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クリントン政権期の行政改革

――結果重視の政府への変革――

渡辺 航

序章 第1 章 ナショナル・パフォーマンス・レビュー(NPR) 第1 節 NPR の成立 第2 節 NPR の理念 第2 章 議会からの影響 第1 節 NPR と議会 第2 節 NPRG への変化 第3 章 行政改革の成果 第1 節 行政府の変革 第2 節 行政職員の変革 終章

序章

近年各国において行政改革の声があがっている。アメリカも例外ではない。1980 年代、アメリカは財政 赤字と貿易赤字、いわゆる双子の赤字を抱え、さらには政府の業績の悪化で連邦政府に対する国民の信 頼が低下していた。アメリカ政府は国民の不信感の解消とこの赤字を生み出す構造を改革する必要に迫ら れていた。そうした中で1992 年の大統領選挙においてアメリカを変革、再生を訴え、実行することを期待さ れビル・クリントンは大統領となり12 年ぶりに民主党政権が誕生したのである。 クリントン政権は、これまでの共和党政権の小さな政府を志向することでもなく、大規模な公共投資を経 済政策の中心に置くニューディール以降の民主党の伝統的なリベラル政策を実施する政府でもない、新た なものを産み出そうとしている。新たな政府の形態を確立し、アメリカ経済の危機的な状況を脱するために クリントン大統領は国内経済問題や医療保険問題の改革とともに連邦政府の行政改革を掲げたのである。 本論文では、そのクリントン政権期に行われた行政改革である国家業績評価(National Performance Review、以下 NPR)、そしてその継続的な行政改革としての政府再生の国家的パートナーシップ (National Partnership for Reinventing Government、以下 NPRG)を取り上げる。これまでもアメリカ では多くの行政改革が共和・民主両党の大統領によってなされてきており、まずそれらの改革の歴史ととも に今回のNPR との違いを検討していく。 第1 章においては、NPR がどのように形作られていったのか、どのような概念の基で取り入れられるよう になったのか、NPR の概要、方針とともに記していきたい。取り上げているクリントン大統領の大統領令や NPR の年次報告書、シンクタンクの NPR に関する調査報告書から今回の行政改革の特徴を示す。制度 的な改革だけではなく、NPR では政府職員の意識、組織の文化、慣習をも改革していこうという方針がみ られる。この改革の目玉として25 万人以上の人員削減がよく取り上げられているが、今回の方針を実行し、

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事業の見直し、統廃合、規制撤廃・権限委譲による監督機関の縮小などによって考えられる数値であり、単 なる事業切り捨てによるリストラではないことを注意して考えたい。 第2 章においては、NPR の動きをみていく。NPR が実行に移されようとしている中で、1994年にクリント ン政権としては初めての中間選挙が行われ、これまで議会の多数を占めていた民主党が共和党にその座 を譲り共和党多数議会となった。そこで共和党多数議会になった後、どういった形で改革の変更に迫られ たのか、NPRG の実施に至るまでの連邦議会への働きかけや共和・民主両党の議員がどのように改革に 取り組んでいったのかを検証していく。 第3 章においては、NPR、NPRG の中で実施されるに至った改革が行政システム、行政運営上、どのよ うな成果をあげたのか、そして民間の経営手法を取り入れたこの改革により行政職員がどのように変化して いったのかを取り上げていく。 最後にまとめとして実際の改革の成果、問題点を示し、アメリカの政治システムの中で今後もこの改革、 あるいは改革の精神が機能していくことになるかを自分なりに検証したいと思う。 なお代表的な先行研究として、まず1994 年にジェシー・アラン・ゴードン氏が政府の再構築である NPR に関する批評がある1。1993 年にゴア副大統領と NPRのスポークスマンであったアラン・ニューマンが改革 に関する提言を行ってきた際の方針を批判的に記している。NPR においても民間の経営手法を取り入れ るだけではなく、改革の対象である監督機関の規制緩和を完全に撤廃し、自由競争下で政府機関を運営 することを主張した。これは1994 年に書かれたものであり、実際の改革の成果や中間選挙以降の NPR の 変化をみることができていない。さらに官僚主義的な政府を解決していくために、彼は公務員を民間企業の 従業員として一定期間派遣することが提示されている。次に先行研究として、秋吉貴雄氏が記したアメリカ のガバナンス改革に関する論文がある。この論文ではNPR は欧州などの諸外国で行われている経営管理 論と公共選択論に基づいたNPM(New Public Management)に大きな影響を受けていると指摘している2。

経営管理や統治構造の改革であることが重視されている。この論文においては、こうしたトップダウンによる 統治構造の改革だけではなく、政治の側面では民主党の中でもクリントン・ゴアというニュー・デモクラットの 考えや主義を基に行政改革を行っていること、行政の側面ではトップダウンによる統治構造の改革だけで はなく、ボトムアップによる行政職員の改革であることを重視していく。以上のことに取り組んでいくことで論 文としてのオリジナリティーを見出していきたい。 まずこれまでのアメリカで行われてきた行政改革がどのようなものであったのかみていきたい。1930 年代 フランクリン・ルーズベルト大統領によりブラウン・ロー委員会が設置された。この委員会では行政をつかさ どる大統領による行政部門の管理を強化することや大統領スタッフを増員させることが示された。注目すべ きこととして1939 年には大統領府が設置されることになり委員会や予算局がおかれたことである。1950 年 代にトルーマン大統領によってさらなる大統領府の機能強化が図られたが斬新なものではなかった。1960 年代にはニクソン大統領が政府機構に関する委員会を大統領府に設置した。この委員会では大統領府に おかれていた予算局を、連邦政府の予算、行政マネジメントを担当する部局として行政管理予算局 (Office of Management and Budget)に改編し現在も非常に大きな役割を果たしている。この改革は行 政管理機能を強化することを目的に行われ注目を集めた。これ以降、カーター大統領、レーガン大統領、 ブッシュ大統領によってもそれぞれ行政改革が行われたが、どちらも大きな成果は見られなかった。当時の アメリカ国民の社会経済事情が悪化していたため、むしろ国民からの政治行政に対する不信感が増大して いく時期であったといえる。

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これまで述べてきたアメリカの行政改革は、そのほとんどが行政機能の強化、行政運営の監視機能の強 化が主な目的であったと言える。しかし、今回取り上げるクリントン政権の行政改革は、これまでの政権が行 ってきた監視機能強化を目的とする行政改革とは異なり、むしろ逆の改革を行うことで政府機能の再生を 図ろうとしたのである。クリントン大統領はアメリカの国内経済を再生してくれると期待され選ばれたのであり、 その経済再生の中で行政改革を実施しようとした。クリントン・ゴア政権は、機能不全を起こしている政府を 建て直し、企業の経営ノウハウや経営文化にならい、行政組織やシステムに活かしていこうとする「企業的 な政府(Businesslike Government)」3を目指した。そこで1993 年発表されたのが NPR である。

