• 検索結果がありません。

在宅療養高齢者における尿路感染予防に関する研究 - 膀胱留置カテーテル留置による尿路感染症を予防するためのケアプロトコール 年 要約 千葉大学大学院看護研究科博士後期課程印田宏子 I. 緒言尿道留置カテーテルの使用は尿路感染症のリスクであり 急性期施設では医療関連感染症の尿路感染症 (C

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "在宅療養高齢者における尿路感染予防に関する研究 - 膀胱留置カテーテル留置による尿路感染症を予防するためのケアプロトコール 年 要約 千葉大学大学院看護研究科博士後期課程印田宏子 I. 緒言尿道留置カテーテルの使用は尿路感染症のリスクであり 急性期施設では医療関連感染症の尿路感染症 (C"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

在宅療養高齢者における尿路感染予防に関する研究 -膀胱留置カテーテル留置による尿路感染症を予防するためのケアプロトコール- 2017 年 【要約】 千葉大学大学院看護研究科博士後期課程 印田 宏子 I. 緒言 尿道留置カテーテルの使用は尿路感染症のリスクであり、急性期施設では医療関連感 染症の尿路感染症(Catheter associated urinary tract infection, CAUTI)の 80%が 尿道留置カテーテルに関連していたと報告されている。特に尿道留置カテーテルの留置 を長期に継続する場合、重大な合併症の発生に至ることがある。田中らは寝たきりや運 動量の少ない高齢者が、尿道留置カテーテルを長期に留置すると膀胱内の尿に浮遊物が 増加し、細菌尿や膀胱結石をきたした結果、カテーテル閉塞がおこり、細菌尿の膀胱内 貯留が急性腎盂腎炎を引き起こす場合があると述べている。 医療施設においては、尿道留置カテーテル留置中の患者には CDC の「カテーテル関連 尿路感染予防のためのガイドライン」に示されている留置適応(尿路の閉鎖がある場 合、神経因性の尿閉がある場合、泌尿器・生殖器疾患の術後に治癒を促進する場合、重 症患者の尿量を正確に把握したい場合)に照らして留置の必要性についてアセスメント し、早期抜去を実施している。さらに、排尿自立への介入・指導を目的に平成 28 年度 の診療報酬改定で策定された排尿自立指導料は、医療施設におけるカテーテル抜去の取 り組みを後押しするものとなっている。 在宅の高齢者においても、介護施設と同様に尿道留置カテーテル留置の必要性につい てアセスメントを行い、不要なカテーテルを抜去し、尿路感染を予防することが必要で あると考えられるが、施設に比べるとその取り組みは遅れていると思われる。2010 年の 盛次らの報告によると、在宅療養者の排尿管理で中心的な役割を担う訪問看護師の 20% はカテーテルの抜去について検討を行っていなかったと述べている。また、後藤らは、 カテーテル留置者の 61%が専門医による留置適応についての判断を受けていなかったと 報告している。これらの報告からうかがえるように、在宅では経過が長時間にわたりカ テーテル留置の理由が不明確になっていたり、膀胱機能の評価がなされてないため、抜 去についての検討が行われていないケースがあると推測される。医療施設や介護施設の ように 24 時間医療者やスタッフが常駐している施設と違い、在宅ではカテーテル留置 の適応外であっても介護負担の軽減といった社会的理由によって留置が継続されたりし ている場合もある。 高齢者介護施設においては、不必要な尿道留置カテーテルをできるだけ抜去する取り 組みとして、日本老年看護学会が高齢者介護施設における尿道留置カテーテル抜去に向

(2)

