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第1章 アスベストに関する基礎知識

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技術資料

3-1 アスベストを巡る経過と最近の状況について

アスベストは、その化学的物理的特性から建築材料のほか様々な用途に用いられてきました。 中でも吹付けアスベストは、昭和40年頃からビル等の耐火建築材として使われ始め、昭和47、4 8年ごろに最も多く使われました。しかし、労働安全の面から昭和50年、アスベストの吹付けは原 則禁止されました。現在、これらの吹付けアスベストが使用された建築物が建て替えの時期を迎 えつつあり、建築物の解体によるアスベストの環境への飛散防止対策が課題となっています。ま た、吹付けアスベスト以外のアスベスト製品は、昨年(平成16年)10月まで製造、使用され私た ちの家庭や事務所、工場で用いられています。本章では、アスベストを巡る経過と健康被害、使 用されている製品等について紹介します。

3-1-1 アスベストとは

アスベストは、天然に産する鉱物繊維のことで、蛇紋岩(じゃもんがん)系のクリソタイルと角閃 石(かくせんせき)系のアモサイトなどがある。耐熱性、耐薬品性、絶縁性等の諸特性に優れてい るため、建設資材、電気製品、自動車、家庭用品等、3,000 種を超える利用形態があるといわれ ている。 しかしながら、主に欧米でアスベストの健康に対する危険性が指摘されて以来、わが国では、 まず、労働環境の問題として取り上げられ、そして昭和の終わりから平成にかけて、一般環境汚 染による一般住民の健康問題として顕在化した。 その後、平成7年にクロシドライト、アモサイトについて労働安全衛生法に基づき製造・輸入・ 譲渡・使用が禁止された。また、クリソタイルは、平成16年10月1日から一部の例外を除いて製 造・使用等が禁止された。角閃石系のアンソフィロライト、トレモライト、アクチノライトについてはま れにしか産出せず、他の石綿鉱床に不純物として含まれることがあるが、石綿原料として国内の 産業界では使用されていない。 (1) 定義 アスベストは、鉱物学上、工業上及び環境大気中という観点から、それぞれ以下に示すよ うに定義されている。 ① 鉱物学上の定義 天然に産する鉱物群のうちで、高い抗張力と柔軟性をもつ絹糸状で光沢があり、繊維状 の集合(asbestiform)をなすものの俗称である。 ② 工業上の定義 一般的には、繊維状の集合(asbestiform)をした鉱物を採掘、加工して得た工業原料をい う。 ③ 環境大気中の定義 微少な繊維又は繊維束の状態で浮遊するクリソタイル、アンソフィライト、アモサイト、トレモ ライト、アクチノライト及びクロシドライトをいう また、国際労働機関(ILO)並びに米国環境保護庁(EPA)等における定義では、図(3- 1-1)に分類される6種類を指すとされている。

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図(3-1-1) アスベストの分類(大気汚染物質レビューより) (2) 特性 アスベストが様々な工業製品に使用されている理由は、経済的には安価であること、及び それのもつ物質的特性によるもので、特に次の点が挙げられる。 ① 紡織繊維性 クリソタイルの単繊維は、最も細いクリソタイルで太さが約 0.02~0.03μm で、アスベスト繊 維のなかで最も細く、長さが約1~20μm の中空管状をなしている。また、アモサイト、クロシ ドライトは板状をなしている。 通常、アスベスト繊維は集合体をなしており、工学的に解綿できる最も細い繊維束の大きさ はおおよそ1~2μm であり、アスベスト以外の無機又は有機繊維に比べ著しく細い。 ② 耐熱性 クリソタイルでは、およそ 500℃まで安定であり、角閃石系のものはクリタイルより更に高温 で安定している。この耐熱性から、吹付け材等の建築資材及び他の工業資材に使用されるこ とになった。 ③ 抗張力 アスベストは、ピアノ線より強い引っ張り力を有している。また、しなやかさも有しているが、 特にクリソタイルのしなやかさが最も優れているとされている。 ④ 耐薬品性 耐酸性及び耐アルカリ性は、アスベスト繊維の種類によって異なるが、その中で、アンソフィ ライトが最も優れており、クリソタイルが最も劣っている。他はこれらの中間に位置するとされて いる。また、酸・アルカリ以外の薬品に対しても比較的抵抗力が強いとされている。 ⑤ 絶縁性、耐磨耗性、防音性 アスベストは一般に熱絶縁性に優れている。この特性及び小さい吸湿・吸水性から保温材 料として用いられている。 このほか、アスベストは通常の環境条件下では、半永久的に分解・変質せず、また地表に 沈降した場合、容易に再発じんするため、極めて長い間一般環境中に留まることが知られて いる。アスベストの物理化学的特性を表(3-1-2)に示す。

