車工業会 

・日経ECO21/日経ホーム出版社 

・豊かな環境を次の世代に/社団法人日本自動車工業会 

・機械振興、9月号/財団法人機械振興協会 

・ 自動車リサイクルの国際比較  経済学研究第 66 巻、第 4 号/外川  健一 

・ 離島における廃車処理問題  経済学研究第 67 巻、第 1 号/外川  健一 

・ JAMAGAZINE  2000 年 6 月号/社団法人日本自動車工業会 

・ 欧米における使用済み自動車流通実態調査報告書  1999 年 3 月 

/社団法人日本自動車工業会 

・ SERVICE  NEW  WAVE  1998 年 No.9/サービスマーケティング研究会 

・ 月間ボディーショップレポート  2000 年 6 月 

・ 使用済み自動車に関する EU 指令と欧州のリサイクル事情/沼尻  到 

・ 地球環境問題と企業(2000 年 11 月)/山口  光恒 

・使用済み自動車の現状と課題/沼尻  到 

・ エクセレント・ビークルの時代1、2/渡辺 昇治 

・ グッズとバッズの経済学/細田衛二 

・使用済み自動車リサイクル・イニシアティブの策定・公表について  1997 年 5 月 23 日  通産省 

・産業構造審議会廃棄物処理・再資源化部会廃自動車処理・再資源化小委員会 中間報告  1996 年 4 月 1 日  環境立地局再資源化対策室 機会情報産業局自動車課 

・廃自動車のシュレッダーダスト 埋め立て処分方法が強化 

(20)

1996 年 5 月 20 日  日刊自動車新聞  

・BMWジャパンのリサイクル  2000 年 3 月 1 日  BMWジャパン広報室 

・環境報告書 1998、1999、2000  トヨタ自動車株式会社 

・高度技術集約型産業等研究開発調査/日本自動車研究所 

・クオータリーてつげん/社団法人日本鉄源協会 

・1999 日本の自動車工業  1999 年5月  社団法人自動車工業会 

・使用済み自動車自主行動計画/社団法人日本自動車工業会 

・豊かな環境を次の世代に/社団法人日本自動車工業会 

・JAMAGAZINE  1999 年3月、6月号  社団法人自動車工業会 

・日経ECO21/日経ホーム出版社 

・機械振興、9月号/財団法人機械振興協会 

・ SERVICE  NEW  WAVE  1998 年 No.9/サービスマーケティング研究会  

 

インターネットリソース 

・ 経済産業省   

http://www.meti.go.jp/ 

・ 廃棄物の処理及び清掃に関する法律  

http://www.tuat.ac.jp/^jaes/envres‑j/laws/a970137.html 

・ 使用済み自動車管理表(マニフェスト) 

http://www.jada.or.jp/Jada‑2051.htm 

・産業廃棄物の排出及び処理状況等について  1999 年 2 月  厚生省  水道環境部産業廃棄物対策室  http://www.mhw.go.jp/search/docj/houdou/1102/h0218‑3̲14.html 

・ Extended and Shared Producer Responsibility Phase 2 FRAMEFORK REPORT  1998.5.13 OECD  http://www.oecd.org    NV/EPOC/PPC(97)/20/REV2 

・わが国の廃棄物政策と拡大生産者責任  1997 年 7 月  山口光恒  http://www.econ.keio.ac.jp/staff/myamagu/ 

参照

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