二〇二二(令和四)年度 東北学院高等学校入学試験問題
〈一般
国 語 A 日程〉
注意事項
一.受験番号・氏名を解答用紙にはっきり記入しなさい。
二.解答は、すべて解答用紙に記入しなさい。
三.解答用紙だけを提出しなさい。
二〇二二(令和四)年二月一日 ( 火) 九時~九時五〇分(五〇分間)
著作権に関する注意
本校の入試問題は著作権の対象となっており,著作権法で保護されています。
「私的使用のための複製」や「引用」など著作権法上認められた場合を除き,無断で複製・転用することはできません。
お 断 り
本校の入試問題中で引用した文章・文献等について,著作物保護の観点から一部掲載を控えた箇所があります。ご了承ください。
― 1 ―
次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。(設問の都合上、一部本文を改めたところがあります。)
誰かがしゃべる。他の人たちはそれをあまりきちんと聞いていない。聞くことは聞いているのだが、会話の流れを押さえておくためだけに ごく上 うわっ面 つらを聞いているだけ。そして、自分がしゃべるすきが少しでもあればそれを逃すまいと虎 こ視 し眈 たん々 たんとねらっている。ときには、人がまだしゃべっているのに、それを遮ってしゃべり出す。あるいは、自分でしゃべろうとしていることばかり考えていて、人の話などもう聞いていないという人も。はたまた、待ちきれずに隣の人としゃべり出す人もいたりと。
まさに、
会話におけるカラオケ現象だ。こうなると、「コミュニケーションの質」はもう台無しである。そもそもコミュニケーションは送り手と受け手が存在してはじめて成立する。これはきわめて基本的なことである。メッセージを発信する送り手がいなければコミュニケーショ
ンは開始されないが、送り手がいくらメッセージを発信したとしても、それを受信する受け手がいなければ、ひとり虚 こ空 くうに向かって叫ぶのに等しい。
カラオケ現象とは、「聞き手の不在」を意味する。あるいは、「適切な聞き手の不在」である。これでは、コミュニケーションそのものが
成立しないか、成立したとしても質の低いコミュニケーションにしかなりえない。会話においても、参加者相互が話して聞く、聞いて話すということをきちんと行うことで、はじめてコミュニケーションの質が保たれるのである。
雑談のような場合にはコミュニケーションの質が低くなったとしても、あまり
差しさわりないかもしれない。 、特定の目的を持った会話、あるいは、情報や意見を交換して一定の結論を引き出さなければならない討論や会議の場でのカラオケ現象は、困ったことになる。
この場合のコミュニケーションの質の低下は、無視できない損失をもたらすことになるからだ。
話すことに関しては、「話し上手」という言葉にたいして、その反対をあらわす「話し下手」という言葉があり、その両方がどちらもよく
使われる。しかし、聞くことに関しては、どうだろう。「聞き上手」にたいする言葉として、「聞き下手」という言葉もあることはあるが、
しかし、実際に使われることはめったにない。
こういう言葉の使われ方というのは、
社会における認識のあり方を反映している。「聞き下手」という言葉が普通めったに使われないとい
うことのなかには、じつは看 かん過 かできない認識の誤りが隠されている。
話すことに関しては、「話し上手」と「話し下手」の両方とも使われるということは、話すのが上手な人がいて、普通の人がいて、そして20 10 一
※
敢襖
※
鴬
柑
※
著作物保護のため掲載を控えます
― 2 ―
下手な人がいると、社会において認識されてきたことを意味する。つまり、普通を基準にして、それよりも上手というレベルがあれば、下手
というレベルもあるととらえられてきたわけである。
ところが、聞くことに関しては事情が異なる。聞くのが上手な人というのはいるが、聞くのが下手な人というのはいない――「聞き下手」
