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変性状態のタンパク質を高度 に利用するカチオン化技術

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(1)

細胞外に分泌する比較的安定で堅いタンパク質と,動物細胞 内に存在するフレキシブルなタンパク質の精製・保存方法は 大きく異なる.タンパク質変性の最大の問題点は不溶化とも 言えるが,Cys残基に対して化学修飾法で正電荷を付与する カチオン化技術は,変性状態のタンパク質に高い水溶性を付 与して特に細胞内タンパク質の活用方法を拡張する.さらに 動物細胞の総タンパク質の混合物は,核酸を除去することで 変性状態でありながら純水中にて高い水溶性を示すこともわ かってきた.これらの変性タンパク質の可溶化技術を活用す ることで,医用工学的なタンパク質の高度な利用方法が見え てくる.

はじめに

ヒトの体重の約60%が水分であり,その生命活動の 実行部隊がタンパク質である.すなわち,脂質二重膜中 に存在する膜タンパク質や,繊維性の結合組織を構成す るタンパク質を除けば,大半のタンパク質が「水溶性分 子」として機能している.タンパク質を取り扱う生化学

実験では,活性構造のタンパク質が変性しないように細 心の注意を払いながら分離・精製し,安定に保存できる 条件を個別に探索する必要がある.この水溶性タンパク 質の取り扱いの難易度については,一般に各タンパク質 の熱力学的な安定性とよく相関する.たとえば,アルブ ミンやグロブリンといった血清中を循環する多くの分泌 タンパク質は分子内にジスルフィド(SS)結合を複数 保有する比較的「堅い」球状タンパク質であり,精製タ ンパク質は水分を除去した凍結乾燥状態でも安定に保存 可能な場合がある.一方で細胞質内タンパク質はCys残 基の側鎖が反応性の高いSH基であり,比較的「フレキ シブル」なタンパク質が大半で,保存中に失活してしま う事例も頻発する.それゆえ,一般に細胞内タンパク質 の取り扱いには細心の注意が必要である.本稿でご紹介 する「変性タンパク質の可溶化技術」は,特にフレキシ ブルな細胞内タンパク質の取り扱いの自由度を大幅に拡 張するものである.

タンパク質の変性と不溶化

一般に,球状の水溶性タンパク質は疎水性残基を分子

【解説】

Advanced  Utilization  of  Denatured  Protein  by  Cationization  Techniques

Junichiro FUTAMI, 岡山大学大学院自然科学研究科生命医用工学 専攻

変性状態のタンパク質を高度 に利用するカチオン化技術

二見淳一郎

(2)

の内側に配向し,分子表面で親水性残基が水和水と相互 作用することで特定の立体構造を形成している.この立 体構造が崩壊して変性する際に疎水性残基が分子表面に 露出するため,分子間の疎水相互作用を主因とした凝集 が進行する.これがタンパク質の変性に伴う不溶化の主 因となる機構である(図1.これに加えて見落とされ がちな凝集要因が,変性タンパク質と核酸との静電的相 互作用である.特に細胞内タンパク質を組換えタンパク 質として大腸菌や動物細胞内で発現させた際には,宿主 細胞の破砕に伴い大量の核酸成分と標的タンパク質が接 触することになる.大腸菌で生産する組換えタンパク質 がしばしば不溶性のインクルージョンボディを形成する が,この変性タンパク質にも多量の核酸が混入してい る(1).主成分はRNAであり超音波処理や酵素処理でも 解離しない数十〜百塩基程度の核酸が変性タンパク質と 強固に会合している.さらに変性タンパク質の分子間で 架橋するSS結合もポリマー化・凝集の一因となる.還 元的な環境である大腸菌の菌体内で形成されるインク ルージョンボディ中では分子間のSS結合が形成されて いる例は少ないが,試験管内で不溶化するタンパク質の 凝集体は,しばしば分子間のSS結合でポリマー化して いることがある.

