第 2 章 マグマ、半群、モノイド、群 26
2.4 群
2.4.6 普遍代数
この手の定理2.4.24, 2.3.21, 2.2.11, 2.1.13は、実は統一的に証明できる。
2.4. 群 53
「代数構造の与えられた集合」という言葉で、次のような材料と公理の組を考える。まず材 料は(S, α1,S, . . . , αm,S)である。ここにSは集合、αi,Sは演算(何項演算でも良い、ni項演 算であるとしよう)である。
例えば、群(S,◦, eS,()−1)では、α1が二項演算、α2が0項演算、α3が単項演算である。
次に、公理を考える。公理は、「全てのs1, s2, . . . , sl∈Sに対し、これらから指定された演 算をある特定の順番で繰り返して得られる元と、別の順番で繰り返して得られる元が、常に等 しい」という形のもの(無条件等号型の公理と呼ぶ)の形のものが、いくつか与えられている とする。
例えば、マグマ(S,◦)が与えられたとき、
∀a, b, c∈S (a◦b)◦c=a◦(b◦c)
は、無条件等号型の公理の例である。群の公理に現れるG1, G2, G3や可換性G4もそのよう な公理の例となっている。
無条件等号型でない公理の例としては、ちょっと先走っていて申し訳ないが、体の公理にあ らわれる
s= 0⇒s−1∈S があげられる。
定義 2.4.25. 代数構造とは、n1, n2, . . . , nmなる0以上の自然数をきめ、それを項数にもつ 演算たちと、それらが満たすべき公理を決めたもの。
無条件等号型の代数構造とは、それらの公理が無条件等号型であること。
その代数構造を持つ集合Sとは、(S, α1, . . . , αm) なる組であって、各αiはni項演算で、
与えられた公理を満たすもの。
例えば、群構造と呼ばれる代数構造は、◦,e, ()−1なる2項、0項、単項演算と、それらに 関して(無条件等号型の)公理G1, G2, G3を与えたものである。
群構造を持つ集合とは、(S,◦S, eS,()−1)の組であって、G1, G2, G3を満たすものである。
すなわち、群である。
定義 2.4.26. Cを代数構造とし、S,Tをその代数構造を持つ集合とする。SからTへのC準 同型とは、f :S→Tなる写像であって、指定された全ての演算とコンパチブル(定義2.3.7 参照)なもの。すなわち、
Sni f→ni Tni
↓αi,S ↓αi,T
S →f T
が全てのi= 1,2, . . . , mに対して可換なもの。
この定義と命題2.3.9より次を得る。
系 2.4.27. C準同型二つの合成は、C準同型である。
定理 2.4.28. Cを無条件等号型の代数構造とし、Sをその構造を与えられた集合とする。T ⊂S
が、与えられた演算α1, . . . , αmについて閉じているならば、Tはこれらの演算によってC構 造を持つ。SをTの部分C構造という。
証明. 無条件等号型の公理は、部分集合についても成り立つから。
定理 2.4.29. Cを代数構造とし、Sをその構造を与えられた集合とする。S上の同値関係∼
が、与えられた演算α1,S, . . . , αm,S 全てとコンパチブルならば、S/∼には演算α¯1, . . . ,α¯m
であってq:S→S/∼とこれらの演算がコンパチブルであるようなものが唯一つ定義される。
Cが無条件等号型ならば、S/∼はこれらの演算によってC構造を持ち、qはC準同型とな る。このときS/∼をSの商C構造という。
証明. 演算α¯iの存在は定理2.3.12からしたがう。唯一性もそこからしたがう。コンパチビリ ティもそこからしたがう。
あとはCが無条件等号型であるとき、S/∼がその構造を持つことさえ言えれば、qが準同 型であることはコンパチビリティからしたがう。
S/∼とα¯iが公理を満たすことを言えば良いのであるが、これはqの全射性と、公理が無条 件等号型であることからしたがう。
具体例でみよう。公理G3を確かめてみる。qが全射であることから、S/∼の任意の元は [a]とあらわされる。わかりやすく(?)するために、◦をα(−,−)で、eをβ()で、()−1を γ(−)で表してみよう。qとこれらの演算とその¯とのコンパチビリティはもう示したのである。
それは
q(α(a, b)) = ¯α(q(a), q(b)), q(β()) = ¯β(), q(γ(a)) = ¯γ(q(a)) と表せる。われわれの任務は、G3がS/∼で成立すること、すなわち
¯
α(x,γ(x)) = ¯¯ α(¯γ(x), x) = ¯β()
が成立することを示すことである。ここで、qの全射性によりx=q(a)となるようなa∈S が存在するのだから、このようなxについて上の等式を示せばよい。
しかるに、SにおいてはG3が成り立つのであるから α(a, γ(a)) =α(γ(a), a) =β().
全てにq()を施すと
q(α(a, γ(a))) =q(α(γ(a), a)) =q(β())
だが、qと演算たちのコンパチビリティからqは中に入りながら演算の上に¯をつけていく、す なわち
q(α(a, γ(a))) = ¯α(q(a), q(γ(a))) = ¯α(q(a),γ(q(a)))¯ であるから、ほかの項も計算すれば
¯
α(q(a),γ(q(a))) = ¯¯ α(¯γ(q(a)), q(a)) = ¯β() である。これが示したい、S/∼におけるG3であった。
このように、代数構造一般を扱う数学の分野を普遍代数(universal algebra)という。
2.4. 群 55