という言い方があまりされないということは、あたかもそうであるかのように認識されてきたということである。この認識においては、聞くのが上手な人以外は、あとはみんな普通のレベルなのである。そもそも、聞くなどということは、誰だって普通にできることなのである。だから、取り立てて「聞き下手」などという言い方は必要ないというわけだ。
これは、とんでもない誤解である。聞くことにも、ちゃんと上手もあれば下手もある。話す場合と同様、聞くことにも、すごく上手だとい
うレベルからすごく下手だというレベルまで、さまざまなレベルがあるのだ。
こういう誤解の根っこには、
「話すということは努力を要する( 1
)行為であるが、聞くということは特別の努力を要しない(
2
)
行為だ」という誤解が横たわっている。これはまったくの誤解である。聞くことについての最大の誤解と言ってもよい。実際には、むしろ聞くことのほうがより大きな努力を必要とすると考えておいたほうがいい。
さて、「どうもわたしは話し下手でして」と言う人は少なくない。話の仕方が下手だということを自覚しているわけである。しかし、「ど
うもわたしは聞き下手でして」などと言う人は、ごくまれにしかいない。しかしである。聞き下手は確実に存在している。そこらじゅうにご
ろごろ存在していると言ってもいい。それなのに、本人たちはそのことを自覚していないのだ。聞くのが下手だということがあるということそのものを認識していないのだから、そういう自覚も生 しょうじないのである。
(伊藤進『〈聞く力〉を鍛える』より)
※ 虎視眈々……機会をねらって様子をうかがうさま。
※ 虚空……何もない空間。
※ 看過……大したことではないとして見逃すこと。
30
桓
著作物保護のため掲載を控えます
― 3 ―
問一 部襖「台無し」、鴬「差しさわり」の意味としてふさわしいものを次の中からそれぞれ一つずつ選び、記号で答えなさい。
ア
いくら努力してもなんの効果もないこと
ア
他にはない突出した長所
イ
物事がすっかりだめになってしまうこと
イ
改善するための今後の課題 襖「台無し」 鴬「差しさわり」 ウ
予想と大きく異なり失望してしまうこと
ウ
不都合を生む望ましくない事態
エ
度が過ぎて正常に機能しなくなること
エ
歩み寄ることの難しい隔たり 問二 部敢「会話におけるカラオケ現象」について、これはどういう状態を表していますか。その内容として最もふさわしい箇所を文中から十字程度で探し、抜き出して答えなさい。書き抜きたい箇所に句読点があれば一字とし、以下の設問でも同様とします。
問三 を補うのにふさわしい語を次の中から一つ選び、記号で答えなさい。
ア
さて
イ
だから
ウ
例えば
エ
しかし
オ
なぜなら 問四 部柑「社会における認識のあり方」について、これはどのような認識のことですか。説明しなさい。
問五
(
1
)・ (2
)に入る語の組み合わせとしてふさわしいものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい。
ア 1
受動的
2
能動的
イ 1
能動的
2
受動的
ウ 1
具体的
2
抽象的
エ 1
抽象的
2
具体的
問六 部桓「聞くことのほうがより大きな努力を必要とする」に関連して、本文の内容からすると「聞き上手」になるには具体的にどのようなことに注意するべきであると考えられますか。文中の語句を用いながら、四十字以上五十字以内で書きなさい。
― 4 ―
二 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。(設問の都合上、一部本文を改めたところがあります。) コーシローの里親になってくれる人は週末になっても現れなかった。
月曜日の放課後、顧問の五十嵐と用務員の蔵橋に案内され、校長がコーシローを見がてら部室に来た。生徒会長の藤原が
起 たち上げた「コー
