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1. 科学哲学初学者のための文献リスト 以下のリストは あくまで科学哲学初学者 ( はじめて科学哲学を勉強する高校生 大学生 社会人 ) のための文献リストである 日本語で読める概論を勉強された後に 個々の関心に沿って 英語文 献を読み進めていくのが望ましい 高校生などで 以下に挙げる本が難しすぎる

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科学哲学を専門的に学びたい高校生・大学生・社会人のために(随時更新)

菅原裕輝(大阪大学 CO デザインセンター) [最終更新日:2017 年 7 月 1 日] 0.はじめに Q1. 「科学哲学」とは? A1. ここでは「科学を哲学的枠組み(認識論・存在論・倫理学・論理学的観点)から分析する学問 分野である」とする。 [参考] 「科学哲学は、科学に関わる問題を扱う哲学である。科学哲学が取り組む問題には異なった二つ のタイプがある。まず、科学一般の本性に関わる問題に取り組む哲学者がいる。彼らの扱う問いと は、理論上のモノ(entity)は実在するのか、科学は真理を探求しているのか、科学的な方法なるも のが存在するのか、などである。次に、個別の科学で生じる哲学的問題に取り組む哲学者たちもい る。たとえば物理学の哲学者は、相対性理論や量子力学にどのような解釈が可能かについて頭を 悩ませる。そして生物学の哲学者は、生物種の定義や進化論の理解に関する概念的な問題に取 り組んでいる。本書は精神医学を扱うが、本書で出てくるトピックは科学一般の問題にもまたがる。 科学一般の哲学におけるトピックが特に精神医学に関連づけて論じられる場合もある。また、まさ に精神医学の哲学に固有のトピックもある。科学哲学者がどのように研究しているかをこれ以上詳 しく説明するのは難しい。というのも、彼らが問う問題も、それを取り扱う方法も、一つの類型というも のはないからである。それゆえ、科学哲学とはどのようなものであるかを説明するのではなく、本書 を通じてそれがどのようなものであるかを説明するのではなく、本書を通じてそれがどのようなもの かを例示しよう」(レイチェル・クーパー著.伊勢田哲治・村井俊哉監訳.2015.『精神医学の科学哲 学』.名古屋大学出版会.6 頁) Q2. 「科学哲学を専門的に学ぶ」とは? A2. 自分が関心のあるトピック(事柄)を学術研究の文脈で理解することを指す。具体的には、科 学哲学的において関心のあるトピックに関する文献を読み、これまでにどのような議論がなされてき たかを知り、これまでになされた議論の長所・短所をそれぞれ整理し、残された問題が何か(学術 上の問題は何か)を整理し、どのような前提のもとで何が争点となっているかを理解することを指す。

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1.科学哲学初学者のための文献リスト 以下のリストは、あくまで科学哲学初学者(はじめて科学哲学を勉強する高校生・大学生・社会人) のための文献リストである。日本語で読める概論を勉強された後に、個々の関心に沿って、英語文 献を読み進めていくのが望ましい。 高校生などで、以下に挙げる本が難しすぎると感じた場合は、『哲学思考トレーニング』(伊勢田 哲治.2005 年.ちくま新書)や『新版論理トレーニング』(野矢茂樹.2006 年.産業図書)を読み、哲 学の思考ツールに馴染んでおくと良い。高校生でもじっくり読めば理解できるはずである。 1.1. 概論:一般科学哲学 ・ サミール・オカーシャ著.廣瀬覚訳.2008.『科学哲学』.岩波書店. 〈書籍情報〉https://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/1/0268960.html ・ 戸田山和久.2005.『科学哲学の冒険:サイエンスの目的と方法をさぐる』.日本放送出版協 会. 〈書籍情報〉https://goo.gl/TD4YJX ・ 伊勢田哲治.2002.『疑似科学と科学の哲学』.名古屋大学出版会. 〈書籍情報〉http://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN4-8158-0453-2.html ・ 内井惣七.1995.『科学哲学入門:科学の方法・科学の目的』.世界思想社. 〈書籍情報〉https://goo.gl/gDFbN9 ・ アレックス・ローゼンバー著.東克明・森元良太・渡部鉄兵訳.2011.『科学哲学―なぜ科学 が哲学の問題になるのか』.春秋社. 〈書籍情報〉www.amazon.co.jp/dp/439332322X 1.2. 各論:個別科学の哲学

