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中国ニュース 1.25-1.31...2

本気で考えられている自衛隊の南沙への進出問題<大西 広>...6

読後雑感 : 2016年 第1回<小島正憲>...7

中国と中東の経済協力<福喜多俊夫>...14

【中国経済最新統計】...17

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中国ニュース 1.25-1.31

HEADLINES

 中国、23省のGDP成長率が7%以上となり、全国平均を上回る

 北師大が「2015年中国寄付ランキング」を発表、個人の最高寄付金額が30億元近く

 中国CBDランキングで北京と上海が首位

 世界のFDI36%増、中国へのFDI流入額がこれまでの最高を記録

 「中国製造2025」の1Xプランが完成、11の措置が近く発表

 中国がIMF 3番目の大株主に浮上

2015年中国とEUの貿易額は1692億ドルに

 中国商務部、中国の対外貿易構造でアジア諸国の地位が向上

 中国の春運が開始、40日間で延べ30億人が大移動か

 上海市自由貿易試験区で人民元の経常収支勘定の自由化を推進

中国、23省のGDP成長率が7%以上となり、全国平均を上回る

【1月29日 中国経済網】全国31省(自治区・直轄市)のGDP成長率ランキン グが発表され、重慶とチベットのGDP成長率が11%で首位を飾った。経済規模が最 も大きいのは広東と江蘇であり、初めて7兆元を超えた。そのほか、中国全体のGDP

成長率は6.9%であった が、7%を超えた省は23 あった。2015年に全国 31省(自治区・直轄市)

のうち経済規模が1兆元 以上であったのは25省 で、2014年より1省多 かった。広東の2015年 の域内総生産(GRP)は 7兆2800億元で、1989 年以来27年連続で全国首 位を飾ったが、広東に続 く江蘇が7兆600億元と、

両者の格差が縮小している。GDP成長率のワースト4は遼寧(3%)、山西

(3.1%)、黒龍江(5.7%)、吉林(6.5%)だった。そのほか、各省の経済規模の 総和が全国の経済規模を上回った。

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北師大が「2015年中国寄付ランキング」を発表、個人の最高寄付金額が30億元近くに

1月29日 新京報】28日、北京師範大学中国公益研究院は「2015年中国寄付 ランキングトップ100」を発表し、中国本土の住民又は非国有企業の実質的支配 者の巨額寄付情況に対し、統計をとった。2015年にランクインした寄付者の寄付 総額は128億元(約2353.9億円)に上り、個人の最高寄付金額は29億2700万元 だった。そのうち、北京在住の個人寄付金額が最も多く、58億元を超えた。何巧 女さんは保有している7630万株の東方園林公司の株式(時価総額29億2700万 元)を寄付したことで1位に輝いた。大連万達集団の王健林氏が3億6000万元を 寄付し、5位になった。過去5年間の統計によると、王健林氏、許家印氏と古潤金 氏が5年連続してランクインした。

中国CBDランキングで北京と上海が首位

【1月25日 人民網】中国の研究機関が発表した中国中心業務地区(CBD)発 展報告書によると、香港セントラルのCBDは世界クラスのCBDに選ばれ、上海

陸家嘴CBD、北京CBD、広州天河CBDは国家クラスのCBDに選ばれるという。

中国社科院都市発展・環境研究所、中国商務連盟、社科文献出版社が発表した

「中心業務地区白書:中国中心業務地区発展報告書(2015)」によると、中国の CBDは世界クラス、州クラス、国家クラス、大区クラス、地区クラス、プロジェ クトクラスという6つのクラスに分けられ、これらによって全国に広がるCBD網 を構築するという。白書によると、上海陸家嘴CBD、北京CBD、広州天河CBD は国家クラスのCBDに選ばれ、経済面での影響力は全国に広がり、全国にビジネ スサービスを提供し、地域内の全国的監督・管理機関と企業の本社などの力に よって、川上・川下産業チェーンと企業網を通じて全国経済の発展をけん引する。

世界のFDI36%増、中国へのFDI流入額がこれまでの最高を記録

【1月26日、経済日報】国連貿易開発 会議で発表した最新の報告書によると、

2015年通年の外国直接投資(FDI)の 流入総額は前年(2014年)同期比で 36%増の約1兆7000億ドルと2007年 以降で最高額を記録した。そのうち、

2015年の中国へのFDI流入額は約 1360億ドルと2014年を約6%上回り、

史上最高をつけた。国連貿易開発会議 で発表した「Global Investment  Trend and Prospects」によると、

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2015年に先進国へのFDI流入額は前年同期比で90%増の9360億ドルと、これま でで2番目に高い額となり、全世界のFDI流入総額の55%を占めた。米国への FDI流入額は3840億ドルと2014年の4倍に相当し、2000年以降で最高額をつけ、

米国はこれで再び「世界最大の外国直接投資目的地」になった。2015年、中国へ のFDI流入額は前年同期比で6%増の1360億ドルと世界3位になった。そのうち、

製造業へのFDI流入額はやや減少したが、サービス業へのFDI流入額は大幅に増 えている。

「中国製造2025」の1Xプランが完成、11の措置が近く発表

【1月28日 21世紀経済報道】中国国務院の李克強総理は1月27日に国務院常務 会議を主宰し、「中国製造2025」と「インターネット・プラス」の融合発展を推 進することを決めた。会議はスマート製造、グリーン製造、品質ブランドの向上 など 11 の実 施ガ イド ライ ン、