シローの世話をする会」のメンバー十六人とともに、部室の椅子を集め、優花は話し合いの席を設ける。
部室の隅では、早瀬が制服の上着を脱ぎ、カーキ色の作業服に腕を通していた。着替え終わると席に座り、今度はゴミ箱を引き寄せ、その
上で黒い棒をナイフで熱心に削っている。
早瀬の邪魔をしないように声をひそめ、ここ二週間、犬の里親を探したが見つからないと、藤原が校長に説明をした。
藤原の話を補足するように、犬の飼育に詳しい蔵橋が、コーシローは捨て犬の可能性が高いという話を続けた。
ケージのなかで眠っているコーシローに蔵橋が目をやった。
「あのコはここに来たときは砂まみれでした。もしかしたら海に捨てられて、そこから歩いてきたのかもしれません」
鈴 すず
鹿 か山 さん麓 ろくにある中学出身の女子が不思議そうに聞いた。
「あれ? 海って、ここから近いんですか」「近くはないがな」
五十嵐が駅の方角を指さした。
「まっすぐに行ったらそのうち出てくる。校歌にもあるだろう、『めぐる潮の音』って。ただその間に近 きん鉄 てつとJRの線路が走っているし幹線
道路もある。この犬にとっては、かなりの距離だな」
席の後方から男子の声がした。
「コーシロー」を成り行きでしばらく世話していた。 次の文章は、昭和の終わり頃のある高校を舞台にした小説の一部である。この学校の美術部員たちは、学校に紛れ込んできた犬の
10
敢
※※
※
― 4 ―
二 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。(設問の都合上、一部本文を改めたところがあります。) コーシローの里親になってくれる人は週末になっても現れなかった。
月曜日の放課後、顧問の五十嵐と用務員の蔵橋に案内され、校長がコーシローを見がてら部室に来た。生徒会長の藤原が
起 たち上げた「コー
シローの世話をする会」のメンバー十六人とともに、部室の椅子を集め、優花は話し合いの席を設ける。
部室の隅では、早瀬が制服の上着を脱ぎ、カーキ色の作業服に腕を通していた。着替え終わると席に座り、今度はゴミ箱を引き寄せ、その
上で黒い棒をナイフで熱心に削っている。
早瀬の邪魔をしないように声をひそめ、ここ二週間、犬の里親を探したが見つからないと、藤原が校長に説明をした。
藤原の話を補足するように、犬の飼育に詳しい蔵橋が、コーシローは捨て犬の可能性が高いという話を続けた。
ケージのなかで眠っているコーシローに蔵橋が目をやった。
「あのコはここに来たときは砂まみれでした。もしかしたら海に捨てられて、そこから歩いてきたのかもしれません」
鈴 すず
鹿 か山 さん麓 ろくにある中学出身の女子が不思議そうに聞いた。「あれ? 海って、ここから近いんですか」「近くはないがな」
五十嵐が駅の方角を指さした。
「まっすぐに行ったらそのうち出てくる。校歌にもあるだろう、『めぐる潮の音』って。ただその間に近 きん鉄 てつとJRの線路が走っているし幹線
道路もある。この犬にとっては、かなりの距離だな」
席の後方から男子の声がした。
「コーシロー」を成り行きでしばらく世話していた。 次の文章は、昭和の終わり頃のある高校を舞台にした小説の一部である。この学校の美術部員たちは、学校に紛れ込んできた犬の
10
敢
※※
※
著作物保護のため掲載を控えます
― 5 ―
「そんな距離を必死になって、こいつは八高まで歩いてきたってことですよね」
校長が、声がした方に語りかけた。
「しかし君、捨て犬だとしたら、いくら待っても飼い主は現れないぞ」
藤原が校長に向かって手を挙げながら、周囲を見回した。
「みんな、発言するときはちゃんと手を挙げて。先生にまず自分の名前を名乗ろうや。僕は生徒会長の藤原、藤原貴史です」
よく通る声で堂々と名乗ると、藤原がなめらかに話し出した。
「実は近所で何人か里親に名乗りを上げてくれた人もいたんです。でも実際にコーシローを見ると、みんなやめてしまう。子犬ならいいんだけど、こいつ、ほとんど成犬になりかけてるから。中途半端に大きくなった犬って、いまいち情がわかないらしいんです」