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概論を読み終えた後に個別の関心に沿って読み進めることを推奨する。 *精神医学* ・ レイチェル・クーパー著.伊勢田哲治・村井俊哉監訳.植野仙経・中尾央・川島啓嗣・菅原裕 輝訳.2015.『精神医学の科学哲学』.名古屋大学出版会. 〈書籍情報〉http://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0807-5.html *生物学* ・ (7)キム・ステレルニー/ポール・E・グリフィス著.太田紘史・大塚淳・田中泉吏・中尾央・西 村正秀訳.松本俊吉監修・解題.2009.『セックス・アンド・デス:生物学の哲学への招待』.春 秋社. 〈書籍情報〉http://www.shunjusha.co.jp/detail/isbn/978-4-393-32323-6/ *統計* ・ エリオット・ソーバー著.松王政浩訳.2012.『科学と証拠:統計の哲学入門』.名古屋大学出 版会. 〈書籍情報〉http://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0712-2.html 1.3. 哲学の一部としての科学哲学 科学哲学を専門的に学ぶうえで、哲学の知識も求められる。以下に挙げるような、論理学、クリティ カル・シンキング、言語哲学(分析哲学)、倫理学、認識論に関する入門書を読むことを推奨する。 *哲学一般* ・ 野矢茂樹.1996.『哲学の謎』.講談社現代新書. 〈書籍情報〉http://amzn.to/1wjyZEq ・ 岩崎武雄.1966.『哲学のすすめ』.講談社現代新書. 〈書籍情報〉http://amzn.to/1O25gNe

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・ 戸田山和久.2014.『哲学入門』.ちくま新書. 〈書籍情報〉https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480067685/ ・ 柏原啓一.2004.『哲学入門』.放送大学教材. 〈書籍情報〉http://amzn.to/1Kvum7v ・ 坂部恵・加藤尚武編.1990.『命題コレクション 哲学』.筑摩書房.(2008 年にちくま学芸文 庫化) 〈書籍情報〉https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480091741/ *論理学* ・ 野矢茂樹.2006.『新版論理トレーニング』.産業図書. 〈書籍情報〉http://amzn.to/1IO0ufo ・ 戸田山和久.2000.『論理学をつくる』.名古屋大学出版会. 〈書籍情報〉http://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN4-8158-0390-0.html *クリティカル・シンキング* ・ 伊勢田哲治.2005.『哲学思考トレーニング』.ちくま新書. 〈書籍情報〉https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480062451/ ・ 伊勢田哲治・戸田山和久・調麻佐志・村上祐子編.2013.『科学技術をよく考える:クリティカ ルシンキング練習帳』.名古屋大学出版会. 〈書籍情報〉http://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0728-3.html *分析哲学(言語哲学)* ・ 飯田隆.1987.『言語哲学大全Ⅰ 論理と言語』.勁草書房. 〈書籍情報〉http://amzn.to/1N7DrCt