第 1 章 ナショナル・パフォーマンス・レビュー(NPR)

第 1 節 NPR の成立 大統領選挙期間中、クリントン・ゴア陣営はマニフェストの中で、「トップダウンの官僚的な政府から、市民 が力を持ちボトムアップで自らの国を変えるような政府になるよう抜本的な改革が必要である」4と述べている。 1993 年 1 月にクリントンが大統領に就任すると大統領選挙戦で掲げていたように「政府の再生 (Reinventing Government)」を実行するために改革に着手することになった。その中心となるものが国 家業績評価(NPR)である。この NPR は、大統領選挙においても影響を与えた公共部門のコンサルタント であるデービット・オズボーンの理念が最も反映されたと考えられる。彼は NPR の上級アドバイザーでもあ り、著作『行政革命(Reinventing Government)』はこの改革の基盤となるものである。この改革はテキサ ス州で行われてきたテキサス・パフォーマンス・レビューやカリフォルニア州サニーベイル市での改革など、 州や地域レベルで行われてきた行政改革をモデルとし、個々の行政府内の改革、連邦政府全体のシステ ムの変革を実施していこうというものである5。 クリントン大統領とゴア副大統領は、従来の民主党の大きな政府の路線や共和党の小さな政府といった 議論とは異なる、結果重視の政府を目指すための改革としてNPRを示した。これは彼らが民主党の中でも ニュー・デモクラットと呼ばれる穏健中道派に起因するところが大きい。労働組合や黒人団体といったものを 支持基盤とする従来の民主党の主流であるリベラル左派とは一線を画しており、これまでの民主党の特定 の利益集団重視への批判的な考えを持っている6。 こうした考えを持つクリントン・ゴアのいう結果重視の政府というのは、連邦政府全体をより低コストで効率 的なものにすること、官僚主義的ではなく国民の満足を高めていくようなシステムに変えることで行政府を再 生し、しいては国家全体の再活性化を図ろうというものである。結果を重視するということは、顧客に対して 焦点をあてること、従業員の考えに耳を傾け尊重することが大きな要素となる。この2 つの要素は、NPR の 理念にも反映されている。 NPR は、1993 年 3 月以降、ゴア副大統領をリーダーとして推進していくことになる。外部から集められた スタッフ数十名と各省庁から集められた現場の職員、合わせて約 250 名が数名ずつチームに分かれ改革 に取り組むことになった。クリントン大統領は半年間の期限を与え、ゴア副大統領にNPR の改革レポートを 提出するよう指示した。 半年間にNPR のスタッフは、これまでの「どのような手続きでどの部署がいくら予算をもらうのか」という行 政運営のプロセスの議論ではなく、「政府はどのようにサービスを行うべきか」、「予算をどれだけ使うとどの ような事が達成することができ、実際どれほど達成できたのか」といった業績や結果を非常に重要視すると いう考えに基づいて連邦政府全体のシステムを検討していくこととなった。NPR スタッフは各省庁にヒアリン

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グ調査を行い、現状分析と具体的な改革案を作成し、ゴア副大統領も各省庁の職員に対してNPR の意義 を説明し、さらに最前線ではたらく現場の職員と自由に議論する機会を設けるなど積極的にNPR の実施、 具体化に向けて活動に取り組んだ。

半年間の期間を経て、ゴア副大統領はクリントン大統領にNPR のレポートを提出した。それが『官僚主 義から結果主義へ:より良く機能しより費用をかけない政府を創造する(From Red Tape to Results: Creating a Government that Works Better & Costs Less)』である7。このレポートでは384 の改革の

提言となる勧告がなされ、個別具体的な提言は1250 個にも及んだ。その提言を実行することで、1995 年 から1999 年度の 5 年間の会計で 1,080 億ドルにも及ぶ政府支出の抑制、管理者のポジションに着いてい る人数の節減を含めて連邦政府職員の 12%の人員削減、さらに政府システムの改善が可能になると示さ れている。 第 2 節 NPR の理念 この『官僚主義から結果主義へ』というレポートでは、これまでの非効率的な官僚主義的な政府からの脱 却を図り、より効率的で効果的な顧客志向の政府を作ることを目的としている。そして、その目的を達成する ためにNPR の方針として挙げられたのが、大きく 4 点ある。

①官僚主義から脱すること(Cutting Red Tape) ②顧客第一主義であること(Putting Customers First)

③結果達成のための権限を移譲すること(Empowering Employees to Get Results) ④基本に立ち返ること(Cutting Back to Basis)

①官僚主義から脱することというのは、規則に従い手続きを重視することで行政職員が説明責任を果た していた従来の構図から脱却し、自らが行動したことによる成果に対して説明責任を果たすように変化して いくことである。これまで政府は規則や規制を作ることで行政職員の仕事に制限を与え一律のものしか提供 できないような仕組みを作ってきた。 仕組みを維持するために規則や規制を遵守しているかどうかを監督する機関の役割が非常に高まり、官 僚主義の弊害の最たるものとなってきた。そのために行政職員の意欲は下がり、何か新しいアイデアを取り 入れ発展させる環境ではなくなっていた。彼らは自らの職場の使命や自分がやり遂げなければならない仕 事の成果といったものを追求するのではなく、規則や規制によって縛られた手続きを正確に行うことに力を 注ぐようになってしまったのである。 そこで、職員一人一人の行動に自由を与えるのはもちろんのこと、組織としても自らの使命を追求できる よう人事や組織を再編することを可能にしようというものが①の方針である。今回のNPRでは過剰な規則や 規制を排除し、より職員が機能的に働けるように組織へと変えていくことが要求される。規則や規制を排除 するということは、これまで規制遵守を監督する機関やまたは管理職クラスの職員の人員も削減することが 可能となる。③とも共通するが、統制を緩め現場に権限が移譲されることで事業の見直しや業務スピードの 向上などの効果が期待される。 ②顧客第一主義であることは、政府が行うサービスの改善のために顧客満足の向上を目指すことである。 行政府の職員が提供しているものの多くは国民にとってはサービスであり、そのサービスを受ける国民は行

