地球惑星圏物理学
恒星・太陽活動
1
太陽の内部構造
2
理科年表サイトより転載
中心核 (0 < R < 0.2R
⦿)
・温度 10
7K, 密度 10
2g cm
-3の高温高密度
・水素核融合反応 (PPⅠ反応)
放射層 (0.2R
⦿< R < 0.7R
⦿)
・放射によってエネルギー輸送
対流層 (0.7R
⦿< R < 1R
⦿)
・対流によってエネルギー輸送
水素を主成分とする電離したプラズマ
中心核から太陽表面までは直進すれば光速で2秒程度だが、
実際には光子は散乱を繰り返し、10
6-7年かけて表面に到達
2.3. 太陽風
太陽放射
27図2-3.太陽の放射強度スペクトル。オーム社『宇宙環境科学』より
2.3
太陽風
2.3.1 流体力学の基礎方程式
太陽風を記述するための道具として、ここで流体力学の基礎方程式を導出する。
平均自由行程:微視的には粒子の集合体である気体や液体 (総称して流体と呼ぶ)を、流体 力学では巨視的に平均化して連続体として取り扱う。粒子の平均自由行程 (他の粒子との衝 突の間に移動できる距離) を l とし、対象とする現象の典型的大きさを L とする。このとき、
l ≪ L ならば連続体と近似できる。逆に、l ≫ L もしくは l ∼ L ならば連続体ではなく粒子 として取り扱わなければならない。
平均自由行程l は、粒子密度 n、粒子の衝突断面積 σ を用いて、
l ∼ 1
nσ, (2.4)
と見積もることができる。地球大気の平均自由行程を見積もると、n = p/kBT ∼ 105/(10−23· 102) m−3 ∼ 1026 m−3, σ ∼ 10−19 m2 より、l ∼ 10−7 mとなる。これは人体の大きさ(∼ 1 m) に対して十分小さいため、人間の感じるスケールでは大気は流体として振る舞う。太陽風の 場合、地球軌道付近で平均自由行程が 1 AU 程度であり、連続体近似が成り立たないように 思える。実際には、太陽風が電離したプラズマで構成されているため、太陽磁場の磁力線と ともに運動することにより、連続体的な振る舞いをする (次章参照)。
ここでは簡単のため、粘性を無視した流体(理想流体) を考える。流体力学の方程式は、流 太陽の放射強度スペクトル
オーム社『宇宙環境科学』より
26
第
2章 太陽
空の温度
106 Kの高温領域を コロナ と呼ぶ。コロナが高温となる理由ははっきりとわかって いなかったが、近年の数値シミュレーションや太陽観測衛星「ひので」「
IRIS」の成果により、
対流などで磁気流体の横波である
Alfv´en波が励起され、コロナで波のエネルギーが熱エネル ギーに変換されているという「波動加熱説」が有力視されている。コロナの外延は静止した 状態になく、外へ向かって太陽風となって吹き出している。
図
2-2.太陽の大気構造。オーム社『宇宙環境科学』より
2.2 太陽放射
太陽からのエネルギー放出の大部分は電磁波として放射される。図
2-3に太陽放射のスペ クトルを示す。全放射の大部分は可視光と赤外線であり、この領域は太陽光球面温度である
約
5800 Kの 黒体放射 で近似できる。黒体放射はあらゆる波長の電磁波を吸収・放射できる理
想的な物体
(黒体
)の放つ放射であり、その放射スペクトルは温度
Tで熱力学平衡にある光子 のエネルギー分布を計算して求めることができる。そのようにして得られた単位時間・単位 面積・単位立体角・単位振動数あたりの放射エネルギー
Bν(T )は、
Bν(T ) = 2hν3 c2
1
exp (hν/kBT ) − 1, (2.1)
と書くことができる。ここで、
νは振動数、
cは高速、
hはプランク定数、
kBはボルツマン定 数である。単位時間・単位面積・単位立体角・単位波長あたりで書くと、
Bλ(T ) = 2hc2 λ5
1
exp (hc/λkBT ) − 1, (2.2)
ここで、
λは波長である。黒体放射のピーク波長
λmaxは、温度
Tと以下のような関係がある。
λmaxT = 2.898 × 10−3 [m K]. (2.3)
この関係式は ヴィーンの変位則 と呼ばれる。太陽光球面の温度
5800 Kを代入すると、ピー
ク波長は
500 nmの可視光であることがわかる。
図
2-3をみると、可視光より短波長の放射強度は光球面温度の黒体放射の値より大きいこ とがわかる。この波長帯の電磁波は光球面より上空の領域を起源とし、紫外線は彩層上部や 遷移層、
X線はコロナから放射されている。この波長帯は太陽活動の変動による放射強度の 変化が激しい。
26
第
2章 太陽
空の温度
106 Kの高温領域を コロナ と呼ぶ。コロナが高温となる理由ははっきりとわかって いなかったが、近年の数値シミュレーションや太陽観測衛星「ひので」「
IRIS」の成果により、
対流などで磁気流体の横波である
