TOSHIN TIMES 2023 14
2018年にはフランス音響音楽研究所
(IRC AM)
へ留学し、音楽情報処理の研究を行いました。大学院時代には文部科学大臣賞、「ピティナ・ピアノコンペティションスタインウェイ賞」を受賞し、すっかり音楽家の道に進んだのですが、やはり研究をしていた頃は、自分にとって特別な時間でした。
クラシック音楽は歴史が長く、伝統が重視されることが多いので、保守的だと考えられているのではないでしょうか? でも実際のところ、クラシックは、革新の繰り返しによってその歴史がつくられ、伝統が守られていると僕は考えています。
音楽でも何でも、文化は革新を止めると緩やかに衰退していきます。伝統を守りつつ、どのように革新を起こしていくか、そのバランス感覚がとても重要なのです。そして、歴史に名を残す大音楽家たちはみな、伝統と革新のバランス感覚を持っている人物ばかりでした。 例えばベートーヴェンは合唱という概念がなかった交響曲に、合唱をメインに入れて、かの有名な『第九』を作曲しました。いまや『第九』は誰でも知っている、クラシックの定番中の定番になっています。また、
19世紀の
リストは、
奏家が入れ替わるのが当ものです。 30分程度で演の登竜門として出場する 積んだ音大生が音楽家へ ンテストは普通、研鑽を してみたのです。このコ プリコンテスト」に出場 ティション特級グラン ティナ・ピアノコンペ 年生のとき、ためしに「ピ 2018年、大学院1 と思っていたのです。 エンジニアになるものだ は研究者かソフトウェア 学科に進んだので、自分 しかし大学院では理系の クに親しんできました。 ピアノを弾き、クラシッ は子どもの頃からずっと もつきませんでした。僕 楽家になるとは全く想像 4年前までは自分が音
僕は「自分の将来の成長につながったらいいだろう」程度の気持ちで参加したのですが、なんとここでグランプリを受賞してしまったのです。音大生以外の人では史上初となるグランプリ受賞だったので、とても注目してもらえました。これが僕の、音楽家になる最初のきっかけでした。 たり前だったコンサートに、2時間のソロリサイタルというスタイルを持ち込みました。 歴史に名を残す音楽家は、活動の中で革新をし続けてきたのです。だから僕も、どのような革新ができるか、ということを考えて活動を行なっています。
東進卒業生
角
す み野
の隼
は や斗
とさん
東進卒業生であり、東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程を修了後、
国際的なピアニストとしてご活躍されている角野隼斗さん。将来の夢について、
キャリアについてうかがいました。
Toshin A lumni
Cateen
(かてぃん )
東大卒 で YouTube登録者数100万超 今話題の国際的 ピアニスト
﹁ 唯 一 ﹂ を 目 指 し 歴 史 に 学 び 知 識 を 蓄 積 す る
輝く
「唯一である」
ことを僕は何よりも大切にしています。これはアカデミアの世界で研究をしていたからこそ思うことです。アカデミアの世界では、新規性がないと論文にはなりません。論文における新規性とは、ほかの研究では明らかにされていないことを理解し、それについて新しい発見を報告することです。新規性が重要なのは研究に限らず、音楽や起業でも同じだと僕は思っています。
ただ、「唯一である」ことは常に不安と背中合わせでもあります。自分がやっていることと、同じことをしている人が誰も いないわけですから、時に不安になります。そうしたときは、歴史に学ぶべきだと考えています。歴史や伝統を学ぶことで、不安を自分の説得力に変
角野 隼斗
すみの はやと/1995年生まれ。開成中高、東 京大学工学部を経て、2020年に東京大学大学 院情報理工学系研究科修士課程を修了。ピア ニストとしての活動が評価されて東京大学総 長大賞を受賞。2018年にピティナ特級グラン プリを受賞、本格的に音楽活動を始める。
"Cateen(かてぃん)"名義で活動するYouTube の登録者数は100万人を突破。
歴史
や 伝統 を 学 び
不安
を 説得力 に 変 え る
飛躍
に は ︑先人 か ら 広 く
深 く 学 ぶ こ と が 必要
要なことだと思います。 く学ぶことが飛躍には必 偉大な人々から広く、深 しまうのではなく、他の ちっぽけな存在で閉じて えていく。自分という東進生として2014年の東大合格祝勝会に 参加しました。現代文の林先生や物理の苑 田先生の授業は今でも思い出深く記憶に 残っています。コロナ禍になってからは、学 校や社会生活でオンラインが活用されるよ うになりましたが、東進は映像を使った授業 の完全な先駆けでした。改めてすごいなと思 います。
©Wojciech Grzedzinski/ Darek Golik (NIFC)̃
ど の よ う な 革 新 が で き る か を 考 え て 活 動
▲2014年3月、角野さんが参加した 東進の東大合格祝勝会。