10 Schwarz の鏡像の原理 (Schwarz reflection principle)
10.1 実軸を超えての拡張
ゆえにこのとき φ(s)∈Dt. ゆえに Ds∩Dt6=∅(少なくとも φ(s) を含むから). ∀z ∈Dt∩Ds に対して、
hs(z)−ht(z) = Z φ(s)
0
dζ ζ +
Z z
φ(s)
dζ ζ −
Z φ(t) 0
dζ ζ +
Z z
φ(t)
dζ ζ
!
= Z φ(s)
φ(t)
dζ ζ +
Z z
φ(s)
dζ ζ +
Z φ(t)
z
dζ ζ . これは、関数1/ζ の、Dt内の閉曲線に沿う線積分であるから、0に等しい。ゆえにht(z) =hs(z).
以上から、(h1(z), D1)は、(h0(z), D0) の曲線C に沿う解析接続である。
誤解を招く恐れがないわけではないが、(h0(z), D0)から得られるWeierstrass の解析関数は f(z) :=
Z z 1
dζ
ζ (z ∈C\ {0}) である。ただし
Z z
1
は、C\ {0} 内で、1 と z を結ぶ区分的に滑らかな曲線 C に沿う線積分 を意味する。z を固定したときも、C の取り方は色々あり、また C の取り方によって、線積 分の値は異なる。
9.4 その先
定理 9.10 (モノドロミー定理 (The Monodromy Theorem, Monodromiesatz) Ω は単連結領域、a∈ U, f は a における関数要素で、Ω内の任意の曲線に沿って解析接続 できるとする。このとき、f は Ωで一価正則な関数を定める。(「Ωにおけるf の直接接 続が存在する」がいいかな?)
モノドロミー定理は、一価性定理と呼ばれることも多い。
A∗ =A であるとき、A は実軸に関して対称である、と言うことにする。
命題 10.1 Ω は C の開集合、f: Ω→C は正則とするとき、
Ω∗ :={z ∈C;z ∈Ω} とおき、f∗: Ω∗ →C を
f∗(z) := f(z) (z ∈Ω∗) で定めると、f∗ は正則である。
証明 c∈Ω∗ とすると、c∈Ω. f は Ωで正則だから、∃ε >0, ∃{an}n≥0 s.t f(z) =
X∞ n=0
an(z−c)n (z ∈D(c;ε)).
このとき、∀z∈D(c;ε) に対して、z ∈D(c;ε) であるから、
f(z) = X∞ n=0
an(z−c)n. ゆえに
f∗(z) = f(z) = X∞ n=0
an(z−c)n = X∞ n=0
an(z−c)n. ゆえに f∗ は D(c;ε) で正則である。ゆえにf∗ は Ω∗ で正則である。
同様にu が Ω で調和ならば、u∗(z) := u(z) は Ω∗ で調和である。
補題 10.2 Ω は C の領域で、Ω6=∅, Ω∗ = Ω (Ωは実軸に関して対称) とするとき、Ω は 実軸の開区間を含む。
証明 Ω∩R6=∅ である。実際、もしも Ω∩R=∅ ならば、
Ω+:= Ω∩H+, Ω− := Ω∩H−, H+:={z ∈C; Imz >0}, H− :={z ∈C; Imz <0} とするとき、
Ω = Ω+∪Ω−, Ω+∩Ω−=∅. これは Ωの連結性に矛盾する。ゆえにΩ∩R6=∅.
x ∈ Ω∩R とすると、Ω が開集合であることから、∃ε > 0 s.t. D(x;ε) ⊂ Ω. このとき、
I := (x−ε, x+ε) ={t∈R;x−ε < t < x+ε}とおくと、I ⊂Ω.
命題 10.3 Ω はC の領域で、Ω6=∅, Ω∗ = Ω (Ωは実軸に関して対称), f: Ω→Cは正則、
実軸上のある開区間でf は実数値を取るとする。このとき f(z) = f(z) (z ∈Ω).
証明 補題から、開区間 I ⊂R が存在して、f(x)∈R(x∈I).
g(z) :=f(z)−f(z) (z ∈Ω) とおくと、g は Ωで正則であり、
g(x) = 0 (x∈I).
一致の定理から、g ≡0 in Ω. ゆえにf(z) =f(z).
定理 10.4 (調和関数の鏡像の原理) Ω は C の領域で、Ω6= ∅, Ω∗ = Ω (Ω は実軸に関し て対称) とする。
Ω+ := Ω∩H+, Ω− := Ω∩H−, H+:={z ∈C; Imz >0}, H− :={z ∈C; Imz <0}, σ := Ω∩R
とおく。v: Ω∗∪σ ={z ∈Ω; Imz ≥0} →R が連続で 4v = 0 in Ω+, v = 0 onσ が成り立つならば
V(z) :=
(
v(z) (z ∈Ω+∪σ)
−v(z) (z ∈Ω−)
とおくと 4V = 0 in Ω. すなわち実軸上で 0 である調和関数は奇関数拡張で調和に拡張
できる。
証明 4V = 0 in Ω− は明らかである。x0 ∈σ として、4V(x0) = 0 を示そう。D(x0;ε)⊂Ω となる ε >0が取れる。
PV(z) := 1 2π
Z
|z−x0|=ε
PV は |z−x0|< ε で調和であるから、V −PV はその円盤の上半分、下半分のそれぞれで調 和である。V −PV は円周上で 0である。円盤内の実軸上 (⊂σ)では V =v = 0, また積分の 対称性から PV = 0 であるから、V −PV = 0. 調和関数の最大値原理からV −PV は円盤の上 半分、下半分で 0 に等しい。ゆえにV =PV. 特に 4V(x0) =4PV(x0) = 0.
余談 10.5 (調和関数の “偶関数拡張”, “奇関数拡張”) 上の話を実関数として見てみよう。良 くやるように、正則関数 f に対して、実部、虚部をそれぞれ u, v とおく。つまり
f(x+iy) =u(x, y) +iv(x, y), x, y, u(x, y), v(x, y)∈R. このとき
f∗(x+iy) =f(x−iy) =u(x,−y)−iv(x,−y).
u と v が調和ならば、u(x,−y) と −v(x,−y)も調和である。確かにそれは明らかだ。
u,v が Ω+∪σ で調和であるとするとき、
U(x, y) :=
(
u(x, y) ((x, y)∈Ω+∪σ) u(x,−y) ((x, y)∈Ω−), V(x, y) :=
(
v(x, y) ((x, y)∈Ω+∪σ)
−v(x,−y) ((x, y)∈Ω−)
とおく。まず U は Ω で調和である。V は不連続かもしれない。連続であるためには V = 0 onσ
である必要がある。逆にこの条件が成り立っているとき、V は Ω で調和である。1変数実関 数の偶関数拡張、奇関数拡張の滑らかさの話に良く似ている。
上の定理の正則関数版。系としての証明と、Morera の定理を用いる証明と。