行動 計画 専門 計画 を発 表し た。

中国 電子 情報 産業発展研究所所長の安暉氏によると、国務院常務会議は11の実施ガイドライン、

行動計画、専門計画の発表を急ぐよう要求し、一部の方案の方向を明確化した。

中国工業信息化部(工信部)部長の苗圩氏は2015年末に行われた記者会見の席上 で、「中国製造2025」をめぐり34の計画を提出したと語った。

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中国がIMF 3番目の大株主に浮上

【1月28日 新華社】国際通貨基金(IMF)は「2010年度のクォーター一般見直 しと改革案は既に正式に発効した」と発表し、これを契機に中国は正式にIMF3 番目の大株主になると見られる。IMFは声明の中で、「理事会改革修正案」が1 月26日より発効するとした。これにより中国の出資比率が3.996%から6.394%に 上昇し、これまでの6位から米国と日本に次ぐ3位に躍進する。中国人民大学国 家発展・戦略研究院の劉元春執行院長によると、「中国はIMF 3番目の大株主に なり、これからはより多くの大国としての責任を担い、自分の出資比率を実行す ることになる。これは歴史的な意義を持つ。また、中国主導のアジアインフラ投 資銀行(AIIB)の創設、人民元のIMF特別引出権(SDR)構成通貨への採用、一 帯一路(シルクロード経済帯と21世紀の海上シルクロード)戦略の実施に伴い、

国際社会で中国の地位も次第に高まる」と同氏がコメントした。

2015年中国とEUの貿易額は1692億ドルに

【1月27日 証券日報】EUは中国にとって最大の貿易パートナー、最大の技術供 与先、重要な投資パートナーになった。中国国家主席の習近平氏、国務院総理の 李克強氏などの指導者は2015年にEU12カ国及びEU本部を訪れ、また、EUの指 導者や23カ国の首脳が中国を訪れた。中国商務部のデータによると、上記の訪問 で合意したビジネス協力プロジェクトは1692億ドルに上り、交通や金融などの分 野に及ぶ。イギリス、フランス、ドイツなど17カ国は2015年に中国主導のアジ アインフラ投資銀行に参加し、EU諸国は中国の人民元をIMFの特別引き出し権

(SDR)構成通貨に加えることを支持し、欧州復興開発銀行(EBRD)は中国の加 盟を承認した。

中国商務部、中国の対外貿易構造でアジア諸国の地位が向上

【1月27日 中国経済網】中国商務部が発表したデータによれば、2015年以降、

中国の対外貿易構造でアジア諸国の地位が高まっている。中国商務部が同日に発 表したデータによれば、2015年1~11月、中国とアジア地域の25ヵ国との貿易額 は1兆1000億ドルと中国の対外貿易総額の約3分の1を占めた。2015年11月ま

でにアジア地域 25ヵ国からの外資 導入額は2648億ド ルと中国の外資導入 総額の約17%を占 めた。上記の国に派 遣した労働者数は 35万人と海外に派

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遣した労働者の総数の41%を占め、また、対外投資は503億ドルと中国の対外投 資総額の約8.2%を占めた。昨年、アセアンは中国最大の海外プロジェクト請負市 場及び中国・香港に次ぐ海外投資先に浮上し、日本は中国最大の海外労働市場に なった。

中国の春運が開始、40日間で延べ30億人が大移動か

【1月25日 中国新聞網】中国の春運(旧正月の帰省ラッシュ)が24日に開始し た。中国交通運輸部のデータによると、2016年の春運期間中に前年同期比で3.6%

増の29億1000万人が大移動する見通しだという。同部によると、2016年の春運 期間中に全国の道路利用者は前年同期比で2.4%増の延べ24億8100万人、鉄道利 用者は同12.7%増の3億3200万人、民用航空の利用者は同11%増の延べ5455万 人、水運利用者は前年並みの延べ4280万人になると見込まれている。また、40日 間に渡る春運期間中における利用者数上位10省(自治区・直轄市)は広東、江蘇、

河南、四川、浙江、安徽、湖南、広西、北京、そして江西となる見通しである。

上海市自由貿易試験区で人民元の経常収支勘定の自由化を推進

【1月27日 新華社】上海市の楊雄市長は「2015年における上海市金融市場の取 引総額は1463兆元と5年前の3.5倍に相当した。2015年第1~第3四半期(1~9 月)における上海市金融市場の取引総額は 1100兆元と2014年通年の786兆元を 上回った」と述べた。「今年、上海市は国家金融管理部門に協力し、第 2弾の人 民元越境決済シ ステムづくりを 後押しし、保険 取引所の開業と 運営を推進し、

全国的な信託登 記、手形取引や 相手側の世界的 な決済協会など の本部又は機能 型金融機関を集 める」と同氏が 語った。今年、

上海市自由貿易試験区は計画通りに人民元の経常収支勘定の自由化プロジェクト を試験的に実施し、自由貿易口座の機能を強化し、適時に適格国内個人投資家の 海外投資プロジェクトを試験的に実施することとなる。

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本気で考えられている自衛隊の南沙への進出問題

京都大学名誉教授、慶應義塾大学教授 大西 広

人々の関心が「尖閣」から「南沙」に移ってきているが、それを考える時、私たち が知らなければならないことがいくつかある。たとえば、中国だけでなくベトナムや フィリピンも埋め立てていること、最大の島に最大の軍事力を展開しているのは台湾 である事、それに対して中国は今のところ一切軍事力は展開していないこと、他方の フィリピンは軍隊が展開していること、「航行の自由」で艦船を派遣したアメリカは その「航行の自由」を定めた国連海洋法条約の締結を拒否していること、「牛の舌」

とか「九段線」などと呼ばれるものは元々日本が引いたものであることなどである。

このような重要な事実のみを避けて、一方的な報道だけが日本ではされている。

 特に、この「最大の島に最大の軍事力を展開しているのは台湾」ということは大き

い。私は2002-2003年の間、アメリカのコロンビア大学に留学をしたが、そのある

セミナーで南沙問題が報告された時、一人の台湾人が「私はその基地に以前赴任して いた」と発言し、その場を驚かした。今回選ばれた台湾の新総統もこの領土をしっか り守っていくということだ。

 ではなぜ、台湾が最も大きなプレゼンスを示せているのか。実はそれは1945年ま で日本が南沙を領有していたという事情がある。日本は1930年代に占領を開始し、

その島々を台湾の高雄市に帰属させた。日本の小笠原が東京都に帰属しているのと同 じようにである。そして、そのため、戦後も台湾は南沙を「領有」し続けているので ある。台湾との間には1951年に日華平和条約が締結され、表現に曖昧なところがあ るものの(これ自身も問題ではあるが)、日本政府がこの条約に調印している。という ことは、日本政府はこの島々の台湾による領有を批判できないのである。もちろん、