けたケアプロトコールを作成した。ケアプロトコールは、アセスメントの視点、その結 果に基づくケアの選択を一連の手順書として定めたものであり、ケアの標準化を可能に するものである。高齢者介護施設と同様に、在宅においても、在宅の状況を考慮したケ アプロトコールを作成することが、不必要な尿道留置カテーテルの抜去を促すことにつ ながると考えられる。 一方、安全に尿道留置カテーテルの抜去を実施・継続するためには、膀胱機能の評 価、さらに抜去後の継続的な残尿量のチェックや尿路感染兆候の観察ができることが不 可欠である。しかし、医療者や資源の整った医療施設とは異なり、在宅では訪問看護で 対応できる範囲が限られているため、介護者が訪問看護師の指導のもとに抜去後の観察 や排尿管理が行なえるか、また行えない場合は尿路感染の発生に注意しながら留置を継 続する場合もあることを考慮しなくてはならない。 以上より、在宅で尿道留置カテーテルを使用している高齢者を対象とする場合には、 どのような状況であればカテーテルの抜去を試みることが可能なのかを明らかにし、家 族の介護力などの理由から留置を継続する場合のカテーテルの管理や感染予防策につい ての手順も含めたプロトコールを作成する必要がある。そこで、本研究では訪問看護師 が主に使用することを想定し、カテーテルの継続留置もあることを考慮した在宅におい て実施可能な尿道留置カテーテル抜去のためのケアプロトコール作成し、その実施可能 性・有用性を評価することを目的に実施した。 II. 研究目的 本研究は、膀胱留置カテーテルによる合併症のうち、最も在宅療養者に対して重篤な 影響を及ぼすものとして、カテーテルの留置による尿路感染の防止に注目し、先行研究 プロトコールを基に、訪問看護師が在宅の留置療養者における尿路感染症の防止に活用 できる「在宅において膀胱留置カテーテル留置による尿路感染症を予防するためのケア プロトコール」を作成し、その有用性を評価することを目的とする。在宅では社会的な 理由により膀胱留置カテーテルを抜去できないケースが存在することを想定し、膀胱留 置カテーテルの抜去だけでなく、カテーテルの留置から抜去出来なかった場合も尿路感 染を予防できるような排尿管理ケアの改善の手順を含むケアプロトコールとする。 III.研究方法 本研究は、ケアプロトコール試案の作成に必要な情報を収集することを目的とした研 究Ⅰ、研究Ⅰに基づいてケアプロトコールの試案の作成と修正を行う研究Ⅱ、研究Ⅱで 作成したプロトコールを実際に適用し、その有用性を評価する研究Ⅲから構成される。 研究Ⅰはさらに以下の 3 つの研究から構成される。研究Ⅰ‐3訪問看護師、利用者、 家族介護者への半構造化面接と在宅ケアの排尿ケア状況の参加観察を実施し、在宅ケア で先行研究プロトコールの実用性や問題点を半構造化面接で明らかにする。研究Ⅰ‐2

(3)

では先行研究を踏まえ在宅ケアにおける抜去の取り組み、カテーテル管理や尿路感染に 関連する排尿ケアの実施状況を把握のため質問紙調査を実施する。研究Ⅰ-3では同意 の得られた在宅の膀胱留置カテーテル挿入者から尿を採取し膀胱留置カテーテル留置尿 の細菌数、検出細菌の状況から在宅における膀胱留置カテーテルの尿路感染症に対する リスクを細菌学的に評価する。 次に研究Ⅱとして、研究Ⅰの結果より明確になった在宅ケアの問題点や課題などを参 考に先行研究プロトコールを修正し、カテーテル留置継続における排泄ケア方法を追加 した「在宅ケアにおける膀胱留置カテーテルによる尿路感染症を予防するためにケアプ ロトコール」試案を作成し、排泄ケアの専門家訪問看護師から妥当性、実施可能性等に ついて意見・コメントを参考にこれを修正し、実際に在宅で膀胱留置カテーテルを挿入 している高齢療養者に適応するケアプロトコールの最終案を完成させる。 研究Ⅲは、2つの研究から構成され、研究Ⅲ-1では紙面による「在宅ケアにおける 膀胱留置カテーテルによる尿路感染症を予防するためにケアプロトコール」を訪問看護 師と研究者とで実際の症例に照らし合わせて紙面上で展開し、実際の対象者に適応でき るようトレーニングを行う対象症例を選定し、模擬展開する。研究Ⅲ-2では、「在宅 ケアにおける膀胱留置カテーテルによる尿路感染症を予防するためにケアプロトコー ル」を実際に適応し、膀胱留置カテーテルが抜去可能であれば抜去し、抜去した場合に は、抜去後に定期的な排尿機能評価と尿路感染兆候・尿検査(蛋白・潜血党)・尿中細 菌のモニタリングを行うまたカテーテル留置が継続となった場合プロトコールに則って カテーテルの管理や排泄ケア方法の改善策を実施し、その後定期的な排尿機能評価と尿 路感染兆候・尿検査(蛋白・潜血等)・尿中細菌のモニタリングを行う。 研究Ⅲ-2 の結果から最終的に「在宅ケアにおける膀胱留置カテーテルによる尿路感染 症を予防するためのケアプロトコール」が尿路感染症の予防に有用であったかについて 評価する。 IV. 倫理的配慮 本研究は、千葉大学大学院看護学研究科倫理審委員会の承認を得て実施した。 (研究Ⅰ 承認番号 24-35,研究Ⅱ 承認番号 25-79,研究Ⅲ 承認番号 27-4) 研究対象者は、ネットワークサンプリングで抽出した訪問看護ステーションに研究協 力依頼し、研究の賛同をえられる訪問看護利用者には事前に研究目的、依頼内容、以下 の倫理的配慮について説明し、同意を得た者を研究対象者とした。 1. 自由意思での参加であり、参加拒否・途中辞退が保証されていること、及び それによる不利益が生じない。 2. プライバシーは厳重に保護し、研究データはすべて番号化して統計処理をお こなう。 3. データ管理はカギのかかる部屋に保管する。