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政府の職員からは顧客の立場になる。行政府という独占的で競争のない状態ではサービスの質の低下が 起きるのは当然である。そこで質の低下を防ぎ、より良いサービスを提供するために、顧客やステイクホルダ ーの声を聞き、ニーズに合うような行政運営に変えていく必要がある。 そこでクリントン大統領は1993 年 9 月に「顧客サービスの基準を設定する」という大統領令12862 を示し た8。政府は「連邦政府は顧客に合う」よう動かねばならず、提供するサービスの質は「民間企業によって顧 客に提供されている最高のレベル」でなければならない、と強く述べられている。さらに大統領令では、以 下のようなことを行うよう指示されている9。 ・ 各省庁で誰が顧客なのか、誰が顧客であるべきなのかを特定すること。 ・ 顧客が求めるサービスの種類、品質を特定するため顧客調査を実施しまとめること。 ・ 顧客に対してサービスの基準と測定された業績を公表すること。 ・ 民間企業の同様または類似サービスで最高レベルのものと政府サービスを比較、ベンチマーク すること。 ・ 現場の職員に調査を実施し、何が最高レベルのサービス提供を妨げているか、ベストプラクティ スとの相違点見つけ、最高レベルのサービス提供のアイデアを集めること。 指示されていた中で代表的なものを取り上げたが、これらは民間の経営手法を非常に意識した指示であ るといえる。行政府で曖昧になりがちである顧客の定義や業績・結果測定をすることで現在の自分達が何 をしているかを認識させようとしている。さらにサービス向上を行うべく、ベンチマーキングやベストプラクティ ス評価をすることでサービスの効果や事業の効率性の高さを分析評価し公表している。 当然、民間企業の経営手法をそのまま持ち込み、顧客を定義することは難しい場合もある。しかし、各省 庁・各部局ごとにサービスを提供している個人や組織を把握し、整理することで対応できる部分はあるだろ うし、サービス提供に関して行政と民間は全く別物と考えるのは行政の怠慢である。これまで職員は、質の 低下に配慮せず法律遵守を優先順位のトップに挙げていたはずであり、顧客第一主義を改革の方針とし て出すことは非常に大きな変革であると言える。 ③結果達成のための権限を移譲することとは、個々の職員にそれぞれ自分の担当するものの権限を付 与することで意思決定を分権化させ、勤務の質の向上を図るものである。ただ権限を分権化させるだけで は組織内で混乱をきたすおそれがある。そのため、まず自分達の組織、構成員が行うべき使命、目標を明 確にして職員同士共通の価値として認識する必要がある。そして、達成すべき結果を定めていくのである。 現場の職員に権限を移譲するということは、これまでより業務の幅が広がり、自ら決定の判断が下せるので 業務のスピードが早まる。もちろん時間的な効率だけでなく、顧客の求めるものをより正確に提供でき機能 的にもなる。権限が与えられた以上、現場の職員に成果を示す説明責任がでてくるし、だした成果を検証し ていくことも必要となる10。 これまでの行政改革のように規則や規制、官僚的な組織といった制度的なものを改革するだけでは意思 決定を分権させる意味がない。組織内の慣習や文化も変える努力が非常に重要になる。権限を移譲され た現場の職員には、共有している使命に基づいて行動し、結果に説明責任を持たせる。現場の職員に全 ての権限を移譲するわけではなく、管理する立場にある者は現場の職員が達成すべき結果をやり遂げたか を検証しなければならない。規則や手続きに説明責任を負わせるのではないため、管理者は結果を評価し、

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組織の使命、目標を現場の職員に理解させることが重要となる。使命や目標を理解し、その達成に向かっ て現場の職員が動くように、管理者は彼らが達成した結果に対して業績を称えるような賞やボーナスなどの インセンティブを与えることも大きな役割である11。1999 年までにゴア副大統領は、改革を実施ししていく中 で良い成果を生み出した連邦政府職員、地方政府職員、市民などで構成された行政改革のチームや官庁 に対し、ハンマー賞と呼ばれる賞を計1200 以上与えた12。 さらに単に個々人の権限を拡大するのではなく、生み出した結果を検証し、フィードバックさせるために、 研修や勉強会を行い職員同士高めあっていくことが求められる。そうすることで次へのステップに活かされ 効果的に働くことにつながり、職員間に人間的な協調的な環境をつくりあげることができる。権限を付与しそ のまま行政サービスの質の向上を待つのではなく、クオリティー・コントロールの導入などにより一定の質の 管理をしていくことも大切だと考えられる。 ④基本に立ち返ることとは、①から③の全てにあてはまるもので、これまで実施してきた行政運営をあらた めて見直すことにより、改善を図り効率的で効果的な運営を目指そうというものである。3つの方針の妨げに なるような規則や規制を廃止し、人員削減、事業の見直しなどによって機能的で生産性の高い行政運営を 創り上げるといった大きな枠組みのことから、紙面での作業からIT 化による経費の削減、第 3 章で挙げる 文書の簡易化による事務能力向上などの小さな事務事業のことまで、何のための政府か、を確認するもの である13。

第 2 章 議会からの影響

第 1 節 NPR と議会 NPR による報告書が提出され、その多くがマネジメント機能の分権化であり、権限付与による質の管理も 職員に行わせるものであった。行政機関のスリム化、いわゆるダウンサイジングだけではなく、組織をフラット にし、合理的に組織が運営されることが示されていた。NPR の 4 つの基本方針をふまえて個々の具体的な 提言もなされたので、行政府内で改革が行われるようになっていく。NPR でリーダーシップを発揮している ゴア副大統領は改革に非常に貢献のあった政府職員をたたえ、官僚主義的な行動を批判しつづけた。 さらにクリントン大統領は改革に拍車をかけるように「顧客サービスの基準を設定する」14ことや行政府の 規制削減などに関する大統領令を発令した。1994 年 3 月には、NPR の報告書に示されている人員削減 目標を達成させるために「連邦政府労働者リストラクチャリング法(Federal Workforce Restructuring Act of 1994)」、通称バイアウト法が成立し、5 年間で 25 万人の政府職員人員削減の促進に勢いをつけ、早期 希望退職者を募った15。このように積極的なクリントン政権の勢いと業務やサービスの改善運動が NPR に 出向していた各省庁の職員によって徐々に拡大していくことで改革が進んでいくかにみえた。確かに個別 の省庁や行政組織内部での変革は拡大する傾向にあったが、そうした流れをより法整備によってつくるた めの議会の法案審議においては改革に対して消極的な議員による抵抗もあったといえる。 クリントン・ゴア政権はNPR で報告されたもののうち、大統領令で公布できるものは大統領令で発令し、 連邦議会に対してもいくつか法案を提出させた。しかし、1994年までの民主党多数議会においても法案審 議は、難航することがしばしばあった。共和党の支持を得ることはできたとしても、民主党の支持基盤である 職員組合などが NPR の人員削減や政府組織の縮小など共和党に近い政策を展開しようとしたことに対し て不満を募らせる結果となった。連邦都市開発省(Housing and Urban Development)やエネルギー省 (Department of Energy)などの人員削減の提案が議会で受け入れられないなど、リベラル左派議員の