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表(3-1-2) アスベストの物理化学的特性 クリソタイル アンソフィライト アモサイト トレモライト アクチノライト クロシドライト 硬度 2.5-4.0 5.5-6.0 5.5-6.0 5.5 約 6 4 比重 2.4-2.6 2.85-3.1 3.1-3.25 2.9-3.2 3.0-3.2 3.2-3.3 比熱 0.266 0.210 0.193 0.212 0.217 0.201 抗張力(kg/㎡) 30,000 2,800 25,000 70-560 70 35,000 最大重量原温度 982℃ 982℃ 871-982℃ 982℃ --- 982℃ ろ過性能 遅い 中間速 速い 中間速 中間速 速い 電荷 陽 陰 陰 陰 陰 陰 溶解点 1521℃ 1468℃ 1399℃ 1316℃ 1393℃ 1193℃ 紡糸性 良好 不良 良 不良 不良 良 柔軟性 大 不良 良 不良 不良 良 耐熱性 良好 優秀 良好 良好 --- 良好 耐酸性 弱い 中 中 きわめて強い 強い 強い 耐アルカリ性 きわめて強い 強い 強い きわめて強い 強い 強い 分解温度(℃)注1 450~700 620~960 600~800 600~850 950~1040 400~600 注1:脱水反応を起こし、結晶構造が崩壊して強度を失う温度をいう。 (出典:大気中発がん物質のレビュー-石綿-S.55.3) (3) 使用量 わが国は、消費量のほとんどを輸入に頼っている。年間の輸入量は、1960 年代に急激に 増加し、1974 年の 35 万トンを最高に、1970 年代及び 1980 年代は 25 万トンから 35 万トンの 高水準で推移してきたが、1990 年代に入り年々減少していった。2003 年は2万5千トンであり、 前年の 43%減、ピーク時の 93%減と大幅に減少している。 日本への主な輸入元は、カナダ 54.1%、ジンバブエ 28.0%、ブラジル 13.0%である。図 (3-1-3)にアスベストの輸入量の推移を示す。 図(3-1-3) 石綿輸入量の推移(財務省貿易統計等)

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(4) 用途 アスベストは、強度を備えた微細な繊維構造を持つため、重さに比べて非常に大きな表面 積をもつという特性を活かし、石綿スレート、石綿けい酸カルシウム板、ビニールタイル等の 建築資材の繊維素材として使用されてきた。 石綿はその9割以上が建材製品に使用されており、押出成型セメント板、住宅屋根用化粧 スレート、繊維強化セメント板、窯業用サイディング、石綿セメント円筒に加工され、建築物の 壁材、屋根材、外装材、内装材等に使用されている。 建築材以外では、ジョイントシートやシール材に加工され、化学プラント等の配管や機器の ガスケット、漏洩防止用のグランドパッキンに広範に使用されているほか、耐熱・電気絶縁板 やエスカレーターのブレーキ等の産業用摩擦材等に使用されている。 また、自動車のブレーキ・ライニングやクラッチ・フェーシング等の摩擦材及び潤滑材の繊 維素材、並びに接着材、ペイント等の補填材に使われている。 さらに、アスベストは、断熱、絶縁性に優れ、酸、アルカリにも強いため、電線の被覆材、機 械、器具の断熱材、ガスケット、シーリング材、フィルター類や電解装置の中の隔膜などに利 用されてきた。図(3-1-4)に平成7年度のわが国における石綿製品の使用状況を示す。 アスベストの利用形態は、これらを含め、3,000 種以上あるといわれているが、平成8年度 のわが国におけるアスベストの用途別使用量は、輸入されたアスベストの約 93%が建築資材 の原料として、残りがその他の一般材料として使用されている。 図(3-1-4) わが国における石綿の使用状況(平成7年度) 出典:せきめんの素顔(日本石綿協会)

