第 2 章 マグマ、半群、モノイド、群 30
2.4 群
2.4.13 正規部分群と準同型定理
群が半群やモノイドに比べて重要な理由はいくつかある。そのうちの一つは、上で見たよう に群においては「元の位数」というそれぞれの元の性質が、「群全体の位数」という全体の性 質と密接に関連していることが上げられる。
他の理由の一つに、「二項演算とコンパチブルな同値関係」というものが「正規部分群」と いう扱いやすい概念と本質的に同じ(注1.3.3)であるということが挙げられる。
まず、群準同型
f : (G1,◦1, e1)→(G2,◦2, e2) が与えられたとき、∼fがどのように表せるかを見よう。
定義2.4.69. (G1,◦1, e1),(G2,◦2, e2)を群とし、f :G1→G2を群準同型とする。fによるe2
の逆像をfの核(kernel)といいKerf と書く。すなわち、
Kerf :=f−1(e2) ={x∈G1|f(x) =e2}. 命題2.4.70. 上の状況で、a∼f b⇔a∼LKerf b.
証明.
a∼f b⇔f(a) =f(b)⇔f(a)−1f(b) =e2⇔f(a−1b) =e2⇔a−1b∈Kerf.
系 2.4.71. 上でf が単射である必要十分条件は、Kerf ={e}であることである。
さて、一般に群準同型の核は部分群となるが、実は正規部分群と呼ばれる特殊な部分群と なる。
定義2.4.72. 群(G,◦, e)の部分群Hが正規部分群(normal subgroup) であるとは、
∀a∈G aHa−1=H であること。
2.4. 群 77 注意2.4.73. 上の定義を
∀a∈G aHa−1⊂H
としても同値である。なぜなら、aHa−1⊂Hであるが、このときaは任意であるからaの代 わりにa−1をとると
a−1Ha⊂H となる。左からaを掛けて右からa−1を掛けると
H⊂aHa−1 となり、最初の包含関係と合わせて
H=aHa−1 が言えるからである。
命題2.4.74. f :G1→G2を群準同型とすると、Kerf はG1の正規部分群となる。
証明. [S1]:
a, b∈Kerf ⇒f(a◦1b) =f(a)◦2f(b) =e2◦2e2=e2⇒a◦1b∈Kerf.
[S2]: e1∈Kerfは[HC]f(e1) =e2から従う。
[S3]:
a∈Kerf ⇒f(a−1) =f(a)−1=e−21=e2
従ってa−1∈Kerf.
以上より部分群。また、任意にg∈Kerfおよびa∈G1を取ったとき、
f(a◦g◦a−1) =f(a)◦f(g)◦f(a)−1=f(a)◦e2◦f(a)−1=e2. よってaga−1∈Kerf, すなわち
a(Kerf)a−1⊂Kerf.
上の注意よりKerfは正規部分群となる。
群(G,◦, e)に対し、∼がその台集合上の演算◦とコンパチブルな同値関係であるとする。す ると、定理2.4.24により商群への商準同型
q:G→G/∼
が定義され、∼=∼qである。Kerq= [e]であるから、命題2.4.70より次の定理の前半が言える。
定理2.4.75. (G,◦, e)を群、∼を◦とコンパチブルな同値関係とすると、H := [e]はGの正 規部分群であり、∼と∼LHは一致する。従って
G/∼=G/H となる。
逆に、HがGの正規部分群であれば、∼LHは◦とコンパチブルな同値関係であり、
G/∼LH=G/H は群となり、q:G→G/Hは群準同型写像となる。
証明. 後半の、Hが正規部分群のとき、∼LHと◦がコンパチブルなことのみ示せばよい。
a∼LHa′かつb∼LH b′ならば、
(ab)−1(a′b′) =b−1(a−1a′)b′ = (b−1b′)(b′−1a−1a′b′)∈H◦b′Hb′−1⊂H よりab∼LHa′b′、ゆえに◦と∼LHはコンパチブルとなる。
以上により、商群の定理2.4.24、well-definednessの定理2.4.31および群の準同型定理2.4.33 は次のように言い換えられる。
定理2.4.76. (G,◦, eG)を群とし、NをGの正規部分群とすると、商写像 q:G→G/N
が群準同型となるような二項演算¯◦と0項演算e¯Gと単項演算()−1がG/N に定義される。
このとき、(G/N,¯◦,e¯G)をGのN による商群といい、qを商準同型と言う。
定理2.4.77. (X,◦X, eX)を群とし、NをXの正規部分群とする。q:X →X/Nを商準同型 とし、任意の群(Y,◦Y, eY)と任意の群準同型f :X →Y を考える。
群準同型h:X/N →Y であって、
f =h◦q なる性質をもつものが存在する必要十分条件は、
N ⊂Kerf
となることである。このとき、hはただ一つに決まる(しばしばf¯で表される。)
この状況をf¯がwell-definedであるという。
証明. 定理2.4.31からのただちの帰結である。
a∼LN b⇒f(a) =f(b) なる条件が、
a−1b∈N ⇒f(a−1b) =e と言い換えられ、N⊂Kerf と言い換えられるからである。
定理 2.4.78. (群の準同型定理) (X,◦X, eX)、(Y,◦Y, eY)を群とし、f :X →Y なる群準同 型が与えられたとする。f(X)⊂Y でf によるXの像を表す。このとき、
1. f(X)はY の部分群である。
2. N := Kerf はXの正規部分群で、∼LN は◦とコンパチブルな同値関係である。
3. fが
X→q X/N →f¯ Y なる合成となるようなf¯、すなわち
f = ¯f◦q
2.5. 環、体 79