動物細胞内の細胞内タンパク質に含まれる天然変性 領域

細胞内タンパク質が機能発現をする際には高次の複合 体形成が必要な例が多い.この分子認識・相互作用にお いては細胞外と細胞内タンパク質ではかなり違った様式 を選択しているようである.細胞外では,たとえば抗

原‒抗体反応に代表されるような分子間相互作用におい て,エピトープ面とパラトープ面がそれぞれ結合可能な 立体構造を形成しており,高い分子認識能で結合するこ とができる.一方で,細胞内で形成されるタンパク質複 合体の多くの相互作用面には,結合前はフレキシブルな 構造でありながら,結合と共役して安定な立体構造を形 成して複合体を形成するinduced fit型の結合様式をとる ものが多い(2).すなわち,複合体を形成する前の細胞内 タンパク質には特定の立体構造を保持しない天然変性領 域が多く存在する.この傾向は真核生物で顕著であり,

原核生物の細胞内タンパク質に含まれる天然変性領域は 10%以下である一方で,真核生物では30〜40%になる と見積もられている(3, 4).特に高次の複合体形成が必要 な転写因子タンパク質においては天然変性領域が60%

に達すると見積もられる(4).これらの天然変性領域は細 胞内の状況に応じて多様なリガンドを広く認識できるプ ロミスキャスな相互作用が可能であり,組み合わせ次第 で多様な生理機能の発現が可能である(5).この天然変性 領域は比較的疎水性度の低いアミノ酸で構成されている

ものの(6, 7),天然変性領域を含む組換えタンパク質の大

量調製の現実は,凝集との競争であり困難を伴う例が多 い.どんなに変性しないように努力しても,はじめから 天然変性状態の細胞内タンパク質は自ずと安定性の高い 細胞外タンパク質とは取り扱いが異なってくる.

変性状態のタンパク質を高度に可溶化するカチオン 化技術

変性状態のタンパク質でありながら非常に高い水溶性 を示すものの代表例としてゼラチンが挙げられるが,疎 変性タンパク質

疎水基どうしの会合

凝集・沈殿 疎水基

RNAとタンパク質の会合 疎水基どうしの会合

主にRNA 疎水性のコア

Nativeタンパク質

インクルージョンボディ 分子間SS結合形成

によるポリマー化

宿主細胞由来の夾雑物

図1変性タンパク質の凝集・不溶化を 誘導する主な機構

変性タンパク質

疎水基どうしの会合

凝集・沈殿 疎水基

RNAとタンパク質の会合 疎水基どうしの会合

主にRNA 疎水性のコア

Nativeタンパク質

インクルージョンボディ 分子間SS結合形成

によるポリマー化

宿主細胞由来の夾雑物

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水性の高いアミノ酸(Trp, Ile, Phe, Leu)の含有率が極 めて低い特徴がある.大半の変性タンパク質の水溶性が 低い理由は,疎水性アミノ酸の含有率が分子間凝集の促 進に十分なレベルに達しているためであるが,これをタ ンパク質の化学修飾技術を用いて水溶性に変換する技術 がカチオン化技術である(8)(図2.極性分子である水は 荷電物質と強く相互作用をして水和状態となるため,極 めて高い水溶性を示す.すなわち変性タンパク質に電荷 を導入することで疎水性を相殺する親水性が付与される.

電荷としてはカチオン/アニオンのいずれでも効果的で あるが,変性状態のタンパク質分子に対する望ましくな い化学反応を低減させるためには酸性〜弱酸性での保存 が好ましく,カチオン化が優位となる.たとえばpH 3 の条件で考えれば,Asp, Gluの側鎖のカルボキシル基は プロトン化により負電荷を失う一方で,Lys, Arg, His の側鎖は正電荷を帯びるため総電荷は大きく正に偏る.

化学修飾によるカチオン化はCys残基に付与する手法が 最も効果的かつ簡便で,変性タンパク質の用途に応じ て,可逆的なSS結合もしくは安定で不可逆的なS-アル キル化が選択できる.特に前者のSS結合の場合は酸 性〜弱酸性条件下で保存することで遊離のSH基による SH/SS交換反応の抑制と正に偏った総電荷となること から,高い保存安定性と溶解性が同時に達成できる.

