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松尾 繁 1 損害保険会社における巨大リスクの引受け 東京

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Academic year: 2023

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【平成24年度大会】

シンポジウム  報告要旨:松尾  繁

1

損害保険会社における巨大リスクの引受け

東京海上日動火災保険  松尾  繁

1.はじめに

本報告では、自然災害リスクを引き受ける代表的な保険である企業火災保険を題材として、

将来発生する可能性がある巨大災害について、リスク類型、今後の課題、課題に対して損害 保険会社がどのような取組みを行っているかを、引受実務に即して考察する。

 

2.巨大リスクの類型

企業火災保険における巨大災害として、1事故で複数契約において損害が発生する集積リ スクが挙げられ、代表例が①風水災(台風) ②地震 ③敷地外利益 の3つである。

風災および水災リスクは、通常は企業火災保険の普通約款で補償されるリスクであること や、台風は発生頻度も比較的高く、頻繁に観測される規模の台風でも巨額の保険金規模とな る可能性があるといった特徴がある。一方、地震は、頻度は台風ほどではないが、いつかは 発生することが確実であり、特定の巨大地震によって台風と同程度あるいはそれを上回る損 害を保険会社にもたらす可能性がある点で台風とリスクの性質を異にする。敷地外利益とは、

原材料の供給元や製品の供給先の事故により、原材料の供給や製品販売が停止することによ る利益損失のことで、ある供給元の罹災によって複数企業で同時に利益損失が発生する可能 性がある。 

 

3.リスクベース経営(ERM)の現場  

(1)東京海上日動の ERM の定義 

当社では、ERM を寧ろ成長戦略のために、『「リスク」「資本」「リターン」の3つの関係 を常に意識し、これを通じてステークホルダーに価値を提供しながら企業の持続的な成長を 実現すること』と定義している。即ち、①リスクを定性的および定量的に評価し、資本に見 合うだけのリスクを負うことを通じて適切な利益を獲得 → ②株主に利益を還元しつつ、資 本を拡充 → ③資本拡充により更に多くのリスクを資本の範囲内でとる という一連のサイ クルを回して、永続的に企業価値を高める経営手法を ERM としている。 

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【平成24年度大会】

シンポジウム  報告要旨:松尾  繁

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(2)リスク量の定量化とリスク評価モデルの活用 

弊社では、リスク量や期待値の定量的な把握に、内部で独自に開発したリスク評価モデル による定量的解析アプローチを行い、VaR や T-VaR といったリスク指標や EVA といった収益 性指標を参考に、引受方針や保有出再方針を検討している。大口契約等については、個々の 契約のリスク量や損傷度合いなどをモデルによって定量的に解析し、引き受けるリスク量対 比で適正な保険料が確保されているかといった観点などから保険料を算出している。 

 

4.巨大リスクの転嫁 

保有出再方針に基づいてリスクの転嫁を行っている。リスク転嫁の手法としては、大きく わけると①伝統的な再保険 ②証券化 ③保険会社間での等価リスク交換(リスクスワップ)

がある。最近はグローバルベースでの大規模自然災害多発の傾向がみられ、一方で大手再保 険会社によるマーケットの寡占という状況などから、特にコストの面から伝統的な再保険の 調達が困難になりつつある状況ともいえるため、当社も、マーケット環境も考慮しながらこ れらのベストミックスを図っている。一契約当たりで巨額の責任額での引受けとなる場合は、

特約再保険だけでなく任意再保険なども活用して、リスク移転を行っている。出再方式とし ては大きく分けて、比例再保険と、超過損害額再保険の2つがある。 

 

5.今後の課題と当社の取組み 

(1)今後の課題 

今後の課題として、①巨大台風や南海トラフ地震といった巨大自然災害が発生して甚大な 損害を被っても耐えうる管理態勢の構築 ②タイ洪水や敷地外利益など、現時点でモデルに 充分反映されていない非モデル化リスクの定量的な把握 ③グローバルベースでの集積管理 

④独自モデル予測精度向上およびモデルガバナンスの強化 といったものがある。 

(2)当社の取組み 

弊社では、グループ横断での集積リスク管理を強化し国内外一元的な集積リスク把握・管 理態勢の構築するため、引受上限額や保険引受けに関する優先順位付けに取り組む組織を立 ち上げた。今後も ERM を推進する中で、上記のような課題への対応を行いながら、管理手法 の高度化を図り、元受や再保険政策にも順次反映させる。 

参照

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