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半群

ドキュメント内 代数系への入門 (ページ 32-37)

第 2 章 マグマ、半群、モノイド、群 26

2.2 半群

2.2.1 結合法則と半群

定義 2.2.1. 半群(semigroup)Gとは、材料として

GA (台集合などと呼ばれる)集合G0

GB (積、合成などと呼ばれる)G0上の二項演算

が与えられて、次の性質(半群の公理と呼ばれる)を満たすもの。

G1 (結合法則, associative law)

g1, g2, g3∈G0(g1◦g2)◦g3=g1(g2◦g3).

すなわち半群とは、「マグマ(G0,◦)であって二項演算が結合法則を満たすもの」のこと である。通常しばしば、台集合G0のことをGと書いてしまう。したがって、g∈G0を単に g ∈Gと書き、写像f :G0 →Sf :G→Sと書く。が、厳密には半群とは組G= (G0,◦) である。

2.2.2. 1. (Z,+), (N,+), (n次正方行列の集合,行列の積)は半群である。

2. (Z,−)は半群でない。一般には

(a−b)−c=a−(b−c) だからである。

3. (N,ベキ)は半群でない。

2(12)= (21)2 だから。

4.Sを集合とする。Sからそれ自身への写像の集合と、写像の合成 (Map(S, S),◦)

は半群である。1.1.3節の式(1.1)より従う。

結合法則はどうして現れて、なぜ重要なのか?著者にもよくわからない。が、例えば写像の 合成は結合法則を満たすし、次の問題は、結合法則と、ある写像がマグマの準同型であること とが同値であることを示している。

問題 2.9. (S,·)をマグマとする。定理1.1.22により、

:S×S→S

L:S Map(S, S) と対応している。ここに、L(s)は左(left)からs·する写像

L(s) :t→s·t

2.2. 半群 33 である。

Lが(S,·)から(Map(S, S),◦)へのマグマ準同型であることと、結合法則とが同値であるこ とを示せ。

マグマ準同型であることは、

∀s, s∈S L(s·s) =L(s)◦L(s)

と言い換えられる。この両辺にs∈Sを食べさせると、結合法則が得られる。

2.2.2 半群の準同型

定義 2.2.3. 半群G= (G0,◦)から半群G = (G0,◦) への半群準同型とは、台集合の間の写 像f :G0→G0であって、

∀s, s ∈G0f(s◦s) =f(s)f(s) が成立するものをいう。

すなわち、半群の間の準同型とは、それらの半群をマグマとみなしたときのマグマ準同型で ある。では、半群を定義する公理[G1]は無視していいのか?どうやらいいらしい。以下、モ ノイドや群や環の準同型の定義でも同様であるが、準同型に要請されるのは演算とのコンパ チビリティだけであり、公理は無視される。それはなぜか、と聞かれると、筆者にはよくわか らない。準同型の定義において公理を無視しないような数学もあるかも知れない。

命題 2.2.4. 半群G, G, Gとそれらの間の準同型f :G→G, g:G →Gがあるとき、そ れらの合成g◦f :G→Gも準同型である。

証明. 半群の準同型とはマグマの準同型のことだから、命題2.1.5より直ちに従う。

マグマの場合の定義2.1.7と完全に同じように、次のような定義をする。(実際、「マグマ」と いう単語を全て「半群」と書き換えただけである。)

定義 2.2.5. (S,◦S)を半群とする。恒等写像 idS :S→S

は半群準同型である。この半群準同型をS上の恒等射(identity morphism)と呼ぶ。

(T,◦T)も半群とする。半群準同型f :S→Tg:T →Sであって g◦f = idS, f◦g= idT

となるものがあるとき、gf の、fgの逆射という。逆射を持つような準同型を可逆射、

または同型射、同型写像、または単に同型という。

(S,◦S)と(T,◦T)の間に同型写像があるとき、これらの半群は同型であるという。

命題 2.2.6. f :S→T が半群準同型でかつ全単射であるとする。このとき、fの逆写像g

存在し、g:T →Sも半群準同型となり、したがってf の逆射となる。

証明. 半群準同型とはマグマ準同型のことであるから、命題2.1.10から直ちに従う。

定義 2.2.7. 1.S,Sをマグマとする。SからSへのマグマ準同型(magma homomorphism) の集合を

Hommagma(S, S) で表す。特に、S=Sのとき

Endmagma(S) := Hommagma(S, S)

とおいてSのマグマ自己準同型(magma endomorphism)の集合という。

2.S,Sを半群とする。SからSへの半群準同型(semigroup homomorphism)の集合を Homsemigp(S, S)

で表す。特に、S=Sのとき

Endsemigp(S) := Homsemigp(S, S)

とおいてSの半群自己準同型(semigroup endomorphism)の集合という。

2.2.3 部分半群

定義 2.2.8. (部分半群)半群G= (G0,◦)の部分半群とは、G0の部分集合Sであって、S

について閉じていて半群となっているものを言う。

命題 2.2.9. 上で、S⊂G0が部分半群となる必要十分条件はSに閉じていることである。

証明. 定義より、について閉じていることは必要である。十分性を示す。閉じていると仮定 して、部分半群になることを示せばよい。閉じているのだから、は制限によりSにおける二 項演算を定める。これが結合法則を満たせばよいが、それには

a◦(b◦c) = (a◦b)◦c

が任意のSの元について成り立つことを示せばよい。しかし、G0が半群であることからこ れは任意のG0の元について成り立つのであり、したがってS ⊂G0の元についても成り立 つ。

