石油精製・流通研究会説明資料
国内外の石油製品需給と品質規制動向
平成28年10月24日 (一財)石油エネルギー技術センター Ⅰ. 世界及びアジア・太平洋の石油製品需要の動向 Ⅱ. ガソリン、軽油及び船舶燃料の品質規制動向 Ⅲ. アジア・太平洋地域の石油精製設備の動向 Ⅳ. 日本の燃料油コストの位置づけ(2012年) Ⅴ. まとめ 資料4Ⅰ. 世界及びアジア・太平洋の石油製品需要の動向
➣世界及びアジア・太平洋の石油製品需要の伸び ➣アジア・太平洋における油種別の需要伸長予測 ➣アジア・太平洋域内での需給バランスと地域外からの輸出入(ガソリン、軽油) 2 アジア・太平洋の需要伸長は大きく、域内及び域外との石油 製品輸出入が多く、競争が激しいが日本の輸出候補先はある。1.世界の石油製品需要の伸び
世界の石油製品
需要
は現在約9千万BPD
より
増加
を続けている。
その中でも、
需要量・
需要伸びともに大きいの
は、アジア・太平洋地域
である。
一方、北米、欧州は需
要が減少する。
(6) (5) (4) (3) (2) (1) 0 1 2 3 4 5 North
America AmericaSouth Africa WesternEurope EasternEurope Middle East Asia 2013 2020 2025 2030 S3_02380.001.01.xlsx\F3.2 世界の地域別取引石油製品取引量(百万BPD)
2.世界の石油輸出入動向
North America FSU Asia Middle East Africa Europe LPG Naphtha Gasoline Jet/Kerosene Diesel/Gas Oil Fuel Oil South America 世界の石油製品取引の流れ、2030年 輸 出 輸 入 ・ガソリン/ディーゼルインバランス ・ディーゼル/ガスオイル輸入増 ・シェール高生産量維持 ・石油製品、LPG輸出増 ・ガソリン輸入減 ・大きな中国需要 ・LPG、ナフサ、 燃料油の輸入増 Nexant 資料(2014) Nexant 資料(2014)中東、ロシア、北米の持続的な供給能力余剰及び
アジア・太平洋
、欧州南米の
供給不足が示唆される
。アフリカは、この先ほぼ均衡のとれた純取引量と予想
される。
アジア・太平洋地域以外からの石油製品の流入も大きくなる
。
43.アジア・太平洋の石油製品需要(2015-2030年)
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 2030 Gasoline Naphtha Jet Fuel / Kero Middle Distillate Residual Fuel LPG Other Products(1)Source: Hart Energy, 2015
ガソリン 軽油留分 ジェット/ ケロシン ナフサ 重油 LPG その他 (百万BPD) アジア・太平洋地域における石油製品全体の需要は、2020年末までは年2.2%、その後 2020-2035年の間は年1.5%の割合で増加する予想である。将来の伸びでは、ガソリン 及び車用(オンロード)ディーゼルが寄与し次第に増加すると思われる。2013-2035年の 間、ガソリン需要は年1.6%で増加し、ディーゼルの年平均成長率は2.3%に達する見込 みである。
4.国別ガソリン需給バランス(2013~2030年 )
ガソリン需給バランス 2013 2014 2015 2020 2025 2030 備考 インドネシア -0.34 -0.41 -0.43 -0.53 -0.59 -0.64 ○ 中国 0.01 0.07 0.01 0.05 -0.22 -0.41 マレーシア -0.09 -0.09 -0.1 -0.12 -0.15 -0.19 ○ オーストラリア -0.07 -0.08 -0.13 -0.13 -0.14 -0.14 ○ ベトナム -0.07 -0.07 -0.09 -0.04 -0.06 -0.09 ○ 台湾 0.01 0.01 