Alfv´en波が励起され、コロナで波のエネルギーが熱エネル ギーに変換されているという「波動加熱説」が有力視されている。コロナの外延は静止した 状態になく、外へ向かって太陽風となって吹き出している。
図
2-2.太陽の大気構造。オーム社『宇宙環境科学』より
2.2 太陽放射
太陽からのエネルギー放出の大部分は電磁波として放射される。図
2-3に太陽放射のスペ クトルを示す。全放射の大部分は可視光と赤外線であり、この領域は太陽光球面温度である
約
5800 Kの 黒体放射 で近似できる。黒体放射はあらゆる波長の電磁波を吸収・放射できる理
想的な物体
(黒体
)の放つ放射であり、その放射スペクトルは温度
Tで熱力学平衡にある光子 のエネルギー分布を計算して求めることができる。そのようにして得られた単位時間・単位 面積・単位立体角・単位振動数あたりの放射エネルギー
Bν(T )は、
Bν(T ) = 2hν3 c2
1
exp (hν/kBT ) − 1, (2.1)
と書くことができる。ここで、
νは振動数、
cは高速、
hはプランク定数、
kBはボルツマン定 数である。単位時間・単位面積・単位立体角・単位波長あたりで書くと、
Bλ(T ) = 2hc2 λ5
1
exp (hc/λkBT ) − 1, (2.2)
ここで、
λは波長である。黒体放射のピーク波長
λmaxは、温度
Tと以下のような関係がある。
λmaxT = 2.898 × 10−3 [m K]. (2.3)
この関係式は ヴィーンの変位則 と呼ばれる。太陽光球面の温度
5800 Kを代入すると、ピー
ク波長は
500 nmの可視光であることがわかる。
図
2-3をみると、可視光より短波長の放射強度は光球面温度の黒体放射の値より大きいこ とがわかる。この波長帯の電磁波は光球面より上空の領域を起源とし、紫外線は彩層上部や 遷移層、
X線はコロナから放射されている。この波長帯は太陽活動の変動による放射強度の 変化が激しい。
プランクの法則
ヴィーンの変位則
26 第 2 章 太陽
空の温度 10
6K の高温領域を コロナ と呼ぶ。コロナが高温となる理由ははっきりとわかって いなかったが、近年の数値シミュレーションや太陽観測衛星「ひので」「 IRIS 」の成果により、
対流などで磁気流体の横波である Alfv´en 波が励起され、コロナで波のエネルギーが熱エネル ギーに変換されているという「波動加熱説」が有力視されている。コロナの外延は静止した 状態になく、外へ向かって太陽風となって吹き出している。
図 2-2 .太陽の大気構造。オーム社『宇宙環境科学』より
2.2 太陽放射
太陽からのエネルギー放出の大部分は電磁波として放射される。図 2-3 に太陽放射のスペ クトルを示す。全放射の大部分は可視光と赤外線であり、この領域は太陽光球面温度である
約 5800 K の 黒体放射 で近似できる。黒体放射はあらゆる波長の電磁波を吸収・放射できる理
想的な物体 ( 黒体 ) の放つ放射であり、その放射スペクトルは温度 T で熱力学平衡にある光子 のエネルギー分布を計算して求めることができる。そのようにして得られた単位時間・単位 面積・単位立体角・単位振動数あたりの放射エネルギー B
ν(T ) は、
B
ν(T ) = 2hν
3c
21
exp (hν /k
BT ) − 1 , (2.1) と書くことができる。ここで、 ν は振動数、 c は高速、 h はプランク定数、 k
Bはボルツマン定 数である。単位時間・単位面積・単位立体角・単位波長あたりで書くと、
B
λ(T ) = 2hc
2λ
51
exp (hc/λk
BT ) − 1 , (2.2)
ここで、 λ は波長である。黒体放射のピーク波長 λ
maxは、温度 T と以下のような関係がある。
λ
maxT = 2.898 × 10
−3[m K]. (2.3) この関係式は ヴィーンの変位則 と呼ばれる。太陽光球面の温度 5800 K を代入すると、ピー
ク波長は 500 nm の可視光であることがわかる。
図 2-3 をみると、可視光より短波長の放射強度は光球面温度の黒体放射の値より大きいこ とがわかる。この波長帯の電磁波は光球面より上空の領域を起源とし、紫外線は彩層上部や 遷移層、 X 線はコロナから放射されている。この波長帯は太陽活動の変動による放射強度の 変化が激しい。
・可視光, 赤外線がエネルギーの大部分。5800 Kの黒体放射でよく近似できる
・紫外域は太陽大気から放射
紫外線 → 彩層上部から遷移層, X線 → コロナ
3
オーム社『宇宙環境科学』より
光球(光球面)
・温度 5800 K
・可視光の見かけ上の表面
彩層
・温度 8000Kまでゆるやかに上昇
・フレア, プロミネンス
遷移層
・温度急上昇
コロナ
・温度 10
6K (波動加熱?)