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*倫理学* ・ 永井均.2003.『倫理とは何か:猫のアインジヒトの挑戦』.産業図書.(2011 年にちくま学芸 文庫化) 〈書籍情報〉http://amzn.to/1JTtraw ・ 加藤尚武.1997.『現代倫理学入門』.講談社学術文庫. 〈書籍情報〉http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784061592674 ・ 伊勢田哲治.2008.『動物からの倫理学入門』.名古屋大学出版会. 〈書籍情報〉http://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0599-9.html *認識論* ・ 戸田山和久.2002.『知識の哲学』.産業図書. 〈書籍情報〉http://amzn.to/1Fnz1Ry ・ リチャード・ローティ.野家啓一監訳.1993.『哲学と自然の鏡』.産業図書. 〈書籍情報〉http://amzn.to/25EbYky *哲学史* ・ 岩波講座 哲学 全 15 巻. 〈書籍情報〉https://www.iwanami.co.jp/moreinfo/011261+/top2.html 1.4. メタ科学の一部としての科学哲学 •科学史、科学技術社会論、科学技術政策、科学論、科学技術倫理、科学コミュニケーションなど の「メタ科学」(メタ的な視点から科学研究を分析・総合する学問分野の総称)の基礎知識を学んで おくことは、科学哲学の知識をより広い文脈のなかで位置付ける上でも、科学哲学研究者として活 動するようになった際に社会的な文脈に応じた対応が出来るようになるうえでも重要である。 *科学史*

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・ E.H.カー著.清水幾太郎訳.1962.『歴史とは何か』.岩波新書. 〈書籍情報〉http://amzn.to/1NM4Jjt ・ 橋本毅彦.2010.『〈科学の発想〉をたずねて:自然哲学から現代科学まで』.左右社(放送大 学叢書). 〈書籍情報〉http://amzn.to/1SKV5gY ・ (42)中島秀人.2008.『社会の中の科学』.放送大学教育振興会(放送大学教材). 〈書籍情報〉http://amzn.to/1UB1Qpk ・ 三輪修三.2012.『工学の歴史:機械工学を中心に』.筑摩書房(ちくま学芸文庫). 〈書籍情報〉http://amzn.to/1qoDF0C ・ 廣重徹.2008.『近代科学再考』.筑摩書房(ちくま学芸文庫). 〈書籍情報〉http://amzn.to/1SvErQ2 ・ 杉山滋郎.1994(2010).『日本の近代科学史』.朝倉書店. 〈書籍情報〉http://amzn.to/221mcqC 参 考 : 有 賀 暢 迪 氏 ( 国 立 科 学 博 物 館 ) の 科 学 史 ブ ッ ク ・ ガ イ ド : http://www.ariga-kagakushi.info/introduction/textbook.html *科学技術社会論* ・ 藤垣裕子編.2005.『科学技術社会論の技法』.東京大学出版会. 〈書籍情報〉http://amzn.to/1UrAulP ・ 小林信一編著.2012.『社会技術概論』.放送大学教育振興会. 〈書籍情報〉http://amzn.to/1N7EzpC ・ 平川秀幸.2013.『科学は誰のものか:社会の側から問い直す』.NHK 出版. 〈書籍情報〉www.amazon.co.jp/dp/4140883286

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・ 藤垣裕子.2003.『専門知と公共性:科学技術社会論の構築へ向けて』.東京大学出版会. 〈書籍情報〉http://amzn.to/1RX2XsM ・ 中島秀人編.2017.『ポスト冷戦時代の科学/技術 (岩波講座 現代 第 2 巻)』.岩波書店. www.amazon.co.jp/dp/4000113828 *科学論* ・ F. チャルマーズ著.高田紀代志・佐野正博訳.2013.『改訂新版 科学論の展開』.恒星社 厚生閣. 〈書籍情報〉http://amzn.to/1XqjFH5 ・ J. R. ブラウン著.青木薫訳.2010.『なぜ科学を語ってすれ違うのか:ソーカル事件を超え て』.みすず書房. 〈書籍情報〉www.amazon.co.jp/dp/462207558X *科学コミュニケーション* ・ 藤垣裕子・廣野喜幸編.2008.『科学コミュニケーション論』.東京大学出版会. 〈書籍情報〉http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-003207-0.html ・ 八木絵香.2009.『対話の場をデザインする:科学技術と社会のあいだをつなぐということ』. 大阪大学出版会. 〈書籍情報〉www.amazon.co.jp/dp/4872592913 ・ 奈良由美子・伊勢田哲治.2009.『生活知と科学知』.放送大学教育振興会. 〈書籍情報〉http://amzn.to/1JEDMrC ・ J. K. ギルバート著.小川義和・加納圭・常見俊直監訳.『現代の事例から学ぶサイエンスコミ ュニケーション:科学技術と社会とのかかわり,その課題とジレンマ』.慶應義塾大学出版会. 〈書籍情報〉www.amazon.co.jp/dp/4766422031