すなわち、半群Gの部分半群とは、Gをマグマとみなしたときの部分マグマと一致する。こ こでも公理[G1]は自動的に成立してしまう。

2.2.10. 例2.2.2で見たとおり、集合Sに対しSからそれ自身への写像の全体Map(S, S) は写像の合成について半群となる。

1. Map(R,R)の中で、連続写像となるものの全体をCとする。Cは(Map(R,R),◦)の部分 半群である。

2.Sをマグマとする。(Endmagma(S),◦)は(Map(S, S),◦)の部分半群である。

3.Sを半群とする。(Endsemigp(S),◦)は(Map(S, S),◦)の部分半群である。

問題 2.10. 上の例において、部分半群であることをそれぞれ証明せよ。

2.2. 半群 35

2.2.4 商半群

半群に、二項演算とコンパチブルな同値関係があるとき、商集合は自動的に半群となる。こ れを商半群という。マグマの場合の定理2.1.13参照。

定理 2.2.11. (S,◦)を半群とし、S上の同値関係とする。商写像 q:S→S/∼

が半群準同型となるような二項演算¯S/∼に定義される必要十分条件は、がコンパ チブルである(系1.3.18参照)ことである。

このとき、¯はただ一通りに定まる。(S/∼,¯)をSによる商半群といい、qを商準同 型と言う。

証明. 今、qが半群準同型となるような¯が定義できたとすると、マグマの場合の定理2.1.13 によりはコンパチブルでなければならない。

逆に、がコンパチブルであったとき、qが半群準同型となるような¯が定義できるこ とを言うのであるが、マグマの場合の定理2.1.13によりマグマ準同型となるような¯は定義 できるのであるから、あとはこれが結合法則[G1]を満たすことを示せばよい。S/∼の任意の 元は[g] (g∈S)の形に書けるから、

([g1[g2])¯[g3] = [g1([g2[g3]) を示せばよいのであるが、これは(S,◦)が半群であるゆえ

(g1◦g2)◦g3=g1(g2◦g3)

を満たすので、両辺に[]をほどこし、q= [] :S→S/∼がマグマの準同型である、すなわち [g1◦g2] = [g1[g2]

であることを繰り返し使えば示せる。

ここでも、(S/∼,¯)の結合法則[G1]は自動的に従う。

2.2.5 準同型定理

定理 2.2.12. (X,◦X)を半群とし、X上のXとコンパチブルな同値関係とする。(X/∼ ,¯)で商半群を表す。q:X→X/∼を商準同型とし、任意の半群(Y,◦Y)と任意の半群準同型 f :X →Y を考える。

Xfがコンパチブル、すなわち任意のx, x∈X に対し x∼X x ⇒f(x) =f(x)

となるとすると、定理1.3.15により写像f¯:X/∼X→Y であって、

f = ¯f ◦q

なる性質をもつものが唯一つ存在する。このとき、f¯は半群準同型である。

この状況を、半群準同型f は同値関係Xにコンパチブルであるといい、またf¯がwell-

definedであるという。

証明. 定理2.1.15と比べると、「マグマ準同型f¯が半群準同型であること」を示せばよいが、

これは「半群間のマグマ準同型は半群準同型であること」から明らか。

定理 2.2.13. (半群の準同型定理)

(X,◦X)、(Y,◦Y)を半群とし、f :X→Y なる半群準同型が与えられたとする。f(X)⊂Yf によるXの像を表す。このとき、

1.f(X)はY の部分半群である。

2.fとコンパチブルな同値関係である。

3.f

X q X/∼f f¯

→Y なる合成となるようなf¯、すなわち

f = ¯f◦q

なるf¯がただ一つ存在するが、これは半群準同型である。そして、その終集合をf(X)に 制限して得られる

f¯:X/∼f→f(X) は半群同型となる。

つまり、定理2.1.16は半群に対してもそのまま成り立つ。これは、マグマ準同型、マグマ 同型、商マグマ、部分マグマは、考えているマグマが半群の性質[G1]を満たす場合、自動的 に半群準同型、半群同型、商半群、部分半群となることから従う。

2.2.6 自然数と指数定理

半群においては、結合法則により

(g1◦g2)((g3◦g4)◦g5) = ((g1◦g2)(g3◦g4))◦g5= (((g1◦g2)◦g3)◦g4)◦g5

である。一般に、n個の元の積をとったとき、かっこのつけかたによらず結果は同じとなる。

そこで、上のような積を単に

g1◦g2◦g3◦g4◦g5

と記述する。特に、nが自然数のとき

g◦g◦g◦ · · · ◦g (n個) をgnと記す。

定理 2.2.14. (指数定理) (G0,◦)を半群とし、g∈G0を一つの元とする。自然数n, mに対し 次が成立する。

(gn)(gm) =gn+m

問題 2.11. 上の定理を証明せよ。一般のマグマに対しては、どのような障害が生じるか考察

せよ。

2.3. モノイド 37

ドキュメント内 代数系への入門 (ページ 32-37)