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W.I.タマスの社会学 : その学説史的検討

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(1)

一 そ の 学 説 史 的 検 討 一

ウ イ リア ム・ I・ タマ ス

(William lsacc Thomas)は ,ァ

メ リカ中期社会学者 のなかで も最 も 重要 な学者 の一人 と考 え られてい る。大道博士 は

,ア

メ リカ社会学史 の節 にあたるものと して

,次

の三点を指摘 している。

(1)4865年

のアメ リカ社会科学協会

American Social Science Associationの

設立。

(2)1895年

のアメ リカ 社 会学雑 誌

American Journal of Sociologyの

創刊 と 4905年 のアメ

リカ社会学会

American Sociological Societyの

成立 。

(3)1948年

の タマ スおよび F。 ズナニエ ツキの「 欧米 におけるポー ラン ド農民」

5巻

(The P01‐

ish Peasant in EurOpe and America,5vols,1918∼1920)の

第一巻 の出版,

そ して 特 に

,1918年

の「 ポー ラン ド農民」の出版 が

,ア

メ リカを「 社会学 の王 国」に形成 させ る 契機 とな った と し

,そ

の重要性を強調 して る。

(1)更

,N・

ハ ゥスは

,ア

メ リカ社 会学史を二大 時期 に分 割 し

,

第一期を 1885年 におけるウオ ー ドL・

F o Wardの

「 動 的 社会学」

(Dynamic

Sociology)の

出版か ら 4918年 における「 ポー ラン ド農民 」の出版 まで とな し

,第

二期を 1918年 よ り現在 に至 るまで と述べてい る。

(2)こ

のよ うな分 割 の是ジFの 論議 は ともか くと して

,現

在 のア メ リカ社会学 が

,1918年

以後 における社会学をその主流 とな し

,そ

の線 にそって多 くの派生 的諸結果 を展開 した もの とみ ることは不 当ではないで あろ う。特 に

,現

代社会学 がす ぐれて経験 科学 で な ら ぬ とす る現代 的要請を耳 にす る時

,ア

メ リカにおける実証 的研究 の端緒 ともいえ る「 ポー ラン ド農 民 」 によ って一時期を画 した がマ スのアメ リカ社会学 において 占め る位置 の重要 さは明確で ある。 しか るに

,今

日までゎが国においては

,佐

々木徹郎氏 をのぞいては

,タ

マ スにつぃての検 討がな さ れていない。(3) 私 は

,

タマ スのア メ リカ社会学史における位置の重要 さを考え るとき

,彼

の理論 について検 討す ることは極めて重要で あると思 う。佐 々木氏 も指摘す るごと く

,

タマ スを明か に しな くてはア メ リ カ社会学 の特色 の一 つをなす実証 的傾 向は

,は

っき り把握 出来 ない と考え る。 〔注〕

(J

大道安次郎「アメリカ社会学の潮流」

(2)FoN・ House“ The Development of Sociology''P294

]呉

歳 國

(2)

臣 俗

)佐

々木徹郎氏のタマス研究 としては

,次

のものがあげ られる。 「 社会における客観的過程の研究」文化第16巻,PP 469∼ 485,昭和26年 9月 「 四つの願望理論について」社会学研究

,第

6巻,pp 16∼24,昭和27年12月 「 ウィリアム・ タマスの社会学の進展」社会学評論

,第

8号,Pp103∼119,1952年 「 ウィリアム・ タマスの社会学方法論」社会学研究

,第

4号,pp ll∼25

I.

タ マ ス 社 会 学 の 展 開 タマ スは

,1947年

バ ー ク レーで死去す るまでに

6巻

の書物 と20以 上 の論文を書 い て い る。 しか し

,彼

の考えを体系的にま とめた決定的

,か

つ綜合的論文 は見 られない。彼 はそれ らを大学の講 義 に限定 し

,刊

行 しなか った。 それ故 に

,彼

の理論的体系 はその作品か ら再構成 されなければな らな い。 これはたやすい ことで はない。 とい うのは

,彼

の見解 の多 くは

,テ

ィマ シエ フが指 摘 す る 如 く

,

しば しば変化 したか らで ある。 「 タマ スは

,新

しい考 えが科学 的水平線上に現われ ると

,決

して それ らの どれに も心 を奪われ る ことはなか ったが

,必

らず それ らに応答 した。例えば

,一

,彼

は精神分析学 に とらわれた。 しか しその後

,

フロイ ド派の公式 も誤 りがあると して拒否 した…。(1)」 か くの如 く

,

タマ スは新 しい学説 に対 して敏感であった。 しか し彼 自身が究 切 しよ うと した問題 は

,常

に人間の行動 の分析 にあった。 その ことは

,彼

の最初 の論文「 民族心理学 の範 囲 と方法」 (

Scope and Method of Folk Psychology,1896)が

未 開社会

,更

に人 間行動一般 の研究 の出発 点 をな す もので あ り

,彼

の最後の論文「 原始人の行動」

(PrimitiVe Beha

or,1937)が,

人間 行 動 の分析 に関す る種 々のアプ ローチについての反省 および思考 の結果で あることによって も明白 で ある。 それゆえ

,彼

の理論体系 にみ られ る変化 は

,人

間行動分析 の手段概念 の変化で あ るといえ る。た とえ ば

,彼

の初期 の中心概念で あった「 願望 」概念 が

,後

に は「 状況」概念へ と変化を とげ て い る。 しか し一応

,彼

の人 間行動分析 に関す る基本 的立場 の本質 的特徴 は次の七点 に しばること が 出来 る。

(1)社

会科学 の 目標 は

,人

間行 動 につ いて検証 出来 る一般化を得 ることで ある。 (21 人間行動 は何 らか の条件 の下でのみ起 きる。そ して それ は抽象 的には「 状況 」の概念 によっ て表 ゎれ る。 (31 人 間の状況 は

,物

理 的環境

,相

関的社会規範

,他

人 の行 動 とい った観察者 にも行為者 に も共 通 な幾つかの要因を

,

しば しば合 む。 これは

,社

会科学 は状況 の観察可能 な

,

また は客観 的局 面 について の直接 の記述 を必要 とす ることを意味 してい る。

(4)人

間 の状況 は また行為者 のためにのみ存在す る幾つかの要因を合む。た とえば

,い

か に彼等 は状況を知覚す るか

,そ

れが彼等 に何を意味す るか

,彼

等 の「 状況 の規定 」は何か。 この こと は

,人

間行動 の主 観 的局面 は客観 的局面 と同 じ位多 く研究者 によって把握 されなければな らな

(3)

い ことを意味す る。 その上 に主観 的 な ものは

,こ

れ ら諸要因の考え に帰す るべ く対照 されたも の と して理解 されねばな らない。

(5)そ

れ ゆえ に

,社

会科学 の方 法 は人 間行動 の客観 的かつ主観 的局面 の両方 の体系 的分析 を準備 しな ければな らない。

(6)そ

の よ うな方法論 は

,生

活史 の ごとき資料 を得 るとい う特別 な技術を合むので全社会科学 の 助 けを必要 とす る。 (η このアプ ローチの社会 目標 は

,行

動 の合理 的 コ ン トロールのため に必要かつ有用 な種類 の知 識を利用 出来 るものにす ることで ある。(2) 要す るに タマ スの体系 は

,も

し実証 的かつ究極的に有用 な社会科学が実現 され るとす るな らば, 何 が研究 されねばな らないか

,そ

して いかに, とい うことに関す るものである。 か くして

,彼

の社会学概念 には変動 はあ ったけれ ども

,一

応 次の四段 階 に区分 が可能で あ る。第 一期 は

,1896年

の「 民族心理学 の範囲と方法」か ら 1907年 の「 性 と社会」

(Sex And Society)

