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ヌクレオシドハイブリッド抗真菌性化合物jawsamycinの生合成

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化学と生物 Vol. 53, No. 6, 2015

ポリケチド ヌクレオシドハイブリッド抗真菌性化合物 jawsamycin の生合成

Unusual iterative PKS radical SAM enzyme によるポリシクロプロパン骨格の構築

Jawsamycin (FR-900848, 1) (図1a)は放線菌  HP-891により生産される二次代謝 産物で,植物病原菌に対する強い抗真菌活性をもつこと が知られている(1).生理活性もさることながら目を引か れるのは脂肪酸部の立体配置が同一の連続したシクロプ ロパン構造である.JAWSamycinの名は,この構造が サメの歯のように見えるため現場の研究者が使っていた 愛称である.一つのシクロプロパン環をもつ生理活性物 質としてはduocarmycin類(抗腫瘍活性)やpyrethrin 類(殺虫活性),curacin A(有糸分裂阻害活性)などが 知られているが,ポリシクロプロパン構造をもつ化合物 は 極 め て 珍 し く,1の ほ か に は  sp. UC- 11136の生産するコレステロールエステル輸送タンパク 質阻害物質U-106305(2)(図1b)が唯一報告されてい る.また1の特異な構造は生化学者のみならず有機合成 化学者からも注目され,1996年には2つのグループによ り全合成が達成された(2).一方で生合成機構について は,各種安定同位体の取り込み実験より,1の核酸部は uridineに 由 来 し,脂 肪 酸 部 は ポ リ ケ チ ド 合 成 酵 素

(PKS)により合成され,シクロプロパン骨格のメチレ ン炭素は -adenosyl-L-methionine(SAM)由来である ことが示されていたが(3, 4),具体的な機構は未解明のま まであった.

また,1のもつ抗真菌活性の作用機構は明らかにされ ていないが,やはりその活性には特徴的な脂肪酸部が重 要な役割をもつと予想される.丸山らは

の生産する抗生物質streptothricinの生合成 機構を解明し,β-リジンペプチド鎖の長さを制御するこ とでその抗菌スペクトルの改変に成功している(5)1に おいてもシクロプロパン導入制御を明らかにすること で,シクロプロパン導入数や位置をコントロールし,そ の生理活性を変化させることができると考えた.さらに PKSにより生合成されるポリエン型天然物の生合成経 路にシクロプロパン導入酵素を組み込んで改変した生合 成マシナリーの構築により,既知化合物をポリシクロプ ロパン化し新たな生理活性を賦与することも可能になる と考えた.

そこで筆者らは生合成機構の解明を目標とし,1の生 合成遺伝子( )クラスターの同定を試みた.当初1 の脂肪酸部はその不規則なシクロプロパン導入パターン からモジュラー型PKSが関与すると考え,PCRスク リーニングを行ったが不成功に終わった.次に最近の関 連 研 究 か ら,1の 生 合 成 に はuridine monophosphate

(UMP)修飾酵素の関与が示唆されたため(2),生産菌ゲ ノムDNAデータを取得し,それら酵素およびPKSに相 同な遺伝子を含むクラスターを選抜した.この遺伝子ク

図1ポリシクロプロパン型天然物の生 合成

(a)Jawsamycin予 想 生 合 成 経 路.(b)

U-106305構 造 式.(c)Jawsamycin生 合 成遺伝子クラスター.

今日の話題

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ラ ス タ ー に は, ,  (UMP修 飾) の ほ か に,

(radical SAM酵素,シクロプロパン導入),

(アシル基転位,脂肪酸部と核酸部の縮合)などの予想 機能をもつ遺伝子も含まれていた(2)(図1c).興味深い のは,予想したモジュラー型PKS遺伝子ではない

(iterative PKS, KS-AT-DH-ACP)の存在であり,さら に通常モジュール内に組み込まれているべき (ケ トレダクテース,KR)が独立していたことである.こ の場合,ポリケチド鎖の合成においてKRがモジュール 外から関与するということになるが,そのようなitera- tive PKSはこれまでに報告がない.

次に を宿主として選抜遺伝子ク

ラスターの異種発現を行った結果,形質転換株による1 の生産が確認された.続く遺伝子破壊実験や , 

における各酵素の機能解析では,UMP修飾やアシ ル基転位などが確認されたことから,図1aに示す1予想 生合成経路を提唱した.特に,精製His6-Jaw2を用いた 5′-amino-5′-deoxyuridine(3)および各種アシルCoA(基 質脂肪酸ミミック)の縮合反応では,1の脂肪酸部と同 鎖長のC18-CoAを用いた際に最も高い活性が検出され,

