• 検索結果がありません。

電離層の擾乱による影響かどうか

3.2 観測データのシグナルの検証

3.2.3 電離層の擾乱による影響かどうか

最後に Figure 13の中に局在したシグナルが電離層の擾乱による影響のものであるかについ て検討する. InSAR の解析において電離層の影響はしばしば問題となっている. 電離層で引き 起こされる位相変化は電波の周波数に対して分散性 (周波数依存性) があることが知られてお り, 同じマイクロ波を用いた宇宙測地技術であるGPSでは観測に周波数の異なる2つの電波を 用いることで, 2 つの波の周波数に応じた遅延量の差から電離層での影響を定量的に知ること ができ, 測位においても電離層の影響の高精度な補正が可能である. しかしSARでは通常の定 期観測において2周波観測は行われておらず, したがって電離層の影響を正確に知ることは非 常に困難である. また電離層で受ける影響は周波数の二乗に反比例するため短周波の電波ほど 大きく, SAR の場合本研究でも用いている ALOS の L-band の SAR は ERS 等が用いている

C-bandのSARに比べて電離層の影響が大きく, その効果を無視することはできない. このよう

な状況の中, Gray et al. (2000) はPixel offset法で得られるデータの内のazimuth成分のデータ (azimuth offset) に, 電離層の擾乱があった場合にその影響がazimuth streakingと呼ばれる縞模 様となって現れることを論文で示した. そしてMeyer et al. (2006) はazimuth offsetに現れる地 殻変動とは異なる縞模様の変位xが, 電波の経路上にある電子の総数 (TEC) の勾配を表し ているということを式で示した. その式は以下のようになっている.

i o n oph

dx x    d  

(13)

ここで

 

ionoph は2時期の観測における電離層の影響による位相変化の差, つまりはInSARで見 られる電離層による位相変化量に対応している. この関係式に基づいて, 2008 年四川地震を捉

えたInSARデータに含まれた電離層による位相変化量を計算し, その補正が有効であったこと

がRaucoules and Michele. (2010) で示されている. 本研究でもMeyer et al. (2006) に示された方 法を用いて電離層に影響について検討する.

まずFigure 13と同じSARデータからPixel offset法によりazimuth offsetを計算する. 結果は

Figure 17のようになった. Figure 17には明瞭な縞模様が見られることから, この観測データに

は電離層による影響がありそうである. 次にazimuth offsetのデータから小さいノイズを取り除

くためにFFT (Fast Fourier Transformation) とガウシアンフィルターを用いてノイズの軽減を図

った(Figure 18, 19). そして電離層による位相変化のモデルを作るために, このデータを

azimuth 方向に積分した (Figure 20). 最後に, 得られた電離層モデルの係数倍が Figure 13 の

InSAR データをもっともよく説明するように最小二乗法で係数を求めてこれを最終的なモデ

ルとして補正を行った. 補正結果はFigure 21のようになった.

なお, ここで行った電離層補正方法の有効性を検証するため, 電離層擾乱による影響が含ま

れているであろう 2つの InSARデータについて同様の計算を行った. テストサイトとして 1) 十勝岳周辺の2007年6月28日と2007年8月13日のInSARデータ, 2) 新潟周辺の2007年7 月30日と2007年9月14日のInSARデータを選んだ. それぞれ補正の結果をFigure 23, Figure 24 に示す. テストサイトでの結果から, どちらの場合も特に画像中央部の辺りでよく補正がなさ れている. このことから電離層擾乱の影響がある場合について, Meyer et al. (2006) で示された 方法は効果がありそうである.

集中豪雤時に得られたInSARデータにここでの電離層補正を適用した結果, Figure 21からは 補正による効果はそれほど明瞭ではなく, 中央部に東西に帯状に広がる部分の位相の振幅が尐 し小さくなり, 図上部にある局所化したシグナルの振幅がわずかに大きくなった程度である.

ここでFigure 22のプロファイルを見ると補正後は全体的な位相変化の勾配が小さくなってい

る一方で, 局在化したシグナルの部分に補正の影響は見られない. 局在化したシグナルは短い 距離で急激な勾配を持って位相が変化している点からみても, このシグナルが電離層の影響に よるものとは考えにくい. よってこのシグナルは電離層擾乱の影響によるものではないであろ う.

Fig 17. Azimuth offset field of Figure 13. “Azimuth streaking” is seen.

A

B

Fig 18. Azimuth offset field with FFT and Gaussian filter.

Fig 19. Phase variation profile along black line in Figure 17 and 18. The profile without FFT and Gaussian filter is shown in blue line. The profile with FFT and Gaussian filter is shown in red line.

A B

A B

Fig 20. Estimated dTEC model from azimuth offset field shown in Figure 18.

Fig 21. (a) Observed interferogram (same as Figure 13, but different scale).

(b) “dTEC” corrected interferogram.

[rad]

[rad]

a

b

A A

B

B

Fig 22. Phase variation profile along black line in Figure 21. The profile of InSAR observation data is shown in red line (Figure 21 (a)). The profile of dTEC corrected InSAR data is shown in green line

(Figure 21 (b)).

A B

Fig 23. (top) Observed interferogram for 28 June 2007 to 13 August 2007.

(bottom) “dTEC” corrected interferogram.

[rad]

[rad]

Fig 24. (top) Observed interferogram for 30 July 2007 to 14 September 2007.

(bottom) “dTEC” corrected interferogram.

[rad]

3.3 calibration 法による補正の適用

関連したドキュメント