の出版 まで

,第

二期 はそれ以来

,1909年

の「 社会的起源 のための素材」

(SOurCe BOok fOr SOcial

Origins)の出版 まで。第二期はそれ以後

,1927年

のアメ リカ社会学会就任迄

,第

四期 は就任後死去 す るまでで あ る。 第一 期 は

,タ

マ ス 自身が述べてい る如 く

,ス

ペ ンサーおよび ドイツ民族心理学 の影響 が強い時期 で

,(3)彼

の思想 には生物学的

,本

能 説 的特徴 が強い。ただ「 性 と社会 」において は生理学 的説 明 が見 当 らず

,徐

々に変化 してい ることを示 している。 第二 期 に は

,本

能 よ り習慣 および学習を重視す る見解 に移行 している。特 に この期 の代表 的著書 「 社会 的起源 のため の素材 」 において

,

タマ スは統制

COntrol,注

attention,危

機Crisis,習

habit等

の概念 を形成 した。 す なわち

,彼

,進

化 は「 危機 」か ら起 因す るとい う理論 を発展 させ た。

(4)彼

によれば

,「

危 機 」 とは状況 におけ る何かが習慣 の再適 応 re‐

adjustmentを

要求 す ることにす ぎない。 そ して

,そ

れ は古 い習慣が もはや通用 しない時 に起 きる。すなわち

,習

慣 の 中絶 また は混 乱で あ る。 しか も「 危機 」 は必ず しも激烈な また極端 な ものである ことは必要 と しな い。「 もちろん危機 は有機体 を殺 した り

,集

団を破壊す るほ ど重大で あ るか も しれない し

,ま

た失 敗や悪化 の原 因にな るか も しれない。 しか し私がその言葉を使 う時 には

,危

機 は常 に激烈 な もの と してみな され るべ きで はない。それ は単 に習慣 の混乱

diSturbance of habitに

す ぎない。 そ し て それは刺激

,暗

示 にす ぎないか も しれない。」(5) 危 機 はまた

,そ

れ に直面 す る人 々の側 に 自動 的反応を導 くよ うな

,一

定 の客観的存在 を もつ もの と して考え られ るべ きではなない。外 的観察者 にとっては危機 で あるよ うに見 え るものが

,当

事者 によ って気づかれずにす ぎることもあ り

,逆

,あ

る者 に とって無害 の よ うに見 え るものが

,他

の 人 に とって は重要な意味深 さを持つ こともある。か くして

,「

同 じ危機 が一様 に

,同

じ結果を生 み 出す とはぃえない。」(の

(4)

臣 真 歳 国 危 機 の重要性 は

,そ

れが生活組織の基礎 的原理 をつ くり出す とい う事実 にある。 そ してパ ーソナ ル な環境や社会 的環境 において

,危

機 は古 い習慣 を動揺 させ

,新

しい反応をひ き起 し

,新

しい発達 を企 図す ることにおいて主要な要因 とな るところの「 触媒」

(7)で

ぁる。 また フォアカー トは

,タ

マ スの「 危機」の原理が トインビーA・

Toynbeeの

「 衝撃 と反応 」の定

(3)に

非 常に似てい ること

,更

,パ

ー ソナ リテ ィ無秩序 における外傷体験 の重要性上 について の精神分析学者 の強調 に似てい ることを指摘 してい る。 そ して これ ら二つの思考 ラインの幅合 が, 批 判 的状況 における人 々についてのよ り内包 的な研究 の価値 ある ことを暗示 してい る と 述 べ て い る。(。) か くして タマ スは種 々の民族 の意識の比較研究 の重要性を指摘 した。 この書物 において タマ スが 主 張 したのは次の三点である。 (り 人 間の歴史を理解す るには原始社会 を研究 す ることが必要で ある。 修

)原

始未 開社会 の研究のためには神話

,迷

,魔

術 的行為の研究が必要である。 (31 社会過程 は

,タ

ル ドの模倣

,デ

ユルケー ムの拘束

,ギ

デ ィングスの同類意識の如 き単一 の も ので解釈 さるべ きで はない。社会過程 は

,

このよ うな社会力の全てまたはそれ以上を も合むの で ある。 これ ら三点 の内

,第

二 点にタマ スの社会学体系 の うちもっとも重要な社会現象 についての彼 の概 念 が見 出 され る。 この点 は

,社

会学 のパ イオ ニアに よ って と られ た もの とはか な り異 って い るが故 に重要で ある。すなわち

,彼

,ギ

デ ィングス

,デ

ュル ケー ムの ごとき「 特定選択的」な社会資料 の解釈 に反対 し

,彼

等 の見解 は人 間行動や人 間体験 の実証 的概念 を示 しえない と主張 した。 次 に

,

第二 期 において タマスは人間文書

Human documentを

資料 とす る社会調査 の方法を展 開 してい る。その代表 的研究が「 欧米 におけるポー ラン ド農民」 と願望理論を完成 した「 不適応少 女 」で ある。 この二冊 の書物 に

,タ

マ ス社会学 の方法論 を代表す るものがほとん ど示 されていると い って も過言で はあるまい。 これ について は次章 で検討す る。 第 四期において

,タ

マ スは統計的

,量

化 的方法を無視す ることは誤 りで あると考 えるよ うにな っ た 。 そ して

,こ

の期 の最大の特徴は

,厳

密 な社会法則 を見つ ける ことの可能性 に 自信をな くし

,晩

年 に は

,彼

,社

会学 に おける法則 は蓋然 的な もので あると考 えた点にある。 そのために彼 は

,近

代統計学の影響によって

,総

合状態が複雑であるときには相互関係が多 くなり

,そ

の測定が必要で あると気 づ くと法則に確率の目標

goal of prObabilityを

代用するようになった。(1。 ) 以上のようにタマスの社会学は

,四

段階の展開をとげているが

,そ

の背後には種 々の学者 の影響 が あったか らである。

(11)特

,ス

ペ ンサー

,デ

ューイ

,サ

ムナー

,ボ

アズ

,ヮ

トソン

,GeH,

ミー ド,クー リー,ズナニエツキ

,

ドロシータマス

,

フロイ ド

,タ

ル ド等の影響が大 きか ったようで ある。また同時に

,タ

マ スが与えた影響も非常に大 きい。例えば

,彼

が導いた「 態度の概念」は未 だアメ リカ社会心理学概念の主流を占めており

,ま

た「 四つの願望理論」もボガーダスその他に非

(5)

常 な大 きな影響 を与 えた

,

更 に

,

現代 ア メ リカ社会学 の代表 的理 論家 の一人 であるパ ーソ ンズT―

Parsonsに

も大 き く影響 してい る。 すなゎち

,タ

マ スの「 状況の規定」概念は

,

マー トンによっ て

,ニ

ュー トンの定理 にも比すべ きものと評価 され,(1つ

)更

にパ ース ンズが行為の一般理論を建設 す るにあた って

,そ

の中心 的考 え方 と して措定 した社会休系 の構造機能分析 の思想 には

,タ

マ スの この考 えが大 き く影響 を与えている。。3) またいゎゆ る シカゴ派 といわれ る社会学者 の大部分 は

,タ

マ スによって直接 的に教育を受 けた も ので ある。か くの ごと く

,タ

マ スは特 に社会学者 の養成 において もアメ リカ社会学 に大 きな貢献 を な した。 ロバ ー ト・ パ ークを社会学者 に し

,

ズ ナニエ ッキをアメ リカに招 き

,

フェア リス

,L・

L・ バ ーナー ド

,K・

ャ ング

,Eoボ

ヵ―ダ ス等 の優秀な社会学 者 を養成 したのもタマ スであ る。 1951年

,彼

の問弟達によって編 まれた論文集 (K・

Young(ed)ば

SOcial Attitude'',1931)が タマ スに捧呈 され た。

〔注〕

(1〕 Nes I'imasheff “Sociological Theory its nature and growth"P148

(2) Edmund H・ ヽ「。lkart, “Social Behavior and Personality, Contribution of lV・ I・ ThOmas to

TheOry and SOcial Research"P2

(3)H・ Blumer,“ Critigues Research in tho Social Sciences:I.An Appraisal of Thomas and Znani‐ echi's ThePolish Peasant in Europe and America''P133「 私 は ドイ ツ留学 中,dazarusゃSteinthal

に よって代 表 され た ドイ ツ民 族 心 理 学 に興 味を も った。 そ して私 は また,SpenCerの社 会学 に よって強 く

印衆づ け られ た 。」 と述べ てい る。

(4) VoIoThOmas, “Source Book For Socia1 0rigins''P18 (5) Ibid.

(6) Ibid.