・太陽風, コロナ質量放出
太陽の大気構造
4
太陽の輻射圧
太陽重力と輻射圧の比
輻射圧
半径
R, 質量 m,密度
ρ重力
34
第
3章 惑星間空間
ρ
を持ち、半径
Rの球形の物体を考える。質量
m = 4π3 R3ρである。太陽からの光を吸収す ることで受ける輻射圧による力は、
Fγ(a) = L⊙
4πa2c × πR2, (3.3)
となる。一方、太陽が質量
mの物体に及ぼす重力は、
Fg(a) = GM⊙m
a2 , (3.4)
となる。中心星の輻射圧と重力がこの物体に及ぼす力の比は、
Fγ(a)
Fg(a) = πR2L⊙ 4πa2c /
!GM⊙
a2
4π
3 R3ρ
"
= 3L⊙
16πGM⊙cRρ
= 5.79 × 10−7 ! R 1 m
"−1 ! ρ
103 kg m−3
"−1
. (3.5)
ちなみに
ρ = 103 kg m−3 (1 g/cc)は氷の密度だが、岩石の場合でも同程度のオーダーであ
る。式
(3.5)から、輻射圧と重力の比は中心星からの距離
aに依存しないことがわかる。ま
た、サイズが小さいものほど輻射圧の影響を受けるようになる。惑星にとって輻射圧の影響 は無視できるほど小さいが、小さなダスト粒子
(惑星間塵、彗星の塵の尾
)は太陽の輻射圧を 受けて運動する。
3.2 惑星間空間磁場
3.2.1 サイクロトロン運動
惑星間空間には太陽風のプラズマと磁場が広がっている。プラズマを構成する荷電粒子は 磁場から力を受けて運動するが、そのもっとも典型的な運動が以下に示す サイクロトロン運 動 である。
電場は無く
(E = 0)、
z方向に一様な磁場があるとする
(B = Bzˆ)。質量
m,電荷
qのプラ ズマ粒子の運動方程式は、
mdv
dt = qv × B, (3.6)
となる。各方向成分について書き下すと、
mdvx
dt = qBvy, mdvy
dt = −qBvx,
34
第
3章 惑星間空間
ρ
を持ち、半径
Rの球形の物体を考える。質量
m = 4π3 R3ρである。太陽からの光を吸収す ることで受ける輻射圧による力は、
Fγ(a) = L⊙
4πa2c × πR2, (3.3)
となる。一方、太陽が質量
mの物体に及ぼす重力は、
Fg(a) = GM⊙m
a2 , (3.4)
となる。中心星の輻射圧と重力がこの物体に及ぼす力の比は、
Fγ(a)
Fg(a) = πR2L⊙ 4πa2c /
!GM⊙
a2
4π
3 R3ρ
"
= 3L⊙
16πGM⊙cRρ
= 5.79 × 10−7 ! R 1 m
"−1 !