こうなると「一つの中国」を認める日本は、本来大陸中国の「領有」にも文句がつけ られないはずとなる。

 しかし、これほど基本的な問題も報道されることなく、アメリカ艦船の派遣に乗じ た海上自衛隊の南沙への派遣が本気で準備されている。たとえば、私の手元には『海 幹校戦略研究』という雑誌に掲載された「南シナ海における中国の『九段線』と国際 法—歴史的水域及び歴史的権利を中心に--」という本格的な論文があるが、この「海 幹校」というのは何のことはない「海上自衛隊幹部学校」のことである。そして、こ の論文冒頭では「我が国周辺海空域における安全確保を目的とした常時継続的な情報 収集及び警戒監視のため、南シナ海が海上自衛隊にとって新たな行動区域となる可能 性が指摘される」として、中谷防衛大臣の昨年2月3日の記者会見の言葉が掲載され

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ている。

 私はオバマはこの海域への軍事的進出を嫌がっていて、それは今回の艦船派遣も スービ礁という「人工島」への接近に留まっていることに現れていると考えている。

が、安倍政権と海上自衛隊の方はそうではなく、過去の不都合な事実はすべて隠した ままで、この機に乗じた進出を謀っている。危険である。

読後雑感 : 2016年 第1回

       28,JAN.16 アジア・アパレルものづくりネットワーク代表理事  株式会社小島衣料オーナー 東アジアセンター外部研究員 小島正 憲

1.「2020年 世界はこうなる」  2.「ポスト軍政下のミャンマー」  3.「990円のジーンズがつくら れるのはなぜ?」

4.「毛沢東」  5.「鄧小平」 

1.「2020年 世界はこうなる」  長谷川慶太郎×田原総一郎  SBクリエイティヴ  20 16年1月4日

帯の言葉 : 「変わる世界の勢力地図」

40年ほど前、私は知人の勧めで、長谷川慶太郎と山川暁夫共催の勉強会に参加 していたことがある。またそのころ、まだ無名に近かった田原総一郎を、岐阜中小 企業家同友会に講師として迎え、親しく接する機会を持ったこともある。

その後、長谷川氏については、その独特の経済情勢分析を学び続けているし、こ の数年は毎月出されるCDを欠かさず聴いて勉強している。田原氏についても、そ の著書を読み、彼が主催する日曜日のテレビ番組を欠かさず見てきた。

その両氏も、ともに高齢者の域に入られているが、いまだにその政治・経済情勢 分析からは学ぶものが多い。本書はその両氏の「2020年の世界」を展望する対 談である。ただし対談といっても、主に田原氏が質問し、長谷川氏がそれに答える という形になっている。

第1章で、長谷川氏は「中国の崩壊」を論じているが、長谷川氏は「香港返還」

以来、すでに20年にわたって主張し続けており、「狼少年」の域をとっくに越し ている。私も中国バブル経済の崩壊を確信している一人だが、最近では、「なにが、

崩壊をくい止めているのか」を分析することが重要なのではないかと考えている。

本書でもこの視点からの分析はない。私は、できるだけ早い機会に、私なりの分析

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を行ってみたいと思っている。なお、この章で、長谷川氏は、北朝鮮によって拉致 された被害者問題に言及し、その解決の弊害になっているのは日本の外務省である と断罪している。長谷川氏はその理由を、「朝鮮が独立したとき、当時、朝鮮窒素 肥料(本社は日本窒素)に勤務していた1300人ほどの日本人技術者が北朝鮮政 府によって抑留されたが、この70年間、外務省は彼らを救うために何もしてこな かった。外務省はそのことを追及されることを嫌がっており、それが拉致被害者解 決を遅らせている」と書いている。私はこの個所を読んで、ここにも杉原千畝問題 と同じく、外務省の体質の大きな欠陥が存在しているのだということがわかった。

また、このようなことを発掘し、明るみに出してくるのが、長谷川氏の真骨頂でも あると思った。

長谷川氏は「中国の新常態経済」への転換について、それが一朝一夕で出来るも のではなく、日本でも「経済の量から質への転換」には、オイルショックが起きて から約20年の歳月が必要だったという。そして「日本は自由主義だから、オイル ショックという危機も克服し、経済を発展させることができたのです。となると自 由主義ではない中国はたいへんです。中国共産党の幹部が考えるほど経済の建て直 しは簡単ではない」と書いている。私はこの主張には同意する。

この本の最後で田原氏は、「私は、世界で共産党政権として残っているのは、北 朝鮮だけだと思っています。中国は実質的には共産党国家ではなく、独裁国家とい う認識です。その独裁国家は将来、なくなることは間違いないでしょう。そういう 意味では中国は大変な事態を招くものと予想されます。ただ、長谷川先生が指摘さ れたような崩壊は、中国では起こらないと考えています。中国には13億人の国民 がいるからです」と主張している。それに対し、長谷川氏は、「13億人の巨大市 場というのは幻想に過ぎません。それに日本企業は惑わされてはいけないと思いま す」と反論している。私は、長谷川氏に軍配を上げる。

なお、本書で両氏は、ロシア・米国・中東諸国などの今後にも、言及している。

2.「ポスト軍政下のミャンマー」  工藤年博編  アジア経済研究所  2015年11月13日 副題 : 「改革の実像」

現在、世界の注目を集めているミャンマーだが、意外にも、2015年度、ミャ ンマーについて書かれた本の出版は少ない。そのような状況の中で、本書は、ミャ ンマー研究の第一人者である工藤年博氏が編集したものであり、内容も濃く、貴重 な書であるといえよう。また本書は、昨年11月の総選挙前に執筆されたものであ り、まだ民主政への移行が定まっていない時期に、「ポスト軍政」を大胆に取り上 げているという点で、その勇気も高く評価する必要がある。