(7)E・ Ho VolKart,lbid,,P13

18)``Challenge and Response"は

,一

つ の文 明が他 の文 明 と接 触 す る形 式 につ い て トイ ン ビーが 指摘 した

理 論 で あ る。 トイ ン ビー に よれ ば

,あ

る文 明が よ り強 力 な他 所 の文 明 の影 響 に接 した場 合 に, これ を受 け入 れ これに順応す るか,また はそれ まで の伝統的な生活様式 を固執 して これ に徹底的に反撥す るか

,二

つ の内 の一 つ しか な くて

,順

応すれ ばその文 明は存続 し

,反

撥すれ ば滅亡す る他 ない とい う。 (9)E・H・VOIkart,Ibid.,p13 lo NeS.Timascheff,Ibid.,P148 ι

O

タマスのアメ リカ社会学史 にお ける位置づ けについ ての詳細 な検討 は,修士論文「 タマス研究」 (1966年, 関西学 院大学 院

)に

て行 な ったので省 略す る。

121 Robert K・ hferton,``Social Theory and Social Structure" p179 131 TalcOtt Parsons, “Essays in Sociological Theory" pp58∼ 59

I、 四 つ の 願 望 理 調

1.

四つ のオ リジナルな公式化

(6)

臣 真 歳 国 あるのみな らず

,ア

メ リカ社会学 に大 きな影響 を及ぼ したとい える。

(1)し

か し

,こ

の章 において は

,

この理論 の果 した役割 よ りもむ しろその現代的意義

,特

にその現 実分析上 の意味を考察す る こ とにする。 タマ スが願望を最初 に問題 と したのは

,1917年

の「 第一次集団規範 の持続 性 」 (The Persist‐

ence of Primary Group Norms)1こ

おいてである。 しか し

,

この理論 の源泉 は既 にそれ以前 の

彼 の論文 に見 出す ことが 出来 る。すなゎち

,1907年

の「 性 と社会」において タマスは人間の行動の 原 動力を性 と食物 に見 出 して お り

,ま

た狩猟本能 について考察 し

,「

新 しい経験へ の欲求 」 と全 く 同 じ例を挙 げて説 粥 してい る。 更 に

,

こあ書物 の以前 に書 かれた 「 狩猟本能」

(The Gaming

lnstinct,1901)に

おいて も

,彼

は戦争

,決

,競

,

科学 的探究

,

産 業角遂 その他 の社会現象

,性

と食物 とに起源を もつ狩猟本能 によ って説 明 している。結局

,

この ことは

,タ

マ スが人間行 動 の原動力 と して あ くまで も食物 と性 にもとづ くある種 の本能 的な ものを初期には考 えて いた こと を示 してい る。 そ して

,

この本能論 を廃棄 し

,

これ に代 るもの と して提示 されたのが「 願望論」で ある といえ る。 先 づ「 第一 次集団規範 の鶯続性」 におぃて タマスは

,人

間組織 の潜在能力 と要求を行動 に結 びつ けるべ く

,「

媒 介変数」の図式 を うち立 てん と した。その基礎 に置いてい るものは食物 と性へ の欲 求 と

,当

時彼 が影響 されていた ワ トソンか ら引 き出 した「 オ リジナルな情緒的反作用 」の概念 一一 それは「 恐怖」

,「

激怒 」

,「

喜 び」 または「 愛」 と して概

a化

され る一― である。換言すれ ば, この時期の タマ スの願望 は有機体 に結 びつ け られてい るといえる。 その上 それは欲求やオ リジナル な情緒的反作用 の所産物 と して考 え られて いる。 ここで注 目すべ きことは

,彼

はすで に四つ の願望 を提示 して いるが

,彼

の関心 にあったのは「 新 しい経験へ の欲求 」 と「 支配へ の欲求」の二つであ った ことで ある。 タマ スによれば

,

ワ トソンが幼児 の感情を怒 りに結 びついた もの

,恐

れ に結 びついた もの

,喜

び に結 びついた ものの三類型化 をはか った ことに ヒン トを得て

,移

民 集団 における人間の行動を

,新

しい経験へ の欲求 に結 びつ くもの

,支

配へ の欲求 に結 びつ くもの

,認

知へ の欲求 に結 びつ くもの, 安全へ の欲求 に結 びつ くものの四つの基礎 的な願望を表 わす もの とされて いる。 そ して その考 えの 基底 に食物 および性へ の欲求 を置いてい る。 「 もちろん行動 の あ らゆ る形式 は

,遂

には二つの基礎 的な欲求

,す

なわ ち食 物へ の渇望 と性 の渇 望 にま とめ られ る ことを認識す る必要がある。食物へ の渇望は種族 の生命 を維持するのに必要であ る。」(2) 先 づ支配的な関心は追求 関心で あ り

,そ

の心 的型相は本質 的には狩猟形相

hunting patternま

たは追求型相

pursuit patternで

あ ると し

,

人 間の結婚 また は追求 および捕獲 の過程で あるとみ て い る。 そ して

,動

物 また は人 間 の狩猟活軸 と倉」造 的人 間 の科学的活動が奇妙 に も似てい ると し, 「 我 々に とって 関心 の特質 は

,も

しそれ が追求型相 に続 かなぃな らば

,い

かな る行為 も興味を引か

(7)

ない。」

(a)と

して い る。 その典型 的例 と して科学者 が物 を発見する場合を挙 げてい る。 しか も, タマ スは

,

この追求 関心 こそ新 しい経験へ の欲求 と支配へ の欲求 のあ らわれ だ とみ る。すなゎち, 彼 は この追求 の初期 の段階 またはそのこ般 的予備 の条件を

,好

気心

Curiosityと

呼 び

,

この好気 心 が観▲上新 しい経験へ の欲求 となると してい る。 また

,支

配へ の欲求 は怒 の副次 的現 象 の一つで あ る。 以上 の転 回か らも明 らかな ごと く

,タ

マ スが当時学界 を支配 していた本能論 に影響 された ことは 明 白で あ る。彼 は後 には本能論 を

,「

ある種 の魔 術で相互作用 してい る心理 的実体 の華麗 な る星座 」 とよび

,人

間行 動説 明の鍵 と しては不充分 であると考え るに至 ったが

,(4)本

能 的 な もので人 間 行動 を説 明 しよ うとす る基本的態度 は

,そ

の まま「 四つ の願望」理論 に うけつがれて い った とみ る ことが出来 る。

2.「

ポー ラン ド農民」における四つの願望 タマ スは

,「

ポー ラン ド農民 」において四つ の欲求 を

,適

当な社会 的価値 の通用 を とお して

,新

しく欲す る態度 の形成 に利用 しうる基本 的な態度 と して提 出 して いる。 この基本的な態度 は

,全

て の人間に存在 してお り

,か

,な

ん らかのかた ちでその充足 を必要 とす るか ら

,人

間 はそれ に よ っ て常に動か され も し

,も

て あそば され もす るわ けである。 「 各人 は社会 の一員 で ある ことによ って のみ満足 させ る ことので きる多様 な願望

WiShesを

も っ て い る。一般 的願望 の型 の うちか ら

,ゎ

れ われ は次 のものを抽 出で きるで あろ う。

(1)新

しい経験 へ の欲求

the desire for new experience

すなゎち新鮮 な刺激を求 める欲求

12)承

認へ の欲求 the desire for recognition

この うちには

,た

とえば性的反応や一般 的社会的評価

,ま

,装

飾物 の展示 か ら科学 的研究 の達 成 による価値 の証 明に至 るまで の ものが合 まれ る。

(3)支

配 の欲求

the desire for mastery

これは所有

,家

庭 内で の暴君

,政

治 的専制 によって例示 され る。 この欲求 は嫌悪 の本能 にも とづ いて はい るが

,賞

讃 に価 す る大望 に晶化 され うる もので あ る。

14)安

全へ の欲求 the desire for security

恐怖 の本能 に もとづいて お り

,不

断 の孤立状態 の下 や社会 的 タブーの状態 による個人 の悲し な こ とによ って

,消

極 的に例示 され る。」。) ここに挙 げ られて いる欲求 の種類は後 の理論 とは全 く同 じではない。 これ は「 方法論 的覚書 」 に 書 かれた ものだが

,一

年 後 に発行 され た第二 巻 において は少 し変化 して い る。すなわ ち

,タ

マ スは 第

5巻

において

,気

temperamentと

性格

Characterと

の区別 を強調 して

,(6)若

千 の変更 を 示 して い る。

(8)

