• 検索結果がありません。

走査型電子顕微鏡によるカキ富有の果面の微細構造-香川大学学術情報リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "走査型電子顕微鏡によるカキ富有の果面の微細構造-香川大学学術情報リポジトリ"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

香川大学農学部学術報告 第29巻第62号219∼223,1978 219

走査型電子顕微鏡によるカキ富有の果面の微細構造

中 條 利 明,葦 澤 正 義

ULTRASTRUCTURE OF FRUIT SURFACE OF KAKI(LWOSPYROS

jこ4月了LINN.f.)OBSERVED BY A SCANNING

ELECTRON MICROSCOPE

ToshiakiCHUJO and MasayoshiAsHIZAWA

The ultrastructure of the surface of ripened kakifruits cultivar・Fuyu,WaS eXamined by

SCannlng electron microscopy.On the waxy surface of normalfruits color・ed to orange red,

many thin wax−1eaflets and cracks reachingtO epidermalor subepidermalce11s were observed.

In the fruit surface with figureslike tortoise・Shellwhich are often seenin dry summer,the

Shallow crackspatteIned witha regular ellipse−Shape of70−100pinlongituidinal1ength were

formedin cuticularlayer.Inlocaldark spots for’medin a dottedline on the fruit surface,

many deepcracks reaching to epidermalor subepidermalcells and darkspotsincuticularlayer

WereObserved.In darkly−COlored area whose boundarylineis not clear,deep cracks,WaVy

and darkly−Stained cuticle were recognized.

The formation ofthe deepcracksincuticularlayercouldbetheprimarycaus寧Ofthedarkly

colored spots formed on the surface of kakifruits.

カキ富有種の成熟果の果面の微細構造を走査型電子顕微鏡で観察した. 朱橙色に着色して,果粉で覆われて,外見上傷害のない正常な果面にはうすいキクの葉状の果粉とクチクラ層,表皮 細胞または亜表皮細胞に.まで達したき裂が多くみられた. 夏季紅乾燥した年によくみられる小さい亀の甲模様の果面はクチ・クヲ層に長径70−100′‘の楕円形の規則制のある浅い ひび割れがみられた. 果皮の局部が破線状に.黒変した果面は多数の表皮細胞またほ亜表皮細胞に達した深いき裂とクチクラの黒変した斑点 がみられた. 果皮の黒変部の境界が不鮮明な果面は深いき裂とクチクラのうねりおよび黒変した斑点がみられた・ 果皮の部分的な黒変はクチクラの深いき裂が一次的原因であろう・ 緒 和歌山県で栽培される富有で1958年頃から果皮の一部分が黒変する現象を汚染として山下ら(9)によって発表されて 以来,同症状がカキの主産県の各地で発生して−果実の商品価値をいちじるしく低下させる問題を生じている・この症状

を汚染果または汚損果と呼び,富有(1・2)ぉよび平核無(8)についての報告があり,北川(3)ぉよび浜地らく1)紅よって

汚染の類別がなされている.汚染果,すなわち,果皮の部分的な黒変現象の発生原因は,果面のクチクヲのひび割れ (12,8,5)が一次的で,ついで,カキ園の環境条件とくに園内の高湿度および農薬の散布との関係が認められている・ しかし,一次的原因である果面のクチクヲのひび割れは光学顕微鏡の分解能からして十分紅理解し得ない状況である・

(2)