ρ
103 kg m−3
"−1
. (3.5)
ちなみに
ρ = 103 kg m−3 (1 g/cc)は氷の密度だが、岩石の場合でも同程度のオーダーであ
る。式
(3.5)から、輻射圧と重力の比は中心星からの距離
aに依存しないことがわかる。ま
た、サイズが小さいものほど輻射圧の影響を受けるようになる。惑星にとって輻射圧の影響 は無視できるほど小さいが、小さなダスト粒子
(惑星間塵、彗星の塵の尾
)は太陽の輻射圧を 受けて運動する。
3.2 惑星間空間磁場
3.2.1 サイクロトロン運動
惑星間空間には太陽風のプラズマと磁場が広がっている。プラズマを構成する荷電粒子は 磁場から力を受けて運動するが、そのもっとも典型的な運動が以下に示す サイクロトロン運 動 である。
電場は無く
(E = 0)、
z方向に一様な磁場があるとする
(B = Bzˆ)。質量
m,電荷
qのプラ ズマ粒子の運動方程式は、
mdv
dt = qv × B, (3.6)
となる。各方向成分について書き下すと、
mdvx
dt = qBvy, mdvy
dt = −qBvx, mdvz
dt = 0, (3.7)
重力
輻射圧
34
第
3章 惑星間空間
ρ
を持ち、半径
Rの球形の物体を考える。質量
m = 4π3 R3ρである。太陽からの光を吸収す ることで受ける輻射圧による力は、
Fγ(a) = L⊙
4πa2c × πR2, (3.3)
となる。一方、太陽が質量
mの物体に及ぼす重力は、
Fg(a) = GM⊙m
a2 , (3.4)
となる。中心星の輻射圧と重力がこの物体に及ぼす力の比は、
Fγ(a)
Fg(a) = πR2L⊙ 4πa2c /
!GM⊙
a2
4π
3 R3ρ
"
= 3L⊙
16πGM⊙cRρ
= 5.79 × 10−7 ! R 1 m
"−1 ! ρ
103 kg m−3
"−1
. (3.5)
ちなみに
ρ = 103 kg m−3 (1 g/cc)は氷の密度だが、岩石の場合でも同程度のオーダーであ
る。式
(3.5)から、輻射圧と重力の比は中心星からの距離
aに依存しないことがわかる。ま
た、サイズが小さいものほど輻射圧の影響を受けるようになる。惑星にとって輻射圧の影響 は無視できるほど小さいが、小さなダスト粒子
(惑星間塵、彗星の塵の尾
)は太陽の輻射圧を 受けて運動する。
3.2 惑星間空間磁場
3.2.1
サイクロトロン運動
惑星間空間には太陽風のプラズマと磁場が広がっている。プラズマを構成する荷電粒子は 磁場から力を受けて運動するが、そのもっとも典型的な運動が以下に示す
サイクロトロン運 動である。
電場は無く
(E = 0)、
z方向に一様な磁場があるとする
(B = Bz)ˆ。質量
m,電荷
qのプラ ズマ粒子の運動方程式は、
mdv
dt = qv × B, (3.6)
となる。各方向成分について書き下すと、
mdvx
dt = qBvy, mdvy
dt = −qBvx, mdvz
dt = 0, (3.7)
5
惑星サイズの天体:
輻射圧は無視できるほど小さい
↕
ミクロンサイズの惑星間塵:
輻射圧の影響を受ける
太陽風
6
コロナ質量放出
http://sohowww.nascom.nasa.gov/bestofsoho/Movies/flares.html
太陽風:コロナから超音速で吹き出す高温プラズマ
速度:400-1000 km/s, 温度:~10
5K, 密度:~5個/cm
3※1天文単位(Astronomical Unit, AUと略す)での値 太陽-地球の距離 = 1.5 1011 m
Parker解
7
2.4.
太陽の活動現象
33式
(2.26)を式
( 2.25)に代入して、次式を得る。
v dv dR
!
1 − c2T v2
"
= 2c2T
R − vesc2
2R2 . (2.27)
この式が太陽風の加速を記述する式である。
式
(2.27)の特徴を考える。コロナの典型的な物理量を用いると、
cT = 130 km s−1, vesc = 620 km s−1となる。
cT < vescとなることは、コロナのプラズマが太陽の重力に束縛されて いることを表している。このことから、式
(2.27)の右辺はコロナの底
(R = 1)において負で ある。一方、式
(2.27)の右辺第一項は
Rの
−1乗、第二項は
Rの
−2乗を含んでいることか ら、十分大きい
Rでは第一項が優勢となり、式
(2.27)の右辺全体は正に転じることがわかる。
式
(2.27)の右辺が
0になる点を 臨界点
(critical point)と呼び、その太陽からの距離
Rcは、
Rc = vesc2 /4c2T
となる。上述の数値を代入すると、
R ∼ 6となり、太陽半径の約
6倍に相当
する。 式
(2.27)の解を図
2-6に示す。曲線
ACBが太陽風に対応する解である。この解は臨界点で
v = cT
という音速に達し、その後も加速され続けていく。
S1のように臨界点で音速に達しな い場合、式
(2.27)より
dv/dRが負になるため、速度は減速に転じる。臨界点で音速となる解 だけが、亜音速から超音速となる構造をとることができる。超音速となった太陽風は太陽圏 の終端で星間ガスの影響により衝撃波を形成し、急激に減速されることとなる。
図
2-6.式
(2.27)の解の種類。オーム社『宇宙環境科学』より
2.4 太陽の活動現象
太陽コロナの磁場は複雑な構造をしており、磁力線が開いている領域と、磁力線がループ 状に閉じている領域がある。磁力線が開いている領域からは太陽風が吹き出している一方、
磁力線が閉じた領域では、 太陽フレア や コロナ質量放出
(coronal mass ejection)と呼ばれる 爆発的活動減少が生じる。
太陽フレアは太陽大気における爆発的なエネルギー解放現象であり、
γ線、
X線領域から 電波領域に至る波長域で電磁波を放射する。太陽フレアは磁力線の変形によって蓄えられた エネルギーが、磁気再結合によって開放されて生じる。
コロナ質量放出はコロナのプラズマの塊が突発的に惑星間空間に放出される現象である。
太陽の磁気エネルギーが解放され、電磁放射エネルギーに変換されるのが太陽フレア、力学 的な運動エネルギーに変換されるのがコロナ質量放出である。
定常・球対称・等温の仮定のもとで、太陽風を記述する式を導出
32
第
2章 太陽
偏微分に書き換えて、さらに連続の式を用いて書き換えると最終的に以下の形になる。
∂
∂t
!