「それもあって捨てられたのかもな」
五十嵐が腕を組む。校長がためらいがちに口を開いた。
「では、引き取り手がないとなると、最終的には保健所のほうに連絡を」
待ってください、と優花は手を挙げる。
「三年生の塩見優花です。まだ、これから引き取り手が現れるかもしれません」
塩見さん、と校長がおだやかな目をこちらに向けた。
「この犬はこれからさらに大きくなっていく。成犬になったら、いよいよ里親は出てこないだろう。たとえば、塩見さんの家では飼えないの?」
「うちは家で食べものを扱っているので、動物は飼えないって言われて」
藤原が再び手を挙げた。
「すみません、藤原です。校長先生、よろしいですか。僕ら『コーシローの世話をする会』では、このまま八高で飼えないかって意見が出て
います。餌代や予防注射代などのカンパを集めました。家からペットフードやトイレグッズを持ってきてくれる人もいます」「藤原君の家では飼えないのか?」
校長の問いかけに、藤原が
一瞬、言葉に詰まった。「妹にアレルギーがあって。それ以前にうちの親、犬が大嫌いなんです」 2030※
柑 ※
著作物保護のため掲載を控えます
― 5 ―
「そんな距離を必死になって、こいつは八高まで歩いてきたってことですよね」
校長が、声がした方に語りかけた。
「しかし君、捨て犬だとしたら、いくら待っても飼い主は現れないぞ」
藤原が校長に向かって手を挙げながら、周囲を見回した。
「みんな、発言するときはちゃんと手を挙げて。先生にまず自分の名前を名乗ろうや。僕は生徒会長の藤原、藤原貴史です」
よく通る声で堂々と名乗ると、藤原がなめらかに話し出した。
「実は近所で何人か里親に名乗りを上げてくれた人もいたんです。でも実際にコーシローを見ると、みんなやめてしまう。子犬ならいいんだけど、こいつ、ほとんど成犬になりかけてるから。中途半端に大きくなった犬って、いまいち情がわかないらしいんです」
「それもあって捨てられたのかもな」
五十嵐が腕を組む。校長がためらいがちに口を開いた。
「では、引き取り手がないとなると、最終的には保健所のほうに連絡を」
待ってください、と優花は手を挙げる。
「三年生の塩見優花です。まだ、これから引き取り手が現れるかもしれません」
塩見さん、と校長がおだやかな目をこちらに向けた。
「この犬はこれからさらに大きくなっていく。成犬になったら、いよいよ里親は出てこないだろう。たとえば、塩見さんの家では飼えないの?」
「うちは家で食べものを扱っているので、動物は飼えないって言われて」
藤原が再び手を挙げた。
「すみません、藤原です。校長先生、よろしいですか。僕ら『コーシローの世話をする会』では、このまま八高で飼えないかって意見が出ています。餌代や予防注射代などのカンパを集めました。家からペットフードやトイレグッズを持ってきてくれる人もいます」「藤原君の家では飼えないのか?」
校長の問いかけに、藤原が
一瞬、言葉に詰まった。「妹にアレルギーがあって。それ以前にうちの親、犬が大嫌いなんです」 2030※
柑 ※
― 6 ―
「生徒のなかにもアレルギーを持っている人がいる。そこへの配慮は? それから仮にこの犬が誰かを噛 かんだら、その責任は誰が負うんだ?」
用務員の蔵橋が「おとなしいコです」とコーシローを見た。
「無 む駄 だ吠 ぼえもしないし。ずっと大切にされてきたんでしょう。人を信頼しています」
うちで飼うことも考えたんですが、と五十嵐が校長に語りかける。
「ペット禁止の住まいでしてね。管理組合にもかけあったんですが、駄目でした。引き続き我々も里親を探しますから、それまで学校に置いてやるってのは無理ですかね?」
「私立ならそれもできるだろうが、うちは公立だからね。前例がない」
校長がスーツのポケットをさぐって
煙 たばこ草を出した。すぐに思い直したような顔で再びポケットに戻す。
