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ラマン分光による単層カーボンナノチューブの温度測定

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Academic year: 2025

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ラマン分光による単層カーボンナノチューブの温度測定

Temperature measurements of single-walled carbon nanotubes by Raman scattering 伝正 *千足 昇平 (東大院学) 機正 村上 陽一 (東大院学)

機正 宮内 雄平 (東大院学) 伝正 丸山 茂夫 (東大院)

Shohei CHIASHI, Yoichi MURAKAMI, Yuhei MIYAUCHI and Shigeo MARUYAMA Dept. of Mech. Eng., The University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-8656

Raman scattering from various SWNTs (single-walled carbon nanotubes) samples were measured with three excitation laser wavelengths (488.0, 514.5 and 632.8 nm) at various temperatures (4 ∼ 1000 K). The G-band, D-band, and RBM (radial breathing mode) peaks showed clear temperature dependences: the downshift of Raman shift; the broadening of peak width; and the decrease of intensity with increase in temperature. The G+ peak, which is the strongest peak in the G-band, showed the universal temperature dependence for 3 different excitation laser wavelengths and for various SWNTs samples. Hence, the temperature of SWNTs can be conveniently measured by Raman shift of the G+ peak. Most of RBM peaks showed similar temperature dependence in Raman shift, peak width and intensity as the G-band peak. However intensity a RBM peaks did increase with increase in temperature.

Key Words :

Single-Walled Carbon Nanotubes, Raman Scattering, temperature dependence

1. はじめに

単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotube, SWNT)は,その特異な物性についての基礎的研究のみなら

ず,デバイスや工学的応用に向けても盛んに研究されている.

単層カーボンナノチューブの多くの注目すべき特性の1つ として伝熱特性が挙げられる.軸方向に極めて高い熱伝導率 を持ち,非等方的な伝熱特性が期待される.しかし,単層カ ーボンナノチューブが長さ数µm,太さ1 ∼2 nmと非常に微細 な構造であるため,まだその測定手法は確立されていない.

 そこで本報では,単層カーボンナノチューブ試料の分析や 物性研究に広く行われているラマン分光法を用いて実験的 熱物性の第一段階として単層カーボンナノチューブの温度 測定の可能性を検討した.単層カーボンナノチューブのラマ ンスペクトルには 3 つの特徴的なピーク(G-band,D-band 及びRBMピーク)があり,これらピークについてのピーク 位置(ラマンシフト),ピーク幅及びピーク面積強度に関し

て,4 K〜1000 Kの広範囲の温度依存性を様々な手法で合成

された単層カーボンナノチューブ試料について測定した.

2. 実験方法

 単層カーボンナノチューブサンプルは,ACCVD 法(1)を用 いてゼオライト微粒子上に合成したもの,同様にACCVD法 によりシリコン基板上に合成したもの,レーザーオーブン法 により生成したもの,及びHiPcoサンプル(2)を用いた.

 室温から高温時における測定は,ラマン散乱測定システム を伴う真空チャンバー付原子間力顕微鏡(AFM)装置(3)を用 いて行った.単層カーボンナノチューブサンプルをサンプル 台上に分散または貼り付け,サンプル台の温度を制御しなが ら(300∼ 1000 K),単層カーボンナノチューブのラマン散乱 光を測定した.サンプル台としてシリコン基板を用い,シリ コン基板に交流電圧で通電加熱し温度を制御した.一方低温

時(4∼ 300 K)はヘリウム冷凍機を用い冷却を行った.測定

中はターボ分子ポンプで真空状態にする(<10-7 Torr)ことで,

高温加熱による酸化や低温冷却による水分などの凝固によ るダメージを防いだ.シリコン基板の温度は熱電対に加えて,

シリコンのラマンスペクトルの温度変化(4)による温度測定 を行った.

 ラマン測定は励起レーザーとしてArレーザー(波長488.0,

514.5 nm)とHe-Neレーザー(632.8 nm)を使用し,高温時

はマイクラマン装置で,低温時にはマクロラマン装置にて測

定した.

3. 結果と考察

  図1に室温にて励起波長488.0 nmで測定したHiPco単層 カーボンナノチューブのラマンスペクトルを示す.1590 cm-1 付近に現れるG-bandは単層カーボンナノチューブ由来のス ペクトルであり,振動の対称性をもとにいくつかのピークに 分解することが可能である.1592 cm-1前後に現れるピークを G+ピーク,そのすぐ低波数側にあるピークを G-ピーク,さ らに低波数側にある幅の広いピークをBWFピークと呼ぶ.