TAPS化タンパク質の試験管内および細胞内での 巻き戻し

大腸菌を宿主とした組換えタンパク質の生産系は,簡 便かつ安価にタンパク質が生産できるものの,しばしば 不溶性のインクルージョンボディの形成に悩まされる.

Cys残基に対しSS結合で1価の4級アンモニウム基を導 入 で き るTrimethyl-ammoniopropyl methanethiosulfo-

nate(TAPS-Sulfonate)はCys含有タンパク質を可溶 化する強力なツールとなる(9).変性タンパク質の沈殿を 6 M塩酸グアニジンなどの変性剤中で溶解し,ジチオス レイトールなどでCys残基を完全に還元した後,SH基 の少過剰量のTAPS-Sulfonateを添加することでタンパ ク質をカチオン化し,水に対して透析することで水溶性 のTAPS化タンパク質が取得できる(詳しくは片山化 学工業のホームページ).もともとインクルージョンボ ディに過剰発現させた組換えタンパク質は,可溶性画分 の徹底的な洗い出しを行うことで,SDS-PAGE上でほ ぼシングルバンドになるまで精製度を上げることができ る.一連のTAPS化タンパク質の抽出作業で,菌体由 来の大部分の夾雑物が除去できるため,純度の高い水溶 性のTAPS化タンパク質の抽出が可能である.この TAPS化タンパク質がSS結合を有する細胞外タンパク 質の場合は適切な酸化還元系で巻き戻すことが可能で,

複数の巻き戻しタンパク質の機能・構造解析の実績があ

(10, 11).一方で,転写因子をはじめとした細胞内タン

パク質の場合は前述のとおり,相互作用パートナーが存 在しない試験管内で安定な巻き戻しは困難である.ここ でTAPS化タンパク質が正電荷を帯びている有用性が 活きてくる.動物細胞の細胞表面は負電荷を帯びてお り,正電荷を帯びるカチオン化タンパク質を培養細胞に 添加すると,細胞表面への静電的な吸着を介して効率的 に生細胞内へ移行する(12〜14).エンドサイトーシス様の 経路での取り込みになるため,大半がエンドソームから リソソームへと移行して分解してしまうが,カチオン化 に用いるカチオン性基として正電荷密度の高いポリエチ レンイミンやその誘導体を用いることで細胞質中への移 行効率が大幅に向上する(15〜17).可逆的なSS結合でカチ オン化・可溶化された細胞内タンパク質が,還元的な環

SH SH

SH SH

TAP-Br

TAPS-Sulfonate

変性・還元タンパク質

SS SS

SS SS

S S

S S

SS SH

SH SS

SS SS

SS SS

TAP化タンパク質

TAPS化タンパク質

PEI化タンパク質 変性剤(6M GdnHClなど)中で反応

水溶性・カチオン化タンパク質 透析により

変性剤除去

立体障害で 未反応のSH基

SH基の保護 PEI-SPDP

化学的に安定な 水溶性ポリペプチド鎖

可逆的に還元でき、

リフォルディング可能

In cell folding法に優れる

図2変性タンパク質のCys残基に対す る各種のカチオン化技術

SH SH

SH SH

TAP-Br

TAPS-Sulfonate

変性・還元タンパク質

SS SS

SS SS

S S

S S

SS SH

SH SS

SS SS

SS SS

TAP化タンパク質

TAPS化タンパク質

PEI化タンパク質 変性剤(6M GdnHClなど)中で反応

水溶性・カチオン化タンパク質 透析により

変性剤除去

立体障害で 未反応のSH基

SH基の保護 PEI-SPDP

化学的に安定な 水溶性ポリペプチド鎖

可逆的に還元でき、

リフォルディング可能

In cell folding法に優れる

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境である細胞質内まで到達すれば,カチオン性基は還 元・解離して,生細胞内で自発的・シャペロン依存的に 活性構造に巻き戻ることが可能である(18)(図3.この 一連の過程をin cell folding法と命名しており,現在も 低毒性で細胞質への移行効率を高める技術改善が進んで おり,培養細胞への均一かつ一過的な導入と機能発現に より,培養細胞の機能を人工制御するための技術として 育成中である.