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多い民主党の中で支持を得ることができない事態も起きた16。 ほかにもNPRとともにクリントン政権は重大な法案を大きく一つにまとめて法案審議を要求しようとしたが、 これが裏目にでる結果となってしまった。連邦議会の審議では、国民に行政改革より注目されているクリント ン政権の目玉である医療保険改革の審議が重要視され、NPR に関連する法案の審議は後手にまわって しまったのである17。ニュー・デモクラットであるクリントンに近い民主党指導者会議(The Democratic Leadership Council)も医療保険改革に反対の立場をとるようになり、最終的には NPR 関連の法案が個 別に議会に提出された際に、共和党議員だけでなく、民主党議員でも個々の法案の反対勢力に負かされ 廃案に追い込まれてしまうこともしばしばあった18。 民主党多数議会においてもNPRに関連する法案審議があまり積極的に行われなかったが、1994 年 11 月に中間選挙が行われ、クリントン政権時の議会が上下両院ともに民主党多数議会から共和党多数議会 になり、状況がさらに悪くなる。共和党が議会の多数を占めて以降、NPR は共和党の政策の猛攻撃をかわ す力が弱いことを露呈し、さらに共和党が打ち出した「アメリカとの契約」はNPR の政府改革とは異なるより 強力なアプローチを国民に促すようなものであった19。 共和党多数議会は、連邦政府職員の削減、政府事業の削減、省庁など政府組織の数を削減といった強 硬な要求をつきつけてきたのである。これまでクリントン政権の行政府はNPR に焦点をあてていたが、共和 党のこうした要求でさらなる政府規模の縮小をせまられることになる。NPR は改革の第一段階目として「政 府はどのようにサービスをするのが最善か」という考えに焦点が当たっていたが、共和党の強硬な「政府は 何をするべきなのか」というテーマに変更を余儀なくされた20。NPRは「政府は何をするべきなのか」というテ ーマに転換せざるを得なくなり、これまで以上に連邦政府の業務範囲の見直し、つまり行政の統治構造の 見直す改革に一層焦点が当てられることとなった。 NPR の第一段階目において、共和党の考えが影響している可能性があるが、ゴア副大統領は連邦政 府職員、主に管理者に対して自分が業務で行っていること全てを見直すよう指示している。これは場合によ っては自分の所属している組織が改編され、消滅する可能性があることを示唆している。共和党の影響は あったとしても、ゴア副大統領はNPR による変革を進めようと積極的に活動している。連邦政府の仕事、権 限を州や地方自治体に移譲すること、行政組織の民営化を促進させることなどを推し進めようとしている。 この時期、NPR の改革から少し焦点がずれる形で行政府が、共和党多数議会からの攻撃をうまく回避し ようとしていた。行政組織の数を維持し、多くの政府プログラムを消滅させようとしているがプログラムも削減 せずにとおしたのである。しかし、そうした行政府の動きはこの NPR とも反するような動きであり、改革の第 一段階目で方針としたたっていた「works better」の目標値からとおざかる結果となってしまった。より機能 的な行政府への改革は、議会共和党からの圧力を回避するために行政府の職員がとった行動の犠牲にな った。結局連邦プログラムの修正や行政組織の削減などは実行されず、NPR は一度挫折しそうになるので ある。 第 2 節 NPRG への変化 輝きを失いかけていたNPR であるが、1998 年になると再び動き出していく。ゴア副大統領は「政府再生 の国家的パートナーシップ(National Partnership for Reinventing Government)」21へとNPRの名称

を変え、「アメリカを最高の状態へ(America@Its Best)」22というスローガンを掲げ、改革のプログラムをより

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NPRG では、連邦政府に結果志向の管理を取り入れるための「政府業績結果法(Government Performance and Results Act、以下 GPRA)」という法律と強くリンクするようになってくる。この法律は、 1993 年議会で共和党議員 W.V.Roth によって提案され、結果志向を目指すクリントン政権の支持もあり成 立した。行政府の業績を測りそれに基づいて管理を行い、議会に報告を提出する必要があり、業績に対し て説明責任を各組織は負うことになる。そして業績の結果(アウトカム)をもとに、次年度の計画、予算に反 映させるのである。

NPRG のプログラムでは、有権者、納税者である国民に近い部分の改革が行われている。代表的なもの が、「Access America」、「Hassle-Free Service」、「High Impact Agencies」「Plain English」である。 「Access America」というのは、政府のサービスを IT で提供することである。国民に対しワン・ストップで サービスや情報を提供することができるようにするものである。これにより「行政サービスの範囲を大きく拡 大」23することも掲げられている。インターネット放送をクリントン大統領が行うなど電子政府化を推し進めるも のである。オンライン処理を行えるようになると行政職員の業務の改善に大きな役割を果たすものになると 考えられる。 「Hassle-Free Service」24は、国民に提供するサービスの質を民間企業の最善のサービスと比較して同 等または上回るサービスを提供することで顧客満足を高めて行こうとする運動である。第1 章第 2 節でも述 べている大統領令をサービスの基準の設定として捉えている。基準作りは1993 年に大統領令が発令され てから始まっており、600 近い行政府の機関で何千もの顧客サービス基準が設定され現実に役に立つもの を基準としていこうという動きがみられる25。政府サービスの電子端末をおき、タッチパネル形式で150 以上 の行政組織の政府サービスを利用することができる26。この結果、これまで混雑していた窓口業務に余裕が 生まれ行政の負担軽減に一役かっている。

「High Impact Agencies」27とは、国民の生活に関わり、主に国民が利用する連邦政府の32 省庁の組

織全体を改編し、より生産的にしようというものである。GPRA とも強くリンクするもので、業績や結果志向の 組織へと変革をとげつつある。 「Plain English」は、政府刊行物や行政文書を多くの人が理解しやすいような言葉を用いて書き直すも のである。第3 章第 2 節に例として取り上げている。 ほかにも GPRA と非常に強くリンクして業績や結果(アウトカム)志向で説明責任を果たせる政府を構築 していくため小さい部分から大きな枠組みまでの権限委譲、サービス、職場の改善運動、教育制度などを 扱うプログラムがいくつか存在している。 1998 年の行政改革の復興は、ゴア副大統領が 2000 年の大統領選挙をひかえ、リーダーシップをとって きたNPRとNPRG での成果を連邦政府職員、さらに有権者である国民に示す絶好の機会であったと言え る。とりわけNPRG では、NPR 以上により国民に近い部分での改革、生活に直結するような政府サービス の提供などの改善、創造を推し進められておりそうした傾向が強いと考えられる。