真 歳 国 「(1)気質 的な もの

O

新 しい経験へ の欲求

,

これ は好気心 の本能 に基づ く ② 安全 へ の欲求

,

これ は恐怖 の本能 に基づ く。 (21 性格 的なもの一― 態度

,

したが って社会的環境 の力か ら生ず る。 ③ 応答へ の欲求

,す

なゎち

,親

,友

,愛

へ の欲求。 ④ 承認へ の欲求

,す

なゎち

,優

れ た身分

,賞

,社

会 的地位 に対 す る欲求。」(7) この後者 の分類が体系化 されたのが「不適応少女」 における願望理論である。ただ一 つ言 え るこ とは

,「

ポー ラン ド農民」 においては

,「

四つ の願望」概念 が人間行動の分析 にほ とん ど指導 的 な 役割 を果 していない とい うことである。「 ポー ラン ド農民」 において は

,

タマス は

,「

態度」

,「

価値」

,(a)

「 生活組織」等 の概念 に焦点 を置 いて い るのに反 し

,「

願望」 は

,た

だ移民者 の一人 の ポー ラン ド農民の 自叙伝 の分析 に使用 されてい るにす ぎない。

3.「

不適応少女

Jに

おける四つの願望 タマスが「 四つの願望 」を体系化 したのは「不適応少女」 においてである。彼 は この書 において も

,新

聞に掲載 された手紙

,少

女保護機 関の手紙少女 の 自叙伝

,社

会福祉事務所 の記録等 の人 間文 書 を分析 してい る。 この書物 における分析 は非常 に興味深 いものであ るが

,佐

々木氏 も述 べて い る ごと く

,余

りにもは っき り割切 ってお り

,か

え って疑 ゎ しい感 じさえ うける。(9) 「 人 間 の願望 は非 常 に多 くの具体 的形態 を もつ。 しか し次 のよ うに一般 に分類 が可能 で あ る。

(1)新

しい経験へ の欲求

12)安

全へ の欲求

0

応答 を求 め る欲求

(4)承

認 を求 め る欲求」(1の これ らを簡単 にまとめ ると次のよ うにな る。 「 新 しい経験へ の欲求」 は

,狩

猟本能 と同 じ内容 を持 ってい る。 この欲求は

,新

しい刺激 を求 め 実験 を行 う気持であって

,追

pursuit,逃

flight,捕

獲 Captur● 死 の 冒険 等 の行動 に表現 され る。 この欲求 は

,原

始時代 には狩獲 に表現 されたが

,す

べてのスポーツ

,ゲ

ーム

,サ

イコ ロ投 げ

,種

々の賭 け事 もこの欲求 に基づ く表現で ある。人間は これ らの行動において

,成

功 のス リル と 失敗 の悲哀 をあ じゎ うのであ る。 タマスによると

,

この欲求 は二つの方 向に表現 され る。第一 は社 会 的価値 の創造を促進す る方 向である。 これ に対 して

,盗

,売

春婦

,等

にみ られ るのは

,

この欲 求 の反社会的表現であ る。1)。 「 安全へ の欲求」は

,新

しい経験へ の欲求 とは正反対で あって

,新

しい経験へ の欲求が感情的 に 怒 りに結 びつ け られていたのに対 して

,恐

怖 に も とづ いて い る。死 を避 ける傾向 と して憶病 とか回 避 に表現 され る。 この欲求 に支配 され る人 のパ ースナ リテ ィ類型 は

,「

ペ リシテ人型」で あ る。 そ れゆえ

,

この欲求 に支配 されている人 は

,慎

,保

守的 で

,規

則正 しく組織立 った仕事 を行 い

,財

(9)

産 を蓄積す る傾向が ある。(1つ) これ までに述べた二つの欲求 は

,食

物 の追求 と死 の回避 の本能 に密接 に関係 していた。 そ してそ れ らは恐怖 と怒 りの感情 に結 びつ け られていた。一方

,応

答 を求 め る欲求は

,第

一 義的には

,愛

の 本能 に もとづ いて い る。 この欲求 は他人 の評価を求 めまたは与え る傾向である。 この 第 一 の 表現 は

,

ワ トソンや ソー ンダ イクの研究 に示 され るごとき子 に対す る母 の献身 と

,子

のそれに対す る反 応で あ る。 また両性 間 の愛へ の この欲求 は非常に強い。(13)タ マスは

,

この欲求が社会的交渉 の基 礎 にな ると してい る。 「 一般 に

,応

答へ の欲求 は

,諸

願望 の うちで最 も社会的な もので あ る。 これは性 的 な要素 と群居 的 な要素

gregarious elementの

両方 を合んで い る。 これは利 己的要求を行 うが

,

他方 において 利他主義の主 要源泉 で もあ る。子供

,家

族 に対 す る献身 も

,大

,原

,理

想 に身 を ささげること も

,適

用 の分野 は異 るが

,同

一 の態度で ある。献身や 自己犠牲 は

,他

の諸願望か らも生 じるか も し れ ない し

,ま

た直 ちにそれ らの全 て と結 びつ くことは真実で ある。」(14) 「 承認 を求 め る欲 求」 は

,「

ポー ラン ド農民」 において は「 支配 の欲求」 と して も表現 されてい た。 この願望 は

,一

般 に

,認

め られ

,羨

望 され

,利

益 のあ る社会的地位 を得ん と して なされる社会 集団 にお ける地位 のための斗争 に表現 され る。 ケマスは

,こ

の欲 求 の重 要 性 を 次 の ごと く指摘す る。 「 個人 お よび社会 に とって

,承

認 お よび地位の重要性 はきゎめて大 きい。個人 はそれを欲す るの み な らず

,パ

ースナ リテ ィの発展 のために必要 とす る。 これが得 られない こと

,お

よび永久に得 ら れ ない とい う危惧 は

,

フロイ ド主義者 が

,そ

の起源が性 的なもの と してい る心理病理的障害 の主要 原 因をなすで あろ う。」(15) この欲求 は

,虚

,野

,名

声 に表現 され るが

,そ

の心理的基礎 には種 々の ものが ある。すなゎ ち

,

この欲求 は

,外

的行動 と しては支配的

,圧

制的

,サ

デ ィズス的に表現 されてはいて も

,そ

の底 には

,分

泌腺 的衝動お よび怒 りの本能 か ら派出 して い ることもあろ うし

,あ

るい は 劣 等 感

,不

,社

会的無 視等恐怖 に近 い感情か ら発 して

,そ

の補償 のために強い承認 を求め ることもある。 以上簡単 にまとめてみたが

,

これが タマスの「 四つの願望」理論 の決定的なもの といえ る。 そ こ で「 ポー ラン ド農民」 のそれ と比較 してみ ると次 のような相違 がみ られ る。第一 に

,「

ポー ラン ド 農民」 においては

,

タマス は欲求 を

,人

間 を社会化す る力

,個

人 を して社会集団に加入 させ る力 と して考えていた。 これ に対 して

,「

不適応少女」においては

,適

切 な指導 がない場 合 には

,欲

求 は 個人 および社会を破壊す る力 と して考え られてい る。 ここには精神分析学 の影響がかな りあ った こ とを示 して いると思 う。第二 には

,「

ポー ラン ド農民」 においては

,欲

求 の基礎 には本能 のみ しか 考え られて いなか ったのに

,「

不適応少女」においては

,神

経 的 メカニズムが考え られていること で ある。第二 には

,「

ポー ラン ド農民」 においては

,社

会構成 の原 動力 とも考 え られて い た 願 望 が

,「

不適 応少女」 においては

,

タマスは

,欲

求を個 々の人 間行動 の原動力 と して考え

,人

間行動

(10)

臣 真 歳 のダ イナ ミックスの分析 に主導的役割 を与えてい る点である。佐 々木氏 もこの点を最 も重大 な変化 とみている。(16)

