第 6 章 惑星内部構造 67
6.1.2 内部構造の推定方法
内部構造の推定方法の中で、最も多くの情報をもたらすものは地震波観測である。惑星を 構成する岩石や鉄は弾性体としての性質を持っているため、惑星のどこかでなんらかの破壊 減少(震源)が発生すると、その振動は波として伝播する。その伝播速度はP波(縦波)、S波 (横波)それぞれについて、
VP=
√(
K+4 3µ/ρ
)
, VS=
√
µ/ρ (6.3)
と書くことができる。ここで、Kは体積弾性率、µは剛性率である。地震波の速度は、物質 の情報を含んでいることがわかる。また、地震波は光と同様に異なる性質を持つ物質の境界 面で反射屈折を受ける。このため、ある震源で発生した地震波は様々な経路で伝播していく (図6-1)。実際には地震波の到達時間が観測量であり、そこから波の経路や内部構造の推定が 行われる。このような地震波観測により、薄い地殻の下に、岩石のマントル、液体鉄の外核 (横波が伝播しない)、固体鉄の内核という地球内部の基本的な構造(後述)が明らかにされた。
6.1. 内部構造論の基礎 69
図6-1. 地球内部でのいろいろな破線とその名称。岩波書店『地球科学入門』より転載。
地震波観測が行われた天体は地球と月に限られており、他の天体ではより限られた観測か ら内部構造の推定が行われている。惑星や衛星の観測値としてまず求められるのは、質量M である。その周囲をまわる衛星や探査機の軌道から、(1.12)式を用いて、
M = 4π2 G
a3
T2. (6.4)
ここで、T は軌道周期、aは軌道長半径である。半径Rは天文観測や探査機の画像解析から 推定されるため、MとRから平均密度ρが計算できる。平均密度と表6-1の既知の物質の密 度を比較することにより、第0近似的な天体の組成を推定することができる。
表6-2. 岩石惑星・月の内部構造に関する物理量。Cambridge Press 『Physics of the Earth 4th Edition』より転載。
より高次の内部構造の推定では、慣性能率Iを用いる。
I =
∫
V
r2dm (6.5)
ここでのrは自転軸からの距離であることに注意。慣性能率Iは天体の質量の中心集中度を 表しており(中心の密度が大きいほどIが小さい)、天体の形状や重力場などの測地学的観測 データから求めることができる。完全な球形・一様密度の天体の場合、I/M R2= 0.4となる。
表6-2に実際の惑星の慣性能率を示す。月、火星、地球の順にI が0.4より小さくなってお り、質量の中心集中度が高いことがわかる。これはコアの存在や、自己重力による惑星深部 の物質の圧縮を示している。