第 3 章 行政改革の成果

第 1 節 行政府の変革 この改革で問題点も当然あった。就労者の減少により通常の人員よりも少ない人数での行政運営を実施 しなければならない組織がでてきたことや、本来意図していた管理者クラスの行政職員の退職者数はそれ ほど多くなく、専門能力をもつ職員が減少したことで改革の意図とは逆に一部業務の質の低下を招く結果

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になってしまったのである。 ただ、NPR、NPRG による行政府の変革の成果として挙げられるのが上記のような課題はあるものの政 府組織のスリム化である。まず2000 年度までに行政職員のうち42 万人以上が削減された。この 40 年間の 中で最も小さい規模の政府となった。強制的解雇による退職者の数は非常に少なく、この数字の成果は行 政職員の意識の向上や周囲からの関心を集める結果となった。こうしたスリム化により全体として約 1,360 億ドル以上の行政運営費の節約が達成された。さらにクリントン政権期においてNPRに関連する約 50 の 大統領令、そして約100の法律をだすに至った28。これまでの行政改革にない継続性と一貫性は非常に評 価できるものであると考えられる。 こうした大きな枠組みの中での成果や質の低下ではなく、小さい約束が着実に具体的な成果として実を結 んだ例がある。1993 年、NPR はアメリカ郵政公社に対し、公式に一部の地域郵便物を一日で郵便配達させ ることを約束させたのであった。当初はまったく効果が見られなかったが、一度世間の注目を浴びたことで 3 年後にはワシントン、ニューヨーク、シカゴでの決められた郵便物の郵便配達の割合は 30%以上をそれぞれ 上回る結果となった。全国でも速達郵便の時間通りの配達率は79%であったが、3年後には92%に増加した のである。これは、5000 万ドルの節約と新たな仕事を創出し行政府内部でのサービス向上のための業務改 善の成果だけではなく、郵便を利用する国民の利便性の向上という成果にもつながったのである29。 NPRG の部分で記したが、公共機関から組織に対しての権限の移譲はごく小さな部分から可能なので ある。実験的な運営、活動を行うことができるのである。郵政公社のような大きい全国的な組織ではなく、省 庁により定められた機関での運用は非常に幅が広い。新しい手法を試みることができることや、自分達の運 営上都合の悪い規則はその適用を免除できるといったものがある。公立学校の退廃の流れによって新たな 学校選択の制度が構築されつつあり、チャータースクールはその管理規則の適用外での運営である。この ように国民の選択する幅を広げ、その中で競争し、サービスの質の向上を図っていくことが可能になるのも 成果の一つとしてあげられる。 第 2 節 行政職員の変革 行政府という組織の変革の成果だけではなく、今回の行政改革では行政府の職員の変革にも注目すべ きである。職員は目的を明確にし、競争や業績測定などによりインセンティブをもち、自分の行うサービスに 対する説明責任をもっている。それはこれまでもっていなかった権限が移譲されることや習慣の変化、気づ きが重要な要素となってくる。これらの要素と NPR の方針を意識し、職員が現場で自分の判断によりサー ビスの運営を行うようになった。 NPR のそうした方針が非常に反映された局がある。石油やガスなどを取り扱う鉱物管理局(the Mineral Management Service、以下 MMS)である。1993 年にクリントン大統領やゴア副大統領が改革を指示し て以来、紙の書類による作業を減らすこと、予算を節約すること、議論し納得のいくプログラムを構築するこ となど、多くの革新的な方法で行政運営を変えていこうとしていったのである。中でも MMS の職員が行っ てきた改革のもっとも代表的なものは、文書を「簡単な英語」にすることであった30。これは、顧客にもステイ クホルダーにもわかりにくい、さらには職員自身にも煩雑で非常に難しい行政文書を簡単に表現することで ある。「簡単な英語」にするために、局内の職員でチームを作り、何千ページにも及ぶ行政文書を見直し、 理解しやすいように簡単な表現に書き直したのである。関連する法令が書かれていたり、但し書きが連続し て記されていたりするこうした煩雑な文書を変えることで実際の業務遂行のスピード向上に役立つものとな

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った。書き直す以前の15 行の行政文書を職員チームは理解しやすく、職員が行わなければならない必要 なことを記し3行にまとめたものもある。こうした努力はNPRにおいて高く評価され、職員で構成されたチー ムで改革に功績のあったものに贈られるゴア副大統領のハンマー賞を授与されたのである。 さらにMMSは、顧客やステイクホルダーに対してこれまでの業務をどのように改善しサービスを提供して いくかという考えのもと、自分達の行う行政運営の新しい流れ、安定した枠組みを作ろうとした。そこで彼ら は、天然ガス産業、石油産業、環境団体、州や郡などの地方自治体との話し合いをもつようにした31。そし て、話し合いを通じて今回の改革が単発的なものではなく継続性があり、これまでの官僚的な習慣に基づく 行政運営から抜本的な変化をもたらすものであることを理解させ、お互いが連携をしてより低コストでより機 能的な行政運営を実施していく意識を強めていった。MMSは毎年自分達が行った全ての規制に関して情 報を顧客やステイクホルダーに提供し説明責任を果たした。そして、自分達の活動がどれだけ効率的で効 果的なものであったか、規制が目的や必要性に見合ったものであったかを点検し、次年度の政策や予算に 役立てた。彼らは自分達の業務改善だけではなくパートナーシップの促進にもつながる改革をMMSの職 員が実践したのである。 NPR のプロジェクトディレクターであるボブ・ストーン氏は、MMS の改革に関するインタビューで、「ゴア 副大統領のリーダーシップに支えられて行われている連邦職員の積極的な改革を多くのアメリカ人はまだ よく知らない。いわば静かな改革であるが、行政職員は改革の意図を理解し、より機能的で低コストの政府 を構築するという信念のもと、これまでの組織文化を変え継続して改革に取り組んでいる。MMS の職員も またこの改革に大きく寄与している」32と述べ、現場の職員の活動を称賛している。