天然変性タンパク質の特徴を利用した新規な変性タ ンパク質の可溶化方法

ここでもう一度,細胞内タンパク質が本来存在してい る環境を見直してみよう.動物細胞の細胞質内のタンパ ク質濃度は100 mg/mL程度と推定され(19),さらに糖質,

脂質,核酸などを含む水溶性の生体高分子の濃度は 400 mg/mLに達すると言われる(20).ここまでくると各 溶質の周りに結合している配位水を除いた自由水がかな り限定された状況が想像され,試験管内でこれほどの高 濃度のタンパク質の水溶液を調製するのは至難である.

では生細胞内ではどのようにしてタンパク質の高濃度状 態を維持し,かつ,複雑なタンパク質分子間相互作用を 通じて高次な生命機能を発現しているのであろうか? 

旧来からの考えでは,タンパク質は変性すると溶解度が 低下してしまうので,各種のシャペロニン分子が変性タ ンパク質のフォルディングを促進してNative状態の維 持に努めているからと考えられてきた.しかし真核生物 の細胞質内ではシャペロン依存だけでは説明できない現 象も見えてきた.最近われわれは動物細胞内の総タンパ

ク質のMixtureから核酸成分をTrizol試薬(Life Tech- nologies)などを用いて完全に除去すると,変性状態の 総タンパク質が純水中でほぼすべてが溶解することを発 見した(21)(図4.このLysate中には疎水性の高い膜タ ンパク質などもすべて含まれており,総タンパク質の完

SS SS

SS

SS SS

SS SS SS

HS HS

SH SH

可逆的変性カチオン化タンパク質 負電荷を帯びる生細胞表面

機能発現・細胞機能制御

標的遺伝子群の発現

核 細胞質

(還元条件)

エンドソーム

核移行

転写活性

E.coli

インクルージョンボディ

in cell folding Na ve

変性・不溶化

安定性の低い 細胞内タンパク質

内在性タンパク質

転写因子複合体 静電的な吸着

図3可逆的変性カチオン化タンパク質のin cell folding法による活性化と細胞機能の人工制御 文献18より一部改変.

+ 6M GdnHCl + TRIzol

有機相

ヒト・マウス由来細胞・生体組織

+6M GdnHCl + DTT

+ 0.1vol.

AcOH

+ DTT

透析vsH2O GdnHCl

変性タンパク質(沈殿)

核酸除去

+2-プロパノール

変性・還元タンパク質

変性・還元タンパク質

(核酸を含む)

+ 0.1vol.

AcOH GdnHCl

変性タンパク質 溶解度~3mg/mL

(pH: 5-6) 沈殿はごく微量!

ほとんど可溶性

変性タンパク質 の凝集塊

図4高等動物由来の総タンパク質が示す変性状態かつ除核酸 条件下での特別な溶解性

文献21より一部改変.

SS SS

SS

SS SS

SS SS SS

HS HS

SH SH

可逆的変性カチオン化タンパク質 負電荷を帯びる生細胞表面

機能発現・細胞機能制御

標的遺伝子群の発現

核 細胞質

(還元条件)

エンドソーム

核移行

転写活性

E.coli

インクルージョンボディ

in cell folding Na ve

変性・不溶化

安定性の低い 細胞内タンパク質

内在性タンパク質

転写因子複合体 静電的な吸着

+ 6M GdnHCl + TRIzol

有機相

ヒト・マウス由来細胞・生体組織

+6M GdnHCl + DTT

+ 0.1vol.