(4)

4. データは研究目的以外に利用しない。学会・研究会等で発表を行うが個人が 特定されないように配慮する。 V. 研究1 既存のケアプロトコールを在宅で適用する場合の実用性の検討と修正点の 抽出 既 存 のケ アプ ロト コール を 在宅 で適 用す る場合 の 実用 性の 検討 と修正 点 の抽 出 1) 在宅のカテーテル留置利用者と家族介護者、訪問看護師への半構造化面接・参加観 察・尿の細菌学的評価から、既存のケアプロトコールに追加すべき項目や修正点を抽 出した。 2) 訪問看護ステーションの留置利用者を対象に質問紙調査を行い、さらにケアプロト コールに含めるべき内容について抽出・確認した。 研究Ⅰの結果、在宅ではカテーテル抜去の可否は利用者・介護者の意向も含めた包括的 アセスメントに基づいて判断すべきこと、留置を継続せざるを得ない場合が多く、尿路感 染のリスクが高いことから、カテーテル管理・尿路感染防止のための具体的ケアを加える ことなどの必要性が示された。 VI. 研究2 ケアプロトコール試案の作成と修正 研究Ⅰに基づいて既存のケアプロトコールを元に試案を作成し、泌尿器科医等の専門 家に評価を依頼した。その結果、アセスメントに必要な情報収集の煩雑さや抜去の判断 に対する疑念、抜去時の調整の必要性などの指摘があり、これに基づいて試案を修正し た。 VII.研究3 ケアプロトコールの実施可能性と有用性の評価 作成したケアプロトコールを留置者利用者 5 名のケア担当訪問看護師と紙面上で展開 し、2 名について実際にケアプロトコールを適用した。留置利用者はいずれも留置継続と 判断され、プロトコールに基づいたカテーテル管理・排尿ケアを実践してもらった。尿 の細菌学的調査と訪問看護師へのインタビューからプロトコールの効果を評価した。紙 面展開では訪問看護師と研究者の評価はいずれも一致し、抜去に向けて取り組むべき課 題が明確になった。適応 2 週間の間に尿路感染の兆候は観察されなかったが、細菌学的 な改善はみられなかった。留置利用者は訪問看護以外の介護サービスも受けており、プ ロトコールに基づいたケアを他職種と共有する必要性が示された。 VIII. 総合考察 在宅におけるカテーテルの留置利用者にケアプロトコールを活用することは絶対的適 応以外の留置をできるだけ抜去に導く、また継続留置後も根拠に基づいたケアを行なう ことによって尿路感染症を予防するためには有用である。今回の研究を行うことで、訪

(5)

問看護師が利用者の膀胱留置カテーテル適応を包括的にアセスメントする機会となり、 この点からもケアプロトコールの作成は意義があると考えられた。 2025 年に向けて、日本は医療施設から在宅への移管をめざし、地域医療構想等に係る 医療法も規定され、医療としては地域における病床の機能の分化及び連携を推進するた め地域医療構想の確立、地域でのケアとしは地域包括ケアシステムの構築を高齢者の尊 厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい 暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供 体制を推進されている。以上から、在宅医療のニーズが高まり、在宅でも膀胱留置カテ ーテル留置利用者が増加する可能性がある。在宅でも不要な膀胱留置カテーテルは抜去 し、留置の継続が必要な場合には訪問看護師を中心に根拠あるカテーテル管理・排泄ケ アを行なっていく必要がある。本ケアプロトコールの適応によって、特に留置を継続す る場合に尿路感染症のリスクとなるカテーテル管理や排尿ケアがないかを見直し、修正 していくことができたことは、膀胱留置カテーテル留置という尿路感染の潜在的リスク を有する留置利用者の尿路感染症のリスクを軽減するため看護実践に対して示唆を示し たといえる。 また、訪問看護師にとってはケアプロトコールが抜去の可否を含めて、留置利用者の カテーテル管理・排尿ケアについてアセスメントすることの重要性を認識する機会とな り、この点についても本研究の看護学的意義が存在すると考えた。 IX. 引用文献 1) 本郷 利憲,広重 力,豊田 順一,小澤 瀞司,福田 康一郎,本間 研一,大森 治紀,大橋 俊夫: 標準生理学 , 医学書院, 2005.

2) Cravens D. D. Dd: Urinary catheter management. American family physician, 61(2):369-376, 2000.

3) 日本老年看護学会編: 安全かつ効果的な膀胱留置カテーテル抜去のためのケア

プロトコールの試行および改訂版作成. 2009.