ρ
"1
2v2 + ϵ
#$
+ ∇ ·
!
ρv
"1
2v2 + ϵ + p ρ
#$
= 0. (2.19)
左辺第一項はエネルギーの時間変化、第二項は単位時間・単位面積あたりのエネルギーの流 れ、エネルギー流束
(Energy Flux)である。外力がある場合、外力による仕事を加えて、
∂
∂t
!
ρ
"1
2v2 + ϵ
#$
+ ∇ ·
!
ρv
"1
2v2 + ϵ + p ρ
#$
= ρv · g, (2.20)
となる。
2.3.2 Parker 解
太陽コロナは、温度
106 Kという高温によって力学的平衡を保てず、太陽風が惑星間空間 に吹き出している。太陽風の存在は、
Biermann (1951, 1957)の彗星の尾の観測によって最初 に予言された。人工衛星によって太陽風を直接観測したのは
1959年以降であるが、それに先 駆けて太陽風の存在を理論的に証明したのは
Parker (1958)である。ここでは
Parker解 と 呼ばれる太陽風の理論的枠組を扱う。
簡単のために太陽風を定常
(∂/∂t = 0)、球対称
(∂/∂θ = ∂/∂φ = 0)、完全電離した陽子と 電子のみで構成された理想流体として扱う。状態方程式は理想気体とする。また、外力とし て太陽の重力を考慮する。この時、オイラーの式
( 2.14)は以下のように表せる
(球座標系で の微分は付録
B参照
)。
v dv
dr = −1 ρ
dp
dr − GM⊙
r2 . (2.21)
また、連続の式
(2.8)は以下のように表せる。
1 r2
d(ρvr2)
dr = 0. (2.22)
状態方程式は以下のように表せる。
p = nkBT. (2.23)
式
(2.23)を式
(2.21)に代入して書き換えると、
v dv
dr = −c2T n
dn
dr − vesc2 2R⊙
"
R⊙ r
#2
. (2.24)
ここで、粒子の熱速度
cT ≡ (kBT /m)1/2,太陽からの脱出速度
vesc ≡ (2GM⊙/R⊙)1/2を用い た。距離の基準を
R⊙とするために、
R ≡ r/R⊙で書き換えると、
v dv
dR = −c2T n
dn
dR − vesc2
2R2 . (2.25)
一方で、式
(2.22)を書き直すと、
dn
dR = − n vR2
d
dR(vR2). (2.26)
32
第
2章 太陽
偏微分に書き換えて、さらに連続の式を用いて書き換えると最終的に以下の形になる。
∂
∂t
!
ρ
"
1
2v2 + ϵ
#$
+ ∇ ·
!
ρv
"
1
2v2 + ϵ + p ρ
#$
= 0. (2.19)
左辺第一項はエネルギーの時間変化、第二項は単位時間・単位面積あたりのエネルギーの流 れ、エネルギー流束
(Energy Flux)である。外力がある場合、外力による仕事を加えて、
∂
∂t
!
ρ
"
1
2v2 + ϵ
#$
+ ∇ ·
!