4.「

四つの願望理論」 とフ ロイ ド タマスの「願望理論」 を一見 すれ ば

,

フロイ ドの精神分析 学 との類 似に気 がつ く。た とえば

, K

・ ヤ ングは次のごと く指摘す る。 「 やがて タマスの思想 は第二段階 に到達 した。す なゎち

,そ

れ は

,彼

が欲望 に関す る フロイ ドの 所説 に手 がか りを得

,

しか して それを

,彼

が 自己の豊富な経験 を しるべ に移民団体

,ニ

グ ロ及 び都 部 の中心 の社会生活 につ いて観察 した如 く

,社

会 的行動 の諸般 の動 機 を包 合す るまで に拡充 したの に は じまる。(17)」 しか し

,

タマス 自らは この点を否定 している。すなわち

,1958年

の会議 において

,「

私 が フロイ ドか ら願望 の考えを引 き出 した と想定す る社会学者 がいる。 しか し私 は1905年 頃に願望 とい う言葉 を用 いてお り

,

しか も当時私 は

,

フ ロイ ドの名前 も知 らなか った。」(18)と は っき り 言 明 してい る。た しかに

,1905年

頃 の論文 や書物 には

,彼

の願望型論 と同 じ説 明による本能的な ものについて の叙述 が見 られ る。 しか し

,そ

れ はや は り願望で はない ことも切白で ある。佐 々木氏 もその点を重 視 して

,「

人 間 の行 動 の底 に港 む本能 的

,衝

動 的 な ものは本能 とい う固定 した形 を与え られ ず に残 って お り

,

これが タマスの場合

,

フロイ ド主義 の考 え方 と結合 して

,四

つ の願望説 に発展す る。」(19) と結論 してい る。 さ らに

,「

ポー ラン ド農民」 の共著者であ ったズナニエ ッキ も

,

フロイ ドの影響 が 四つ の願望理論 には強 く働 いてい ることを指摘 して いる。●。) フロイ ド

Sigmund Freud(1856∼

1959)が

アメ リカに紹介 されたのは 1909年

,

クラー ク大学 創立20年 祭 に

,ス

タ ン レイ

=ホ

ール

Gramille Stanley Hallに

よ って招待 されて以来 の ことで あ

る。 その際 フロイ ドは

,各

大学 で講義を行 い

,そ

れが アメ リカ心理 学雑誌 に掲載 された とい う。 ま た 当時

,多

くの新 フロイ ド主義者 とよばれ る学者 が ドイツか らアメ リカに来 任 した。 そ して

:

フロ イ ドの著作はアメ リカにおいて多数 の共 鳴者を獲得 し

,社

会科学者 に幾多 の新概念 を提供 した。 そ の フロイ ドに共 鳴 した一人 にホル ト E・ B・

HOltが

ぃ る。彼 は 1915年 に

,「

フロイ ド的欲望説」

(The Freudian Wish and lts Place in Ethics)を

発行 した。そ して

,

タマスが「 ポー ラン

ド農民」を提 出 したのが 1918年 である。 この一致 は偶然であるだろ うか。 私 は偶然ではないと思 う。 タマスが ホル トの書物を読んでお り

,彼

自身 それ によ って深 く印象 づ け られた ことはた しか で あ る。 それがケマスの共 同研究者 であ るズナニエ ッキにはよ く分 ったので ある う。更 に この点を証 明す るもの と して

,K・

ヤ ングはホル トの樹立 した全学的体系 には

,欲

望及 び態度 に関す るタマス 的使用法 と一脈相通ず るものが あることを指摘 している。 「 ホル トは フロイ ドの用語を大部分棄てたけれ ども

,

しか し欲望 に関す る動的見解 は これを固持 して

,

如何 にそれが現代心理学 に対 し価値 ある説 明原理 と して役立 ち得 たかを指摘 した。 ………・

(11)

ホル トによれば

,欲

望 とは『 ある種 の肉体 的規 制が

,現

実 に実行 す る否 とを問わず

,実

践 に うつろ うとす る行動過程』 とい ったよ うな純客観的概

aと

して思惟せ らるべ きであ って

,そ

れ は『動因 と して の態度』 に依存す る。か くて欲望は如何 な る特殊 的反応体系 とで も結合 し

,か

の正統 的 フロイ ド学者が考え るよ うに

,単

に唯― の反応体系 とのみ結合す るものではない。・・……。彼 の樹立 せ る全 学 的体系 には

,欲

望及 び態度に関す るタマス的使用法 と一脈相通ず るものがある。」(21) 考 えてみ るに

,タ

マスは

,も

ともとは

,

フロイ ドとは独立 に願望理論を考え 出 したので あ るが, 後 には

,

フロイ ドに大 き く影響 された ことは事実 であ るだろ う。 それ故 に

,

タマス 自身

,「

不適 応 少 女」 においては

,

ヒー リーの心的葛藤 の理論 を

,「

妨 げ られ た願望実現」 の観念 に結合 す ること に よって少女間 の非行を説 明 し

,承

認へ の願望 の不満足が

,

フロイ ドが性的衝動 の フラス トレー シ ョンに帰 したの と同 じ心的状態を引 き出す と結 論づ けてい る。 また フロイ ドの考え方 との類 似 してい る点 と しては

,

タマスが四つ の願望理論 を

,人

間行動

,特

にアブノーマル な行動 の分析 の手段 と して有効で あること を 提 示 してい る点が あげ られ る。 しか し

,

フロイ ドとタマスは

,一

点 で大 き く相違 してい る。 それは

,佐

々木氏 も指摘す るごと く

,

フロ イ ドは個人 のパ ースナ リテ ィ分析 に主眼を置 いたのに対 し

,

タマスは

,願

望理論を個人 と社会 との 相 互 関係 の分析 に利用 している点で ある。 この点か ら

,バ

ージ ェスはタマスの理論を「 社会分析」 とよび

,

フロイ ドの精神分析 と対比 させてい る。(22)そ して

,

この対比 こそが社会学者 タマス と精 神分析 学者 フロイ ドの明白な区別を示 してい るといえ る。

5.四

つの願望理論の意義の 先 づ

,第

一 に

,

この理論 は

,人

間 のすべ て の行動 は欲求 に動機 づけ られてい るとい うことを前提 と して い る。すなゎち

,

タマスは人間 の行動様 式が ノーマルであるか

,ア

ブノーマル で あるか とい うことを

,

この四つ の欲求全てが適切 に満足 されて い るか によって見 ようと した。 ここか ら

,

この 理論 がアブノーマル な行動 の分析 によ り有力な手 がか りを与え る点を指摘 出来 る。 しか し

,四

つ の 願望理 論 のもつ よ り重要な点は

,佐

々木氏が指摘す るごと く

,四

つ の願望理論が個人 と社会 との関 係 を考察で きる点で ある。 「 人 間行動 の問題 は社 会 的 にみ とめ られた様 式で

,欲

求を満足す るために

,社

会 的価値 に対 して 適応 した態度を とることにある。 も し人間が

,社

会 的規定を無視 して欲求を満足 しよ う と す る 場 合

,

また社会が

,欲

求不満 に対 して適 当な補償を与えないで

,個

人 の欲求満足を否定 す る場合 に人 格 の分解 が生ず るので あ る。第一 の場 合 は

,社

会 的 にみ とめ られない価値 に個人 が指 向す る場合 で あ り

,第

二 の場合 は

,社

会的価値が欲求を満足す るに

,不

適 章な場合である。」(24) このよ うに考え ると

,

この理論 によ って

,個

人 の行動 と社会 の規制 との関係が明 らか にな る。 こ こか ら

,彼

の社会 および個人 の解体論 と願望論 の関係が出て くる。 タマスは

,社

会解体 と個人 の解体 とは別個 の事柄 であることを主張 し

,個

人解体 の例をば

,法

(12)