AcOH

+ DTT

透析vsH2O GdnHCl

変性タンパク質(沈殿)

核酸除去

+2-プロパノール

変性・還元タンパク質

変性・還元タンパク質

(核酸を含む)

+ 0.1vol.

AcOH GdnHCl

変性タンパク質 溶解度~3mg/mL

(pH: 5-6) 沈殿はごく微量!

ほとんど可溶性

変性タンパク質 の凝集塊

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全可溶化が可能な手法である.この特別な溶解性は,動 物細胞由来の総タンパク質(Lysate mixture)に特化し た現象で,単細胞真核生物(酵母)や原核生物(大腸 菌・ブドウ球菌)由来の総タンパク質,あるいは個別の 組換えタンパク質では達成できない.また,微量の核酸 などのイオン性物質(塩類)が共存すると不溶化し,純 水中に限られた溶解性を示す.前述のとおり,動物細胞 の細胞内タンパク質には疎水性度が比較的低い天然変性 タンパク質の含有量が高いことから,生理的な条件下で もフレキシブルな構造領域が一定量存在している.ま た,純水中では変性タンパク質の側鎖の解離性残基はカ ウンターイオンが存在しないためすべてイオン化された 状態にあり,高い水和状態を維持できる.これらのすべ

ての因子は,生理条件下の高等動物の細胞内環境でも変 性状態のタンパク質の溶解性向上に寄与する.すなわ ち,高等動物の細胞内タンパク質は,変性状態でもある 程度の溶解性を維持できるアミノ酸組成となるように進 化したものと推定している(図5.その結果,細胞内 の状況に応じて多様なリガンドを広く認識できるプロミ スキャスな相互作用が可能な「天然変性タンパク質」を 普遍的に使いこなすことが可能な環境を獲得したのかも しれない.

水溶性の変性タンパク質の高度利用

変性状態のタンパク質が水溶性で取り扱えることか ら,さまざまな利用・応用が見えてくる.インクルー ジョンボディとして発現されたCys含有タンパク質は,

前述の可逆的変性カチオン化法で水溶性に転換すること が可能で,さらに逆相HPLCなどでシングルピークとし て分取することで容易に高純度化が達成できる.精製さ れたTAPS化タンパク質は凍結乾燥品としても安定に 保存可能であり,必要に応じて再水和して利用すること ができる使い勝手の良さが特徴である.特定の立体構造 を保持していない変性タンパク質は,生理活性のないた だのポリペプチド鎖ではあるものの,抗体作成および抗 体検出用の抗原としては十分に活用できる素材である.

塩基性ペプチドを融合させるタンパク質細胞内導入に関 する研究が盛んに行われているが,塩基性の領域は細胞 質内でのタンパク質の正しい機能発現に影響する可能性

溶解度溶解度

可溶性 可溶性 凝集・沈殿

図5変性タンパク質の溶解性維持と凝集を決める因子 動物細胞内には溶解性の高い天然変性タンパク質が一定量存在し,

溶解性が低い変性タンパク質の凝集を抑制している可能性がある.

外科摘出 腫瘍

水溶性の全抗原 再発予防

ワクチン

自己がん ワクチン 可溶化技術

変性タンパク質

(不溶性)

がん抗原 フレキシブルな

細胞内タンパク質

発現ベクター

組換えタンパク質生産

カチオン化 と可溶化

高純度・可溶性抗原 がん抗原パネル

HPLC

精製

正確な 診断

がん患者

遺伝子 発現情報

血清 抗体検査

図6変性タンパク質の可溶化技術を活用したがん個別化医療分野での実用化案

溶解度溶解度

可溶性 可溶性 凝集・沈殿

外科摘出 腫瘍

水溶性の全抗原 再発予防

ワクチン

自己がん ワクチン 可溶化技術

変性タンパク質

(不溶性)

