スイカの性表現に及ぼす硝酸銀の影響
倉 田 久 男,取 違 正 人THE EFFECT OF SIL.VER NlTRATE ON SEX EXPRE,SSIONIN WATERMELON
Hisao KuRATA and Masato ToRICHIG^l
ItisIepOrtedthatifthepIOductionofethyleneisabundent,thenumberoffemaleaowersincucumberincreases
butthatinwatermelondecreasesTheproductionofethylenewasmeasuredatcucumberandwatermelon plants
treatedwithlOOppmethephon」Therewasnoobviousdi鮎renceofethyleneproductioninbothplantswithor without thetreatment Toexaminethee能ctofethyleneinhibitoronfbrmationoffemale負owersofwatermelon,500ppmsilvernitratewassprayedtwiceontoplantswithdaughterveinshavingfromOl5to36unfbldedleaves;theplantshadbeenplanted
onApTi127and鎖oweredonfiomlateMaytillearlyJunelThenumberoffbmale且owersdecreasedatfiom14thto18thnodesofdaughterveinsbuttheyincreasedatfiOm20thto28thnodesofdaughterveinslAsfbrthelatter
nodes,giant hermaphIOdite且owers,nOrmalfemaleflowers,nOrmalhermaphIOdite負owers and hermaphrodite
flowerswithrudimentryovarieswerefbrmed,andthefbrmationoffemaleorhermaphroditenowersoccurridat
fi・OmtWOtO且vecontinuousnodesThen,thenumberofbloomingwasafbwinearlygrwoingseasonbutincreased inthelatterhalf.Thereweremuchvariationinnumberoffbmaleflowersorhermaphrodite鎖owersontreatedplants oIOntreatedveins When500ppmsilvernitratewassprayedontoplants,WhichhadbeenplantedonJuly15and且oweredinAugust, orwhichhadbeenplantedonAugust20and且oweredinSeptember,thenumberofftmale負owersandhermaphrodite 80WerSdecreasedandagianthermaphrodite鎖owerswasnotfbrmed”Thee庁bctofsilvernitrateonsexexpression of■watermelonmightdependontheseasonofcultivationandtheconditionofgrowing 内生エチレンの生成が多い場合,キ.ユ.ウリは雌花が増加するがスイカでは減少する.キユウリとスイカにエステル 100PPMを処理したものと処理しないものについてエチレンの発生を調べると,エステル処理の有鰍こかかわらず 作物間には明らかな差はなかった… スイカについて,雌性化に及ぼすエチレン抑制物質の影響を調べるために,4月27日定植5月下旬∼6月上旬開花 のものに,親づるを摘心し子づるが0.5∼36斐展開時に硝酸銀500PPM液を2回薬面散布した・子づる14∼18節の 雌花は減少したが,20∼28節では大形両全花,普通の雌花と両全花,不完全両全花が増加し,また2∼5節連続して 雌花 両全花がついたものもあらわれた小 閑花は早い時期は少なく後半に増加した,処理による雌花 両全花の数は 株やつるにより変異が大きかったい 7月15日定植8月開花のものおよび8月20日定植9月開花のスイカに同様の処理をした場合,処理により雌花,両 全花は減少し大形両全花はあらわれなかった。