真 歳 国 記 録

,福

祉 事務所 の記録

,

自叙伝等 の人 間文書を利用 し

,

これを「四つの願望」 その他 の概念 で分 析 して い る。 その成果 が「不適応少女」である。彼 によると

,人

間 には社会生活によってのみ満足 させ られ うる四つ の欲求がある。個人 は これ らの欲求 に もとづいて社会生活を営むのである。 しか も

,

これ らの欲求 は

,適

切 な社会的規制 の枠 内で満足 されない場合 には反社会 的行動を もた らす。 「 不適 応少女」 とは

,欲

求 の社会的に規制 された方法 によ る満足が不可能 であるが故に

,そ

の満足 の ため反社会的行動 に陥入 った少女であるとタマスはみ る。 このよ うに

,彼

は反社会的傾向 と して の個人 と

,そ

れを統制せん とす る社会 の対立 を中心 に考 え る。 この個人 の 自然的傾向

,欲

,衝

動 と社会統制 との関係 と して反社会的行動を分析 せん とす る立場 は

,

アメ リカの社会学では有力な一 派を な して い る。 その例 と して

,佐

々木氏はパ ー クの「 マー ジナル・ マ ン」 の概念

,バ

ー ジェスの 都 市 碩廃地帯 の理 論等を あげてい る。(25)ま たブ ロ ッホ

Herbert A.Blochも ,

情緒的緊 張 の種 々な形式が タマスの願望論 に

,す

なわち フラス トレイテ ングな情緒的状態が願望型相 に関係 され る も の と して

,具

体化 され ると し

,

ヒー リー とブ ローナーの非行行動 の取 り扱い とタマスの願望理論 とを相関 させて

,「

非行行 動 と共 に起 きる情緒的状態」 とい うダ イアグ ラムを提 出 してい る。(?6) 以上 の如 く

,

タマス の願望論 のもつ理論的意味 は

,二

,す

なゎち

,個

人 と社会 の関係を理解 す るため の社会分析 に有益 な点 と

,人

間行動を規定す る点を主要 な ものと してみ のがす ことが 出来 な いであろ う。 しか し

,

タマス の願望理論 には多 くの批判 もな された。 先 づ第一 にあげ られ るのが

,

タマスの願望理論 の包括性 についてである。 た とえば

,ボ

ガ ーダス は

,四

つ の欲求 は人間 の全 ての欲求を包合 していない ことを指摘 し

,「

他 人を助 ける欲求」,「自由 へ の欲求」

,「

公平 に正 しく他人 か ら処達 されたい とい う欲求 」 の二つを追加すべ く述 べてい る。 しか し

,

この批判は タマスの願望概念 に

,あ

る場合 には合 まれてお り

,あ

る場合 には分類 の基準 が 異 って い る点 か ら不適 切 で あ る。 それ故

,も

しタマス の四つ の願望が正 しい とす るな らば

,い

たず らに欲求 の種類 を増す ことは

,人

間行動分析 のための各欲求を あ らゆるものについて全 てあげな け れ ばな らない ことにな り

,願

望概念 の操作手段 と しての役割を否定 す ることにな ると思 う。 次 に

,願

望概念 の有用性 についての批判である。 た とえば

,エ

ル ウ ッ ドは

,願

望 または欲求は常 に本能的傾 向

,習

,知

能 の複合体 ゆえ状況 の心理的分析 を完成す ることは出来 ないと指摘す る。 しか し

,佐

々 木 氏 も反論 してい るごと く

,タ

マスの願望 は社会力にも似 た概念であって

,人

間 の 社 会的行 動分析 のあ くまで も手段であって

,社

会 的行 動 の動機 づ けの分析 にあた っては

,本

,習

,知

能 にまで分析 す ることは不必要で あ ると思 う。(27) 第二 の批判 は

,

タマス の願望論 には客観性が欠如 して い るとい うものである。 この批判を なす人 と して は佐 々木徹郎

,

フォアカー トな どがあげ られ る。佐 々木 氏は「 願望理論 について

,ゎ

れ われ は

,そ

の人 間行動解釈が

,果

して妥 当か どうか と判断す る客観的基準を もっていない。」(28)と 批 判 す る。 た しかに

,

この批判 は間違 っていないと思 う。 しか し

,私

は記述 の基準があればよいので あ って

,そ

の実用的であるとい う面を強調 したい。

(13)

私 が タマス の願翠理論 の最大 の欠点 と して指摘 したいのは

,記

述 の形式が決 っていない とい う点 で あ る。すなわち

,願

望 の夫 々の中味を

,い

か な る形で整理 されたかを タマスが述べていない とい うことであ る。 ここにタマスの願望概念 のあいまい さがあると思 う。 それゆえ

,

このあいまい さを 失 くすためには

,「

行 動発現形式 のカテ ゴ リー」

99)と

して利用す ることで足 りると思 う。換言す れば

,

この願望理論 が記述調査 の使用 に とって便利である点 とと現代 的意義が あることにな る。 そ こで

,四

つ の願望を発現形式 と してみてみ ると次 のよ うにな る。先 づ「新 しい経験へ の欲求」 は

,行

動発現形式 と して は act

eな

ものを示 す。次 に

,「

安全へ の欲求」は

pasSiVeな

行動発 現形式 であ る。第二 の「反応へ の欲求」 は intrOj∝

tな

い しは

abSOrbな

発現形式であ る。 最後 に

,「

承認へ の欲求」は

prOiectな

行 動発現形式で あ る。 結 局

,

人 間 の行動を現実 に分析 す る場 合 には

,以

上 の四つ の形式 に分 けて考 えれば

,非

常 に便利 で あ る。それ ゆえ

,

この願望論 の現代社 会学 にお ける意義 は

,社

会 的行 動 の分析 に とって形式的な分析 の意味を担 ってい る点 にあるといえ る。 最後 に

,

この「 四つ の願望理論」 の社会学史的な意味をみてみ ると

,次

の三点があげ られ る。

1.本

能論 か ら学 習理論へ と発展 させ た点

2.形

式社会学 とも明確 につなが る点

5.文

化社会学へ の足がか りと しての点 この内で

,も

っとも学史的にみて

,重

要 な点 は

,文

化社会学へ の足 がか りと してのきっか けが, 願望 理論 の有用性へ の疑門か ら出て きてい ると思え る点であ る。「人 間 の一つ の社会的

,文

化的現 象 が人 間 のただ一 つ の欲求 だけに必然的に対応 しえない」が故 に

,タ

マス 自身 も後 に願望理論 に重 点 を おかないで

,文

化接 触 お よび文化伝播 の現象を中心においたので あ るが

,

ここにその後 のアメ リカの文化社会学 の温床 ともいえ るものがあると

,私

は思 う。 〔注〕 lll その影響および果した役割に関しては

,次

の論文がある。 佐々木徹郎「四つの願望理論について」社会学研究

,第

6巻 PP16∼24 拙稿「 四つの願望理論」関西学院大学院論叢No l.1967,pp 53∼62

F・ H・ House The Concept ,Social Forces' in Ainerican Sociology", American Journal of Soci_ ology vo1 31. 1925

(2)E・ H・ Volkart, SociaI BchとviOr and Personality,Contribution ofヽ V・ I. Thomas to TheOry

and Social Research"P l12

(3) Ibid., P 13

(4)H・ BIumer,``Critiques Of research in ths Social Science I,An Appraisal of Thomas and Znaniekis' ``The Polish peasant in Europe and A=nerica, ''p p191∼192

(5〕 ヽV・ I・ Thomas,“The Polish Peasant in Europe and America"pp72∼

73

´

)気

質 とい うの は

,各

人 が生 れ なが らに して もつ生来 的 「 本 能 的 」 な態 度 のす べ て を意 味す る もので あ り,

性質 とい うの は, この気 質 に も とづ い て経 験 を通 して作 りあげ られ た態 度 を意 味す る。 Ibid.,vo1 2.pp

(14)

(7) Ibid., v012, pp l158, 1197

)こ

の「 態度

,価

値」の三分法的構 図か ら

,宇

賀博 は これを Parsonsの 「 行為者一状況」 図式 に相互 させ てい るが

,仲

々興味深い もので ある。

0)佐

々木徹郎「前掲論文」

P19

10 11/・ I・

Thomas“ The Unadiusted Girl"P4

1111 1bid・, pp 4∼11 1121 1bid。, p 12 1131 1bid・,pp 17∼30 141 1bid・,PP 31 1151 1bid・,pp 32

10

佐 々木徹郎「前掲論文 」

p17

11η

Ko Young

“Social Psychology" in “The HistOry and Prospects of ths Social Sciences “by

(ed)H・ E・ Barnes米村富男訳「 社会心理学」

p82

租B H・ Blumer, Ibid.,p132

10

佐 々木徹郎「 前掲書」

p89

12111 Fo Znaniecki “Villiam I Thomas as a CoIユ aborator" Sociology and SociaI Research, vo1 32.

P767「第一次集団へ の個人 の参加 を動機づ ける

,四

つ の主要 な欲求 の理論を

,我

々が (多分彼 の主 導権 のも とで あ った と信ず る

)公

式化 したす ぐあ とで,がマスは突然

,当

時 アメ リカに於 けるフ ロイ ドの追随者 に よ って呼ばれ ていた, フロイ ド派 の欲求 に関心 を もつ にいた った。彼 は リビ ドーは受 け入れ なか ったが