工藤氏は本書の序章で、民主化の道への一つの要因は、「改革派の指導者、すな わちテイン・セイン大統領の出現である」と書き、「テイン・セイン大統領が20 07年の僧侶デモの直前に病気療養中の当時のソーウィン首相に代わり、首相代行 となり、僧侶デモの武力弾圧の直後に首相に就任したため、国内の混乱を治めると 同時に、厳しい非難を浴びせる国際社会の矢面に立つという役目を経験したことで

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ある。このときテイン・セイン大統領はスーチー氏との協力以外に、国際社会に復 帰する道はないと悟ったのではないか」、「もう一方のスーチー氏が協力姿勢に転 ずるためにも相応の時間が必要であった」、「両陣営ともに20数年の消耗戦の末 に、2011年にたどりついたのである」、「では、両陣営の協力関係を維持・強 化する鍵は何であろうか。やや唐突に聞こえるかもしれないが、それは所得・教 育・保健・言論の自由などを含めた、国民生活の向上であろう」、「一方、生活水 準の向上と質の改善を享受する国民は、双方の極端な動きに反対するはずである。

例えば、国軍がなんらかの理由でクーデターを起こすとか、スーチー氏が何らかの 理由で拙速な民主化を国軍に突きつけたり、国際社会に再び制裁を呼びかけたりす ることがあれば、国民はこれに反対するだろう。現在の改革路線に対する国民の支 持が、両陣営を規律づけ、穏健な協力関係を維持する誘引となる。少なくともこの 4年間はそうであった」と書いている。これは納得のいく解析である。

さらに工藤氏は、「民主化のなかで、国民がデモやストライキで異議申し立てを し、メディアがこれを自由に報道することが可能となった。国民の要望は複雑とな り、利害調整は難しくなっている。多様な国民の要望に応えつつ、国全体の成長を いかに実現していくのか。政府は難しい舵取りを求められている」と、民主化後の 困難性についても書いている。

第2章では、ミャンマーの議会制度について詳細に論じており、章末にまだミャ ンマーには、「国家に求められる正義の問題が残されている」と書いている。つま り、「軍政時代に起きた人権侵害や不合理な政策の責任を誰がどのようにとるのか、

という問題である。テイン・セイン政権下で比較的スムーズに進んでいる改革は、

国際的には一定の評価を受けているが、国内では、軍政関係者がその責任を回避し たままだと指摘する声が少なくない。一部の国民は早急な“正義の回復”、すなわ ち軍事政権関係者の訴追および処罰や、被害者への具体的な救済(たとえば、軍政 時代に接収された農地の返還)を求めている。この“正義の回復”を求める声が、

スーチー氏やNLDへの支持につながっている面がある。しかしながら、これは政権 交代だけで解決する問題ではなく、国家および国軍に対する国民の信頼にかかわる 問題である。本当の意味で軍事政権が終焉を迎えるのは、この国家と国民のあいだ に信頼関係が再構築されたときだろう」と書いている。私も同感である。私は今後 のミャンマーの行方が、同様の問題を抱えている多くの国のモデルとなることを 祈っている。

なお、本書は、ミャンマーの抱える少数民族問題やロヒンギャ問題についても、

詳細に論じている。

3.「990円のジーンズがつくられるのはなぜ?」  長田華子著  合同出版  2016年1月 16日

副題 : 「ファストファッションの工場で起こっていること」  帯の言葉

: 「洋服から学べる世界の喜べない現実」

著者の長田氏は、ベンガル語に堪能で、バングラデシュの縫製業界に精通してい

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る。本書はその長田氏が、「990円のジーンズがつくられるのはなぜ?」という 問いに応えようとして、バングラデシュの縫製工場の現場を丹念に歩き、従業員さ んたちに直接取材し、書き上げたものである。なお長田氏は、わが社にも取材に訪 れ、その語学力を活かし、多くの労働者から直接話を聞き出しており、その現場に 私も立ち会った。長田氏のこの労作は、バングラデシュの縫製工場の実状を正しく 描き出している。しかし、「990円のジーンズ」はバングラデシュだけで作られ ているわけではなく、中国はもとより、ミャンマーやカンボジア、ベトナム、イン ドネシアなど、多くの国で作られている。その製造過程は大同小異であるとはいえ、

やはり国別に差があり、まったく同列に論じることは避けた方がよいと思う。した がって本書のタイトルは、「バングラデシュで990円の……」とした方が賢明 だったと思う。

長田氏は本書を、「女工哀史」的な視点から描いており、日本で売られている9 90円のジーンズは、バングラデシュの低賃金労働者の犠牲の上に成り立っている と指摘している。わが社もその構図の中で、金儲けにいそしみ、生きながらえてき たわけだから、それを否定しない。しかし、もし20年前に中国に企業進出し、中 国人を搾取していなければ、また5年前にバングラデシュに企業進出し、バングラ デシュ人を搾取していなければ、わが社は倒産していただろう。事実、海外進出せ ず日本国内に居残った同業他社の多くが姿を消している。資本主義世界に生きてい る限り、そのような動きを非難することは、自己否定につながり、資本主義社会の 否定に行き着く。

私は、わが社の企業行動が悪の権化であるとは、思いたくない。私が中国に進出 したとき、中国のわが社の労働者の月給は5千円ほどだった。それが年々上がり、

今では7万円近くなっている。そして中国はわずか20年そこそこで、経済大国と 言われるまでになった。今や、中国人が世界中で爆買いをして、それが顰蹙を買う ほどになっている。つまり、わが社のような企業行動が、中国の労働者の生活を短 期間で著しく向上させたとも言えるのである。本書で長田氏は、バングラデシュの 労働者の月給を約4,000円と書いているが、このデータは少し古く、現在、わ が社の労働者の平均月給は、15,000円を超えている。もちろん今後も、月給 は年々高くなるわけであり、バングラデシュ人の生活は中国と同様にどんどん向上 すると思われる。

長田氏は、バングラデシュの縫製労働者の窮状を、ジャーナリスティックに描く だけでなく、その解決方法の一つとして、「わたしはバングラデシュの縫製工場で 働くすべての人々の権利を保障するための費用を商品の価格に上乗せすることを、

