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代数幾何学による次元公式

ドキュメント内 代数幾何学による次元公式の計算 (ページ 54-57)

3.4.1 Tsushimaの補題

§1の記号を使う. Xn次元コンパクト複素多様体, ∆をX上のreduced divisorでnormal crossingなものとする. X =X−∆とおく. ∆を既約分解す る:∆ =∪

iIDi.

i I に対し, Din 1次元toric varietyで, Di 上にinduceされる divisor ∑

j̸=iDi∩DjDiのboundary になるとき, ∆をtoric divisorと呼ぶ.

ci =ci(X)とおく. ϵi H2(X,Z) をDiによって定まるcohomology類とする と, 補題2.1より次が成立する.

補題 3.1 (Tsushima) ∆がtoric divisorならば,

ck·ϵi = 0 (i∈I, 1≤k ≤n).

ci =ci(X)とおく. Ti(X) =Ti(c1, . . . , ci) となる多項式Ti(x1, . . . , xi) を Todd多項式という. Tsushimaの補題より,

Tn(c1, . . . , cn)[X] =Tn(c1, . . . , cn)[X] +κn [∏

iI

ϵi 1−eϵi

] .

Tn(c1, . . . , cn)[X]をXの∆に関する対数的arithmetic genusといい, χ(X,∆) と書く. 上の式の左辺はXのarithmetic genus χ(OX)であるから,

χ(OX) = χ(X,∆) +κn [∏

iI

ϵi 1−eϵi

]

を得る.

3.4.2 Hilbert modular varietyarithmetic genus

Kn次総実代数体とする. ΓはG=SL2(oK)の部分群で,Hnへ自由に作 用するものとする. YΓをΓ\Hnのsmooth toroidalコンパクト化とする. その とき, ∆ =YΓΓ\Hn はtoric divisorである. Hnのcompact dualは(P1)n

あるから, Mumfordの比例定理より

χ(YΓ,∆) = (1)nvol(Γ\Hn)

vol((P1)n) = vol(Γ\Hn) 2n . ただし, volumeの計算にはnormalized volume form

ω = (1

2π )n n

i=1

dxi∧dyi

yi2

を使っている. Γの各cuspxに対して,特異点xを除去するときに現れるdivisor たちの第i基本対称式をσi,x ∈H2i(YΓ,Z) と書く. すると

κn [∏

iI

ϵi 1−eϵi

]

=∑

x

Tn(σ1,x, . . . , σn,x)[YΓ] と書ける. したがって

定理 3.9 YΓのarithmetic genusをχ(Γ)と書くと χ(Γ) = 2nvol(Γ\Hn) +∑

x

Tn(σ1,x, . . . , σn,x)[YΓ].

3.4.3 次元公式

k >1とする. L= Ωn(log ∆)と書く. そのとき

dimS2k(Γ) = dimH0(YΓ,n⊗L(k1))

= χ(Ωn⊗L(k−1)) (Kodaira 消滅定理)

= (1)nχ(L(1k)) (Serre duality)

= (1)nPn((1−k)c1, c1, . . . , cn)[YΓ] (c1(L) = c1)

= (1)n (

Pn((1−k)c1, c1, . . . , cn)[YΓ] +∑

x

Tn(σ1,x, . . . , σn,x)[YΓ] )

(Tsushimaの補題)

となる. P(k 1) = χ((Ωn(P1)n)(1k))とおくとP(k) = (2k + 1)nであり,

Mumfordの比例定理より

Pn((1−k)c1, c1, . . . , cn)[YΓ] = 2nvol(Γ\Hn)Pn((1−kc1,ˇc1, . . . ,ˇcn)[(P1)n]

= 2nvol(Γ\Hn)χ((Ωn(P1)n)(1k))

= 2nvol(Γ\Hn)P(k−1) である. よって

定理 3.10 ΓをGのtorsion-freeな部分群とすると,k > 1のとき dimS2k(Γ) = (1)n

(

2nvol(Γ\Hn)(2k−1)n+∑

x

Tn(σ1,x, . . . , σn,x)[YΓ] )

. Siegelによれば, vol(Γ\Hn) = 2ζK(1)[G : Γ]であるから, 上の次元公式 とShimizuの次元公式のmain termは一致する. Shimizuの次元公式において, cusp xからのcontributionをwxと書くとw=∑

xwx. parabolic contribution を比較して

(1)n

x

Tn(σ1,x, . . . , σn,x)[YΓ] =∑

x

wx

となるが, 実際には各cusp xごとにcontributionは一致する (cf. 織田氏の論 説 [17]):

定理 3.11 (Ogata, Ishida) 各cusp xに対して

(1)nTn(σ1,x, . . . , σn,x)[YΓ] =wx.

次元公式の系として, Freitagの結果の特別な場合が得られる. 定理 3.12 dimS2k(Γ)をkの多項式とみなすと,定数項はχ(Γ).

証明. nが偶数のとき, k = 0を代入すると定理3.9よりχ(Γ)となる. nが 奇数のとき, w= (1)n

xTn(σ1,x, . . . , σn,x)[YΓ] = 0 より, k = 0を代入する

と2nvol(Γ\Hn) =χ(Γ)となる. □

定理 3.13 n= 2, k >1のとき, Hilbert modular群Gについて dimS2k(G) =

(2k−1 2

)2

vol(Γ\H2) +∑

τ

a(τ)γk(τ) +w

略証: Gのtorsion freeな正規部分群Γをとって, YΓ 上で有限群G/Γと V = Ω2 ⊗L(k1) に正則Lefschetz公式を用いる. (詳細についてはvan der

Geer [3]を参照されたい.) □

注意 3.3 n= 2の場合は, Hirzebruchによるコンパクト化を使ってboundary の部分にあるfixed point setからのcontribution を計算することができた. し かし, nが3以上になるとそのようなよいコンパクト化がないので, 単数群の Rn+への作用に関する基本領域を求めて, smoothコンパクト化を与えるように cone分割して, それを用いて計算することになる. (ただ, nが4以上の場合に は, 基本領域を求めてcone分割を与えることは難しいように思われる.)上の 定理のような公式を与えることは可能であるが,各Gごとに個別に計算しなけ ればいけない.

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