さらに短鎖長のアシルCoAに対しても一定の活性が  確認された(C8〜16-CoAにおいてC18-CoAの14〜45%). この結果は遺伝子組換えなどによる1の短鎖脂肪酸誘導 体の生産の可能性を予感させる.また, ,  ,  ,  導 入 へ の3の 投 与 実 験 に お い て はdehydro- jawsamycinの生産が確認された.Jaw2は核酸部‒脂肪 酸部の縮合反応を行うため,これはシクロプロパンが導 入された脂肪酸がJaw4, 5, 6により合成されるという明 確な証拠であり,シクロプロパンの導入制御もJaw4, 5,  6により行われていることを意味する.シクロプロパン 化はJaw5が触媒することが支持されるが,その場合,

Jaw4, 6により合成されたポリエンを一挙にポリシクロ プロパン化する経路(path A),またはJaw4, 6と共同 し脂肪酸を伸長しつつ段階的にシクロプロパンを導入す る経路(path B)が考えられる.これは,同位体ラベ ルSNAC diketideアナログ(4)がエナンチオマー選択 的に1に取り込まれるという結果に加え(6),  破壊異 種発現株において1のシクロプロパン未導入アナログの 生産が確認されないことから,path Bが有力と考える.

さて1および2の脂肪酸部を比較すると,2番目と8番 目の伸長単位が共通してシクロプロパンが導入されてい ないことに気づく.そこには同様の制御機構が作用する

と思われるが,まだ十分な知見が得られていない.しか し,一般的なiterative PKSにおいて本来モジュール内 に組み込まれているKRドメインが独立し,さらにradi- cal SAM酵素が加わった三者のタンパク質間相互作用 にこそシクロプロパン導入制御の秘密があると推測され る.Iterative PKS, radical SAM酵素はともに扱いが難 しく,制御の解明は簡単ではない.だがjawsamaycin  PKS群の詳細な生合成機構の解析は関連化合物の多様 性の創出につながるため,大きな意義があると考えてい る.

  1)  M.  Yoshida,  M.  Ezaki,  M.  Hashimoto,  M.  Yamashita,  N. 

Shigematsu, M. Okuhara, M. Kohsaka & K. Horikoshi: 

43, 748 (1990).

  2)  T. Hiratsuka, H. Suzuki, R. Kariya, T. Seo, A. Minami & 

H. Oikawa:  , 19, 5423 (2014).

  3)  M. S. Kuo, R. J. Zielinski, J. I. Cialdella, C. K. Marschke,  M. J. Dupuis, G. P. Li, D. A. Kloosterman, C. H. Spilman 

& V. P. Marshall:  , 117, 10629 (1995).

  4)  H.  Watanabe,  T.  Tokiwano  &  H.  Oikawa: 

47, 1399 (2006).

  5)  C.  Maruyama,  J.  Toyoda,  Y.  Kato,  M.  Izumikawa,  M. 

Takagi, K. Shin-ya, H. Katano, T. Utagawa & Y. Hamano: 

8, 791 (2012).

  6)  T. Tokiwano, H. Watanabe, T. Seo & H. Oikawa: 

 (Camb.), 45, 6016 (2008).

(平塚知成*1,及川英秋*2,*1 理化学研究所,*2 北海道 大学)

プロフィル

平塚 知成(Tomoshige HIRATSUKA)

<略歴>2009年富山県立大学大学院工学 研究科生物工学専攻博士課程修了/同年 コーネル大学化学科博士研究員/同年テキ サスA&M大学化学科博士研究員/2011年 北海道大学大学院理学研究院化学部門博士 研究員/2014年理化学研究所ケミカルゲ ノミクス研究グループ特別研究員<研究 テーマと抱負>天然物創薬,抗生物質の作 用機構の解明,化学構造の改変による抗菌 スペクトルの改良<趣味>ハオルチア,メ センの栽培<所属研究室ホームページ>

http://www.riken.jp/research/labs/csrs/

chem̲genom/

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化学と生物 Vol. 53, No. 6, 2015

及川 英秋(Hideaki OIKAWA)

<略歴>1984年北海道大学大学院農学研 究科博士課程修了/同年ブラウン大学化学 科博士研究員/1985年理化学研究所抗生 物質研究室博士研究員/1986年北海道大 学農学部農芸化学科助手/1999年同大学 大学院農学研究科応用生命科学専攻助教 授/2003年同大学大学院理学研究科化学 専攻教授<研究テーマと抱負>微生物代謝 産物の全生合成経路の解析と物質生産, 

ゲノム上に眠っている天然物の設計図を 使った物質生産,生物は何のために大きな コストを払って天然物を生産するのかを知 ること<趣味>スポーツ観戦,山歩き<所 属研究室ホームページ>http://barato.sci.

hokudai.ac.jp/~yuhan/

Copyright © 2015 公益社団法人日本農芸化学会

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2005 年岐阜大学大学院工学研究科博士後期課程修了.2009

1960年、埼玉県生まれ。東北大学大学院理学研 究科 博士後期課程修了。理学博士。東北大学 科学計測研究所 助手、東北大学 科学計測研 究所 講師、東北大学 科学計測研究所 助教授、 東北大学 多元物質科学研究所 助教授(改組)、 2002年より現職 http://www.tagen.tohoku.ac.jp/modules/