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大塚淳氏のホームページに載っている「私家版『科学哲学とは何か』」を通して科学哲学の目的 や役割、面白さについて知ることが出来る. 〈ウェブページ〉http://bit.ly/1MW1mom 3.日本国内にある科学哲学研究室のリスト (a)大学院生に対して科学哲学の研究指導を多くの学生に対して継続的に行っている教員が在 籍している研究室 (1)京都大学文学研究科科学哲学科学史研究室(伊勢田哲治准教授;一般科学哲学;社会科学 の哲学;博士) 〈ウェブページ 1〉https://goo.gl/KmSkTm 〈ウェブページ 2〉http://tiseda.sakura.ne.jp/index_japanese.html (2)名古屋大学情報科学研究科情報創造論講座(戸田山和久教授;一般科学哲学、心理学の哲 学;修士) 〈ウェブページ〉http://www.info.human.nagoya-u.ac.jp/lab/phil/todayama/ (3)北海道大学理学院自然史科学 科学基礎論研究室(松王政浩教授;一般科学哲学;博士) 〈ウェブページ〉http://phys.sci.hokudai.ac.jp/LABS/kisoron/prof_matsuo.html (b)大学院で科学哲学を勉強したい学生の受け入れ・指導可能な教員が在籍している研究室 (4)京都大学文学研究科哲学研究室(大塚淳准教授;生物学の哲学;博士) 〈ウェブページ 1〉http://www.philosophy.bun.kyoto-u.ac.jp/ 〈ウェブページ 2〉https://junotkja.wordpress.com/ (5)一橋大学社会学研究科総合社会科学専攻社会文化研究分野(井頭昌彦准教授;一般科学 哲学;博士) 〈ウェブページ〉http://www.soc.hit-u.ac.jp/teaching_staff/igashira.html

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(c)過去には多くの優秀な科学哲学者を輩出しているものの、現在は科学哲学の専門家として学 位を取っていない研究者が教員となっている研究室 (6)東京大学総合文化研究科科学史科学哲学研究室(石原孝二准教授;科学・技術の哲学、現 象学、精神医学の哲学;博士) 〈ウェブページ〉http://hps.c.u-tokyo.ac.jp/ (7)東北大学文学部哲学・倫理学合同研究室(原塑准教授;心の哲学、現象学、脳神経科学の哲 学;博士) 〈ウェブページ〉http://www.sal.tohoku.ac.jp/philosophy/index-j.html •海外の大学・大学院で科学哲学を専門的に学ぶという道もある。科学哲学の専門家になる上では 日本国内の研究室へ進学するよりも海外の大学・大学院へ進む方が望ましい。 • 参 考 情 報 : 上 の リ ス ト 以 外 に も 、 「 日 本 の 科 学 哲 学 関 連 大 学 院 研 究 室 」 (http://philscijp.wikidot.com)も参考になさって下さい. 【より詳しい情報の共有/コンサルテーション/科学哲学者の紹介】 上記の研究室に受験志望の方で、ここには書かれていないより詳しい事情(指導教員の研究状況 (指導教員自身がどれだけ科学哲学の研究をしてきているのか)・教育状況(指導教員自身がどれ だけ科学哲学の教育をしてきているのか)、研究室の院生・OD の研究状況・進路状況など)を知り たい方は、本記事の著者のメールアドレス(researchmap のページ参照)までご連絡いただければ 僕が知っている限りのことはお伝えさせて頂きます。気軽にご連絡下さい。 4.大学院修士課程への進学・受験希望者が行うべき7つのこと 〈ステップ 1〉 興味のある研究室の先生に連絡をしてみる。予定を調整してもらい、会ってみる。自分の研究計画 (おおまかな関心でも可)を伝え、その先生が進学・受験希望者の研究内容の指導が可能かどうか を確認する。半年前から一年前に行うのが望ましい。