終章

このようにNPR によって行政改革を実行に移す以前の 1992 年から行政職員の意識は大きく変化して いる。NPRG による行政職員に対するアンケート調査33の結果によると、職員自身が提供するものが顧客 へのサービスの一部であると認識しているものが行政職員の4 分の 3 おり、その中でも管理者クラスの職員 のサービスに対する目標意識は非常に高くなっている。NPR 以降、彼らは顧客重視、結果重視の意識を 持って活動することで自分達の行っていることに自信をもつようになり、自発的な行動が見られるようになっ た。 これまで国民は行政府が行うことは役に立たず信頼がおけないという風潮をもっていたが、職員の行う行 政運営の成果が次第に国民にも意識されるようになり、連邦政府の行う政策は正しいかという問いに対し、 1994 年にくらべ 1998 年は 2 倍の 40%が正しいと回答した。さらに行政府が提供しているサービスと民間 企業が提供しているサービスに対する顧客の満足度に大きな違いは見られなくなり、むしろ民間企業のサ ービス以上のものを行政が提供しているという結果も出てくるようになった34。国民の生活の質を向上させる ものとして連邦政府を信じてくれる国民が増加することは行政職員に良い影響を与えるものである。このよう に行政職員の意識の変化は、NPR の大きな成果の一つであるといえる。 1993 年から 2000 年までにクリントン大統領が NPR に関する勧告をだすために署名した大統領令やメ モはあわせて55 にも及んだ35。NPR、NPRGというのは、これまでのアメリカにおける行政改革とは一線を 画すものであり、新しい手法によってそれまでのどの改革よりもスピードのあるものであった。監視機能、行 政機能の強化といった締め付けの行政改革ではなく、下部の職員までもが意識して考え自分の判断で実 行に移していける改革であったといえる。改革の姿勢はクリントン大統領のトップダウンであったが、実際の

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行政運営の中から改革の火種を見つけそれを実行に移せるような規制の緩和や、権限の移譲といったもの によって、火種が多くの職員に伝播していったと思う。 とりわけNPRG は理念的なものに関しては従来の NPRとほぼ同一のものであるが、大きなプログラムだ けではなく、個々の多くの事業が実験的な運営ということで改革を実行している。その実験的な運営を行っ ている行政組織は、現在政府の中にある障害物を取り除き、多くのその他の行政機関がどのように政府を 構築していくかという道筋を示すことが目的である。顧客である国民のために、さらに働いている行政職員 自身のために、こうした実験的な組織、活動は数多くあり、民間の経営改善の手法に近い形で実施されて いる。 さらに今回のクリントン政権期の行政改革は他国、特にイギリスやニュージーランドといった欧州の行政 改革とは異なり、政府規模の縮小や市場化といった小さな政府を志向しているものではないということであ る。多くの部分で強調されるのものとして、職員数の大幅削減、省庁スリム化というのはある。さらに、より機 能的に低コストで業績、サービスの最大化を測るということは、確かに矛盾をはらむ点もある。しかし、クリント ン・ゴアはこの行政改革で「小さな政府」、つまり政府の規模を縮小させることを当初から目的としているので はなく、一方で共和党多数議会による「小さな政府」化に抵抗しながら、企業の経営手法、文化、ノウハウと いったものを取り入れ、顧客のため、さらに職員の声に耳を傾け、権限を与え業績の最大化を図るために 実施していると考えられる。 議会との関係で考えるとクリントン・ゴアは共和党の「小さな政府」に対抗するだけではなく、民主党が行う 行政改革の限界ともいえる従来の民主党の支持基盤である労働組合や黒人団体といった利益団体が根 づいているリベラル左派の抵抗をも乗り越えなければならなかった。当時ニュー・デモクラットと呼ばれる議 員は民主党内で大きな割合を占めてはおらず、政府規模の縮小やリストラといったことに強く反対する民主 党リベラル左派が大きく占めていたためである36。さらにリベラル左派だけではなく、2 人の支持基盤ともい える民主党指導者会議が強く反対していた医療保険改革との抱き合わせで行政改革に関する法案を通そ うとしたことも難航する要素となったのである。 さらに、大統領の政党と議会の多数党が異なる分割政府となる場合があるアメリカの政治システムの中で これほど大きく、様々な改革を一度に行うことは難しいことであると思う。しかし、この改革によって結果重視、 成果重視の行政サービス運営を行っていくように職員が少しでも変化したことはこの巨大な行政システムの 中では大きな意義がある。組織のフラット化が目指され、職員の意識改革が行われたことも官僚的な行政 組織においては非常に重要なことであり、政権交代後もこの意識を継続して行政サービスを提供していくこ とが国民に最も恩恵のある行政改革になるものと思われる。 2000 年の大統領選挙でブッシュ政権が誕生し、NPR、NPRG の改革は凍結されることになったが、共 和党政権下においても政府の統治構造の改革は継続して行われている。「小さな政府」を志向する共和党 政権、共和党多数議会がどれだけ業績、結果を重視し、顧客に対して焦点を当てた行政改革を継続して 行えるかが非常に重要であり、結果をフィードバックして新たな行政運営に活かせるサイクルの構築が必要 である。

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1 Jesse Alan Gordon, “Reviewing the National Performance Review A Critique of Reinventing Government”, 1994

(http://www.issues2000.org/spectrum/npr.htm)

2 秋吉貴雄「アメリカにおけるガバナンス改革」『パブリック・ガバナンス』宮川公男編、2002 年、pp.88-106 3 Businesslike Government

(http://govinfo.library.unt.edu/npr/library/nprrpt/annrpt/vp-rpt97/chapter2.html)

4 Donald F. Kettl “Reinventing Government A Fifth-Year Report Card” The Brookings Institution, 1998, p. 2 5 白川一郎『NPM による自治体改革∼日本型ニュー・パブリック・マネジメントの展開∼』2001 年、p.102 6 久保文明「米国民主党の変容」『選挙研究』17 号、2002 年、pp.71-73

7 http://govinfo.library.unt.edu/npr/library/nprrpt/annrpt/redtpe93/index.html 8 Setting Customer Service Standards.

(http://govinfo.library.unt.edu/npr/library/direct/orders/2222.html) 9 Businesslike Government (前掲)

10 Regulatory Reinvention Initiative

(http ://govinfo.library.unt.edu/npr/library/direct/memos/reinvent.html) 11 Hammer Awards

(http://govinfo.library.unt.edu/npr/library/awards/hammer/index.htm) 12 Hammer Awards

(http://govinfo.library.unt.edu/npr/library/awards/hammer/whatis.html) 13 Al Gore ,”Common Sense Government”,1995, pp.58-62