4) 2009 CAUTI guidelines - CAUTIguideline2009final.pdf,

http://www.cdc.gov/hicpac/pdf/CAUTI/CAUTIguideline2009final.pdf 5) 大島 伸一: 高齢者排尿管理マニュアル. 尿失禁・排尿困難:35, 2001.

6) 岡村 菊夫,後藤百万,三浦久幸: 高齢者尿失禁ガイドライン. 2001.

7) McMurdo M. E.,Davey P. G.,Elder M. A.,Miller R. M.,Old D. C.,Malek M.: A cost-effectiveness study of the management of intractable

urinary incontinence by urinary catheterisation or incontinence pads. Journal of epidemiology and community health, 46(3):222-226, 1992.

8) 老年泌尿器科学会: 高齢者排尿障害マニュアル, メディカルレビュー社,

(6)

9) Warren J. W. Jw: Catheter-associated bacteriuria. Clinics in geriatric medicine, 8(4):805-819, 1992.

10) Warren J. W. Jw: Long-term urethral catheterization increases risk of chronic pyelonephritis and renal inflammation. Journal of the American Geriatrics Society (JAGS), 42(12):1286-1290, 1994.

11) 後藤 百万,吉川 羊子,服部 良平,小野 佳成,大島 伸一: 被在宅看護高齢 者における排尿管理の実態調査. 泌尿器科紀要, 48(11):653-658, 2002. 12) 盛次 信也,斎藤 浩司: 在宅ケアにおける尿道留置カテーテルの取り扱いと 尿路感染症について.公益財団法人,在宅医療助成 勇美記念財団,2010 年度前記 (一般公募)研究完了報告書. 2011. 13) 後藤 百万: 老人施設における高齢者排尿管理に関する実態と今後の戦略 ア ンケート及び訪問聴き取り調査. 日本神経因性膀胱学会誌, 12(2):207-222, 2001. 14) 石垣 和子監修 中島 紀恵子,酒井 郁子,北川 公子,佐藤 和佳子,伴 由美子: 【高齢者の生活機能再獲得のためのケアプロトコール】第 5 章自然 な排尿を取り戻すためのケア, 2010. 15) 田中 純子,伊藤 美香,服部 一紀,杉村 享之,後藤 百万: 繰り返す尿道留 置カテーテル閉塞例に対する間欠式バルーンカテーテルを用いた排尿管理の経 験. 日本排尿機能学会誌, 22(2):270-276, 2011. 16) 前田 修子,滝内 隆子,小松 妙子,河野 由美子,久司: 一葉 長期膀胱 留置カテーテル管理における訪問看護師の困難経験. 日本在宅ケア学会誌, 16(1):68-75, 2012. 17) 田中 純子,伊藤 美香,服部 一紀,杉村 享之,後藤 百万: 繰り返す尿道留 置カテーテル閉塞例に対する間欠式バルーンカテーテルを用いた排尿管理の経 験. 日本排尿機能学会誌, 22(2):270-276, 2011.12. 18) 松本 哲朗: 泌尿器科領域における感染制御ガイドライン. 日本泌尿器科学会 雑誌, 100(4):np1-,np2,1-27, 2009. 19) 田中 久美子,竹田 恵子,陶山 啓子,小林 春男: 在宅要介護高齢者にお ける排尿管理の実態 訪問看護ステーションと居宅介護支援事業所を対象とし た質問紙調 20) 盛次 浩司: 高齢者施設および在宅医療ケアにおける尿道留置カテーテルの取 扱の現状と課題. 日本環境感染学会誌, 32(1):34-41, 2017. 21) 吉川 洋子: 高齢者に対する膀胱留置カテーテル抜去後の排尿管理 超音波膀 胱内尿量測定の有効性. 島根県立大学出雲キャンパス紀要, 7:53-58, 2012.

参照

関連したドキュメント

学生部と保健管理センターは,1月13日に,医療技術短 期大学部 (鶴間) で本年も,エイズとその感染予防に関す

私はその様なことは初耳であるし,すでに昨年度入学の時,夜尿症に入用の持物を用

参考 日本環境感染学会:医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第 2 版改訂版

〇新 新型 型コ コロ ロナ ナウ ウイ イル ルス ス感 感染 染症 症の の流 流行 行が が結 結核 核診 診療 療に に与 与え える る影 影響 響に

宮崎県立宮崎病院 内科(感染症内科・感染管理科)山中 篤志

・Mozaffari E, et al.  Remdesivir treatment in hospitalized patients with COVID-19: a comparative analysis of in- hospital all-cause mortality in a large multi-center

地域の感染状況等に応じて、知事の判断により、 「入場をする者の 整理等」 「入場をする者に対するマスクの着用の周知」