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興味のある研究室の先生と直接会った際、自分自身がその先生と上手くやっていけそうかを判断 する。どんなに人柄がよい人であっても、合う/合わないというものはある。 〈ステップ 3〉 興味のある研究室の先生と直接会う際、研究室の院生を紹介して貰う。そこでは、(1)研究室のメ ンバーと上手くやっていけそうかどうかを判断するほか、(2)研究室の院生に対して、その先生の 人柄や印象、その先生の最近の研究状況・教育状況・研究費獲得状況・学務状況・雑務状況など を伺う。 〈ステップ 4〉 訪問後、研究室の院生の就職状況・研究状況を調査する。院生に直接訊くと不穏な空気になる恐 れがあるため、お会いした院生や OD の名前を控えておき訪問後に調査(google 検索)することを 推奨する。もちろん率直に話してくれそうな院生には直接訊いてみると良い。研究室の院生がどれ だけ真剣に科学哲学の研究をしているのかを見極めることが大事である。 〈ステップ 5〉 〈ステップ 1〉から〈ステップ 4〉までの過程で得た情報を踏まえて、その研究室を受験するかどうかを 考える。 〈ステップ 6〉 進学・受験する意志を固めた後は、進学・受験希望の研究室の先生にその旨を伝え、大学院試験 で準備しておくこと・勉強しておくこと(読むべき文献)を尋ねる。大学院試験の過去問題を教務や 研究室の院生より入手し対策を練る。受験対策を院生に相談するのも良い。 〈ステップ 7〉 体調を管理しながら無理せず受験勉強を頑張る。 5.大学院博士課程に進学するうえでの注意点 大学院修士課程(博士前期課程)の場合は一般企業に就職する道が開けているが、大学院博士 課程(博士後期課程)まで進学するとその道は一気に狭まる。

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大学の任期なし常勤職は非常に限られている。哲学分野において、博士課程を修了後すぐに任 期なし常勤職に就職できる可能性は殆どないと考えた方が良い。任期付きの常勤教員や研究職 に就ける研究者はごく一部である。日本学術振興会特別研究員(PD)になれる研究者もごく一部 である。非常勤講師として生活するという道もあるが、非常勤講師の給与だけで生活することは難 しく、生活費を稼ぐためにアルバイトをする必要が生じる。 [参考:研究者になるうえでの最初のハードルとしての「日本学術振興会特別研究員」] ・ 日本学術振興会特別研究員:https://www.jsps.go.jp/j-pd/ ・ 「 学 振 特 別 研 究 員 に な る た め に ( 2018 年 度 申 請 版 ) 」 : https://www.slideshare.net/tonets/2018-73100489 [参考:研究者のキャリアパスについての事例集] ・ 栗田佳代子監修.2017.『博士になったらどう生きる?―78 名が語るキャリアパス』.勉誠出 版. 〈書籍情報〉www.amazon.co.jp/dp/4585230564 →ただし、哲学分野の事例に関しては十分な多様性が確保出来ていないため(一つの事例を除き 東大出身者の事例で占められ、東大出身者以外の事例は出身校への就職となっているため)、決 して鵜呑みにしてはいけない(楽観視してはいけない)。キャリアパスに関する本に登場するような、 キャリア形成に成功した研究者の事例から学ぶことも多いが、キャリア形成に失敗している研究者 の事例から学べることも多い。キャリアパスについて事例を本などの媒体を通して知ることは重要だ が、キャリア形成初期(学部〜大学院修士課程)においては、異なるキャリアパスを歩んでいる多様 な研究者と会い、キャリアパスについての話を訊き、「自分がどのようになったら成功したと言えるの か」を自分自身で具体的にイメージ出来るようになることが重要である。具体的なイメージを持った うえで、計画的に動き始める(勉強・研究・活動の計画を立て実行する)ことが大事である。 [参考] ・ 伊勢田哲治氏の ask.fm「修士あるいは博士課程に進むことを迷っている学生が相談に来たら どのようにアドバイスしていますか?」に対する回答] 現在の日本の状況ですと、修士まで哲学の大学院に行ってもまだ一般企業への就職は十分 可能です。博士まで行ってしまうと研究職以外の間口は非常に狭くなります。