14 Setting Customer Service Standards.

(http://govinfo.library.unt.edu/npr/library/direct/orders/2222.html) 15 希望退職者に対して退職金など金額的な面で退職に向かわせるため、買収といった意味のある「バイアウト」がこの 法案の通称となっている。 16 Reinvention: An Assessment, 11/01/1996 (http://www.govexec.com/archdoc/1196/1196mgmt.htm) 17 Donald F. Kettl、前掲書、p.34 18 砂田一郎「アメリカ政治の「変化」と 94 年中間選挙」『海外事情』1995 年、p.6 19 吉原欽一『現代アメリカの政治権力構造』2000 年、p.113 20 Donald F. Kettl、前掲書、p.4 21 Donald F. Kettl、前掲書、p.5 22 http://govinfo.library.unt.edu/npr/library/vision2000.html 23 白井均他『電子政府最前線 こうすればできる便利な社会』2002 年、p.18 24 Hassle-Free Service (http://govinfo.library.unt.edu/npr/custserv/hassle.html) 25 鈴木敦他『最新 行政マネジメント用語 101』2001 年、p.129

26 INTERACTIVE KIOSK BRINGS GOVERNMENT TO LOCAL COMMUNITY (http://govinfo.library.unt.edu/npr/library/announc/072700.html)

27 High Impact Agencies (http://govinfo.library.unt.edu/npr/library/announc/hiapage3.html)

28 鈴木敦他『NPM の展開及びアングロ・サクソン諸国における政策評価制度の最新状況に関する研究―最新 NPM 事情―』2001 年 12 月 国土交通省国土交通政策研究所 p.126

29 Remarks by Vice President Gore and others at Presentation of 1000th Hammer Award, 12/17/1997 (http://govinfo.library.unt.edu/npr/library/news/gore1000.html)

30 MMS TODAY, p.2

(http://www.mms.gov/ooc/newweb/publications/summer96.pdf) 31 同上 p.3

32 同上 p.3

33 National Partnership for Reinventing Government Employee Survey Results (http://govinfo.library.unt.edu/npr/library/misc/survey-full.html)

34 Restoring Trust in Government

(http://govinfo.library.unt.edu/npr/library/announc/122900.html) 35 Presidential Directives

(http://govinfo.library.unt.edu/npr/library/direct.html) 36久保文明、同掲書、pp.72-75

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【参考文献】 <一次文献>

* デービット・オズボーン 『行政革命』高地高司訳、日本能率協会、1995 年

* David Osborne and Peter Plastrik,"Banishing Bureaucracy: The Five Strategies for Reinventing Government", Perseus Books Group, 1997

* Al Gore, "National Performance Review: Creating a Government That Works Better and Costs Less", Diane Pub Co, 1993

* National Performance Review, Performance- Based Organizations Table of Contents * −Vice President Gore's National Performance Review Accomplishments 1993- 1997 ,1998

* Al Gore,"From Red Tape to Results: Creating a Government that Works Better and Costs ", Lightning Source Inc, 2001

* Al Gore,"Common Sense Government: Works Better and Costs Less", Random House, 1995 * Al Gore, Businesslike Government: Lessons Learned from America's Best Companies, 1997 <二次文献>

* Jesse Alan Gordon, "Reviewing the National Performance Review A Critique of Reinventing Government", 1994

* Donald F.Kettl,"Reinventing Government: A Fifth-Year Report Card", Brookings Institution,1998 * In Search of Results Performance Management Practices, Organization for Economic Co-Operation

and Development, 1999 * 砂田一郎「アメリカ政治の「変化」と94 年中間選挙」『海外事情』拓殖大学会外事情研究所、1995 年 5 月号 * 大住荘四郎『ニュー・パブリック・マネジメント』日本評論社 、1999 年 * 安井明彦「米国の行政改革」『富士総研論集』富士総合研究所、1997 年Ⅲ号 * 吉原欽一『現代アメリカの政治権力構造』日本評論社、2000 年 * 白川一郎『NPMによる自治体改革』経済産業調査会、2001 年 * 小池治「クリントンと行政改革」『クリントンとアメリカの変革』藤本一美編、東信堂 * 平井文三「アメリカ連邦政府におけるマネジメント改革の動向」『行政とADP』行政情報システム研究所 * 鈴木敦他『NPM の展開及びアングロ・サクソン諸国における政策評価制度の最新状況に関する研究―最新NP M事情―』国土交通省国土交通政策研究所、2001 年 12 月 * 鈴木敦他『最新 行政マネジメント用語 101』東京法令出版、2001 年 * 白井均他『電子政府最前線 こうすればできる便利な社会』東洋経済新報社、2002 年 * 秋吉貴雄「アメリカにおけるガバナンス改革」『パブリック・ガバナンス』宮川公男編、日本経済評論社、2002 年 * 久保文明「米国民主党の変容―「ニュー・デモクラット・ネットワーク」を中心に―」『選挙研究』日本選挙学会、 2002 年 17 号 * バリー・R・ルービン『市民が政治を動かす方法』鈴木崇弘監訳、日本評論社、2002 年 * GAO(http://www.gao.gov/) * NPR(http://www.npr.gov/) * OMB(http://www.whitehouse.gov/omb/) * PPI (http://www.ppionline.org/index.cfm)

* New Democrats Online(http://www.ndol.org/index.cfm) * GovExec.com(http://www.govexec.com/)

* http--issues2002.org-spectrum-npr.htm * http://govinfo.library.unt.edu/npr/index.htm