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3-1-2 健康影響

現在、アスベスト暴露に関連あるとして確認されている疾病は、石綿肺、肺がん、悪性中皮腫の 3疾患に加え、良性胸膜疾患として、胸膜炎、びまん性胸膜肥厚、円形無気肺(または無気肺性 偽腫瘍)及び胸膜プラークがある。これらはいずれも空気中に浮遊するアスベストを吸入すること により発生する。 図(3-1-5) 石綿によって起こされる病気とその部位 出典:せきめん読本 (1) 石綿肺 アスベストの健康影響として最も早くから注目されており、職業上アスベスト粉じんを通例 10 年以上吸入した労働者に起こるじん肺の一種である。吸入されたアスベストが細気管支や 肺胞に刺激を与え、炎症を起し、次第に終末肺気管支周辺や肺胞の線維化を来たし、肺機 能障害を起こす。これはアスベストの暴露が中止した後にも進行することが知られている。最 終的には肺線維症の進展の結果、呼吸不全で死亡する場合がある。 (2) 肺がん 1985 年に Lynch と Snith により、石綿肺に合併する肺がんの症例が報告され、その後多く の石綿肺合併肺がんが報告されたが、1955 年 Doll がイギリスの石綿紡績工場労働者を対象 にした疫学調査で、この工場に 20 年以上働く労働者の肺がん死亡率が、一般住民に比べて 13.7 倍も高いことを報告し、アスベストと肺がんとの因果関係を疫学的に明らかにした。 アスベスト暴露から肺がん発症には通例 15~40 年の潜伏期間がある。また、暴露量が多 い集団ほど肺がんの発生が多いという量-反応関係があることが確認されている。

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(3) 悪性中皮腫 胸膜、心膜、腹膜などの漿膜腔を覆う中皮表面及びその下層の組織から発生する極めて 予後不良な悪性腫瘍(がん)である。アスベスト暴露から 20~50 年の長い潜伏期間を経たの ち発症する。 悪性中皮腫の発生は、アスベストの種類によって差があることが知られており、クロシドライト が最も危険性が高く、アモサイトがこれに次ぎ、クリソタイルは前二者より低いとされている。 (4) 良性胸膜疾患 アスベストによる胸膜炎は比較的近年になってからその存在が認められた。他のアスベスト 関連疾患とは異なりアスベスト暴露開始より数年以内にも発生する。全く自覚症状がないまま 経過し、後に胸膜が癒着し、びまん性胸膜肥厚として健康診断時などの胸部X線検査で気付 づかれることが多い。中には、胸膜肥厚部分に隣接した末梢肺が部分的に虚脱を起こし、胸 部X線写真上、円形の腫瘤様陰影を呈することがあり、これを円形無気肺または円形無気性 偽腫瘍と呼んでいる。これらの3つの胸膜疾患は職業上アスベスト暴露を受けた場合に生じる 疾患である。 胸膜プラークは、通常アスベスト暴露より 20 年以上経過したのち、胸部X線検査で初めて 見つかることが多い。それ自体は肺の機能障害をもたらすことはないが、職業暴露よりも低い 濃度の暴露によって生じることが知られ、過去におけるアスベスト吸入の指標として意義が大 きい。