0 -0.04 -0.06 -0.09 △ フィリピン -0.04 -0.04 -0.04 -0.05 -0.06 -0.08 △ ニュージーランド -0.02 -0.02 -0.02 -0.03 -0.03 -0.04 バングラデシュ 0 0 0 -0.01 -0.01 -0.01 ミャンマー 0 0 0 -0.01 -0.01 -0.01 タイ 0.03 0.03 0.02 0.01 0 -0.01 ブルネイ 0 0 0 0 0 0 カンボジア -0.02 -0.02 -0.02 0.01 0 0 韓国 0.16 0.19 0.19 0.17 0.18 0.19 競合 日本 -0.02 0.01 -0.02 -0.01 0.1 0.21 シンガポール 0.22 0.23 0.23 0.23 0.22 0.22 競合 インド 0.32 0.29 0.32 0.46 0.34 0.23 競合 インド、バングラディッシュは、アジア・太平洋に含む。中国(追記)は、2015年11月に77万KL/月輸出であったので候補から外した。 需要量及び生産量の差よりガソリン需給バランスを算出。インドネシア、マレーシア、オース トラリア、ベトナム等がガソリン輸入国。日本からのガソリン輸出先候補。Source data : Hart Energy, 2015 注) ○:我が国の輸出先候補先。 競合:我が国の輸出競合国。
(単位:百万BPD)
赤字数字が輸入、黒字数字が輸出
欧州 北米 0.01 南米 欧州 アフリカ 2014年のガソリン輸入 2014年のガソリン輸出 輸出量:0.08百万BPD 輸入量:0.35百万BPD 合計 ▲0.27百万BPD
Source: Hart Energy, 2015
5.アジア・太平洋と他地域とのガソリン貿易(2014年)
(百万BPD )アジア・太平洋域内のガソリンの輸出入だけで
はなく、他地域とのガソリンの輸出入がある。輸
出入バランスを見ると2014年は
27万BPDの輸
入超過
である。
生産量:5.71 百万BPD軽油需給バランス 2013 2014 2015 2020 2025 2030 候補 中国 -0.1 -0.01 -0.06 -0.6 -1.72 -2.59 オーストラリア -0.17 -0.19 -0.25 -0.29 -0.33 -0.35 ○ インドネシア -0.31 -0.32 -0.34 -0.22 -0.26 -0.28 ○ ベトナム -0.14 -0.15 -0.17 -0.13 -0.18 -0.23 ○ バングラデシュ -0.08 -0.08 -0.09 -0.11 -0.14 -0.18 ○ フィリピン -0.06 -0.06 -0.06 -0.08 -0.1 -0.12 ○ マレーシア 0.03 0.04 0.04 0.02 -0.04 -0.11 ○ ミャンマー -0.01 -0.02 -0.02 -0.03 -0.03 -0.05 ニュージーランド -0.02 -0.02 -0.02 -0.02 -0.03 -0.02 ブルネイ 0 0 0 0 0 -0.01 カンボジア -0.02 -0.02 -0.03 0.01 0 -0.01 シンガポール 0.17 0.19 0.18 0.07 0.06 0.05 競合 台湾 0.2 0.2 0.19 0.16 0.15 0.13 競合 日本 0.18 0.14 0.13 0.13 0.22 0.32 インド 0.56 0.49 0.55 0.91 0.66 0.41 競合 タイ 0.41 0.41 0.41 0.43 0.43 0.43 競合 韓国 0.4 0.44 0.43 0.47 0.49 0.53 競合 (単位:百万BPD) 赤字数字が輸入、黒字数字が輸出
Source data : Hart Energy, 2015 注) ○:我が国の輸出先候補先。 競合:我が国の輸出競合国。 需要量及び生産量の差より軽油需給バランスを算出。経済発展に伴う建機用途(オフロード)や ディーゼル車用途(オンロード)が伸び、インドネシア、オーストラリア、ベトナム等が軽油輸入国。 インド、バングラディッシュは、アジア・太平洋に含む。中国(追記)は、2015年11月に105万KL/月輸出であったので、候補から除いた。