ρv
"
1
2v2 + ϵ + p ρ
#$
= ρv · g, (2.20)
となる。
2.3.2 Parker 解
太陽コロナは、温度
106 Kという高温によって力学的平衡を保てず、太陽風が惑星間空間 に吹き出している。太陽風の存在は、
Biermann (1951, 1957)の彗星の尾の観測によって最初 に予言された。人工衛星によって太陽風を直接観測したのは
1959年以降であるが、それに先 駆けて太陽風の存在を理論的に証明したのは
Parker (1958)である。ここでは
Parker解 と 呼ばれる太陽風の理論的枠組を扱う。
簡単のために太陽風を定常
(∂/∂t = 0)、球対称
(∂/∂θ = ∂/∂φ = 0)、完全電離した陽子と 電子のみで構成された理想流体として扱う。状態方程式は理想気体とする。また、外力とし て太陽の重力を考慮する。この時、オイラーの式
( 2.14)は以下のように表せる
(球座標系で の微分は付録
B参照
)。
v dv
dr = −1 ρ
dp
dr − GM⊙
r2 . (2.21)
また、連続の式
(2.8)は以下のように表せる。
1 r2
d(ρvr2)
dr = 0. (2.22)
状態方程式は以下のように表せる。
p = nkBT. (2.23)
式
(2.23)を式
(2.21)に代入して書き換えると、
v dv
dr = −c2T n
dn
dr − vesc2 2R⊙
"R⊙ r
#2
. (2.24)
ここで、粒子の熱速度
cT ≡ (kBT /m)1/2,太陽からの脱出速度
vesc ≡ (2GM⊙/R⊙)1/2を用い た。距離の基準を
R⊙とするために、
R ≡ r/R⊙で書き換えると、
v dv
dR = −c2T n
dn
dR − vesc2
2R2 . (2.25)
一方で、式
(2.22)を書き直すと、
dn
dR = − n vR2
d
dR(vR2). (2.26)
32
第
2章 太陽
偏微分に書き換えて、さらに連続の式を用いて書き換えると最終的に以下の形になる。
∂
∂t
!
ρ
"
1
2v2 + ϵ
#$
+ ∇ ·
!
ρv
"
1
2v2 + ϵ + p ρ
#$
= 0. (2.19)
左辺第一項はエネルギーの時間変化、第二項は単位時間・単位面積あたりのエネルギーの流 れ、エネルギー流束
(Energy Flux)である。外力がある場合、外力による仕事を加えて、
∂
∂t
!
ρ
"
1
2v2 + ϵ
#$
+ ∇ ·
!
ρv
"
1
2v2 + ϵ + p ρ
#$
= ρv · g, (2.20)
となる。
2.3.2 Parker 解
太陽コロナは、温度
106 Kという高温によって力学的平衡を保てず、太陽風が惑星間空間 に吹き出している。太陽風の存在は、
Biermann (1951, 1957)の彗星の尾の観測によって最初 に予言された。人工衛星によって太陽風を直接観測したのは
1959年以降であるが、それに先 駆けて太陽風の存在を理論的に証明したのは
Parker (1958)である。ここでは
Parker解 と 呼ばれる太陽風の理論的枠組を扱う。
簡単のために太陽風を定常
(∂/∂t = 0)、球対称
(∂/∂θ = ∂/∂φ = 0)、完全電離した陽子と 電子のみで構成された理想流体として扱う。状態方程式は理想気体とする。また、外力とし て太陽の重力を考慮する。この時、オイラーの式
( 2.14)は以下のように表せる
(球座標系で の微分は付録
B参照
)。
v dv
dr = −1 ρ
dp
dr − GM⊙
r2 . (2.21)
また、連続の式
(2.8)は以下のように表せる。
1 r2
d(ρvr2)
dr = 0. (2.22)
状態方程式は以下のように表せる。
p = nkBT. (2.23)
式
(2.23)を式
(2.21)に代入して書き換えると、
v dv
dr = −c2T n
dn
dr − vesc2 2R⊙
"
R⊙ r
#2
. (2.24)
ここで、粒子の熱速度
cT ≡ (kBT /m)1/2,太陽からの脱出速度
vesc ≡ (2GM⊙/R⊙)1/2を用い た。距離の基準を
R⊙とするために、
R ≡ r/R⊙で書き換えると、
v dv
dR = −c2T n
dn
dR − vesc2
2R2 . (2.25)
一方で、式
(2.22)を書き直すと、
dn
dR = − n vR2
d
dR(vR2). (2.26)
2.4. 太陽の活動現象 33
式 (2.26) を式 ( 2.25) に代入して、次式を得る。
v dv dR
!
