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写像が演算を保つこと

ドキュメント内 代数系への入門 モノイド・群・環 (ページ 45-48)

第 2 章 マグマ、半群、モノイド、群 30

2.3 モノイド

2.3.3 写像が演算を保つこと

二項演算をn項演算に一般化して、次のように「写像が演算を保つ(保存する)こと」(mapping preserves operation)を定義する。

定義2.3.7. Sn項演算αS:Sn→Sの与えられている集合、Tn項演算αT :Tn →T の与えられている集合とする。写像f :S→TαS, αT を保つとは、

∀s1, s2, . . . , sn f(αS(s1, s2, . . . , sn) =αT(f(s1), f(s2), . . . , f(sn)) が成立すること。添え字を落として「fαを保つ」ということが多い。

この定義は、図式

Sn f

n Tn

↓αS ↓αT

S f T

が可換であるとも言い換えられる。ここに上の行のfn:Sn →Tnは、

fn(s1, . . . , sn) = (f(s1), . . . , f(sn)) で定義される。

この用語を使うならば、「マグマ準同型とは、台集合の間の写像であって、指定された二項 演算を保つもの」と言い換えられるし、「モノイド準同型とは、台集合の間の写像であって、

指定された二項演算ならびに指定された0項演算eを保つもの」と言い換えられる。

後の節で扱う「群」でも「環」でもそうだが、「準同型」を定義するときに写像に要請され る条件は、「指定された演算を保つこと」のみであり、公理は構わなくて良い。

注意2.3.8. 写像f に対し、fnという記法には二つの違った意味がありうる。上の場合には

f :S→T

fn:Sn→Tn であるが、一方f Map(S, S)のときには関数の合成

fn:=f◦f◦ · · · ◦f Map(S, S)

をあらわしている可能性がある。(定理2.2.14参照。)文脈に従って、どちらのことなのかを 各自判断して欲しい。

命題 2.3.9. (S, αS), (T, αT), (U, αU) を、それぞれ集合とn項演算の組とする。f :S →TαS, αT を保ち、g:T →UαT, αU を保つならば、

g◦f :S→UαS, αU を保つ。

証明は機械的である。次の図式を使うこともできる。

Sn f

n Tn g

n Un

↓αS↓αT↓αU

S f T g U

注意2.1.9参照のこと。

問題2.13. 上の命題2.3.9を証明せよ。

2.3.10. 二つのモノイド準同型の合成は、モノイド準同型である。

証明. 証明するべきことはg◦f が二項演算ならびに0項演算eを保つことである。が、命

題2.3.9からどちらも従う。なお、系としてではなく、直接証明することも易しい。命題2.1.8

により、が保たれていることがわかる。eについては、f(eS) =eT(f の準同型性から従う)

の両辺のgによる像をとるとg(f(eS)) =g(eT) =eU である。ここで、二番目の等号に、gの 準同型性を用いた。

次は、二項演算に関する系1.3.23の一般化である。

2.3. モノイド 47 定理2.3.11. Sn項演算α:Sn →Sの与えられている集合とし、αとコンパチブル なS上の同値関係、すなわち任意のs1, s1, . . . , sn, sn∈Sに対し

s1∼s1, s2∼s2, . . . sn∼sn⇒α(s1, . . . , sn)∼α(s1, . . . , sn) とする。このとき、商集合S/∼にはn項演算α¯ であって

¯

α([s1], . . . ,[sn]) =α(s1, . . . , sn) となるものが唯一つ存在する。

すなわち、商写像qα,α¯ を保つようなα¯が唯一つ存在する。

2.3.12. (Mn(R),×, En)はモノイドである。ここにEnn次単位行列である。

n次正方行列の下に一行と右に一列、0のみからなる行と列を付け加える写像f :Mn(R) Mn+1(R)は、積に関して半群の準同型であるがモノイドの準同型ではない。単位元が単位元 にうつされないからである。

定義2.3.13. (S,◦S, eS)をモノイドとする。idS :S→Sはモノイド準同型となり、恒等射と 呼ばれる。

(T,◦T, eT)もモノイドとする。モノイド準同型f :S→Tg:T →Sであって g◦f = idS, f◦g= idT

となるものがあるとき、gf の、fgの逆射という。逆射を持つような準同型を可逆射、

または同型射、同型写像、または単に同型という。モノイドであることを強調してモノイド同 型ともいう。

このような状況のとき、モノイドSTはモノイドとして同型であるという。

半群の場合の定義2.2.5と全く同じであることに注意してほしい。

注意2.3.14. カテゴリー論(圏論)を学ぶと、逆射の定義を統一することができる。

命題 2.3.15. f :S→T がモノイド準同型でかつ全単射であるとする。このとき、fの逆写

gが存在し、g:T →Sもモノイド準同型となり、したがってfの逆射となる。

証明. gが半群準同型であることは命題2.2.6から従う。あとはg(eT) =eSを言えばよい。f は単射なので、両辺をfで送って一致することを見ればよい。左辺の行先はf(g(eT)) =eT (fgの逆写像であるから)、右辺の行先はf(eS) =eT (f が単位元を保つから)なので、一致 する。

定義2.3.16. S,Sをモノイドとする。SからSへのモノイド準同型(monoid homomorphism) の集合を

Hommonoid(S, S) で表す。特に、S =Sのとき

Endmonoid(S) := Hommonoid(S, S)

とおいてSのモノイド自己準同型(monoid endomorphism)の集合という。(Endmonoid(S),◦,idS) はモノイドとなる。

なお、定義2.2.7に現れる(Endsemigp(S),◦,idS)や(Endmagma(S),◦,idS)もモノイドである。

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