香川大学農学部学術報告 中 低 利 明,葦 渾 正 義 220 一方,樽谷ら(6)は果面をトルイジンブルー液紅浸して,ひび割れ部位を認め,細裂傷と呼んでいる・ 本報は光学顕微鏡に厳ぺて分解能および焦点深度の優れる走査型電子顕微鏡を用ぃて.−,カキの成熟果の果面の微細構 造を観察し,果粉の形状と果皮のき裂についてニ,三の知見を得たのでそ・の結果を述べる・ 材料および方泣 1970年11月11日および18日に香川県三豊郡財田町財田の富有の成木園および本学部構内の実験開場に栽植の富有から 成熟果を採取して試料とした. 採取した果実は,朱橙色に着色して果面に果粉が附著していて外観上はまったく傷害のない正偏果,果面に微細な亀 の甲状の模様のあるもの,および局部的に破線状または雲形状の黒変したものに分類した・前の2者の材料は果面に・附 著していると思われる微細な塵填をそのままとして,後2者はそれを除去するためにエ・−テルを浸した綿棒で軽く丁寧 にふいたのち,それぞれの果実から目的とす部位の約5×5mmの面積の果皮をうすく剥ぎとり,直ちにアルミ製試料 台に木工用ボンドで接着し,接着剤が透明になるまでまって,IB−1型イオンクリ−ナ■−を用いてAuPdを蒸着し てニ,明石MSM−4S型走査型電子顕微鏡を用いて−,加速電圧10KV,100倍から5000倍までの倍率で表皮の微細構造を 観察した. 結果および考察 果面を覆っている白い果粉は図1,3のとおり,比較的密に覆われてこいる部分と局部的に粗い部分(矢印)が認められ た..さらに.,拡大してみると図2のとおり,薄いキクの葉状の形態のWax状果粉がクチクラ層から密生している・果粉 を溶解してクチ・クヲの表層を観察する目的で,有機溶剤の石油嘉一テル,・エチ−ルエ−テル,アセトン,ベンゼン,ク ロロホルム,メタノ−ル,およびユタノ−ルを滴下して溶解を試みたが不溶であったt・また,1N HCl,および2,3の 洗剤にも不溶であった.しかし,1N NaOHにほわずかに溶けるようであった・ 果面のⅥrax状果粉は乳剤を散布すると除かれて異常な光沢を生じるため,ブドウ,カキなどの成熟期には散布しな い.また,果粉の多く附著している果実ほど市場で好まれる傾向が強く,果実の収穫に・際して非常に丁寧に果実を扱っ ている.しかし,選果,荷造りの能率化のため,実際の大規模な共同選果場ではさはど重要視してない・ 果皮が朱橙色紅着色して果粉で覆われていて外観上ほまったく傷害のない正常果の果面は図3,4のとおり,クチク ラを貫通して儀皮細胞またほ亜表皮細胞にまで達する深いき裂が多数に認められた・き裂は果実の基部一個部に沿った 縦経方向に生じており,その巾は表皮細胞の1列であり,2′、・ノ3列に及ぶのははとんど認められなかった・ このき裂は樽谷(6)の細裂傷と同じであるがその深さはクチクヲにとどまらず,明らか紅表皮細胞または亜表皮細胞 にまで達している.き裂の発生は果実の肥大にともなう果実容税の増大と表皮のクチクヲの伸展および表皮細胞の分裂 と容横の増大との間に.不均衡を生ずるためと考えられる・また,外見上まったく無傷の正常果でみられることから多数 の果実でき裂を生じしているものと推察できる.また,富有以外の品種碇も発生すると考えられる・カキ果実には気孔 が無いくア)ので,き裂を通じて発育中および収穫後の渋カキの脱渋処理中紅おけるガス交換の場の機能を果し得る可能 性も考えられ,脱浜中の果皮の黒変現象の原因として推察(4)されていることも十分紅理解できる. 果皮の微細な亀の甲状の模様ほ夏季紅長期間にわたって乾燥した場合に・みられる徴侯である・図5,6のとおり,ク チクラに長径70一・100/ムの楕円形の規則制をもった微細な浅いひび割れが無数紅みられた・そ・の巾は1〝以内で,深さは クチクヲに.とどまっている“実際に・は果実の商品価値を抗うこともなく,また,汚染果としての黒変もみられないの で,正常果として扱われてし、て問題になっていない・ 破線状の黒変を生じている果面は図7,8のとおり,先述のき裂と同じく果実の縦径方向に沿った深いき裂が多数認 められるとともに.クチクヲの黒変した斑点がみられた・黒変異のき裂は正常果のき裂に此較して,き裂の発生から相当 の日時が経過しているためか,その内部構造が不鮮明となり表皮細胞の崩壊がみられたり,いまだ明確に・認められるも のもみられた.クチクヲの黒点の周辺部ほ黒変が一層明瞭であり,中心部はやや陥没している.この黒変部は果皮のポ リプェノ−ルの変色紅起因すると考えられるがこの点は今後,明らかに・したい・また,図8のき裂の周辺部でクチ・クラ の一部が薄く剥離して:いるのほエ−デルを浸した綿棒で果面の塵填を除いた操作の影響と思われるので,果皮の超音波