1 − c2T v2
"
= 2c2T
R − vesc2
2R2 . (2.27)
この式が太陽風の加速を記述する式である。
式 (2.27) の特徴を考える。コロナの典型的な物理量を用いると、cT = 130 km s−1, vesc = 620 km s−1 となる。cT < vesc となることは、コロナのプラズマが太陽の重力に束縛されて いることを表している。このことから、式 (2.27) の右辺はコロナの底 (R = 1) において負で ある。一方、式 (2.27) の右辺第一項は R の −1 乗、第二項は R の −2 乗を含んでいることか ら、十分大きいR では第一項が優勢となり、式 (2.27) の右辺全体は正に転じることがわかる。
式 (2.27) の右辺が 0 になる点を臨界点 (critical point) と呼び、その太陽からの距離 Rc は、
Rc = vesc2 /4c2T となる。上述の数値を代入すると、R ∼ 6 となり、太陽半径の約 6 倍に相当
する。式 (2.27) の解を図 2-6 に示す。曲線 ACB が太陽風に対応する解である。この解は臨界点で
v = cT という音速に達し、その後も加速され続けていく。S1 のように臨界点で音速に達しな い場合、式 (2.27) より dv/dR が負になるため、速度は減速に転じる。臨界点で音速となる解 だけが、亜音速から超音速となる構造をとることができる。超音速となった太陽風は太陽圏 の終端で星間ガスの影響により衝撃波を形成し、急激に減速されることとなる。
図 2-6.式 (2.27) の解の種類。オーム社『宇宙環境科学』より
2.4
太陽の活動現象
太陽コロナの磁場は複雑な構造をしており、磁力線が開いている領域と、磁力線がループ 状に閉じている領域がある。磁力線が開いている領域からは太陽風が吹き出している一方、
磁力線が閉じた領域では、太陽フレアやコロナ質量放出 (coronal mass ejection) と呼ばれる 爆発的活動減少が生じる。
太陽フレアは太陽大気における爆発的なエネルギー解放現象であり、γ 線、X 線領域から 電波領域に至る波長域で電磁波を放射する。太陽フレアは磁力線の変形によって蓄えられた エネルギーが、磁気再結合によって開放されて生じる。
コロナ質量放出はコロナのプラズマの塊が突発的に惑星間空間に放出される現象である。
太陽の磁気エネルギーが解放され、電磁放射エネルギーに変換されるのが太陽フレア、力学 的な運動エネルギーに変換されるのがコロナ質量放出である。
32 第 2 章 太陽
偏微分に書き換えて、さらに連続の式を用いて書き換えると最終的に以下の形になる。
∂
∂t
! ρ
"1
2v2 + ϵ
#$
+ ∇ ·
! ρv
"1
2v2 + ϵ + p ρ
#$
= 0. (2.19)
左辺第一項はエネルギーの時間変化、第二項は単位時間・単位面積あたりのエネルギーの流 れ、エネルギー流束 (Energy Flux) である。外力がある場合、外力による仕事を加えて、
∂
∂t
! ρ
"1
2v2 + ϵ
#$
+ ∇ ·
! ρv
"1
2v2 + ϵ + p ρ
#$
= ρv · g, (2.20)
となる。
2.3.2 Parker 解
太陽コロナは、温度 106 K という高温によって力学的平衡を保てず、太陽風が惑星間空間 に吹き出している。太陽風の存在は、Biermann (1951, 1957) の彗星の尾の観測によって最初 に予言された。人工衛星によって太陽風を直接観測したのは 1959 年以降であるが、それに先 駆けて太陽風の存在を理論的に証明したのは Parker (1958) である。ここでは Parker 解と 呼ばれる太陽風の理論的枠組を扱う。
簡単のために太陽風を定常 (∂/∂t = 0)、球対称 (∂/∂θ = ∂/∂φ = 0)、完全電離した陽子と 電子のみで構成された理想流体として扱う。状態方程式は理想気体とする。また、外力とし て太陽の重力を考慮する。この時、オイラーの式 ( 2.14) は以下のように表せる (球座標系で の微分は付録 B 参照)。
vdv
dr = −1 ρ
dp
dr − GM⊙
r2 . (2.21)
また、連続の式 (2.8) は以下のように表せる。
1 r2
d(ρvr2)
dr = 0. (2.22)
状態方程式は以下のように表せる。
p = nkBT. (2.23)
式 (2.23) を式 (2.21) に代入して書き換えると、
vdv
dr = −c2T n
dn
dr − vesc2 2R⊙
"R⊙ r
#2
. (2.24)
ここで、粒子の熱速度 cT ≡ (kBT /m)1/2, 太陽からの脱出速度 vesc ≡ (2GM⊙/R⊙)1/2 を用い た。距離の基準を R⊙ とするために、R ≡ r/R⊙ で書き換えると、
v dv
dR = −c2T n
dn
dR − vesc2
2R2. (2.25)
一方で、式 (2.22) を書き直すと、
dn
dR = − n vR2
d
dR(vR2). (2.26)
32 第 2 章 太陽
偏微分に書き換えて、さらに連続の式を用いて書き換えると最終的に以下の形になる。
∂
∂t
! ρ
"1
2v2 + ϵ
#$
+ ∇ ·
! ρv
"1