スイカの性分化に及ぼす硝酸銀処理の影響は,栽培時期や生育条件な どによって昇るようである“ 緒 ウリ科果菜のうち,キュウリについてはエステル60∼100PPMを・菓面散布すると,処理時に雌雄決定直前の花か ら未分化の節まで8∼10節,集中して雌花が増加する,また雌花の多い品種は少ない品種に比べて内生エチレン盈が 多いなど,内生エチレン盈の増加が雌性化と関連していると考えられている,カボチャ(C・∽α方gmα,C小用ク∫dαね),香川大学農学部学術報告 第34巻 第2号(1983) 140 メロンも同様の性格をもつと考えられる.それに反しスイカでは,エステル 20∼100PPMを3∼5菓期に,またほ 異る温度条件で英面散布すると,何れの場合もある節間の雌花分化をl乱奪し,分化している雄花の発育を意くする. このキュウリとスイカの,エチレンに対し反対の動きについては詳しい研究がないので,内生エチレンの働きの立 場から実験を進めた,とくに内生エチレンの作用阻審剤であるAgNO。を葉面散布すると,キ.ユウリでは雌花が雄性 化する方向に進むとされているので,キュ.ウリと逆な関係にあるスイカでは,内生エチレンを減少,または作用阻著 することで雌性化が期待できるのではないかと推察される,これらについて若干の実証をえたので報告する… 第1実 験は主に取連が,第2実験は倉田が担当した. 実験材料および方法 第1実験 エチレンの発生消長(スイカとキェ.ウリ比較) 1980年6月1日,スイカ(品種翠肇,こだま)とキ.ユウリ(品種ときわ3号P)をは種,6月28日本葉4枚展開僅 にエステル100PPMを散布処理したが降雨にあったので7月3日再処理した、エステル処理区と無処理区について 6月28日,30日,7月2軋 5日,8日,14日,エチレン量を測定した小 エチレンは植物体をTween20,0…01%液処 理後,フラスコに水没,約100mmHgまで減圧,3分後に圧を戻し,フラスコ内のガスを採集,ガスクロマトグラフ ィで定鼓したい カラムは活性アルミナ,キャリアーはNl.8kg/cm2,定愚ほエチレン1pPMの長さと比べて行った 第2実験 AgNO。散布処理 第1回はスイカ品種秀陽を1982年3月21日接木(台木はユ・ウガオ・品種かちどき),4月27日親づるを摘心して畦巾 3m,林間60cmに定植,ポリエチレントンネル被覆,自ポリエチレンをマルチングして一・般早熟栽培に準じて栽培 した,トンネルの換気始は5月6日,AgNO3処理は次の3区とし,500PPM液を株全体に葉面散布した A区 子づる0、5恭期,5月7日と2柔期5月10臥 B区 子づる2葉期,5月10日と3,6葉期5月12臥 C区 子づる3.6菜期,5月12日と5月14日 Tween20は用いなかった.散布時期は子づる展開柴数(x)と花の始源体分化節位(y)の関係,(親づるを摘心した 場合),y=7.67+‘7,85xに基づき,収穫目的の節位の花の分化期(A区)と同節位が岨 雄決定までの間をB,C区 に設定した 第2回は品種秀陽を同年6月21日接木(台木かちどき),7月15日定植。第3回は耐暑性と思われる品種光玉みど りと雌花数の多い台湾種子用品種をJ7月31日接木(台木何れもかちどき),8月20日定植した,共に親づるは摘心, 子づる2菓期を目標に第1回と同様AgNO3500PPM液を2日おいて2回葉面散布した 以上3回とも子づるは4本仕立の1方整枝,孫づるはなるべく小さいうちに除去した,子づる30節までの雌花 両 全花について着生節位,子房の大きさ,開花期などを調べた,なおAgNO。処理時の展開英数をつる毎に記録し,−雌 花 両全花着花節位と処理時の花の分化発育段階との関係を類推した 実 験 結 果 第1実験 キュウリとスイカのエチレン発生消長 第1図の通りで,無処理は1PPM以下であるがエアテルを処理すると2日後には3∼4倍に増加する,これらの 動きはキュウリ,スイカとも同傾向,同程度で,作物間に明らかな差は認められない. 第2実験 AgNO。処理 第1回実験の雌花 両全花のつき方は節位別にみると(第2図),AgNO。処理区は14∼18節の雌花は減少したが, 20∼28節で明らかな雌性化がみられた,即ち大形両全花,普通の雌花と両全花,不完全両全花が増加し,雄花に柱頭 の発育したものもあらわれた.大形両全花と普通の雌花,両全花の合計は標準区より増加したし,30節までのつる当 たり花数も(第1表)処理区が多く,しかも雌花,両全花の連続着花が増加し,とくにB,C区では4節あるいは5 節連続着花もみられた,連続した場合は下位節位に不完全両全花が,上位節位に大形両全花がつく場合が多い. 6月11日開花の雌花,両全花の大書さ,この時期は標準区は開花末期であり,B,C区は大形両全花の多い時期の
