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中国国有企業改革の一考察 ― 現地調査をふまえて(2)―

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産研通信 No.59(2004・3・31)

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中国国有企業改革の一考察  ― 現地調査をふまえて(2)―

金山 権

企業統治システムの構築は、所有と経営が 高度に分離し、株主をはじめ多数のステーク ホルダーを抱える企業について、その企業価 値を最大化させる経営機構のあり方を問うも のといえる。日本では企業統治の改革を意図 して2001年にいわゆる監査役設置会社に関す る商法改正が行われ、つづいて2002年にはア メリカ型の委員会等設置会社を規定した商法 改正が行われ、2003 年 4 月 1 日から監督と執 行を分離する米国型の仕組みに近い「委員会 等設置会社」への移行が施行された。これら 二つの型の会社モデルのいずれかを採用する かは大規模会社の選択に委ねている。米国型 を参考にした経営機構だが、中国でも90年か らの証券取引所の設立から近年にわたり、会 社法だけでなくて、株式上場規則、証券法、独 立取締役制度の導入、上場会社のコーポレー ト・ガバナンス準則、国有資産管理の条例な どが施行され株式会社とくに上場会社の企業 統治システムの構築を強化している。

本稿では前期の(1)に続き、主に中国国有 企業の企業統治システムを中国現地での調査 状況をふまえながらまとめることにした。

1. 中国式の三位一体型企業統治構造 株主の利益よりも組織の存続や成長を重視 する日本的経営をベースとした企業統治シス テムと、会社は株主のものでしかないという 株主主権論に基づくアメリカ型のコーポレー ト・ガバナンス、この二つの会社のあり方に 関して、評価が右から左、左から右へと時計 の振り子のように大きく揺れ動いているなか で、中国は十分な期間をかけて日・米・欧の 長短所を参考にしながら、中国の企業法(公 司法、93 年採択、94 年より施行)に基づき、

株式会社の経営機構を、意思決定機能、業務 執行機能、業務執行に対する監督機能の三つ の基本機能から構成させる仕組みとなってい る。中国の国情に合わせて構築されている、い わゆる中国版の企業統治システム、つまり独 自の企業統治システムであるといわれている が、本質的には通常の株式会社(監査役設置 会社)が、意思決定機能・業務執行機能・監 督機能を取締役会に全て集中させるいわゆる

「三位一体」型をとっている。

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2. 上場企業における委員会型統治システ

99 年海外で上場した中国企業がまず欧・米 近代企業制度を参考に上場会社の企業型統治 システムを構築してきた。企業統治、とくに 上場企業の企業統治システムには、企業法(公 司法)のみならず、上場会社の規制に関して 一連の規則、関連法、原則、ガイドライン、指

3. 進展と問題点

大多数国有企業における株式制転換への改 革がほぼ終わり、近代企業制度の基本枠の形 は形成されている。しかし、国有株の独占状 況が変わらなくいわゆる 一株独大 問題と なっている。純粋持ち株会社のなかで、上場 図1  中国株式会社の経営機関

取締役会(董事会)

社  内  取  締  役 独立取締役(独立董事)

社  長(総経理)

経    営    陣

選任 監督 監督

選任 選任

業務・会計監査

出所:『現代中国企業の経営管理』(金山 権)同友館、2000 年 102 頁 監 査 役 会 ( 監 事 会 ) 株主、従業員代表参加

︵ 股   東   大   会

︶ 株   主   総   会

出所:『上場企業の企業統治準則(上市公司治理準規)』(中国証券監督管理委員会、国家 経済貿易委員会、2002 年 1 月 7 日)、  岸三地証券市場高級フォーラム (2001 年 5 月 19 日)、中国現地での調査などにより作成

図2  中国上場会社の経営機関

取  締  役  会

︵ 股  東  大  会

︶ 株  主  総  会 委

員 会 戦   略

委 員 会 指   名

委 員 会 報   酬 委

員 会 会 計 審 査

① ② ③ ④

監 査 役 会 (監事会)

株主、従業員代表参加

説明義務 監査 説明義務

選任 選任 導意見などが公表され、執行、監督、指導が 実施されている。また、社外取締役制度には、

いち早く独立取締役(independent director)

制度を導入し、中国の国情に沿って委員会を 各国で採用されている3つから4つに、そして 戦略と会計監査の委員会を設けたのも特徴で ある。なお、執行役制度は設けず、監査役会 を存続させたことである。

会社の国有持ち株比率が平均で75% と依然と して高すぎるため株式制の有効性には疑問が 残る。絶対優位を持っている国家株の代表が 常に企業の経営活動に介入し、平気で企業の 資金を引き出し、 内部者コントロール が後 を絶たず、外国株主、中小株主の権益が侵害

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され、企業統治のシステムの構築の障碍と なっている。独立取締役が強化されても、こ ういう構造の下では経営者のモラルハザード の温床となり真の企業統治の構築は困難に なっている。

長期にわたり企業における所有者の空席は 未だに未解決の問題であり、内部にいかに厳 格な管理制度、ルールが設けられ、また、業 務執行にチェックが行われたとしても、所有 者が空席になっているため、制度と措置はま るで飾りものと同等である。大手企業は依然 として行政府の管理下に置かれ、経営のトッ プへの行政の任命が今も変わってない。所有 者、監査役、独立取締役の監督を見逃してい る。株式制企業における株主総会、取締役会、

監査役会は設立したものの企業統治構造およ び行動メカニズムの構築にはまだ課題が残っ ている。なお、国有資産財産権の流動ができ ないため国家株が資本市場への参入ができず 結局国有資産が遊休資本になっている。その 結果、国有資産の 流失 と資産価値の下落 を招いている。その主な原因はやはり財産権 の不明確さである。ほとんどの意志決定は依 然として政府の行動であり、企業は責任を負 わない状況である。

4.おわりに

中国では 94 年からの会社法(公司法)の実 施から、同法に沿って企業統治機構が整備さ れつつあり、90年代末海外で上場を果たした 中国の企業は企業統治システムの構築が進め られ、やがて企業統治システムの構築への動 きが全国に波及するようになってきた。なお、

改革推進の新体制として国有資産監督管理委 員会が文字通り国有企業における管理監督機 能を果たすことになったが、興味深く見守る 次第である。

WTO 加盟を果たした中国は、グローバル 化、競争力のアップ、中国進出外資系とくに 多国籍企業との共存、競争などのなかで、時 代の要請に対応しながらさらに制度、構造面 で積極的に取り組んでいる。つまり、中央、地 方共に国有資産を確実に監督管理し、国有資 産価値の保全・増殖を図ることである。その ために、中央と地方の国有資産監督管理委員 会を設立し、一元化監督、管理に努めている。

なお、公有制を中心に多種多様な「混合所有 制」企業、とりわけ株式制企業への改革、独 自の企業統治システムの構築などにも改革の 進展を見せている。しかし、残されている課 題も少なくない。

中国における企業統治は単に会社法だけで なく、セットされた企業統治に関する規則、

ルール、ガイドラインなどに沿って中国の国 情に合う一つの統治システムとして構築され ている。しかし後を絶たない企業不祥事は、企 業統治システムが如何に優れているようにみ えてもエンロン、ワールドコムなどの教訓か らも制度的なものよりむしろ経営者の経営倫 理問題を含むその運営にあると思われる。

参考文献:略

(本稿は、文科省科研費基盤研究(B)「中国の 国有企業改革に関する調査研究:所有制・グ ループ化および企業統治を中心に」(研究代 表:座間紘一)の中国現地企業調査の一部分 である。)

参照

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