2v2 + ϵ + p ρ
#$
= 0. (2.19)
左辺第一項はエネルギーの時間変化、第二項は単位時間・単位面積あたりのエネルギーの流 れ、エネルギー流束 (Energy Flux) である。外力がある場合、外力による仕事を加えて、
∂
∂t
! ρ
"1
2v2 + ϵ
#$
+ ∇ ·
! ρv
"1
2v2 + ϵ + p ρ
#$
= ρv · g, (2.20)
となる。
2.3.2 Parker 解
太陽コロナは、温度 106 K という高温によって力学的平衡を保てず、太陽風が惑星間空間 に吹き出している。太陽風の存在は、Biermann (1951, 1957) の彗星の尾の観測によって最初 に予言された。人工衛星によって太陽風を直接観測したのは 1959 年以降であるが、それに先 駆けて太陽風の存在を理論的に証明したのは Parker (1958) である。ここでは Parker 解と 呼ばれる太陽風の理論的枠組を扱う。
簡単のために太陽風を定常 (∂/∂t = 0)、球対称 (∂/∂θ = ∂/∂φ = 0)、完全電離した陽子と 電子のみで構成された理想流体として扱う。状態方程式は理想気体とする。また、外力とし て太陽の重力を考慮する。この時、オイラーの式 ( 2.14) は以下のように表せる (球座標系で の微分は付録 B 参照)。
vdv
dr = −1 ρ
dp
dr − GM⊙
r2 . (2.21)
また、連続の式 (2.8) は以下のように表せる。
1 r2
d(ρvr2)
dr = 0. (2.22)
状態方程式は以下のように表せる。
p = nkBT. (2.23)
式 (2.23) を式 (2.21) に代入して書き換えると、
vdv
dr = −c2T n
dn
dr − vesc2 2R⊙
"R⊙ r
#2
. (2.24)
ここで、粒子の熱速度 cT ≡ (kBT /m)1/2, 太陽からの脱出速度 vesc ≡ (2GM⊙/R⊙)1/2 を用い た。距離の基準を R⊙ とするために、R ≡ r/R⊙ で書き換えると、
v dv
dR = −c2T n
dn
dR − vesc2
2R2. (2.25)
一方で、式 (2.22) を書き直すと、
dn
dR = − n vR2
d
dR(vR2). (2.26)
太陽風を示す解(曲線ACB) オーム社『宇宙環境科学』より
臨界点
2.4. 太陽の活動現象 33
式 (2.26) を式 ( 2.25) に代入して、次式を得る。
v dv dR
!
1 − c
2Tv
2"
= 2c
2TR − v
esc22R
2. (2.27)
この式が太陽風の加速を記述する式である。
式 (2.27) の特徴を考える。コロナの典型的な物理量を用いると、 c
T= 130 km s
−1, v
esc= 620 km s
−1となる。 c
T< v
escとなることは、コロナのプラズマが太陽の重力に束縛されて いることを表している。このことから、式 (2.27) の右辺はコロナの底 (R = 1) において負で ある。一方、式 (2.27) の右辺第一項は R の − 1 乗、第二項は R の − 2 乗を含んでいることか ら、十分大きい R では第一項が優勢となり、式 (2.27) の右辺全体は正に転じることがわかる。
式 (2.27) の右辺が 0 になる点を 臨界点 (critical point) と呼び、その太陽からの距離 R
cは、
R
c= v
esc2/4c
2Tとなる。上述の数値を代入すると、 R ∼ 6 となり、太陽半径の約 6 倍に相当
する。 式 (2.27) の解を図 2-6 に示す。曲線 ACB が太陽風に対応する解である。この解は臨界点で
v = c
Tという音速に達し、その後も加速され続けていく。 S
1のように臨界点で音速に達しな い場合、式 (2.27) より dv/dR が負になるため、速度は減速に転じる。臨界点で音速となる解 だけが、亜音速から超音速となる構造をとることができる。超音速となった太陽風は太陽圏 の終端で星間ガスの影響により衝撃波を形成し、急激に減速されることとなる。
図 2-6 .式 (2.27) の解の種類。オーム社『宇宙環境科学』より
2.4 太陽の活動現象
太陽コロナの磁場は複雑な構造をしており、磁力線が開いている領域と、磁力線がループ 状に閉じている領域がある。磁力線が開いている領域からは太陽風が吹き出している一方、
磁力線が閉じた領域では、 太陽フレア や コロナ質量放出 (coronal mass ejection) と呼ばれる 爆発的活動減少が生じる。
太陽フレアは太陽大気における爆発的なエネルギー解放現象であり、 γ 線、 X 線領域から 電波領域に至る波長域で電磁波を放射する。太陽フレアは磁力線の変形によって蓄えられた エネルギーが、磁気再結合によって開放されて生じる。
コロナ質量放出はコロナのプラズマの塊が突発的に惑星間空間に放出される現象である。
太陽の磁気エネルギーが解放され、電磁放射エネルギーに変換されるのが太陽フレア、力学
(~6 太陽半径)で音速に達する
まとめ
太陽の構造と活動
中心核(0.2太陽半径)で水素核融合反応
放射層・対流層を経てエネルギーを外部に放射 可視光・赤外光は黒体放射で近似できる
紫外光は高温の彩層・コロナを起源とする