メタファー表現の成立
表現が通用する理由が慣習性にあるならば,例えば二種類 のメタファー表現は区別する必要がある
慣習的メタファー表現 非慣習的メタファー表現
後者で表現の成立は文脈依存だが,前者では文脈独立 前者の表現の成立には定型性が関係ある
非慣習的メタファーの例
1.
最後というか,いよいよ本論を始めるに当たって,出版のいきさつについて書いておきた い.2.
私は2003
年の3
月に東京大学を定年退職した.3.
その最終講義で「蝉になりたい」という話をした.4.
私は,三十数年間,大学という「土」の中でじっと工学の教育と研究に携わってきた.5.
それはそれで充実した人生だった.6.
しかし,定年になってからは地上にはい出て,人がうるさがるくらいミンミンミンミン鳴 いてやろうと思っていた.畑村洋太朗『直観でわかる数学』の「長めのまえがき」より抜粋
s2
が先行してなければ,s4
の「大学という「土」」やs6
の「地上にはい出て」という句は解釈困難
非慣習的メタファーの例
新聞記事から
「猫に小判,豚に真珠,シラクにインターネットか」
特徴
先行分脈からの活性化が必要
「猫に小判」と「豚に真珠」が先行していなければ「シラクに インターネット」は
(
意図された意味では)
理解不可能メタファー表現の成立
慣習的メタファー表現の生成には記憶ベースの説明が存在 例えば
(1)
彼は上司に搾取されているという
(
慣習的)
メタファー表現が生成するのに,Employment is Exploitation
のような概念メタファーを持ち出すのは論点先週
メタファー表現の成立
(2)
のV
に任意の動詞を入れて,その良さを評価するシステ ムがあればそれで十分(2)
彼は上司にV
ているv1=
利用され, v2=
搾取され, v3=
蹂躙され, v4=
飼育され, ...
(2)
の実例のおのおのがどういう意味をもつかは,次のパ ターンに合致する事例の意味の平均化で近似可能
彼は
o1
に利用されている,
彼はo2
に搾取されている,
メタファー表現の成立
アナロジーや概念メタファーは,
言い表わされる状況を
target T
とし,記憶ベースに無作為に生成された表現
e 1 , e 2 , ..., e n
で表わ される状況をS 1 , S 2 , ..., S n
とする時,類似度
=
非類似度∆ 1 = T - S 1 , ∆ 2 = T - S 2 , ..., ∆ n = T - S n
の大 きさを評価するシステム膨大な事例記憶の想定の下では,この
Darwinian
モデルによ る説明は非現実的ではないメタファー表現の成立
概念メタファーやアナロジーを使った説明の問題点
表現
e 1 , e 2 , ..., e n
の生成に概念メタファーやアナロジーを使うと,候補生成の能力が不足する 理由
概念メタファーやアナロジーが許す候補しか生成されな
い
=>
新規なメタファー表現は原理的に存在しないこれは誤った予測である
“ うろ覚え ” による創造性
黒田・寺崎
(to appear) at
言語処理学会16
回年次大会(
東大)
仮りに
(2)
のV
で「利用され」と言うべきところで,想起エラーが原因で「搾乳され」や「採掘され」が入った表現を 産出してしまったら,どうなるか?
(2)
彼は上司にV
ているこれが原因で
(3)
が(
メタファー)
表現として定着する可能性 は0
ではない(3)
彼は上司に{??
搾乳, ??
採掘}
されている
ドキュメント内
言語使用の質的解析で見える 概念化と見えない概念化
(ページ 70-79)