* http://govinfo.library.unt.edu/npr/library/review.html

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あとがき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・渡辺航 自分が学生生活をしていく中で、一番好きなテーマで卒業論文をかけたと思う。自分の書いた論文の内容は別にし て、これだけの量の英語、日本語資料を読んだのは初めてであった。かなり大変な時期もあったが、卒論に関する勉強 は新しい発見が多く、しかも自分の考えに反するもの、共感するもの、様々あるので楽しい部分が大きかった。入ゼミ論 文では議会に関するテーマを書き、今回行政に関することを論文にできたことは大変いい経験になった。 ゼミを終え、卒業論文を終えて感じることはやっぱり内政好きだってこと。入ゼミ、三田祭、卒論、その他いろんな行 事でも内政に関するテーマで活動してきた気がする。おそらくそうした流れが卒論のテーマにつながり、自分の最も興 味のあるところに落ち着いたのだと思う。 取り上げた行政改革はアメリカだけではなく、諸外国、日本でも行われている。最初はそうした他国との違いに注目 しようと漠然と考えていたが、そうした本は今すごく多くて内容ができった感じがしていたので悩んだ。でもそんな中でク リントン政権期の行政改革の成果を示す資料に出会い、その時期の改革に焦点を絞ることができた。テーマ自体とっつ きにくい人が多いと思うし、僕自身理解不足な点が非常にある。でもいつも以上に英文資料は理解することができたと 思うし自分の意見に反映させることができたと思う。 反省点はあげたらきりがないですが、卒業論文を書き上げることができたし、その達成感は大きいです。それから日 本でもアメリカでも腐敗しているとされる官僚の努力、政治家の努力を学ぶことができて、世の中まだまだ捨てたもんじ ゃない、とあらためておもいました。 最後に丁寧に指導をしてくださった久保先生、論文を読んでくれたみんな、そして卒論で苦しい時もいっぱい遊ん でくれたみんな、本当にどうもありがとうございました。 渡辺航君の論文を読んで 【金子礼奈】 はっきり言って、ナショナル・パフォーマンス・レビューなど渡辺君の論文を読むまでその存在自体知らなかった。その ような題材を扱っているということで、高い関心を持って読んだが、知らない事項であるにも関わらず、論文の書き方に よって非常に理解しやすかった。この論文の書き方というのは、 ① 章立てが簡潔である。 ② 複数の事例が挙げられている際に箇条書きが用いられている。 ③ 同じく、複数の事例が取り上げられている際に、1つの事項について1段落という割り振りになっているため、見や すい。 というものが挙げられる。 逆に、これを直したらもっと良い論文になるのではないかという点も何個かあったので、以下、それを示す。 ① 序章において、論文のオリジナリティが述べられていない。 ② 同じく序章において、この論文が、政治学上の論文としてどのようなものであり、どのような意味をなすか、また、ど のような影響を及ぼすかなど、論文の位置づけがなされていない。 ③ 序章の「まずこれまでのアメリカで行われてきた行政改革がどのようなものであったのかみていきたい。」に始まる文 から序章の最後までの部分は、いわゆる、NPR の成立の一部である。したがって、序章で述べるよりも、第 1 章の 中で書いていく方が良いのではないだろうか。 ④ 第1 章第 1 節において「NPR スタッフが各省庁にヒアリング調査を行い、現状分析と具体的な改革案を作成し、」 とあるが、これは具体的にどういった改革案なのか注釈でもいいので書かれてあると良い。 ⑤ 論文内での登場人物(特に第2 章第 1 節での登場人物)は、クリントンと民主党、共和党しか述べられていないが、 ほかに、この議案に対し影響を及ぼす人物、または、NPR の代表的支持者など、何らかの人物の登場があると良 い。 ⑥ 第2 章第 1 節で「民主党議員でもここの法案の反対勢力に負かされ廃案に追いこまれてしまう」とあるが、たとえば、 どんなことがあったのか、その具体例を示すと、机上の論理に感じられない。 ⑦ 第3 章第2 節で「今回の行政改革では行政府の職員の改革にも注目すべきである。」とあるが、なぜ注目すべきな のか、その理由付けがない。これではこの節を始めるにあたっての書き出しには不十分に感じられる。 ⑧ 注釈が足りない。よって、この資料はどこから持ってきたものなのだろうという疑問が生まれてしまう。 ⑨ 圧倒的に字数が少ない。論証すべき中心となる章がどこなのかよく考えて、その章をもっともっと膨らませていくべ きである。 ⑩ 世論はどうなのだろうか。行政改革に対する国民の反応によっても、政策が成功するか否かが決まってくるはずで ある。世論についても調べることができたら調べて、論文の一要素として付け加えてほしい。 以上の点を踏まえ、最終稿提出に向けてがんばってください。 【根本麻矢】 クリントン政権は落ち込んでいたアメリカ経済を立て直したという点では高い評価を得ている。わが国でも経済改革・

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行政改革の実施が声高に叫ばれている今日、クリントン政権の「結果重視の政府」を目指した行政改革であるNPR・N PRGを取り上げ、NPRがいかなる方針の下、いかに画期的な手法で実施されたのか、問題点を孕みながらも議会を経 て実際にいかなる成果を挙げたのかを明らかにしているこの論文は大きな示唆を含み、意義深いものと考える。とりわ けその理念の第二に挙げられている民間企業の経営手法を意識した国民が「顧客」であり、政府は顧客満足度を上げ るために「サービス」の質の向上を目指すという理念には共感を覚えた。 この論文の評価できる点は、第一に議論の流れがとてもわかりやすく構成が工夫されている点である。第二に終章に おいては著者自身の考察や行政改革の今後も視野に入れた意見を表明しており、単なる事実のまとめにとどまってい ない所である。 しかし、一貫してNPR・NPRG に焦点を定め終始一貫して取り上げている点はわかりやすいのだが、同時に分量的 には物足りなさも感じる。クリントンのNPRがこれまでに類を見ないということを証明するのであれば、他の政権による行 政改革ともっと比較検討をしてみても面白いのではないか。序章の一部分でこれまで他の政権による行政改革につい て触れている点はあるが、分量的にはあまり多くないので、これをさらに膨らませることも可能だと思われる。またNPRの 他にもクリントンの行政改革の中にNPRと共通するような方針や理念の下に実施された改革があるならこれも取り上げ てみてはどうだろうか。あとNPRに関するクリントンの言説などが紹介されるとよいのではないか。 このようにまだ改善点はあるものの、全体としては論旨の通ったわかりやすく興味深い論文だったと思う。 【伊藤舞】 渡辺君の論文ではクリントン政権期の行政改革に着目し、その改革の成果、問題点やその改革精神が今後にどう機 能していくかの展望が書かれていた。テーマ自体アメリカ政治を見ていく上で無視できないものである、とても興味深い ものであった。そして本文ではNPR と NPRG について理念や背景など詳しく説明されており、これまで行われてきた 行政改革との違いがわかりやすかった。 ここでいくつかの変更を加えるとよりよい論文になると思う。 1. 序章で先行研究の文献等にまったく触れておらず、論文のオリジナリティもあまり主張されていない。先行研究の 例をいくつか挙げた上で、それらと自分の論文を比較し自分の論文のオリジナリティをより強調してもいいだろう。 2. 序章の後半でこれまでアメリカで行われてきた行政改革について説明がされていたが、これを第 1 章の第 1 節に してもいいのではないだろうか。その方が次のNPR との説明にすんなりつながるように私には思える。 3. 全体的に註が少ないように感じられた。特に金額やパーセンテージなど数字データについてはそのデータを支え るような、もしくは出元がわかるような註をつけた方がいいかもしれない。 4. NPRと NPRG の概説が大部分のように読める。もう少し早い段階から自分の考察を挙げたり的を絞って論じるな ど、より掘り下げてみていだろう。 5. 終章で展望が書きたりていない、物足りなさがあった。第 1 章から第 3 章までを軽くまとめた上で、今以上に自分 の意見などを付け加えるといいだろう。 6. 目次で「終章」が抜けていたので付け加えること。 以上の点を参考にしていただけるとありがたい。個人的に今までNPR や NPRG について深く見てきたことがなかっ たので、今回はいい機会であった。私には渡辺君らしいテーマだと、感じられた。今以上の論文が書きあがるよう頑張 ってほしい。

参照

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