3-1-3 アスベストの環境濃度

昭和60年から実施している都内の一般環境大気中のアスベストモニタリング調査の結果は、 表(3-1-6)のとおりである。 この調査結果によると、都内の一般環境大気中のアスベスト濃度は、大気汚染防止法に定めら れたアスベストを取り扱う工場などの敷地境界線における規制基準(10 本/L以下)に比べ著し く低くなっている。 表(3-1-6) 一般環境(モニタリング測定点)のアスベスト濃度 単位:本/L S60 61 62 63 H1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 江東区 0.84 1.45 0.67 0.40 0.35 0.42 0.15 0.10 0.09 0.06 0.21 0.19 0.20 0.20 0.25 0.23 新宿区 0.85 1.11 0.59 0.33 0.23 0.24 0.21 0.07 0.05 0.04 0.20 0.16 0.19 0.20 0.20 0.22 多摩市 --- --- 0.28 0.47 0.44 0.24 0.13 0.13 0.05 0.04 0.20 0.18 0.18 0.18 0.23 0.21 (注) 測定地点 江東区:江東区新砂(都環境科学研究所) 新宿区:4年度まで…新宿区百人町(都衛生研究所) 5年度から…新宿区高田馬場(新宿福祉作業所) 多摩市:多摩市愛宕(多摩一般環境大気測定局)

3-1-4 建築物等におけるアスベストの使用実態

アスベスト含有製品には、多くの種類があり、輸入されたアスベストの 90%以上は建築資材とし て建築物等に使用されている。ここでは、建築物等に使用されているアスベスト含有建築材料を、 3種類に分類して説明する。 また、既に製造が中止されている石綿含有建築材料を表(3-1-7)に、平成16年10月1日 から製造等が禁止された石綿含有建築材料を表(3-1-8)にそれぞれ示す。

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(1) 吹付けアスベスト 建築物等の鉄骨材などの耐火被覆、機械室(ボイラー室)、空調機械室などの吸音、断熱 材として使用されている。 (ア) 吹付けアスベスト アスベストと結合材とを一定割合で水を加えて混合し、吹付け施工したものである。結合 材としては一般にセメントが使用されている。 ① 耐火被覆用 建築基準法の耐火要求に応じて使われる。使用場所は、3階建て以上の鉄骨造建築物 のはり、柱等である。この他にデッキプレート裏面への吹付けなどがある。 使用期間は、昭和38年頃から昭和50年初頭までである。 ② 吸音・断熱用 使用場所は、ビルの機械室、ボイラー室、地下駐車場等の天井、壁などである。ビル以 外の建造物(体育館、講堂、学校、工場等)では、天井、壁などに使用されている。 鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造の建物は、それ自体が耐火建築であるため、 これらの建物で吹付けアスベストが使用されるのは、ほとんどすべてが吸音用である。これら の構造の建物の中で人間が日常的に在室する部屋(例えば、学校の教室、実験室、体育 館等)では、コンクリート壁面に囲まれているために、残響時間が長く、会話がしにくいため に、吸音用の吹付けアスベストを行ったものである。各種吸音用内装材の使用と吹付けアス ベストの選択については、明確な仕分けの根拠はないようである。 また、鉄骨造建築物においては、人間が常時在室しない部屋(機械設備等が設置されて いることが多い)でも、内部の音を外部に漏らさないために吸音用の吹付けアスベストが行 われた。コンクリートは遮音効果が高いが、鉄骨造では機械室回りの壁を遮音性に劣るコン クリートブロックやALC板を使用するためである。吹付けアスベストの使用期間は、昭和31 年頃から昭和50年初頭までである。 (イ) 吹付けロックウール 吹付けアスベストのほかにこれとよく似た建材に吹付けロックウールがある。昭和50年に 吹付けアスベストが原則禁止となって以降は、吹付けロックウールに切り替わっているが、し ばらくの間は、アスベストを混ぜて使用されていた。 用途は、吹付けアスベストと同様に、耐火被覆用と吸音、断熱用であり、使用場所等も同 じとみてよい。 ① 耐火被覆用 吹付けロックウールにアスベストを混ぜて使用された期間は、昭和43年頃から昭和55年 頃までである。 ② 吸音、断熱用 吹付けロックウールにアスベストを混ぜて使用された期間は、昭和46年頃から昭和55年 頃までである。 (ウ) 吹付けバーミキュライト バーミキュライト(ひる石)にアスベストを混ぜて使用されている。用途及び使用方法は、 吹付けロックウールとほぼ同様である。 (2) アスベスト保温材