6.国別軽油需給バランス(2013~2030年 )
82014年の軽油留分輸入 2014年の軽油留分輸出 北米 0.02 南米 0.04 アフリカ 欧州
7.アジア・太平洋と他地域との軽油留分貿易(2014年)
(百万BPD ) 輸出量:0.52百万BPD 輸入量:0.47百万BPD 合計 0.05百万BPD 生産量:9.73 百万BPDSource: Hart Energy, 2015
アジア・太平洋は、中間留分の需給が
ほぼ均衡
Ⅱ. ガソリン、軽油及び船舶燃料の品質規制動向
➣アジア・太平洋におけるガソリン・軽油の硫黄分規制動向 ➣船舶燃料の硫黄分規制動向 10 アジア・太平洋のガソリン・軽油の硫黄分規制は中国、インド、ベトナムで 厳しくなる(10ppm規制へ)。品質規制が同質となり、日本への輸入脅威 となる可能性がある。 重質油の大口需要である船舶燃料も硫黄分規制(一般海域0.5%)が 2020年(又は2025年)から開始され、日本も対応を迫られる。2015年 2020年 2025-2030年 2021年までに、主要国は硫黄分規制を10ppmへ強化。輸入基調の 国への日本の高品質ガソリンの輸出機会となるが、同時に、規制の 同質化により余剰国から輸入が増加する脅威にもなる。
8.アジア・太平洋のガソリン硫黄分規制(2015年~2030年)
2016年以降10ppm規制国 2016年 : ロシア 2017年 : 中国、(アメリカ) 2020年 : インド 2021年 : ベトナム 2025‐2030年時点の硫黄分上限 ミャンマー、カンボジア:501-3,500ppm インドネシア、ラオス :151-500ppm オーストラリア :51-150ppm タイ、マレーシア、フィリピン等:31-50ppm 10ppm規制国 日本、台湾、韓国Source data : Hart Energy, 2015
9.アジア・太平洋の軽油硫黄分規制(2015年~2030年)
2015年 2020年 2025-2030年 2016年以降10ppm規制国 2016年 : ロシア 2017年 : 中国 2020年 : インド、マレーシア 2021 年 : ベトナム 2025‐2030年時点の硫黄分上限: ミャンマー、カンボジア、ラオス :2001-10,000ppm インドネシア、タイ、フィリピン :16-50ppm 10ppm規制国 日本、台湾、韓国、 シンガポール オーストラリア ニュージーランド 2021年までに、主要国は硫黄分規制が10ppmへ強化。ガソリンと 同様に日本の高品質軽油の輸出候補先は増えるが、日本への輸 入が増加する脅威ともなる。 1210.国際海事機関(IMO)での船舶燃料硫黄分規制の動向
着色エリア外:一般海域 *国際海事機関(IMO)の海洋環境保護委員会(MEPC)の会議 MEPC70(本年10/24-28)で開始年2020年か2025年が決定。 (5,000ppm) (1,000ppm) 船舶燃料油の硫黄分規制も全世界的に厳しい規制の方向に向かっている(2020年又は2025年規制) 13 ECA (Emission Control Areas)11.船舶燃料硫黄分規制への対応
①硫黄分規制に従った燃料使用 ②船舶への脱硫装置の設置(スクラバー) ③代替燃料(LNG等)への切り替え IMO船舶燃料油規制が開始されれば、船舶燃料油での対応の他、船舶側での脱硫装置の対応 やLNG燃料転換の方法も取れるが準備期間がかかると考えられる。 JPECで作成 14Ⅲ. アジア・太平洋地域の石油精製設備の動向
