4.1 緒 言
4.3.2.3 材料の安定性および耐孔食性
第 4 章 生体材料の耐食性および生体適合性に及ぼすELID研削の効果
第 4 章 生体材料の耐食性および生体適合性に及ぼすELID研削の効果
前章でも示した通り,T-ApELID seriesでは砥石に与えるべき電圧を試験片に直接印加 しながらELID研削を行っている.そのため,加工面での酸化反応は積極的に起こる が,一方で砥石と電極間での電解は起きにくくなる.その結果,砥石のドレッシングの 効率が通常の加工時に比べて低下し,砥粒の突出や切り屑の排除に悪影響を及ぼしたた め,通常のELID研削面と比較して表面粗さの値が上昇したものと考えられる.T- ApELID seriesの場合,このような表面粗さの上昇により電気化学測定時の試験面の表面 積が大きくなり電流密度が増加したため,T-ELID seriesと比較して不動態保持電流密度 が上昇するという結果に繋がったものと考えられる.ただしこの点に関しては,例えば 砥石のドレッシング用に別の電源を使用することにより解決可能であると考えられる.
次に材料表面に孔食が発生するときの電位である孔食電位の値に注目する.チタンは もともと耐食性に優れるため,明瞭な孔食電位は存在しないことが明らかとなっている が,T-SiO2 seriesは2.5V付近,T-ELID seriesは3.0V付近で若干の電流密度の立ち上がりが 認められる.それに対してT-ApELID seriesでは本研究で定めた測定終了電位である4Vま
図 4-12 アノード分極曲線
Current density mA/cm2
0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0
10-1
10-2
10-3
10-4
10-5
10-6
T-ELID series T-SiO2series
T-ApELID series
Potential V vs S.C.E
第 4 章 生体材料の耐食性および生体適合性に及ぼすELID研削の効果
で電流密度の立ち上がりがまったく認められず電流密度が終始安定していることがわか る.すなわち,電圧を印加しながらELID研削を行うことにより,材料の孔食の発生を 抑制可能になるものと考えられる.
通常,材料の表面が粗い場合にはその凹凸が電気化学的に弱部となり孔食が発生しや すくなるため孔食電位の値は低下する.しかしながらT-ApELID seriesにおいては,不動 態保持電流密度の値は比較的高い値を示すものの,孔食電位は認められなかった.これ はT-ApELID series表面の腐食反応性が影響しているものと考えられる.前述した通り,
アノード分極試験は材料を加速的に腐食させ,その挙動により耐食性を評価する方法で ある.電位を上昇させることであえて表面の酸化皮膜を破壊させており,試験中の試験 片表面では酸化皮膜の破壊と再生が繰返し起こっているといえる.ただし,T-ApELID
0 30 60 90 120 150 180
T-SiO2series T-ELID series T-ApELID series Surface roughness (Ra) nm
図 4-13 表面粗さ測定結果
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4.3.3 ELID研削面の生体適合性
生体材料を体内で使用する際,最も重要な問題となるのは生体との適合性である.すな わち,材料の生体組織に対する親和性,また,材料自身の細胞に対する毒性について調べ ることは極めて重要であるといえる.そこで本項では,前項までにその耐食性について明 らかとしてきた試験片に対して生体適合性という観点から検討を加えた.