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アスベスト保温材には、(1)アスベストを含有する保温材と(2)アスベストを含有する耐火 被覆板(けい酸カルシウム板、石綿ロックウール板)がある。 (ア) アスベストを含有する保温材 石油精製や石油化学(エチレンプラント)などの施設に使われることがほとんどであり、建 築物では、ボイラーなど建築設備や空調設備のダクトなどの継目部分に使われている場合 が多い。使用方法は、主に工業施設の常温より高い温度の熱絶縁に使用される。 板状保温材及び筒状保温材は、各種プラントや船舶のボイラー、ダクト、煙風道及び配 管等の保温やその他の耐振性を要求される部分の保温に使われることが多い。缶、塔、槽 類の外壁または配管の定形部に施工する目的で作られており、ほとんどがそのままの形で スタッドボルトや針金等によって固定されている。 ひも状保温材は、各種プラントの曲管部や施工しにくい部分に巻き付けて使われたり、そ の他の保温材の継目に生じるすき間に詰め込んで使われている。 ふとん状保温材は、各種プラントのポンプ、バルブ、フランジ等の保守点検を必要とする 部分、異形部分、耐振性を要求される部分に被せ、その上から針金等を巻き付けて使われ る。 水練り保温材は、成形保温材の目地部分あるいは複雑な施工面の保温、又は外装を兼 ねた保温材に使用される。施工は、前もってけいそう土、パーライト、アスベスト等の耐熱軽 量粉末と無機バインダーを乾式混合し調製した粉状製品に、現場で水を加えて混練し、充 填や、鏝(こて)塗りして使用する。 ① 石綿保温材 アスベストを解綿して主材とし、適当な接着剤を加えて成形したものである。形状としては、 保温板、保温筒、保温ひも及び石綿ふとんがある。 ② けいそう土保温材 けいそう土乾燥粉末を主材として、これにアスベスト繊維を均一に配合した水練り保温材 である。アスベスト含有率は、1.5 %以上とされているが、石綿保温材と同様に現在ではノン アスベスト製品に転換している。 ③ 塩基性炭酸マグネシウム保温材 塩基性炭酸マグネシウムとアスベスト繊維を均等に配合したものである。水練り保温材、 保温板及び保温筒がある。アスベスト含有率は、8%以上とされている。 ④ けい酸カルシウム保温材 けいそう土等のけい酸質原料と石灰質原料を主材として、オートクレーブ処理したものに アスベスト等の補強繊維を加えたものである。補強繊維としては、かなり長期間にわたり、ア スベストが用いられてきたがノンアスベスト化が要求され、すでにアスベストを含まない製品 への転換が完了している。 ⑤ はっ水性パーライト保温材 パーライト接着剤及び無機質繊維を均等に配合し成形したものである。アスベスト含有率 は、1.5 %以上とされているが、すでにノンアスベスト製品に転換している。 ⑥ バーミキュライト保温材 バーミキュライト(ひる石)とアスベスト及び耐熱バインダーを配合し、水練り又はプレス成 形によって板状又は筒状にしたものである。 (イ) 耐火被覆板