みんなが“よし”とする社会的な合意形成が必要だと考えます。これまで990円 で売られていた1枚のジーンズの価格を、5円でもいいから値上げすることを、わ たしたちが受け入れられるかどうかです。もちろん、1枚当たり5円の値上げ分を バングラデシュの縫製工場で働く人々の給料や労働環境の改善に使うことが大前提 です」と提言している。

さらに長田氏は、「世界中に生きるすべての人々が、“たとえ今よりも洋服の価値

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があがっても、それは働く人々の権利を十分に保障するものであって、まっとうな 価格である”と認識し、合意が得られる社会が望ましいと思います。その上で、バ ングラデシュの政府、企業、業界団体、そして先進国の企業、政府、国際機関、

NGOなどが生産者であるバングラデシュの人々のディーセント・ワークを実現す るための、取り組みをはじめることが必要です」と書き、具体的な方法や手段を ワークショップ編と参加編に分けて書いている。ここに、本書が単なる告発書に堕 していない、大きな特徴がある。

それでも、資本主義社会という枠内では、搾取や収奪という側面を完全に拭い去 ることはできないと思う。

4.「毛沢東」  遠藤誉著  新潮新書  2015年11月20日

副題:「日本軍と共謀した男」 帯の言葉:「“日本軍の進攻に感謝する” 中国研 究の第一人者が描いた“建国の父”の真実

私はこの数年、中国に関する書籍の読後雑感を書くのをひかえるようにしてきた。

それでも昨年11月、「毛沢東」と、「鄧小平」と題した2書が、同時に本屋の店 頭に並んだのを見て、そこになにか見えざる意図のようなものを感じ、両書とも購 入して読んでみた。

本書の著者の遠藤誉氏は、実際に中国革命の現場を体験した人であり、その言説 は信憑性が高く、しかも迫力がある。遠藤氏同様に中国革命を体験した多くの人々 が、どんどん鬼籍に入っていかれ、数少なくなっている昨今、生き証人としての遠 藤氏の存在とその発言は貴重である。

遠藤氏は本書の最後で、「毛沢東はいま中国で、あこがれの神のごとき存在とし て崇められている。その意味では毛沢東の帝王学は成功したことになる。また結果 論的にいえば、毛沢東思想は中華人民共和国という国家をこんにちまで維持させる ことに成功しているのだから、それも“結果オーライ”ということになるのかもし れない」、「点と点、線と線で囲まれた面の中で熱く燃え上がっていった中国の民

―。彼らは本気で“革命”を信じ、“毛沢東”を信じていた。この私でさえ、趙兄 さんのひとことで染まり、一生涯もがいてきたのだから。あのせっぱ詰まった時代、

趙兄さんがそうであったように、八路軍や新四軍たち自身は、必死だったのだと信 じている。彼らの名誉のために、彼ら自身は本気で中国を思い、戦ったときは勇猛 果敢であったことを、ここに記す」と書いている。

私も高校から大学にかけて、毛沢東に心酔していたので、この遠藤氏の分析や心 情については、よく理解できる。私は大学時代、毛沢東の「実践論」や「矛盾論」

をなんども読んだ。それ以外は、たいして勉強しなかったと言ってもよいほどで あった。したがってそこに書かれていた唯物弁証法?が、その後の私の人生を左右 する行動哲学となった。現在、歴史学者らによって、その「実践論」や「矛盾論」

に、盗作疑惑がかけられる事態になっているが、私は、そのことを後悔はしていな い。なぜなら、遠藤氏と同じく、それが青年期の私に燃えたぎるような情熱を与え てくれたからである。しかし同時に、現在に至るまで、その亡霊に自らが拘束され、

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もがき続けることにもつながった。私はそれにこれからの残された人生で、ピリオ ドを打つつもりである。なお遠藤氏は、「“未完の革命”と位置づけて、ピリオド が打てないと闘ってきた私の人生だったが、今ようやく、そのピリオドが打てるよ うな気がする」と書いている。遠藤氏は今、75歳、私は69歳になったところで ある。

遠藤氏は本書の冒頭で、「相手が強く出れば、こちらも威嚇してやる。しかし力 がない間は“闇に隠れて力を養い、報復の時を待つ”。これを“韜光養晦”と称す る。のちに毛沢東が編み出す帝王学の基本中の基本だ」と書いている。私は「韜光 養晦」という言葉については、鄧小平の名言だと記憶していたので、この個所を読 んで見識を新たにした。

5.「鄧小平」  エズラ・F・ヴォーゲル 聞き手:橋爪大三郎  講談社現代新書  2015年 11月20日

帯の言葉 : 「現代中国を理解するための必読書!」

本書は、橋爪大三郎氏によるエズラ・F・ヴォーゲル氏のインタビューである。

ヴォーゲル氏は本書のまえがきで、「このインタビューは短いけれど、鄧小平の生 涯と業績の大事なポイントをすべて盛り込むものになったと思う」と書いているが、

橋爪氏とヴォーゲル氏は本書で、むしろ毛沢東と鄧小平の比較を通じて、現代中国 を論じており、それは結構面白い。以下に、両氏の対談の要所を書き出しておく。

なお、橋爪氏をH、ヴォーゲル氏をVと記す。

①両巨頭の教育レベルについて

V:毛沢東は1893年の生まれ。毛沢東の教育はおもに、辛亥革命前のものなん です。いっぽう鄧小平は、1904年生まれ。7歳まで村で儒学の基礎を学んだ けれども、そのあと、いち早く、西洋式の学問を勉強しました。学校はできたば かりで、制度が整っていなかったけれども、そこで、数学、歴史、地理などを学 んだのです。毛沢東は、そのころすでに勉強をやめていて、1911年のあと、

