2007/08/17 04:46 PM 大阪工業大学 - 知的財産学部/知的財産研究科
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”体育教育”再考
2007年1月15日 (月)
知的財産学科 基礎教育系 健康体育研究室 助教授 中村友浩
私の専門は体育科学という領域で、大阪工大の学生対象に15年以上も体育教育を行ってきま した。また、課外活動の陸上競技顧問として競技スポーツにも関わりを持ってきました。体育教 育というと一般的には競技スポーツを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、体育教育 の本来の役割はすべての学生に身体活動の重要性を意識させ、生涯に渡って身体活動を継続させ ることであると考えています。
先日の朝日新聞に”体育よ、さようなら”と題した社説が載りました。”学校体育を重んじてきた にもかかわらず、子供の体力低下はとまらない”と書かれています。しかしながら、本当に体力 低下を抑制する体育教育は重要視され、しっかり行われているのでしょうか? 私は体育教育の 本来の役割がどうも果たされていない気がするのです。
以前にも増して生活環境のIT化やゲームなどのデジタル機器の普及で普通に身体を動かさなく なっています。また、若い世代を中心に競技スポーツのみが関心事で競技スポーツを行える人と それ以外の人という二極化が急速に進んでいます。実際に競技スポーツを行っている生徒や学生 達は一部にすぎません。このような社会環境にもかかわらず、教育環境においても初等中等教育 が偏った受験科目に力を入れ、受験科目に関係ない教育を軽視したり、授業時間数を削ったりす る傾向が見られています。社会環境の変化に加え、本来の体育教育の喪失が子供たちの体力低下 を加速しているのではないでしょうか?
文部科学省に長く勤め、現在政策研究大学院大学に移られた栗田薫氏は“日本を滅ぼす教育論 議”という自身の著書の中で現在の日本の教育の論議の在り方を鋭く指摘しています。この著書 の中で栗田氏は日本の教育が追加教育症候群に陥っていると述べています。たとえば、心の問題 ひとつにしても1960年代から1970年代において今よりも“学校での心の教育”が行われて おり、その後その教育が減少した結果として心の問題が起きたとは考えにくいと指摘していま す。心の教育を追加することではなく、なぜ心の問題が生じたのかという原因を考えるべきであ ると述べています。最近の体力科学の研究成果から体力の低下は人間の脳にも影響を与えること がわかってきました。人間の身体は心と体が分離したものではなく、心と体が全体的なシステム として機能しています。私は最近問題になっている心の問題の主な原因のひとつとして、”身体 を動かさないこと”が関係しているのではないかと考えています。「下流社会」でベストセラー になった三浦展氏はご自身の調査結果から”小学校から英語教育の導入が検討され、国語教育の 見直し議論が起こっているが、今こそ体育に一番力を入れるべきではないか”と主張されていま す。教育の枠組みの中で身体を動かす重要性を学び、実践力を育成していくことがバランスの取 れた人間的成長にもつながるのではないかと考えています。
私は大阪阿倍野区在住の障害者対象に外出頻度の調査をしたことがあるのですが、趣味のひと つとしてスポーツ活動を行っている人は日常生活における外出頻度も非常に高い結果が出ていま す。外出頻度の増加は障害者だけでなく高齢者にとっても大切なことで”生きがい”を探すきっか けにもつながります。単なる体力向上という目的以外に”生きがい”を見つける手段としてできる だけ多くの人が身体活動の意義を理解し、その実践力を身につける必要があると考えています。
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だけ多くの人が身体活動の意義を理解し、その実践力を身につける必要があると考えています。
現在、大阪工大では大学一年生を対象に"健康体育"という授業を開講し、生活習慣の改善や身 体活動の増加を目的とした授業を展開しています。健康体育の授業をしっかり受講した学生は生 活習慣のリズムを取り戻し、身体活動量も増加した結果として、授業中眠たくならなかったり、
体調が良くなって活力が向上したと授業の感想を述べています。
先行きが不透明であたりまえのことがあたりまえに行えなくなっている時代ですが、一人一人 がからだの問題を意識し、自ら運動習慣を定着させ、生活習慣を改善することが今後の日本に大 切なことではないかと考えています。
コラムの下のリンクに”健康体育研究室”のホームページが紹介されていますので是非ご覧下さ い。
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