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耐火被覆板は、(1)の吹付けアスベストと同様に鉄骨材等の耐火性能を確保するために 用いられている。 ① 繊維混入けい酸カルシウム板(略称けい酸カルシウム板) かつては、石綿けい酸カルシュウム耐火被覆板といわれ第1種と第2種がある。耐火被覆 用として鉄骨に張付けて使われる。 第1種は、けい酸質原料(けいそう土等)と無機質繊維を主成分としてウェットマシーンで 抄造し、オートクレーブ処理したものである。外壁(非耐力壁)及び耐火間仕切壁、遮音間 仕切壁等の内装材に使われている。 第2種は、けい酸質原料と石灰質原料に水を加えて、スラリーとし、オートクレーブ処理を 行い、生成したけい酸カルシュウムにアスベスト等の補強繊維を混入してプレス成形して作 る。 ② 石綿ロックウール板(略称ロックウール板、以前は石綿成形板) アスベストを主材として、これにポルトランドセメントを加えて、混練・成形したもので、混合 割合はアスベストが 50%以上である。主として、耐火被覆用として鉄骨に張り付けて使われ る。 (3) アスベスト成形板 アスベスト成形板には、平板(ボード)又は波板状のものがある。最も代表的なものが石綿 スレートである。構成原料の主体を占めるセメント及びアスベストが無機質系材料であるため、 防火性、耐水性等に優れた性能を持つことから、建物の外壁、屋根をはじめとして広い範囲 で使用されている。さらに、化粧を施したものや、軽量化したものなど、多くの石綿スレート関 連製品がある。 ① 石綿スレート セメント及びアスベストを主原料とし、若干の混和材料と適量の水を加え、抄造して板状に 成形した後、所定の含水率になるまで乾燥させたものである。一部にオートクレーブ処理した ものもある。形状を大別すると波板とボードがあり、さらに波板は小波、中波、大波、リブ波に 分かれる。ボードではフレキシブル板、軟質フレキシブル板、平板、軟質板に分かれる。 ② 石綿セメントパーライト板 石綿セメント板の軽量化を図るため、主原料にパーライト(重量比 20~25%)を加え、セメン ト及びアスベストとともに抄造成形したものである。かさ比重により、 0.8 石綿パーライト板と 1.0 石綿パーライト板に区別されている。主に、天井及び壁の下地材として使用されている。 ③ パルプセメント板 セメント、アスベスト等の無機質繊維材料、パルプ、パーライト及び無機質混合材を主原料 とし、抄造成形したものである。昭和20年代に、九州地区を中心に製造が開始され、その後 各地での生産も行われるようにはなったが、現在でも生産量の約 45%程度は九州地区で占 めている。軽量で加工性がよいこと、及び吸水性があることから、主として内壁、天井、軒天井 等の内装材に用いられている。 ④ 石綿セメントけい酸カルシウム板 石灰質原料(セメントも含む)、けい酸質原料、アスベストを主原料とし、抄造成形してオート クレーブ処理したものである。石綿セメント板に比べて軽量であること、及び寸法安定性に優 れていること等の特徴がある。内装下地材として使用されている。

