第 59 回 (平成 21 年度) 国際会議出席費補助金受領者出席報告
16th European Bioenergetics Conference (EBEC2010) に参加して
京都大学農学研究科応用生命科学専攻 安部真人
財団法人農芸化学研究奨励会より国際会議出席費補助金 の交付を受け,2011 年 7 月 17 日‑22 日開催 (ワルシャワ) の 16th European Bioenergetics Conference (EBEC2010) に出席してきたので報告する.報告者は本会議においてポ スター発表を行ったことも併せて報告する.
EBEC2010 は生体エネルギーをキーワードにさまざまな 分野の研究者が集まる学会であり,具体的にはミトコンド リア,膜タンパク質,細胞内外のシグナル伝達,活性酸素 といったテーマを扱っている.報告者は “Synthesis of cardiolipin analogues bearing a biophysical probe at any position of the four acyl chains” というタイトルでポスター 発表を行った.
18 日 (大会二日目) はミトコンドリア呼吸鎖のセッ ションが設けられており,呼吸鎖酵素群についての最新の 報告を聞くことができた.また,公演中にカルジオリピン が呼吸鎖酵素との特異的な相互作用を示唆するデータも提 示されるなど,報告者のテーマにも直接関連する内容にも 触れることができた.ポスター発表もこの日に予定されて おり,化学合成を手法とした研究は全体を見渡しても稀な ようではあったが,程よく議論の輪が維持されて乗り切る ことができた.特に,ミトコンドリア外膜の研究者からい くつか興味深いコメントが得られたのは大きな収穫だっ た.それぞれに異なる背景を持っているだけに発想の違い は刺激的だった.幾つかの提案からは共同研究に発展でき るかもしれない貴重なものであった.
この日は Klingenberg 教授による特別公演も行われ,
ATP/ADP carrier と UCP (脱共役タンパク) についての 長年の研究を聞くことができた.膨大な資料を丁寧に解説 されてたが 45 分の規定ではとても収まるものではなく,
若干の延長の末に一部割愛となって終了となった.報告者 はポスドク時代に ATP/ADP carrier の阻害剤合成に携 わっており,本酵素研究をリードしてきた Kingenberg 教 授の講義を実際に聞く機会が得られたことは願ってもいな いことだった.
翌 19 日 (大会 3 日目) には ATPase の結晶解析を果た し,1997 年にノーベル賞を受賞した Walker 教授の公演
があり ATPase の C 環についての構造解析が詳細に報告 された.ATPase の代謝モデルの動画も示され,見るもの を引き込む工夫が凝らされていた.公演途中にマイクの音 声が乱れ,会場の空気が凍りついたが,原因は Walker 教 授自身の携帯電話にあることがわかり,電話に出る振りを して見せるなどユーモアに切り替えるあたりは英国紳士の たしなみといったところだろうか.
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左.ワルシャワ大学正門にて (所属研究室の三芳教授と).
右.ポスター発表の様子.
上.Klingenberg 教授の公演.下.Walker 教授の公演.
これ以降はもっと広い視野での聴講を心がけ,特にポス ターセッションで反響のあったミトコンドリア外膜の分野 の勉強に充てることにした.報告者自身は,これまでは呼 吸鎖をターゲットとしていたためにミトコンドリア内膜で のテーマ意識が強かったが,現在のテーマであるカルジオ リピンの性質や機能はミトコンドリア外膜においても重要
視されていることを改めて意識するきっかけとなった.
報告者にとっては始めての欧州でもあり,そのどれもが 新鮮な体験でした.この貴重な機会をご支援頂き誠にあり がとうございました.
㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱㌱ 2010環太平洋国際化学会議(Pacifichem2010)に参加し
て
長崎大学大学院工学研究科 郷田秀一郎
私は 12 月 15 日から 20 日までアメリカ合衆国ハワイ州 ホノルル市ハワイコンベンションセンター他で行われた 2010 環太平洋国際化学会議 (Pacifichem2010) に参加・発 表を行った (写真 1).本会議は約 5 年に 1 回,12 月に当 地で行われており,今回で 6 回目になる.主催の母体とな る学会は日本化学会・アメリカ化学会・カナダ化学会・
ニュージーランド化学会・オーストラリア王立化学会・韓 国化学会・中国化学会であり,今回はカナダ化学会がホス ト役となった.後援団体としても,わが国だけでも,応用 物理学会,日本エネルギー学会,日本分析化学会,化学工 学会,日本海水学会,日本木材学会,火薬学会,日本画像 学会,日本薬学会,環境科学会,日本環境化学会,日本油 化学会,高分子学会,日本希土類学会,光化学協会,触媒 学会,日本ゴム協会,表面技術協会,植物化学調節学会,
日本食品科学工学会,腐食防食協会,石油学会,日本生物 工学会,フラーレン・ナノチューブ学会,繊維学会,日本 セラミックス協会,有機合成化学協会,電気化学会,日本 糖質学会,日本栄養・食糧学会,日本農芸化学会と多岐に
わたっていた.
今回の学会のテーマは化学・技術&私たちの世界的環境 であった.会場にあった横断幕には,そのテーマの下に,
Promoting scientific exchange for a healthy & sustainable future とあり,これが化学分野での今回,学会を行う上で のキーフレーズとなった (写真 2).そして開催目的とし ては,本学会を通して環太平洋の化学者の交流を深めてい きたいとのことであった.今回は 13,500 もの演題が投稿 され,235 のシンポジウム,1092 の口頭およびポスター セッションが開催された.テクニカルプログラムには 69 カ国のコントリビューションがあった.
発表の分野としては分析化学・無機化学・高分子化学・
有機化学・物理化学・農芸化学・生化学・環境化学・材料
&ナノテクノロジー・代替エネルギー技術・コミュニ ティーへの化学・健康&技術・セキュリティーと広範囲に わたり,かつそれに従って会場も 3 会場に分けられてい た.私は生化学の健康と病理の糖質認識領域で発表を行っ たので,会場はハワイコンベンションセンターであった.
他の 2 会場とはバスで 20 分程度離れているため,事実上,
ハワイコンベンションセンターでの口頭発表のみを聞くこ とができ,他の 2 会場には,展示を見に 1 度だけヒルトン ハワイアンビレッジに行ったが,シェラトンワイキキには 行かずじまいであった.
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写真1 写真2