また1350 cm-1付近のピークはグラファイトの格子欠陥に由

来するD-bandピークで,D-band強度が弱いことが欠陥の少

ない単層カーボンナノチューブであることを意味する.さら

に100∼400 cm-1に現れるRBMピークは単層カーボンナノチ

ューブの直径分布を示すピークである.このサンプル中には

およそ 0.8∼1.2 nm の様々な直径やカイラリティを持つ単層

カーボンナノチューブが存在する為,図1にあるように多く のピークが重なりあっている.ここではローレンツ関数によ る分解をし,それぞれのピークのラマンシフト,ピーク幅を

1200 1400 1600

200 250

Raman Shift (cm–1)

Intensity (arb. units)

D–band

(BWF)

G–band (G+ peak)

(Gpeak) RBM peaks

Raman Shift (cm–1)

1200 1400 1600

200 250

Raman Shift (cm–1)

Intensity (arb. units)

D–band

(BWF)

G–band (G+ peak)

(Gpeak) RBM peaks

Raman Shift (cm–1)

Fig. 1 Raman scattering from HiPco SWNTs measured with 488 nm excitation laser at room temperature. The G-band, the D-band

and RBM peak were decomposed into Lorentzian curves and a BWF curve.

(2)

求めた.

  図2にG-bandの主要なピークであるG+ピークとG-ピーク

及びD-bandピークのラマンシフトの温度依存性を示す.単

層カーボンナノチューブは同一のHiPco試料を用い,励起波 長を変化させた.一般にラマンスペクトルはサンプルの温度 が上がるにつれ,ラマンシフトが低波数側にダウンシフトし,

ピーク幅が増加,さらにピーク強度が減少するという温度依 存性を持つ.図2に示すようにいずれのピーク,励起波長に おいても温度が上がるにつれラマンシフトのダウンシフト が見られ,特に G+ピークについては励起波長に依らず同じ 温度依存性を示す.またD-bandのラマンシフトの変化量は

G-bandよりも小さい.

  図3に様々な単層カーボンナノチューブサンプルのG+ピ ークの温度依存性を示す.室温での測定において,G+ピーク のラマンシフトは単層カーボンナノチューブの種類によっ

て1592 cm-1前後でわずかに異なるが,図3に示すようにそ

れらの温度変化はほぼ同一である.すなわち,G+ピークの温 度依存性は励起波長,サンプルの種類に依らずほぼ一定であ り,このことを利用し単層カーボンナノチューブの温度を G+ピークのラマンシフトから求めることが可能であると考 えられる.

 さらに,RBMピークについてもその温度依存性を調べた.

図4にHiPco単層カーボンナノチューブのRBMピークスペ

クトルの温度変化を示す.RBM ピークも温度を上げるとラ マンシフトがダウンシフトし,ピーク幅が増加,ピーク強度 が減少した.図5にこれらRBMピークの面積強度の温度依 存性を示す.各ピークについて室温での面積強度で規格化し ている.他のピークは単調に減少しているが,peak4 (229 cm-1)については強度の増加が見られた.この興味深い現象の 理由として,RBM ピークは強い共鳴ラマン効果により現れ るピークであるので,温度によって共鳴条件が変化しその結 果その強度が増加したと考えられるが,詳細な検討は将来の 課題とする.

4. 結論

 単層カーボンナノチューブのラマンスペクトルの広範囲 の温度依存性を明らかにした.G+ピークのラマンシフトは励 起波長及びサンプルに依らず同一の温度依存性を示した.こ のことから,G+ピークのラマンシフトから単層カーボンナノ チューブの温度を求めることが出来ることを明らかとした.

また,RBM ピークについてもその温度依存性を測定し,共 鳴条件により強度が増加していくRBMピークがあることが 分かった.

参考文献

(1) Maruyama, S., et al., Chem. Phys. Lett., 360 (2002) 229.

(2) Nikolaev, P. et al., Chem. Phys. Lett., 313 (1999), 91.

(3) Chiashi, S, et al., Chem. Phys. Lett., 386 (2004) 89.

(4) Balkanski, M, et al., Phys. Rev. B, 28 (1983) 1928.

400 600 800

0 1 2 3

Normalized Integral Intensity (arb. units)

Temperature (K) peak 1

peak 2 peak 3 peak 4 peak 5 peak 6

Fig. 5 Temperature dependence of peak intensity in RBM peaks.

0 200 400 600 800 1000

1450 1500 1550 1600

1300 1350 1400 1450

Temperature (K) Raman Shift (cm–1 )

488 nm 514 nm 633 nm G+ peak

G peak

D–band

Raman Shift (cm–1 )

Fig 2 Temperature dependence of Raman shift in G+ and G- peak of G-band and D-band peak. The excitation laser wavelength were

488.0, 514.5 and 632.8 nm.

200 250 300

Raman Shift (cm–1)

Intensity (arb. units)

(a) 298 K

(b) 355 K

(c) 510 K

(d) 644 K

(e) 717 K peak 1

peak 2 peak 3 peak 4

peak 5 peak 6

Fig. 4 RBM peaks from HiPco SWNTs at various temperatures measured with 488 nm excitation laser.

0 200 400 600 800 1000 1200 1560

1570 1580 1590 1600

Temperature (K) Raman Shift (cm–1 )

HiPco (488 nm) Laser Oven (488 nm) Directly grown on Si (488 nm) ACCVD with zeilites (488 nm) ( :fitting line) HiPco (514 nm)

HiPco (633 nm)

Fig. 3 Temperature dependence of G+ Raman shift for various SWNTs samples.

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