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環準同型定理

ドキュメント内 PDF 代数系への入門 - 広島大学 (ページ 96-99)

第 4 章 環 87

4.6 イデアル

4.6.3 環準同型定理

定理4.6.7. (イデアルによる剰余環)Rを環とし、Iを両側イデアルとする。

q:R→R/I

が環準同型となるような和、積がR/Iにただ一通り定義される。このR/IRIによる剰余 環(residue ring)と言う。qを剰余準同型(residue homomorphism, residual homomorphism) と言う。

証明. 定理4.6.3と定理4.6.1から従う。

剰余とは、「割った余り」の意味である。今、例4.6.6で見たようにR=Z, I = (m)とす ると

R/I =Z/(m) は、

Zをx∼y⇔x−y∈(m)という同値関係で類別したもの

に他ならない。これは定義1.3.21で定義したZ/mに一致する。すなわち、前章までのZ/m はZ/(m)なる剰余環である。

Z/mは「整数をmで割った余りの全体」と同一視されるので、「剰余環」の名前がある。

4.6. イデアル 97 定義4.6.8. (核、カーネル)f :R1→R2を環準同型とする。その核(Kernel)を

Kerf :={x∈R1|f(x) = 02} で定義する。すなわち、R2の零元のf による逆像のことである。

命題4.6.9. 上の定義4.6.8で、KerfR1の両側イデアルである。

証明. 問題4.16を用いて直接証明すれば易しい。(もっと哲学的な証明は、注2.4.33を使っ て得られる。環の公理は無条件等号型なので、fR1に指定された環の演算とコンパチブ ルであり、したがって定理4.6.3より[0]f は両側イデアルである。これはKerf に他ならな い。)

問題4.19. 上の命題を証明せよ。

定理4.6.10. Rを環とし、IRの両側イデアルとする。q:R→R/Iを剰余準同型とする。

f :R→Sを任意の環準同型とする。

環準同型h:R/I →Sであって、

f =h◦q なる性質をもつものが存在する必要十分条件は、

I⊂Kerf

となることである。このとき、hはただ一つに決まる(しばしばf¯で表される。)

この状況をf¯がwell-definedであるという。

証明. 群の場合の対応する定理2.4.75の証明とほぼ同じである。違うのは、加法に関する群 準同型f¯が環準同型にもなることを示さなくてはならないところだけである。これは

f¯([x]I¯·[y]I) = ¯f([x·y]I) =f(x·y) =f(x)·f(y) = ¯f([x]I)·f¯([y]I) から従う。

4.6.11. §3.3で

¯

qm:Z/(mn)Z/m

なる群準同型を作ったが、これは環準同型でもある。上の定理4.6.10において、R=Z,S= Z/m,f :ZZ/mを剰余準同型とし、I:= (mn)とする。

f¯:R/I =Z/(mn)→S=Z/m なる環準同型が定義されるには、

I= (mn)Kerf = (m)

が示されれば良い。これは単に、「mnの倍数はどれもmの倍数である」という自明な事実で ある。

定理4.6.12. (環の準同型定理)R, Sを環とし、f :R→Sなる環準同型が与えられたとする。

f(R)⊂Sf によるRの像を表す。このとき、

1. f(R)はSの部分環である。

2. I:= KerfRの両側イデアルで、IRの和、積とコンパチブルな同値関係である。

3. f

R→q R/I f¯ S なる合成となるようなf¯、すなわち

f = ¯f◦q

なるf¯がただ一つ存在する。そして、その終集合をf(R)に制限して得られる f¯:R/I→f(R)

は環同型となる。

証明. 群の場合の定理2.4.76と同様に証明できる。

4.6.13. Rを単位的環とすると、命題4.2.6により単位的環準同型f :Z→R, 1Z7→1Rが 存在する。Kerf はZのイデアルであるが、ある整数m≥0によりKerf = (m)となること が示せる(単項イデアル整域、次章参照)。

こうして、f(Z)⊂RはZ/mと同型になることが示される。

問題4.20. 上の事実「Kerf = (m)となるmが存在する」を証明せよ。(参考:定理2.4.54の 証明。)

4.6.14. R:=R[t]とし、環準同型

f :R[t]C, g(t)7→g(

1) を考える。

Kerf ={g(t)R[t]|g(

1) = 0} である。因数定理から、

g(t)Kerf ⇔t−√

1|g(

1) である。実多項式g(t)が解

1を持つなら、その複素共役である−√

1も解である。よっ て、g(t)は(t−√

1)(t+

1) =t2+ 1で割り切れる。逆に、t2+ 1で割り切れるような多 項式h(t)は、±√

1を解に持つのでh(

1) = 0、すなわちh∈Kerf。以上をあわせると Kerf = (t2+ 1)

となる。環準同型定理によれば、

R[t]/(t2+ 1)C, t→√

1 なる環の同型が得られる。

4.6.15. R[t]/(t2+ 1)で、tの属する同値類を[t]と書く代わりにもうtと書いてしまうこと

にする。R[t]/(t2+ 1)において計算をすることは、和積差の計算を多項式でしておいて、結果を

いちいちt2+ 1で割った余りをとるという計算をすることになる。例えば、t2= (t2+ 1)1

1 mod (t2+ 1)であるので、t

1の役割を果たす。

4.6. イデアル 99

4.6.16. 単項でないイデアルも存在する。R[x, y]で、実係数二変数多項式環を表す。

(x, y) :={f(x, y)x+g(x, y)y|f, g∈R[x, y]} ⊂R[x, y]

とおくと、これはR[x, y]のイデアルとなる。もしこのイデアルが単項イデアルであったとす ると、

(x, y) = (a(x, y))

なる多項式a(x, y)が存在するはずである。左辺にはx,yが含まれるから、xa(x, y)の倍 多項式であり、ya(x, y)の倍多項式である。しかし、そのようなa(x, y)は定数しか存在せ ず、上の等号は成り立たない。

問題4.21. 上の、(x, y)が単項イデアルではないという事実の証明を詳細に述べよ。

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