➣アジア・太平洋の原油精製能力の伸び ➣アジア・太平洋の二次装置能力 ➣精製設備過剰下の中国と輸出動向 アジア・太平洋地域では、2020年までに原油精製設備が、400万BPD増加すると 予想される。また、ガソリン、軽油の需要増加にともない、接触分解装置(ガソリン増産)、 コーカー、水素化分解装置(軽油増産)の増設が見込まれている。 ガソリン及び軽油の地域的需要対応に基づき、二次装置の装備状況が異なる。日本は 接触分解装置(FCC、RFCC)の装備率がアジア太平洋他国の中では高い。 精製設備過剰に苦しむ中国では、更に非国営製油所の能力増強が起こり供給が過剰 となり、石油製品輸出が増えており、域内競争が激化している。28 29 30 31 32 33 34 35 2015 2016 2017 2018 2019 2020 百万 B P D 年 図 アジア太平洋地域の原油蒸留能力(2015-2020年) Crude Distillation
Source: Hart Energy, 2015
12.アジア・太平洋地域の原油精製能力
(2015-2020年) アジア・太平洋の原油精製能力は、今後も増強される(2020年までに約400万 BPD増加)。日本全体の製油能力分の増加に相当。 約400万BPD 常圧蒸留装置能力 16 アジア・太平洋の建設プロジェクトは671万BPD。その内400万BPDが実行されると予測。13.アジア・太平洋地域諸国の二次装置能力
アジア・太平洋の分解能力は増加する。日本はガソリン増産を目指し
た、
触媒分解装置(FCC、RFCC)の装備率が高い
が分解軽油増産を狙う
各国のような、
水素化分解装置やコーカーの装備率が低い
。
図 ガソリン/軽油製造比と分解装置能力(2015年) 図 アジア・太平洋地域の分解能力 28 29 30 31 32 33 34 35 0 1 2 3 4 5 6 7 2015 2016 2017 2018 2019 2020 常 圧 蒸 留 装 置 能 力 ( 百 万 B P D ) 二 次 装 置 能 力 ( 百 万 B P D ) コーカー装置 水素化分解装置 触媒分解装置 常圧蒸留装置 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 ガ ソ リ ン / 軽 油 製 造 比 ( - ) 分 解 装 置 能 力 率 ( 常 圧 蒸 留 装 置 対 比 % ) コーカー装備率(%) 水素化分解装備率(%) 触媒分解装置装備率(%) ガソリン/軽油製造比Source data : Hart Energy, 2015よりJPECで作成
Source data : Hart Energy(2015)及びNEXANT資料よりJPECで作成
常圧蒸留装置
(百万BPD) 0.14 3.82 0.44 1.45 1.12 12.4 0.58 2.88 4.45
(年) 出典:BP統計、東西貿易データ 設備過剰の状態 300万bpdの設備過剰 (稼働率71%程度)
中国は、2014年ですでに設備過剰の状態であったが、さらに供給能力が
過剰となる。国営石油会社の設備投資は鈍化したが、国の政策(小規模製油所
淘汰政策)により、逆に
非国営製油所が活発化
。
14.中国の近年の変化(過剰設備)
1815.中国と日本の石油輸出量
中 国
日 本
昨年より、中国は日本の輸出量を超え増加を続けている。需要後退の軽油だけでなく、需要増が続く ガソリンでも輸出増加傾向がみられる。 ガソリンの増加 19.5万BPD(2015年) 27.2万BPD(2015年) 非国営製油所の活発化 JPEC作成 輸 出 輸 入Ⅳ. 日本の燃料油コストの位置づけ(2012年)
➣2012年ソロモン調査結果
日本の製油所の平均燃料油コストは、アジア・太平洋地域の中では、高い傾向に ある。
(出所)「我が国石油精製業の競争力の国際比較・分析等に関する調査報告書」より 原油価格により年度で燃料油コストの絶対値は上下するが、製油所の燃料油コスト の順列からすれば、我が国は、2008年から2012年にかけて相対的に順位が下がった。 ソロモンアソシエイツの分析によれば、①エネルギーコストが高い、②稼働信頼性が 劣後(製油所を止めている時間が長い)、③各装置の稼働率向上が必要(特にFCC、水 素化装置)等がコスト高の要因として挙げられている。また輸出に当たっては、出荷設