「それに今回の一件で、八高に捨てたら面倒を見てもらえると、犬や猫をどんどん捨てていかれたらどうするんだ? そもそも自分たちでは飼えないから、学校で飼おうという発想がおかしくないか。安易でしょう」
安易という言葉に、優花はケージのなかのコーシローを眺める。
生後間もない可愛い子犬だったら、引き取ってもらえたのだろうか。
外に目をやると、窓ガラスに自分の姿が映っていた。
子どもではないが、大人でもない。飛び抜けて優秀ではないが、まったくできないわけでもない。
中途半端な存在。コーシローは自分とよく似ている。
言葉が口をついて出た。
「安易かもしれませんが」
全員の視線が集まり、優花は言葉に詰まる。
深く息を吸い、もう一度同じ言葉を繰り返した。
「安易かもしれませんが、では、学校に迷い込んできた犬を見て見ぬふりをして、見殺しにすればよかったんでしょうか。私たちは、どうするべきだったんでしょう? どうすることが、安易ではないやり方なんでしょうか」
「難しい質問だ」
そう言ったきり、校長が考えこむ。それから皆が黙った。
40 50
60
桓
著作物保護のため掲載を控えます
― 7 ―
沈黙に耐えきれず、優花はうつむく。
言いすぎた気がする。しかも何の解決にもならないことを言ってしまった。
突然、部屋の隅から拍手のような音がした。
その音に勇気づけられ、優花は顔を上げる。
イーゼルの前にいる早瀬と目が合った。まっすぐな
眼 まな差 ざしでこちらを見ている。
小気味よい音を響かせ、彼は指で紙を
弾 はじいていた。
指先を布で拭きながら、「ちょっといいですか」と早瀬が立ち上がった。
「三年生の早瀬光司郎です。僕はその犬とはまったく関係ないんですけど……」
早瀬がケージに近づき、眠っているコーシローを抱き上げた。
「正直、それほど愛着もない。でも勝手に僕の名前をつけられたあげくに保健所で殺処分。それは非常に気分が悪い」
目覚めたコーシローが早瀬の肩に前脚を置き、首筋の匂いを嗅いでいる。愛着はないと言うわりに、優しくその背を
撫 なでると、早瀬が校長
にコーシローを差し出した。
意外にも手慣れた様子で校長が受け取り、小さなため息をもらす。
「早瀬君、保健所に引き渡したらすぐに殺処分になるわけではないよ。無事に里親が見つかるケースもある」
そうかもしれませんが、と早瀬が校長の前に立つ。
「公立の小学校でうさぎや鶏を飼っているのに、どうして公立の高校で犬を飼ってはいけないんですか?」「それはそうだな」
五十嵐が何度もうなずき、校長に顔を向けた。
「小学生でもちゃんと飼育してますからね。八高の生徒なら、それはきちんとやれるでしょう。ハチコウに犬。しゃれもきいてる、なあ、コーシロー」
「僕に言ってるんですか、それとも犬?」
両方だ、と五十嵐が手を伸ばし、校長からコーシローを受け取った。
70 80
※
― 8 ―
「いかがでしょう、生徒が責任持って面倒を見るなら、しばらくの間、美術部の部室の一角を提供してもいい。顧問の私はそんなふうにも考
えるんですが」「前例がない」
五十嵐に抱かれたコーシローが、校長のもとに戻ろうとしている。その様子を見ながら、校長が言葉を続けた。
「しかし……いいでしょう。飼い主が現れるまで飼育を許可する。ただし、他の生徒や学校側に迷惑をかけるようなことがあれば、即座に新たな対応を検討するが」
先生、と藤原が手を挙げた。
「つまり、それってOKってことですか。……言い直しますね。( )」
「そういうことだ。至急、世話人の窓口を決めて私に報告するように」
校長が立ち上がり、全員を見回した。
「 とは何か。命を預かるというのはどういうことか。各自、身をもって、それを考えていきなさい」
(伊吹有喜『犬がいた季節』より)
※ ケージ……動物を入れる檻。 おり
※ 鈴鹿山麓……三重県にある山岳地帯周辺。
※ 近鉄……近畿日本鉄道。大阪府・奈良県・京都府・三重県・愛知県で鉄道事業を行っている。