,

欲 求,desiresを願望

WIShに

か えて

,い

く分か フ ロイ ド分析 に似 た方法で

,不

適応 のパ ースナ リテ ィの分析 に『 四つの願望』を応用 した。」 9〕 K・

Young,米

林 富男訳「 前 掲書」

P32

921 Eo V.Burgess,,The lnfluence of Sigmond Freud uPon SoCiO10gy in The United States''Am‐ erican JOnrnal oF Sociclogy v01 45, PP 356∼ 374

1231 この願望理論 とアメ リカ社会学 の主要 な概念である「 社会力」理論 との関係 も

,学

説史研究 におい ては非

常に重要 なものであるが

,そ

れについ ては修士論文 におい て検討 したので, ここで は省 略す る。

90

佐 々木徹郎「 前掲論文 」pp19-20

9D

佐 々木徹郎「 米国社会学 と教育 」

p227

961 Herbert A・ Bloch“I)isorganization persOnal and social''P209 Emotional States Occurring in Conjunction with Delinquent Behavior

<Healy and BrOnner> <ThOmas>

(a)Re,ettiOn Bcing Unioved lnsecモ lrity (b)Thドarted in S elf_Expression (1)New Experlence

°

4a鞘

:ど

肌 ぎ

nJ}

(2)Security (3)Response (d)Emotional Disorgallizaj。 1l s

in respect to Family DisOrganizations

(e)Sibling Ril・alry

(15)

側 囲 ⑬ 佐々木徹郎「前掲論文」PP21-22 前掲論文

P22

次図の如 くなる 本 能

原劫―→発魏式

内質的

実体機能

タマス の社 会 学方法 論

1.

状況 の規 定アプ ローチ タマ スの著作 の うちで

,

もっとも重要 な ものは第二 期 の代 表 的研究「 欧米 におけるポー ラン ド農 民 」 といゎれ る。すなわ ち

,タ

マ スの思想 的発展 の第二期 は

,彼

の社会学的概念 の発展期 ともいえ る。 それ以前 において も

,タ

マ スは社会過程

,社

会行 動 を論 じて はい るが

,そ

の方法論 は社会学 的 とい うよ りはむ しろ社会心理学的 とい った方 がいい。 そ して タマ スがその社会学方法論 を明確 に展 開 したのは「 ポー ラン ド農民」においてであ ると彼 が この方法論 の問題 を明確 な形で表 現す るにい た った ことには

,そ

の著 の共著者であるズナニエ ッキ

F.Znanieckiの

影響が大 きい と思 ゎれ る。 バ ー ンズは

,彼

を主 と して「 鹸訳者 の役割」 と規定 しているが

,(1)そ

れ は誤 りで あ り

,タ

マ スの 重要 な概念 とされてい る「 態度・ 価値 」二元論

(2)へ

の貢献

,特

,「

価値 」概念 の導入 が挙 げ ら れ る。 さて

,タ

マ スの社会学的方法論 は「 ポー ラン ド農民」第一巻 の冒頭

,約

90頁 か らな る「 方法論 的 覚 書 」 の中に展開 されてい る。

(3)こ

の中には

,「

態 度 。価値 」二元 論

,

社会科学 論

,

社会 過程 論

,社

会法貝も論

,等

々が含 まれている。 これ以外 に も幾つか の重要 な ものを提 出 してい る。 その内 で特 に重要 な ものは

,次

の二 つであると思 う。(1)研究 室実験

labOratory experimentation,(21

状況 の規 定,13)四 つ の願望理論。四つの願望理論 は前章 で とりあげたので

,こ

こではふれない。 先 づ第一 の ものは

,実

験結果 な くしては決 して十分 に検証 出来 た とは言えない

,と

い う明白な論 理 的主張で ある。 この方法論 的論点 は

, Jes・

ミルをは じめ とす る他 の49世 紀 のパ イオニア達 に よ って

,

しば しば論義 されて きた ものである。 これを タマ スは再検討 してい る。すなわち

,彼

は, 科学者 が研究 室実験 に依存す る程度を指摘 し

,研

究 室 実験 は

,二

つ の主 たる点 において実践的な通 用 の場合 とは異 なると主張す る。先づ第一 に

,通

常 の研究室実験 は多 くの点で 非 常 に 単純化 され る。換言 すれば

,実

験者 はその人 に直接 に関係 しない全て の変数 を排除す る。第二 に

,研

究 室 に お いて は

,失

敗 の結果 は極少化 され うる。 しか るに

,現

実 の社会実験 の場合 には

,い

か な る失敗 も禁 ぜ られ る。 タマ スによれば

,も

し関係者 に害 的影響 が あると予測 され る場合には

,ど

ん なに月ヽさい 社会 的実験で も

,単

にある知識を獲得す るためにのみ許 され るべ きではないと してい る。 「 さて

,全

て のいゎゆ る社会実験 において は

,い

か に スケールが小 さか ろ うとも

,実

験 的価値 に

(16)

臣 真 歳 国 72 つ いての疑 間が合 まれ る。なん となれば

,こ

れ らの実験 の対象 は人で あるか らで ある。社会科学者 は

,そ

れ らの実験 によ って影響 され る人 々の未来 に

,彼

の実験 を課す ることの疑 間を排 除 出 来 な い。 それ故 に

,彼

は 自らの理論を証 明す るために

,失

敗 の危 険をおかす ことを決 して正 当化 出来 な ぃ。」(4) 更 に

,タ

マ スは

,社

会科学者 の実験 は

,恩

恵 のチ ャンスが害 のチ ャンスよ り大 きい と確信 出来 る 場合 にのみ正 当化 され うると し

,そ

のためには

,先

づ その理論 や一般化を完成 すべ きであると主張 す る。 そ して

,そ

の理論完成 のためには

,次

の三点 が特 に考慮 され る必要 があるとい う。第一 に, 一定 の法則や関係 に到達す るためには比較法

COmperative Methodが

と り入 れ られ るべ きで あ ること。第二 に

,「

あ らか じめ

,あ

る特 定 の事実群 を恣意 的に選択 しないで

,所

与 の社会 における 全体 の生活を考慮 す る必要があ る。」

(5)こ

と。第二 に

,た

とえ一般 化が得 られて も

,そ

れ と全 く 正反対 の実験 につ いて体系的な研究 をす るとか

,か

か る矛盾 が単 に うゎべだけのもので あ って

,

じ つ は他 の諸要素 の影響 によること

,な

どをは っき りさせ るまで は十分 な もので はない。すなわち, 社会理論で は

,実

験 的にテス ト出来 ぬ故

,社

会科学者 に よる反対 の事例 の積極 的な研究 にまつ他 な い

,と

い うことで ある。 この三点 は

,ブ

ル ーマーも指摘す るごと く,(。

)非

常 に 重 要 な もので あ る。特 に第三 の点 は

,社

会生 活 の研究 には実験 的方法 は不適 当で あ る

,と

い うむ しろ警告 であると い って もよい。 そ して

,こ

こか ら

,

実験 に代 る もの と して

,「

状況 の規定」 の概念 を提 出 してい る。 タマ スは

,研

究 の科学性 は究極 には「 現実へ の適用性 」にあ ると考えた。

(7)し

か しなが ら

,法

則 とい うのは元来 抽象 的であ り

,現

実 の状況 は具体 的で ある。 それ故 に

,科

学 的な法則 の適用 は非 常 に困難 とな る。すなわち

,社

会実 践 において は

,利

用 した り改善 したい と思 う諸要素が

,ゎ

れゎ れ の行動が従 ゎなければな らない状況 に常に具現す る。従 って

,個

人 の態度や社会制度 の修正を欲 す ると否 とにかかゎ らず

,ま

づ もって

,そ

の状況を検討す ることが必要 にな って くる。そ こで

,タ

マ スは

,状

況 には次 の三種類 の資料 が含 まれてい ることを指摘す る。 「(1)個人 ない し社会がそのもとで行動す る客観的条件

Objective condition,す

なゎち

,一

定 の 時 において

,直

接 にで あれ間接 にで あれ

,個

人 ない しは集団 の意識状態 に影響を与え る価値―一 経 済 的

,社

会 的

,宗

教 的

,知

的な どの諸価値―― の総体。12)一定 の時 において

,個

人 ない しは集団 の 行動 の上 に実際的な影響 を もつ ところの既 存 の 態 度 pre_existing attitudeo 13)状 況 の 規 定

definitiOn of the situation,す なゎ ち

,

態度 の条件 とか

,態

度 に ともな う意識 についての多少

とも明確な知覚

,が

それである。」(8)