比較であるが,第2表のように重量比で処理 B,C区は標準区の2倍位,花扱は長く太く 着果しやすい花であった. このような雌性化の程度はA区よりB,C 区が明らかであり,子づるだけAgNO3液に 浸潰処理するより,全株に業面散布する方が 効果的であった. B,C 区の雌性化が明瞭な節位について, 処理時の子づるの発育(展開薬数)と雌性化 した節位の処理時の花の分化発育段階との関 係を図示すると第3図のようで,明らかに雌 性化があらわれる節位は処理時につるが発育 している場合は雌雄決定直前に当り,つるが PPM 2“0 実線 無処理区 点線 エスレル処理区 × キュウリ ○ スイカ翠章 ● スイカこだま 0 5 2830/6月2 5 8 14/7月 第1図 エチレン発生消長 発育していない場合は葉の分化 最上節(生長点部)から2∼3 節上に相当していた 孫づるはなるべく早く除去し 7 たが,子づるの5∼8節から発
生した取り残こしの孫づるにも,花6
点線 標準区 実線 AgNO3処理B,C区 (1)普通の雌花,両全花 (2)大形両全花 (3)不完全両全花 子づる同様低い節位から連続着 花するものがみられた。 4 処理による雌性化は株により・数3 同じ株でもつるにより変異があ った,子づるについては一・般に 生育充実のよいものが雌性化し やすいようであったが,孫づる では生育の中以下でも効果があ らわれた. 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 子づる節位 第2図 節位別雌花,両全花着花状況(10株当たり) 第1表 雌花(両全花)の大きさと連続着花\
大きさ別花数(つる当り) 連続着花数(10株当り) 主たる開花期大 形 普 通 不完全 計 2 3 4 5 計
標 準 区 0 2.4 0 2.4 5 0 0 0 5 5月26日∼6月10日 処 理 A 0.9 1,.9 0 2.8 16 0 0 0 16 6月3日− /1 B 1.1 1.7 0‖3 3.1 14 8 2 0 24 6月6日∼ // C 0い8 2.0 1.0 3.8 10 6 6 2 24 6月7日∼ 開花加硫曲線(第4図)のように処理各区はかなりお くれて急増している,これは処理によりつるの発育が若 干おくれたことと,高節位に集中して着花したことによ るもので,この場合もA区に比しB,C区が明らかな傾 向であった.しかし早い開花はA区が少なく処理区の うちではおそい処理が若干多い傾向があった.連続着花 したものの開花は殆んど同日開花で,開花日の雨天対策 第2表 6月11日開花雌花(両全花)の大きさ比較 子 房 塞 子房平均 全東平均 平均 鞄 囲 横径 縦径処理B,C g 3.16 2.60 2−40∼3..20 Cm Cm 1.521.86
標 準 区 1り57 1.26 1.20∼1..50 1..20 1…55 処理/標準 2。.01 2い07 1い27 1一.20 には余り期待できそうでない 処理による薬普は,処理時に展開段階の集2∼3枚が斐身が縮れて展開不良になることと,つるの発育が若干おく香川大学農学部学術報告 第34巻 第2号(1983) 142 子づるの発育︵展開乗数︶ ト 4 3 2 1 0 生長点二∼三節上 業分化最 始源体分 ガ タ 形 花 ベ ン 形 雄 ズ イ 初 雌 雄 決 定 直 上 化 節 節 成 成 生 前 雌性化が明らかになった 節位について,処理時の 子づる発育と花の分化発 育段階の関係 第3図 21/5月 26 31 5/6月 10日 第4図 雌花(両全花)開花加硫曲線 第3表 雌花,両全花開花数(つる当り) れるだけで,全体とすれば問題にする程ではなく, 雄花の発育に影響はなかった 第2回および第3回実験では断片的に処理の影響 はみられたが,第1回実験のような明らかな雌性化 はあらわれなかった.即ち第2回では花の大きさが 平均して大きく,両回とも僅かであるが2節連続着 花が増加した(第3表),雌花節位は処理により若 干上昇し,雌花開花加積曲線は両区とも(第5,6 図)第1回実験同様におくれた. 実験 品 種 区 着 花 数 2花連続数 腰 準 区 2‖40 0.11 田 秀
陽 AgNO3区 1.68
0.18 標 準 区 1.、40 0光玉みどり AgNO3区 1.25
0.05 標 準 区 2.31 0台湾種子用 AgNO3区 2.19