北京大学の図書館に勤めた。学生ではなくてね。そして、知識人たちに、不信感 を抱くようになった。

H:数学、物理、化学、歴史学、経済学……。こうした学問をきちんと勉強したか どうかで、指導者としての資質に大きな違いが出てくると思うのですが。

V:私もそう思います。

②軍事の能力について、

V:鄧小平は軍人の指揮官と協力して、仕事をした。それを12年間やったので、

だいぶ軍務にも詳しくなったんですね。彼は士官学校で勉強しなかった、政治の 指導者でした。それでも彼は頭の回転が速いから、劉伯承とずっと一緒に戦って いるうちに、軍事のやり方とか、そういうこともよくわかったはずです。軍の経 験は、鄧小平の指導者としてのスタイルに、大きく影響していると思います。毛 沢東は、軍の戦略は、うまい男。毛沢東は戦ったことはあまりないので、軍人に は入らないのだが、軍人を指揮して、戦略を考え、どういう指揮官がどういう作

(14)

戦の指揮をとる、どの将校が誰につく、などと決めるのが非常にうまい。ですか ら、“戦略を考える将軍”と言えばいいか。軍人ではなくて、将軍。そういうふ うに、説明すればどうかな。

③ロマンを追い求めた毛沢東と実務家鄧小平の関係について、

H:毛沢東は革命的ロマン主義の傾向が強い。それは中国にとって、とても必要 だった。国民党には、たぶん、それがあまりなかった。共産党には、それがあっ たので、多くの人々を惹き付け、犠牲的献身をひきだすことができたと思うんで すね。革命的ロマン主義は、革命の初期段階とか、長期的な革命のヴィジョンと かに、とても有用ですけれど、でも、革命の建設段階で、具体的な政治にそれが 入り込んでくると、なにか血が流れるというか、大きな混乱を生むように思うん です。

V:そうそう。おっしゃる通りですね。ですから、革命の前段ではロマン主義。革 命の後段では実務的な考え方。ふたつは違った発想なのですね。まあ、政権の権 威を守るために、この二つが危ういバランスを保っていた。鄧小平は実務的な責 任があって、52年から66年まで、北京で14年間仕事をした。鄧小平はそう やって、毛沢東と協力したんですけれども、鄧小平の経験や人柄、考え方は毛沢 東とかなり違うんです。

H:鄧小平という人は、実務家。まあ実際的な業務の専門家ですね。でも、その いっぽうで、毛沢東を正しいと思い、革命的ロマン主義になるべくついて行こう と、ずうっと努力していた。

V:そうそう。そうですね。

④天安門事件について

V:われわれ西洋人は、相手が、悪いことをすると罰する。悪いことをしなかった ら罰しない、という考え方です。いっぽう、鄧小平と共産党のロジックは、相手 が、悪いことをしそうになったら、その前に罰する。危なくて、何か起ころうと した場合、彼が悪いことをしたかどうかは関係ない。悪いことが起こらないため に、それは必要だと。

⑤民主集中制の組織原則について

H:鄧小平の考え方だと、中国共産党のなかに、考え方の違いや路線対立があって も、排除しない。政治闘争もしない。でも、選挙もないわけですから、どうやっ て合意形成をはかればいいと考えていたんでしょうね。

V:民主集中制ですね。指導者が、なるべく多くの人々の意見を聞いて、決めるわ けです。意見が正しいと思えば、そのようにやる。そうじゃないと、自分の判断 で方向を決める。いちばんトップの指導者は、全体の方向を決める責任があって、

それが決まれば、下の人間はそれに従うという原則なんだ。

⑥反腐敗運動について

H:中国を発展させる。人民の生活を向上させる。経済や政治をうまくやる。その 機能をになう(そのかぎりで報酬をもらう)はずなんですけど、その実、その関 係者が、利権団体になっていて、自分の利益(正規の報酬以外のプラスアル

(15)

ファ)のために、中国共産党に寄生している。もし、後者の割合の方が多くなっ たら、それは社会の寄生虫です。だったら、駆除する以外にないんじゃないです か、まるごと。

V:非常に難しいですね。どうしたらいいか。はっきりした道はないですね。

  大事なのは、腐敗問題を、きちんと法律をつくって解決する。みんなが腐敗し ている。キミは腐敗したな。でも過去のことは過去として、罰することはしない。

けれども、将来は、1年か2年以内に法律をつくって、こうこう、こういうこと をしたら腐敗、と法律をつくってはっきりさせる。そして、取り締まりを開始す る。腐敗の摘発が恣意的にならないように注意する。      

以上

中国と中東の経済協力

       社 法人大阪能率協会常任理事、順利包装集 董事(在上海)団 団 福喜多技術士事務所所長、東アジアセンター外部研究員        福喜多俊夫

習近平国家主席は1月19日から23日の日程でサウジアラビア、エジプト、イラ ンの中東3カ国を訪問した。習主席が国家主席就任後中東を訪問するのは初めて。

「一帯一路」戦略を実現する上で鍵を握る中東で経済協力の拡大を通じて影響力を 高める狙いがある。

 習近平主席は近年、中国と中東および中国とアラブ関係についてたびたび発言し ている。人民網や新華網、中国網の記事を参考に、これまでの中国と中東の経済協 力関係をレビューし、今回の3カ国訪問の成果を追ってみた。

1. 中国と中東の経済関係

2013年まで中東への外国直接投資の大半は北米と西欧諸国からのもので、中国 は外国直接投資総額の2%弱を占めていたにすぎない。しかし、近年、中国の中東 投資は活発化しており、輸入石油の大半は中東から輸入している。中国の中東投資 はこれまで石油や天然ガスに集中している。サウジアラビア、アラブ首長国連邦、

カタールに興味を示し、サウジアラビアには 2012年に総額129億ドルを投資した。

また、カタールからは中国の需要の20%にあたるLNGを輸入している。エジプト では2008年に中国・エジプトスエズ経済協力区を設立した。これは中国商務部の 認可を得た海外経済貿易協力区である。イランは最近、国連や西側諸国との間で核 開発に関する合意が成立し経済制裁が解除されたが、中国は制裁期間中もイランと の貿易・投資を続けていた。中国石油化工(シノペック)、中国石油天然気集団

(CNPC)は数十億ドルの投資を行っている。

人民日報(1月19日)は「サウジアラビアは中国にとって西アジア・アフリカ地 域最大の貿易パートナーであり原油供給国だ。エジプトはアラブ・アフリカ諸国で

(16)