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フレキシブル板、軟質フレキシブル板、平板等の表面に化粧を施したものである。 主に、内 外装仕上げ材として使用されている。 ⑥ 石綿セメントサイディング 材質から見ると、石綿セメント板系、石綿セメントけい酸カルシウム板系、スラグ石膏板系に 分けられる。形状からは、平板サイディング・波形サイディングに分かれる。化粧の有無からは、 普通サイディング、化粧サイディングに区別される。その用途は、住宅に限定されることなく、 公共建物、工場、倉庫等広く用いられる。 ⑦ 住宅屋根ふき用石綿スレート セメント及びアスベストを主原料とした屋根ふき材で、主に野地板下地の上に施工する住宅 用の石綿スレートである。基板となる石綿スレートの原料に着色材料を混入して板の全部又は 表層部を着色したものや、基板の表面に印刷、塗装、吹付け、焼付け、凹凸を付ける等の化 粧加工を行うものが多い。 ⑧ 化粧石綿セメントけい酸カルシウム板 石綿セメントけい酸カルシウム板を基板とし、その表面に印刷、化粧紙の張付け、吹付け塗 装等の化粧加工を施した板である。主として、内装仕上げ材として使われている。 ⑨ 合板補強石綿セメント板 石綿スレートのフレキシブル板と合板を接着した板である。石綿セメント板の耐水性、防火 性、及び合板の持つ可とう性、耐衝撃性、曲げ強度に優れた特性を兼ね備えた材料である。 主として住宅の外装用に使われている。フレキシブル板の種類により、普通板と化粧板がある。 ⑩ 石綿スレート・木毛セメント板 木毛セメント板を芯にして、その両面又は片面に石綿スレートのフレキシブル板を接着した 板である。主として外壁材、屋根下地材、間仕切材として使われている。フレキシブル板の種 類により、普通板と化粧板がある。 ⑪ スラグ・石膏板セメント板 スラグ、石膏等を主結合材とし、アスベスト・ガラス繊維等を補強材として抄造成形したもの である。高炉スラグ・排煙脱硫石膏等を主原料とし、資源の有効利用を図る点で注目されるも のといえる。結合材の配合割合等により、比重が 0.7 ~1.7 程度のものまで製造できるが、JIS では 0.8 板、 1.0 板、 1.4 板の3段階に区分されている。このうち、軽質・中質板は内装用とし て使用されることが多い。 1.4 板は防水処理を施すことで外装材としても使用される。 ⑫ 吸音あなあき石綿セメント板 フレキシブル板・軟質板に穴あけ加工したものである。 ⑬ 押出成形セメント板 アスベスト、セメント等を主原料として、水を加えて混練し、押出成形機によって製造するも のである。自由で複雑な中空断面で、厚さが 10~100mm 程度の板材である。アスベスト含有 率は、15%程度といわれている。 ⑭ ビニル床タイル 塩化ビニル樹脂に、アスベスト・炭酸カルシウム等の充填材を配合して成形されたものであ る。一般事務室・店舗等の床に広く使われている。アスベスト含有率は5~20%程度といわれ ているが、昭和61年から製造中止となり、ノンアスベスト製品が主流となってきている。

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表(3ー1-7) 既に製造中止の石綿含有建材 石綿含有建築材料(製造中止年) 石綿の種類 用 途 吹付け石綿 (昭和 50 年) クリソタイル アモサイト クロシドライト 石綿含有吹付けロックウール (昭和 55 年) (注) クリソタイル アモサイト クロシドライト ◇吸音、断熱材:ビル、学校、工場、ボイ ラー室などの天井 ◇鉄骨耐火被覆用:鉄骨造(S造のビ ル)、工場などの鉄骨部分 ◇結露防止用:温泉の風呂場などの天 井など 石綿含有耐火被覆板 (昭和 55 年) クリソタイル アモサイト ◇耐火被覆用:鉄骨造(S造)のビルの 柱・梁 石綿けい酸カルシウム板第二種 (平成元年) クリソタイル アモサイト ◇耐火被覆用:鉄骨造(S造)のビルの 柱・梁 石綿けい酸カルシウム板第一種 (平成5年) クリソタイル アモサイト ◇ビル、住宅の内装、天井、ビルの耐火 間仕切 ビニル床タイル (昭和 61 年) クリソタイル アモサイト (注):石綿を1重量%超えているものを含む 資料:せきめん NO.654(日本石綿協会) 表(3-1-8) 平成16年10月1日から製造等が禁止された石綿含有製品 種 類 製 法 等 用 途 石綿セメント 石綿及びセメントを主原料として製造さ れる円筒 主に煙突。地下埋没ケーブル保 護管、臭気抜き、温泉の送湯管、 排水管等 押出成形セメント板 セメント、けい酸質原料及び繊維質材料 を主原料として高温・高圧化で空洞を持 つ板状に押出成形し、硬化させたもの 主に建築物の非耐力外壁又は間 仕切壁等 住宅屋根用化粧スレー ト セメント、けい酸質原料、混和材を主原 料として加圧成形されたもの 主に屋根材に張られた板の上に 葺く化粧版 繊維強化セメント板 セメント、石灰質原料、パーライト、けい 酸質原料、スラグ及び石膏を主原料と し、繊維等を加え成形させたもの 主に工場等の建築物の屋根や外 壁 窯業用サイディング セメント質原料及び繊維質原料を主原料 とし、板状に成形し、硬化させたもの 主に建築物の外装 参考資料:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署パンフレット

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