0.21 25 20 15 10 5 0 花 5日 10 15 20 25/9月 第6図 雌花開花加硫曲線 (第3回実験,台湾種子用品種,子づる 20本当たり) 5日10 15 20 25/8月 第5図 雌花開花加硫曲線 (第2回実験,子づる10本当たり) 考 察 エチレンがウリ科植物の花の性分化に影響する場面についての研究のうち,キュウリ,メロン,カボチャなどエチ レンを増加する方向を与えると雌花が増加するものについては数多くの研究があるが,エチレンを増加する方向を与 えると雌花が減少するスイカについては,その事実が明らかにされただけでそれ以上の研究は殆んどない・ 本研究において,キュウリとスイカの内生エチレンの発生消長を比べると,エチレンを増加する手段を講じた区も 無処理標準区においても同傾向同程度であって,花の性分化が逆転する程の差はあらわれなかった・このことば雌花 分化におけるキュウリとスイカの速いは,一腰的なエチレンの発生消長の差ではなく,内生エチレンの働きの差異に よるものと考えられるい 植物に対するAgNO3処理は,内生エチレンの生成を抑制するのではなくエチレンの作用を阻著する働きをするものと理解されており,AgNO。尭面散布によるウリ類の性分化への影響は,キ.ユウリについて250∼500PPM処理に よって,雌花数が減少して雄花が多くなるとか,雌花節が雌花雄花混合節になって全雌花数が減少する,あるいは雌 花の子房の発育不良,短いものがあらわれることなどが Beyer・や筆者(未発表)によって実証されている,少なく ともこの反応はエチレンを増加させた場合と逆の反応である,AgNO。の働きから考えて納得できよう−. スイカの花の性分化についてエチレンの働きがキ、ユウリと逆であるならば,AgNO。処理によって雌性化の方向に 進むであろうことを期待して実験したのであるが,5月下旬∼6月上旬開花の場合は,やや高節位になったが雌花と 完全両全花の合計は無処理のそれより増加し,その外に不完全両全花や連続着花が増加して,予期した通り全体とし て雌性化方向に誘導されたものと解釈されようい 雌花,両全花が増加しただけでなく,発育段階の異る両全花は雄花 から雌花化方向に動いたもの,大形両全花は更に進んだものと考えられるからである. ChristopherらはスイカにAgNO3とAVG(=lテレン抑制物質)を併用処理して,側役にあらわれた5節連続の 両全花着花や発育段階別の不完全両全花の写真をあげているが,これは本実験と同様であった,しかし親づるについ て雌花と完全,不完全両全花の合計と雄花数との比を求め,AgNO。,AVG処理によって雌花,両全花の割合が増加 したとしているが,各処理区とも雌花数は著しく減少し,不完全両全花を除いた雌花と完全両全花の合計は標準無処 理区の雌花数より少ない数倍である,またAgNO,単用はAgNO,とAVG併用,AVG単用との差はない ..この成 果は本実験の5月下旬∼6月上旬開花と概略同一・方向であるが,本実験の処理区の雌花と完全両全花の合計が無処理 区より増加した成果までには及んでいないい −・方,本実験においても8月開花の場合および9月開花の場合では,断片的に5月下旬∼6月上旬開花の実験成果 に近い動きはあっても,全体として明確な雌性化傾向は認められなかった.実験年の天候は第1回の5月∼6月は異 例な晴天つづきで,茎葉充実し雌花の素質がよかったが,8月開花はその前のJ7月が遅くれた長梅雨のため日照不足 であり,9月開花は高温期かつ天候不順で,ともに茎葉は貧弱,開花する雌花雄花ともに素質の劣る条件であった… これらからみてAgNO。処理の影響は処理条件やスイカの生育条件によって動くことは明らかである,これはAgNO。 処理が直接雌花分化に働くのではなく,その間に未知の複雑な経過が内在しておこりこれがスイカの生育条件,オ・− キシンを含む体内条件などによって動かされることによるものと考え.られよう. また本実験において雌性化があらわれる7の数節は雌花が減少した,キ.ユウリにエスレルを処理すると雌花化した 上の数節に花のでない節ができることと共通しているかも知れない,体内条件との作用機作に属するものであろうが 理由は明確でない. 内生エチレンの抑制はメチオニンからエチレン生成までの経過において幾つかの段階,内生エチレンの働く場面な どがあり,その間に多くのエチレン抑制物質が挙げられている、スイカの場合雌性化に最も能率,効果的な方法や, 更にスイカの生育条件,それに伴う体内条件との関連など今後究明されねばならない,これらの問題はあるにしても 総括的に考えると,ウリ類の雌性化についてエチレン生成を増加すると有効な作物と,ある条件でエチレン生成を抑 制するか作用を阻害すると看効な作物とがあることを指摘したと言ってよいだろうと考え.る,. AgNO。処理により,処理時に雌雄決定直前の花から雌性化することを碓めた,これはキュウリにエスレルを処理 して雌性化する場合と合致している,化学物質を用いエチレン調節によって雌性化する場合共通するもののようであ る. 引 用 文 献 (7)KARCHl,Z,AGovERS:JAmerSocHortScl 97(3)357−360(1972) (8)倉田久男:香川大農学部学報 24(2),143−155 (1973)
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