※ 八高……この小説の舞台である、八稜高校のこと。
※ カンパ……大勢に呼びかけて資金を集めること。また、その呼びかけに応じること。
※ イーゼル……絵を描くときに用いる台。
90
著作物保護のため掲載を控えます
― 8 ―
「いかがでしょう、生徒が責任持って面倒を見るなら、しばらくの間、美術部の部室の一角を提供してもいい。顧問の私はそんなふうにも考
えるんですが」「前例がない」
五十嵐に抱かれたコーシローが、校長のもとに戻ろうとしている。その様子を見ながら、校長が言葉を続けた。
「しかし……いいでしょう。飼い主が現れるまで飼育を許可する。ただし、他の生徒や学校側に迷惑をかけるようなことがあれば、即座に新たな対応を検討するが」
先生、と藤原が手を挙げた。
「つまり、それってOKってことですか。……言い直しますね。( )」
「そういうことだ。至急、世話人の窓口を決めて私に報告するように」
校長が立ち上がり、全員を見回した。
「 とは何か。命を預かるというのはどういうことか。各自、身をもって、それを考えていきなさい」
(伊吹有喜『犬がいた季節』より)
※ ケージ……動物を入れる檻。 おり
※ 鈴鹿山麓……三重県にある山岳地帯周辺。
※ 近鉄……近畿日本鉄道。大阪府・奈良県・京都府・三重県・愛知県で鉄道事業を行っている。
※ 八高……この小説の舞台である、八稜高校のこと。
※ カンパ……大勢に呼びかけて資金を集めること。また、その呼びかけに応じること。
※ イーゼル……絵を描くときに用いる台。
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著作物保護のため掲載を控えます
― 9 ―
問一 部敢「話し合いの席」について、この場は何について話し合うことが目的ですか。説明しなさい。
問二 部柑「一瞬、言葉に詰まった」について、なぜ言葉に詰まったのですか。その理由としてふさわしいものを次の中から一つ選び、
記号で答えなさい。
ア
話し合いが行き詰まり、すっかり困りはててしまったから。
イ
話を聞いておらず、何を答えればよいか思いつかないから。
ウ
思いがけず痛いところを突かれ、たじろいでしまったから。
エ
誰が口火を切るのか見極め、タイミングを図っているから。
問三 部桓「深く息を吸い、もう一度同じ言葉を繰り返した」について、「優花」がこの場面でこだわって発言しているのは、「コー
シロー」に対するどのような思いがあるからだと考えられますか。文中の語句を用いながら、説明しなさい。
問四
本文中の
( )には、どのような言葉が入ると考えられますか。「居場所」という語を必ず用い、前後の表現を参考にしながら書きなさい。
問五 には「校長」が生徒たちに学んでほしいことが入ります。文中から漢字二字で書き抜いて答えなさい。
― 10 ―
問六
次の
A~Dは、文中のどの発言者について語っていますか。それぞれが語っている人物を後に挙げるア~エより一人ずつ選び、記号で
答えなさい。
A:一歩引いて議論を聞いていたようだけれど、的確な指摘で議論を前に進めた。ぶっきらぼうに見えて、実は犬好きなのかも?
B:容易に同意しようとはせず、慎重に判断を下そうとしているみたい。一人ひとりの発言をしっかり聞こうという様子がうかがえるね。C:その場にふさわしい発言の仕方を提案して、議論の進行に流れを作っている。人前で話をすることに慣れているようだね。
D:迷いながらも、自分の考えや疑問をまっすぐに表現しようとしているようだ。自分の発言を後悔しているようにも見えるけれど……。
ア
藤原貴史
イ
塩見優花
ウ
早瀬光司郎
エ
校長
― 10 ―
問六
次の
A~Dは、文中のどの発言者について語っていますか。それぞれが語っている人物を後に挙げるア~エより一人ずつ選び、記号で
答えなさい。
A:一歩引いて議論を聞いていたようだけれど、的確な指摘で議論を前に進めた。ぶっきらぼうに見えて、実は犬好きなのかも?