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ては、学部での研究でやり残したり物足りなかったりという感触をもっているならどうぞ、 という感じで進学を勧めます。 博士課程については、研究職につきたいという意思が非常に固い人やお寺さんなどの確実 な「出口」が確保されている人以外には勧めません。あと、相談にこられた方には、哲学の 就職市場の状況や就職できたとしてどういう仕事をすることになるか(ほとんどのポスト は研究と関係のない業務がメインになることとか、研究しないでくれと言われる場合もあ るとか)などについて説明して、リスクは理解した上で進学するように言っています。進学 する際に求められる能力も、博士の場合は「研究者として一生やっていけそうか」というあ たりが基準線になります。その見極めは自分ではできないので、必要であれば論文などを実 際に書いてもらって判断することになります。 〈ウェブページ〉http://ask.fm/tiseda/answer/106836876094 科学哲学の研究をすること自体は面白いが、科学哲学研究者として生きていくのは大変である。 大学院博士課程に進学することは決してお勧め出来ない。研究者として生きていく覚悟を決めた 方のみ博士課程に進んで貰いたい。ただ繰り返すが、お勧めは出来ない。 6.付記:「科学哲学を専門的に学びたい高校生・大学生のために」という記事を作成した理由 (2015 年 10 月 19 日更新) 僕が科学哲学という学問の存在を知り科学哲学を専門的に学びたいと真剣に考え始めたのは、 秋田高専に在籍していた時のことでした。当時高専 3 年生で、17 才でした。今からちょうど 10 年前 のことです。技術者倫理の授業のなかで『誇り高い技術者になろう』が課題図書として紹介され、当 時真面目だった僕は教師の教えに従いその本を読み始めました。『誇り高き技術者になろう』を読 み終えた後、その本の編者である戸田山和久先生の著書『科学哲学の冒険』や伊勢田哲治先生 の著書『疑似科学と科学の哲学』の存在を知り、読みました。僕はそれらの本を通じて「科学哲学」 というメタな視点から科学を分析・総合することの面白さを知りました。そして誇り高き技術者になる のを辞めて誇り高き科学哲学者になると強く心に誓ったのでした。 *

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そうして僕は科学哲学の勉強を始めました。高専の先生の視線は冷たかったのですが、なかに は応援してくれる先生もいました。ただ、応援してくれていた国語の先生も科学哲学については殆 ど何も知りませんでした。僕は学ぶ意欲はありました。しかしどのようにしたら科学哲学を専門的に 学べるのかは何も分かりませんでした。頼れる科学哲学研究者も周りにはいませんでした。ただひ たすら手探りで本を読み漁っていました。そうした手探りの迷子状態は暫く続きました。名古屋大学 情報科学研究科博士前期課程に入り戸田山和久先生から指導を受けるまで、「どうやったら科学 哲学をちゃんと勉強できるのだろう?」といった不安を抱いていました。 * 当時の僕のように科学哲学を専門的に学びたいが何をどうすれば分からないという方のために、 このブログ記事を作成しました。そういった方が日本にいるのかは、正直わかりません。もしそういっ た方がいるのだとすれば、かつて僕がそうだったような迷子にはさせず、科学哲学を専門的に学ぶ ための道筋を示してあげたいと思います。この記事がそういった方の役に少しでも立つことができる のであれば僕はとても嬉しいです。 * 追記(2017 年 7 月 1 日) 「科学哲学を専門的に学びたいけど学び方がよく分からない」という方はどうやら日本に何人かい るようです。これまでに何人かから連絡を頂きました。直接会い、相談に乗った方もいます。科学哲 学を専門的に学ぶうえで不安を抱えている方は、気軽にご連絡頂ければ嬉しいです。

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