(3)

カキ果の果面の微細構造 221

貨29巻籍62号(1978)

図1,2.果面のうすいキクの袋状の果粉 矢印は果粉の密度の低い部分 図3,4..外見上無傷の正常果の果面のき製

(4)

中 條 利 明,葦 渾 正 義 香川大学農学部学術報告 222 図7,8.破線状黒変部の果面の破線状のき裂とクチクヲの黒変部 図9,10..雲形状黒変部の果面のき裂とクチプラのうねりおよび異変部 洗源ならびに固定操作を行ない比較検討を要すると考えている. 雲形状の黒変を生じている果面ほ図9,10のとおり,多数の深いき裂とクチクラの黒変がみられ,本質的にほ先述の 破線状の黒変と同じである.クチクラの異変部を拡大するとうねりのある構造がいちしるしい 黒変部のき裂の観察は浜地ら(1−2),北川(3)ぉよび栗原ら(5)がすでに光学顕微鏡でなされて−おり,いずれも,クチ クラ屑にとどまっていて表皮細肥または亜表皮細胞に.達してないと報告して−いるが,走査電顕による観察で明らかに後 2層に.達している. 果皮の黒変の原因には,き裂が一次的であり,ついで,表皮細胞および盛衰皮細胞の酸化,き裂部からの雨水,夜眉 および希薄化された農薬の診透が二次的におこると推察される. 今後はき裂の発生時期を果実の肥大の様相との関連で把握するとともに果皮の黒変の機作と要因の影響を究明する必 要があろう 引 用 文 献 (1)浜地文雄,恒遠正彦,森田彰:カキの汚損果の発 生原因と対策〔2:〕,農及園,4g,653−655(1974). 生原因と対策〔1■〕,農及園,49,533−536(1974). (3)北川博敏:カキの栽培と利用,p.141−143,東 (2)浜地文雄,恒遠正彦,森田彰:カキの汚扱果の発 京,養貿堂(1970).

(5)

第29巻欝62号(1978) カキ果の果面の微細構造 223 (4)北川博敏:カキの栽培と利用,p.219・−222,兼 京,養賢堂(1970). (5)栗原昭夫,山根弘康,岸光夫,永田賢嗣:カキ汚 染紅関する研究,昭和47年度果樹試験場安芸津支 場試験研究年報,11−14(1973). (6)樽谷隆之,北川博敏,福田和彦:カキ果実の利用 に関する研究Ⅶ.果面の傷が果実の貯蔵性に及 ぼす影響,香川大農学報,21,34−39(1970)・ (7)渡部俊三:果樹,果菜類における果面障害発生機 構に関する研究Ⅰ.主要果樹に・おける果皮の組 織学的観察, 山形大紀要(農学),5,21−48 (1967). (8)渡部俊三:果樹,果菜類における巣南障害発生機 構に.関する研究 Ⅳ.カキ(平核無)の果面汚損 についで,山形農林学会報,30,62−69(1973)・ (9)山下忠男,上野晴久,石崎政彦:カキ(富有)果 実の汚染現象紅ついて,園芸学会昭38年春季大会 研究発表要旨,5(1963). (10)山下忠男:富有柿の果実汚染の原因と対策,果実 日本,18,(9),36−−38(1963). (1977年10月15日 受理)

参照

関連したドキュメント

理工学部・情報理工学部・生命科学部・薬学部 AO 英語基準入学試験【4 月入学】 国際関係学部・グローバル教養学部・情報理工学部 AO

東北大学大学院医学系研究科の運動学分野門間陽樹講師、早稲田大学の川上

200 インチのハイビジョンシステムを備えたハ イビジョン映像シアターやイベントホール,会 議室など用途に合わせて様々に活用できる施設

清水 悦郎 国立大学法人東京海洋大学 学術研究院海洋電子機械工学部門 教授 鶴指 眞志 長崎県立大学 地域創造学部実践経済学科 講師 クロサカタツヤ 株式会社企 代表取締役.

[r]