B:容易に同意しようとはせず、慎重に判断を下そうとしているみたい。一人ひとりの発言をしっかり聞こうという様子がうかがえるね。C:その場にふさわしい発言の仕方を提案して、議論の進行に流れを作っている。人前で話をすることに慣れているようだね。
D:迷いながらも、自分の考えや疑問をまっすぐに表現しようとしているようだ。自分の発言を後悔しているようにも見えるけれど……。
ア
藤原貴史
イ
塩見優花
ウ
早瀬光司郎
エ
校長
― 11 ―
次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。(設問の都合上、一部本文を改めたところがあります。)
能 のう
因 いんはいたれる数 す寄 き者 ものなり。
A
都をば
霞 かすみとともに立ちしかど秋風ぞ吹く白 しら河 かはの関 せき
とよめりけるを、都にありながら、この歌を出 いださむこと、無念と思ひて、人にも知られず、久しく籠 こもり居 ゐて、色を黒く、日にあぶりなしてのち、「陸 みち奥 のくの方へ修行のついでによみたり」とぞ披露し 。(『十訓抄』より)
【和歌現代語訳】
都を霞の立つ春に旅立ったけれど、
(長い旅路だったので)もう秋風が吹いているよ、この白河の関は。
※ 数寄者……風流な人。物好きな人。
※ 白河の関……現在の福島県白河市にあった関所。
※ 陸奥……現在の東北地方を指す古名。
問一 Aの和歌は、どこで作られたものですか。古文中より書き抜いて答えなさい。
問二 部敢「思ひ」を現代仮名遣いに直し、すべてひらがなで書きなさい。
問三 部柑「人にも知られず、久しく籠り居て、色を黒く、日にあぶりなして」について、「能因」がこのような行動を取ったのはなぜですか。説明しなさい。 三
※
※
柑敢
※
― 12 ―
次の①~⑤の 部のカタカナを漢字に直し、⑥~⑩の 部の漢字の読みをひらがなで書きなさい。
① 進路をボウガイする。
②
代金を
セイキュウする。
③ 先輩をシタう。
④ 目標にトウタツする
⑤
自己
ショウカイから始める。 四
⑥
新作が
称賛される。⑦
生徒を
伴う旅行。⑧
一次試験を
免除する。⑨
校歌を
斉唱する。⑩
大勢で
騒ぐ。 問四 を補うのにふさわしいものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい。
ア
けら
イ
けり
ウ
ける
エ
けれ
― 12 ―
次の①~⑤の 部のカタカナを漢字に直し、⑥~⑩の 部の漢字の読みをひらがなで書きなさい。
① 進路をボウガイする。
②
代金を
セイキュウする。
③ 先輩をシタう。
④ 目標にトウタツする
⑤
自己
ショウカイから始める。 四
⑥
新作が
称賛される。⑦
生徒を
伴う旅行。⑧
一次試験を
免除する。⑨
校歌を
斉唱する。⑩
大勢で
騒ぐ。 問四 を補うのにふさわしいものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい。
ア
けら
イ
けり
ウ
ける
エ
けれ
― 12 ―
次の①~⑤の 部のカタカナを漢字に直し、⑥~⑩の 部の漢字の読みをひらがなで書きなさい。
① 進路をボウガイする。
②
代金を
セイキュウする。
③ 先輩をシタう。
④ 目標にトウタツする
⑤
自己
ショウカイから始める。 四
⑥
新作が
称賛される。⑦
生徒を
伴う旅行。⑧
一次試験を
免除する。⑨
校歌を
斉唱する。⑩
大勢で
騒ぐ。 問四 を補うのにふさわしいものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい。
ア
けら
イ
けり
ウ
ける
エ
けれ