最も早く新中国と国交を確立した国だ。イランは戦略的に重要な中東の大国だ」と 論評し、習主席の新年初の外遊は地域の平和と発展に自信を与えると強調した。

2. 習近平主席の中東3カ国訪問 1 サウジアラビア

     習近平国家主席は19日、サウジアラビアのリヤドでサルマン国王と会談した。

両国首脳は両国関係の発展を積極的に評価。両国関係と関心を共有する問題につ いて踏み込んで意見交換し、広範な共通認識に至り、包括的・戦略的パートナー シップを構築し、両国関係の踏み込んだ発展を推進し、一層の協力の成果を得る ことを宣言した。双方は発展戦略の結びつけを強化し、シルクロード経済ベルト 、 21世紀海上シルクロードの建設枠組み内で協力を深めることで合意した。また、

鉄道、港湾、発電所、通信、工業団地、住宅、投資、金融、宇宙事業、平和的な 原子力エネルギーの利用、再生可能エネルギーなど計14の覚書・協定に合意し た。(人民網1月20日の記事による)

2 エジプト

     習近平国家主席は20日、カイロの宿泊先のホテルでイスマイール首相と会談 した。習主席は「現在、中国・エジプト関係はかつてないチャンスと大きな将来 性を前にしている。両国は発展戦略の連結を強化し、“一帯一路”共同建設の枠 組みで協力を加速し、共通認識を早期に実際の成果に変えるべきだ。中国側は能 力ある企業によるエジプトの大型建設への参加を奨励し、支持する。エジプト側 とインフラ整備協力を強化し、生産能力協力を引き続き進めたい。今年は両国の 国交樹立から60周年であり、双方は文化年を互いに催す。双方は青年交流を促 進し、相手国への観光を奨励し、人的。文化交流・協力を深化する必要がある。

両国は多くの重大な国際問題において立場が近い。国際情勢が深く変化する中、

双方は国際問題で意思疎通と調整を強化する必要がある」と表明した。

     イスマイール首相は「エジプトは中国と伝統的親善を大切にしており、各分野 の協力の深化を望んでいる。エジプト側は“一帯一路”イニシャティブを支持し ており、協力に積極的に参加し、中国と欧州の貿易をつなぐ通路となることを望 んでいる。国連問題その他多国間分野で中国との調整を強化したい」と表明した 。

(人民網1月21日の記事による)

     中国建築股份有限公司は21日、総額27億ドルのエジプト新首都建設プロジェ クトに関する契約を、中国・エジプト両国の元首の立ち合いのもとで締結した。

また、中国中鉄はカイロ郊外の鉄道建設工事を受注した。設計からレール敷設、

試験運行などすべての工程を中国側が担う。受注総額は15億ドルで工期30カ月 を見込む。

3 イラン

     習近平国家主席は23日、テヘランで最高指導者ハメネイ師と会談した。これ に先立ちロウハニ大統領とも会談し、協力強化を確認した。両国は中国がイラン の高速鉄道整備に資金支援することなど、経済や技術分野の協力を中心に17の

(17)

合意文書を交わした。ロウハニ師は会談後に「両国間新たな1章が始まった」と 述べ、中国との貿易額を今後10年間で6000億ドルに拡大する考えを示した。

     また、23日、中国人民大学とイラン政治・国際問題研究院が主催した中国・

イラン「一帯一路」シンクタンク対話会がテヘランで開催され、「中国国家発展 改革委員会、中国人民大学、イラン外務省、イラン政治・国際問題研究院の“一 帯一路”シンクタンクの共同建設についての協力覚書」に調印した。(人民網1 月23日の記事による)

3.「一帯一路」構想、実現の鍵は中東にあり 

   サウジアラビア、エジプト、イランはいずれもアジアインフラ投資銀行

(AIIB)の創設メンバーであり、「一帯一路」の西端に位置している。

イランは中国の「一帯一路」戦略との連携を積極的に進め、製作、貿易、資金 、 インフラ建設、民心が重なり合って進展する「5通併進」の良好な状態を作り出 してきた。イランには「一帯一路」の呼びかけに答えるための非常に大きな潜在 力がある。イランには石油と天然ガスの豊富な埋蔵資源があり、国土面積(160 万平方キロメートル)と人口(約8千万人)はいずれも世界トップ20に入って いる。インフラは完備し、整った工業経済体制がある。大学教育の普及度は高く 、 国民全体の文化的レベルは高い。イラン核問題の全面的合意が正式に実行され、

欧米諸国はイランに対する経済制裁を解除した。イランの抑え込まれた外資の需 要は1兆ドルに達するとみられ、中国企業にとって絶好の投資チャンスが待って いる。すでに中国企業はテヘランの地下鉄5路線の工事のうち3路線を請け負っ ている。

   サウジアラビアも「一帯一路」構想の重点国家だ。2015年度の中国―サウジ アラビア間の貿易額は約500億ドルに達している。中国とサウジアラビアは中国

―湾岸協力会議(GCC)FTA交渉の再開を歓迎し、自由貿易区の早期建設にも賛 同している。習近平主席の今回の訪問では「ネット上のシルクロード」建設協力 の強化についての覚書も取り交わしている。

   エジプトとの貿易協力はさらに良好な状況で、2015年11月までの中国の対エ ジプト直接投資残高は6億9000万ドル、2国間の貿易額は前年比10.4%増の 116億4000万ドルに達している。エジプトは、石油貿易への過度の依存から脱 するために、新たな「五カ年計画」実施により経済の多元化を図っている。エジ プトが打ち出している新首都プロジェクト、新スエズ運河など経済刺激を目指す 一連のプロジェクトも双方の発展方向・戦略と一致する。中国とエジプトが共同 建設したスエズ経済貿易協力区が長年の発展を経て、中国企業の対エジプト投資 の良好な受け皿となっている。また、中国とエジプトは宇宙事業でも提携するこ とになり、中国商務部国際経済合作事務局とエジプト国家リモートセンシング空 間科学局はこのほど、エジプト衛星組立・集積・試験センター建設契約を締結し た。中国側の投資額は約1億4600万元で2019年に竣工予定。