がん抗原 フレキシブルな

細胞内タンパク質

発現ベクター

組換えタンパク質生産

カチオン化 と可溶化

高純度・可溶性抗原 がん抗原パネル

HPLC

精製

正確な 診断

がん患者

遺伝子 発現情報

血清 抗体検査

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が否定できない.In cell folding法で導入されるタンパ ク質の場合,還元的な環境である細胞質内でカチオン性 基が還元・解離するため,天然型と全く同一のタンパク 質を一過的に機能させることが可能である.細胞質内へ の導入技術の改善が進めば,細胞機能の人工制御を可能 にする非常に魅力的な要素技術となることが十分に期待 できる.また,最近われわれが発見した動物細胞内の総 タンパク質をすべて可溶化できる核酸除去を伴うLy- sate調製法は,外科手術で摘出された腫瘍組織から全タ ンパク質を可溶化する技術として利用が期待できる(図 6.生理的な溶液を用いて生体組織を破砕する際には,

一部の難溶性タンパク質が不溶性画分に取り残されてし まうが,これらのタンパク質も可溶化することが可能で ある.がん組織中には正常組織には存在しないさまざま な異常なタンパク質が含まれており,腫瘍免疫活性にか かわる重要な抗原も通常のLysate調製法では不溶化し てしまう例がある(22).腫瘍内のどのタンパク質が抗原 性を示すかは,患者一人ひとりで異なるため,外科手術 で摘出された腫瘍組織は非常に重要な抗原である.近 年,腫瘍組織から調製されたLysateを用いた樹状細胞 ワクチン療法が明確な延命効果を示すことが報告されて いる(23).現在,腫瘍局所の免疫活性を再活性化しうる 免疫チェックポイント阻害抗体の開発競争が激化するな ど,腫瘍免疫ががん治療の一翼として技術革新が進んで いるが,腫瘍中の全抗原を可溶化できる本手法はがん免 疫治療に役立つ可能性がある.

おわりに

1961年にAnfinsenが変性状態のタンパク質(RNas- eA)を再度活性構造にrefoldingが可能なことを示して から半世紀以上になる(24).当時AnfinsenがRNaseAを モデルにした理由は,入手が容易で酵素活性の評価系が 存在していたことも重要であるが,RNaseAは疎水性ア ミノ酸が比較的少ない塩基性タンパク質のため,変性・

還元状態でも水溶性を維持し,当時の空気酸化による refolding実験が上手く進んだことが考えられる.変性 状態でも水溶性を維持できたからこそ,RNaseAは歴史 上の酵素になれたとも言えよう.変性タンパク質の試験 管内での巻き戻しはその後50年以上の改善の歴史があ るものの,熱力学的な安定性を駆動力とした巻き戻しに 万能な手法はいまだになく,個々のタンパク質の物性に 依存するところが大きい.特に動物細胞の細胞内タンパ ク質を取り扱う際には,そもそも単独では安定な立体構 造を形成しないフレキシブルな天然変性領域が存在する

可能性を考慮して実験を進める必要がある.このような 物性の細胞内タンパク質を自由自在に取り扱うためのカ チオン化法による可溶化技術は,工夫次第でさまざまな 利用・応用の可能性があることを知っていただき,ご活 用いただければ幸いである.

文献

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(7)

プロフィル

二見 淳一郎(Junichiro FUTAMI)

<略 歴>1994年 岡 山 大 学 工 学 部 卒 業/

1999年同大学大学院自然科学研究科博士 課程修了/1997年日本学術振興会特別研 究員(DC2)/1999年同研究員(PD),そ の間2000年に米国NCI訪問研究員(1年 間)/2002年住友製薬株式会社研究員/

2003年NEDOダ イ ナ ミ ッ ク バ イ オ プ ロ ジェクト研究員/2005年岡山大学大学院 自然科学研究科講師/2008年より同准教 授,現在に至る<研究テーマと抱負>タン パク質創る・知る・使うための新技術開発 と医用工学への応用,特にがん免疫治療分 野での個別化医療の実現に向けたタンパク 質工学に取り組んでいます<趣味>昔のよ うに走れる体への再生,野菜作り Copyright © 2015 公益社団法人日本農芸化学会

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