「 ポー ラン ド農 民 」においては

,

これ らの要素 の うちの第二 ものが強調 されている。 とい うの は

,タ

マ スは

,

この書執筆 中には

,因

果 的諸 関係 は態度 と価値 の間に うち立て られ ると信 じていた か らで ある。 た しか に

,

この概念 は社会 的価値 や態度 の公式化 において

,幾

分 ル ーズな理論 に

,よ

(17)

思 えない。

この「 状況 の規定 」 とい う有名 な概念 は

,タ

マ スが

,こ

れ以後 の彼 の研究 において中心的位置を おいた概念である。 これが完成 したのは

,1928年

の「 アメ リカの子供」

(The Child in America)

で あ り

,

タマ スの最後 の著書「 原始人 の行動」において

,パ

ー ソナ リテ ィと人間行動 は文化 によっ て規定 されていることを 示 した時 の中心概念 が

,

この「 状況の規定」アプローチである。 R・ マー トンは

,

この概念 をやや誇張的に

,ニ

ュー トンの定理 にも比すべ きもの と評価 し,。

)A・

ボ ス コ フは

,こ

の概念 による分析 は

,M・

ウエ ーバ ーの「 理解」

Verstehenの

概 念 に

,

非 常 に関連 す る もの と して高 く評価 している。(10)ま た

,宇

賀博 は

,パ

ース ンズ理論 の基本 図式であ る「 行為者一 状況 」図式が

,基

本 的には

,タ

マ スとG・ H・ ミー ドの総合図式 の形で展開 されてい ることを指摘 して い る。 その中で

,パ

ー ス ンズ の「 行為考一状況 」図式 と「 ポー ラン ド農民」の考え方を比較考 察 し

,パ

ー ス ンズ の この図式を

,

タマ ス

=ズ

ナニエ ッキ的図式 とよんで も差支えない とまで述べ さ せ ている。こ1)

2.パ

ースナ リテ ィ理論 タマ スはパ ースナ リテ ィのダ イナ ミックな側面 に関心を向けている。 そ して それを

,彼

が気質 的 態 度

temperattental attitudeと

ょぶ基礎 的態度群 を

,個

人 は所有 して生 れ ると仮定す ることに よ って処理 してい る。彼 によると

,

これ らの気質的態度 は外的な社会的影響 によって働 き か け ら

,彼

が性格態度 Character attitudeと ょぶ ところのものにな る。 これ らが

,個

人 が外界 と直面 す る一連 の組織 された態度群で ある。気質的態度が性格態度 に変 るプ ロセスを

,

タマ スは個人 の生 活組織

hfe Organizationと

名 づ けて い る。 しか し, ここで問題 にな るのは

,タ

マ スがその移行 様式 に

,「

生活組織」 とい う名前を与えなが ら

,性

格 に変 るためにはどのよ うな力が個人 の気質 に 作用 す るか を説 明 していない点 である。 かマ スは

,い

か に性格 は特別 な社会的価値か ら生 じるかを説 明す るために

,「

状 況 の規定 」概

a

を再提 出 している。実際

,性

格 と気 質 の間 の相違 は

,気

質態度 が状況を規定で きな くて

,単

に状況 へ の本能 的反応を生 じるだけである

,

とい う点 にある。 この ことは

,個

人 にお ける状況を規定す る ための能力 はその性格態度 のよ り早 い発達を仮定 す ることか ら出て くることにな る。 タマ スはまた

,パ

ースナ リテ ィのタイポ ロジーを提 出 している。彼 は人間 のパ ースナ リテ ィを,

「 ペ リシテ人型 」the philistine type,「 ボヘ ミヤ人型 」

the bOhemian type,「

創 造 人 型 」

the creat e ind

idual typeの

三類型 に分類 している。

先 づ「 ペ リンテ人型 」は頑具不霊 で伝統的形式を固持す る

,す

なゎ ち

,新

しい態度を とる ことが 出来 ない とい うよ うな厳格 な信念 や価値 を もった人 々である。 その結果

,

このタイプの人 は

,

自分 自身 の行動や行為を諸規則 に依存す る。 それ故 に

,探

求 的な タイプではない。 ただ思考 において精 密 で あ る。 そ して

,

このタイプの人 は 自か らが認識で きる何 らかの状況 にいかに適応 させ るかを知

(18)

臣 74 って い る。一方

,「

ボヘ ミア人型 」は

,社

会規範 の内面 化 が極 めて弱 く

,そ

の結果 あたか も「 風 に 摩 ぐ葺 」のた とえ のよ うに

,社

会的諸状況 に対 して反応過剰 となる。すなわち

,

この タイプの人 は そ の性格 が決 して完全 に形成 されない人で ある。 それ故 に

,彼

の性格態度 は首尾一貫 した体系 に決 して動 かされない。最後に

,「

倉」造 大型 」は

,

自 らの置 かれて い る社会的秩序 に対 して進歩 的で可 塑 的な

,か

つ責任 のある関係をか ちとるタイプであ る。 この タイプの人 は

,タ

マ スによると

,最

も 理 想 とされ る型で ある。 このタイプの人 は 自分 自身 の内に体系的拡大の可能性を もっている。 そ し て

,こ

の可能性を一定 の 目的の追求 に利用す る。彼 の目的の恒久性は

,彼

に体験 を累積 せ しめ

,か

,彼

の状況へ の通応 こそが彼 の一生涯 の発展を促進せ しめ る。 このがイポ ロジーは

,変

勃 の研究 に とって極 めて示 唆深 きもので あ り

,経

験 的 にも論理 的 にも, 適 切 のよ うに思え る。 これ らは

,タ

マ スの世界 につ いて の深 い

,か

つ体験 された知識 の形跡を示す もので あるといえ る。更 に

,

この タイポロジーは

,社

会学及 び社会心理学 のその後 の発 展 に大 な る 影 響 を与えた。特 に

,後

のパ ー ソナ リテ ィ論 に大 きな影響 を及 ば した。(12)リ ー スマ ンの 理 論 に

,そ

の影響 が顕著 にみ られ る。彼 は人間文書 の利用方法 につ いて検討 しているが

,

ここにも

,

ヴ ェブ レンと共 に

,タ

マ スが影響をな してい ることを示 してい る。 キ ンボール・ ヤ ングは

,パ

ースナ リテ ィの社会 的相互作用理論 の形式に貢献 した研究者 と して, J・

M・

ボール ドウ ィン

,C・

H・ クー リー, J・ デ ュー イ

,G・

H・ ミー ド

,そ

して タマ スを あ げて い る。 ヤ ングによると

,ボ

ール ドウ ィン

,

ミー ドの二人 は

,相

互作用 における自己・ 自我 の発 生 に関 して貢献 してお り

,デ

ュー イ

,

ミー ドは思考や知識 自体 の本質的な社会 的

,文

化 的性質 を指 摘 した点 に あると してい る。 そ して

,

タマ スにつ いて は

,次

の如 く述べている。 「 彼 は個人 の発展 における社会 的

,

文化 的要 因に最初 か ら注意 を向けて いた。・……彼 は後 に, “situational approach''と呼 ぶ ものに注意 を移 行 した。 それ は

,個

人 と社会 的状況 の コンスタ ン トな相互作用 を強調 した もので ある。」

3.社

会 解 体 理 論 タマ スの提 出 したもう一 つの重要 な社会理論 は,社会解体 と社 会再組織SOCial disorganization

and reorganizationの

過程 に関す るもので ある。 これは

,後

の社会解体論 に多大 の貢献をな した もので ある。 ドン・ マルテ ィンデールはタマ スの現代社会学へ の貢献 と して次の四項 目を あげてい る。

(1) a typology of motivational cotegories

(2) the cOncept of life organization and social organization

(3) a typ010gy of individual life‐organization

(4) Special concepts Of personal and social disorganization

参照

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