以上

(18)

      

【中国経済最新統計】

GDP 加率 (%)

工 業 付 加 価 値 加 率 (%)

消費財 小売総 率(%)

消費者 物価指 数上昇 率(%)

都市固 定資産 投資 (%)

貿易収 (億㌦)

輸 出 加率 (%)

輸 入 加率 (%)

外国直 接投資 件数の 増加率 (%)

外国直 接投資 金額 加率 (%)

貨幣供 給量 M2(%

)

人民元 貸出残 率(%)

2005

10.4 12.9 1.8 27.2 1020 28.4 17.6 0.8 ▲0.5 17.6 9.3

2006

11.6 13.7 1.5 24.3 1775 27.2 19.9 ▲5.7 4.5 15.7 15.7

2007

13.0 18.5 16.8 4.8 25.8 2618 25.7 20.8 ▲8.7 18.7 16.7 16.1

2008

9.0 12.9 21.6 5.9 26.1 2955 17.2 18.5 ▲27.

4

23.6 17.8 15.9

2009

9.1 11.0 15.5 ▲0.7 31.0 1961 ▲15.

9

▲11.

3

▲14.

9

▲16.

9

27.6 31.7

2010

10.3 15.7 18.4 3.3 24.5 1831 31.3 38.7 16.9 17.4 19.7 19.8

2011

9.2 13.9 17.1 5.4 24.0 1549 20.3 24.9 1.1 9.7 13.6 14.3

2012

7.7 10.0 14.3 2.7 20.7 2303 7.9 4.3 ▲10.

1

▲3.7 13.8 15.0

2013 7.7 9.7 11.4 2.6 19.4 2590 7.8 7.2 ▲8.6 5.3 13.6 14.1

(19)

7 9.7 13.2 2.7 20.2 178 5.1 10.8 1.2 24.1 14.5 14.3

8 10.4 13.4 2.6 21.4 285 7.1 7.1 -11.7 0.6 14.7 14.1

9 7.8 10.2 13.3 3.1 19.6 152 -0.4 7.4 -16.8 4.9 14.2 14.3

10 10.3 13.3 3.2 19.2 311 5.6 7.5 -8.2 1.2 14.3 14.1

11 10.0 13.7 3.0 17.6 338 12.7 5.4 -9.3 2.3 14.2 14.2

12 7.7 9.7 13.6 2.5 17.2 256 4.3 8.6 -3.4 -42.6 13.6 14.1

2014

7.4 8.3 12.0 2.0 15.2 3824 6.1 0.4 4.41 14.2 12.2 13.6

1 2.5 19.8 319 10.5 10.8 -8.6 -4.5 13.2 14.3

2 2.0 -230 -18.1 10.4 1.3 4.0 13.3 14.2

3 7.4 8.8 12.2 2.4 17.3 77 -6.6 -11.3 6.1 -1.5 12.1 13.9

4 8.7 11.9 1.8 16.6 185 0.8 0.7 0.5 3.4 13.2 13.7

5 8.8 12.5 2.5 16.9 359 7.0 -1.7 8.4 -6.6 13.4 13.9

6 7.5 9.2 12.4 2.3 17.9 316 7.2 5.5 10.3 0.2 14.7 14.0

7 9.0 12.2 2.3 15.6 473 14.5 -1.5 14.0 -17.0 13.5 13.4

8 6.9 11.9 2.0 13.3 498 9.4 -2.1 5.2 -14.0 12.8 13.3

9 7.3 8.0 11.6 1.6 11.5 310 15.1 7.2 9.4 1.9 11.6 13.2

10 7.7 11.5 1.6 13.9 454 11.6 4.6 8.7 1.3 12.1 13.2

11 7.2 11.7 1.4 13.4 545 4.7 -6.7 -8.6 22.2 12.0 13.4

12 7.3 7.9 11.9 1.5 12.6 496 9.5 -2.3 6.1 10.3 11.0 13.6

2015

1 0.8 600 -3.3 -20.0 2.2 -1.1 10.6 14.3

2

1.4 606 48.3

20.8 49.8 0.1 11.1 14.7

 3 7.0 5.6 10.2 1.4 13.1 31 -15.0 -12.9 0.3 1.3 9.9 14.7

4 5.9 10.0 1.5 9.6 341 -6.5 -16.4 2.9 10.2 9.6 14.4

5

6.1 10.1 1.2 9.9 595 -2.4

17.7 -14.0 8.1 10.6 14.3

6 7.0 6.8 10.6 1.4 11.6 465 2.8 -6.3 4.6 1.1 10.2 14.4

7 6.0 10.5 1.6 9.9 430 -8.4 -8.2 9.6 5.2 13.3 15.7

8

6.1 10.8 2.0 9.1 602 -5.6

13.9 23.9 20.9 13.3 15.7 9

6.9 5.7 10.9 1.6 6.8 603 -3.8

20.5 5.2 6.1 13.1 15.8

10 5.6 11.0 1.3 9.3 616 7.0 2.5 2.9 13.5 15.6

(20)

19.0

11 6.2 11.2 1.5 10.8 541 -7.2 -9.2 27.7 0.0 13.7 15.3

12

6.8 5.9 11.1 1.6 6.8 594 ―1.7 ―7.6 17.2 ―45.

1 13.3 15.0 注:1.①「実質GDP増加率」は前年同期(四半期)比、その他の増加率はいずれも前年同月比である。

2.中国では、旧正月休みは年によって月が変わるため、1月と2月の前年同月比は比較できない場合があるので注意 されたい。また、(  )内の数字は1月から当該月までの合計の前年同期に対する増加率を示している。

  3. ③「消費財小売総額」は中国における「社会消費財小売総額」、④「消費者物価指数」は「住民消費価格指数」

に対応している。⑤「都市固定資産投資」は全国総投資額の86%(2007年)を占めている。⑥―⑧はいずれも モノの貿易である。⑨と⑩は実施ベースである。

出所:①―⑤は国家統計局統計、⑥⑦⑧は海関統計、⑨⑩は商務部統計、⑪⑫は中国人民銀行統計による。

参照

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