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思考抑制に関するメタ認知的信念が思考抑制方略の使用に及ぼす影響の検討

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-43 206

-思考抑制に関するメタ認知的信念が思考抑制方略の使用に及ぼす影響の検討

○藤島 雄磨1)、石川 信一2)、岸田 広平2,3) 1 )早稲田大学大学院人間科学研究科、 2 )同志社大学心理学部、 3 )日本学術振興会特別研究員 問題と目的 日常の問題への対処法の 1 つに思考抑制がある。思 考抑制はある対象について意図的に考えないようにす る努力や過程だが,ときに抑制対象となった思考の頻 度の上昇や気分状態の激化を導く逆説的効果が生じ る。思考抑制の慢性的な失敗はしばしば精神疾患の引 き金となるが (Najimi & Wegner, 2008), 思考抑制研 究において,応用的・臨床的知見の欠如が指摘されて いる (木村,2003)。 近年Wells (2009) が開発したメタ認知療法は,思 考抑制への介入として有効である可能性が考えられ る。メタ認知療法では,認知活動への従事を促すメタ 認知的信念の変容を通し,認知活動への従事を減少さ せる。先行研究によって,思考抑制に関するメタ認知 的信念が明らかにされ,その中で逆説的効果に関する メタ認知的信念が逆説的効果の発生を促すことが示唆 された (服部・本間・丹野, 2014)。そのため,メタ 認知的信念の変容による思考抑制への介入可能性が示 唆されたと考えられる。しかし,思考抑制に用いる方 略の違いが逆説的効果に影響を与えるとの知見も存在 する (及川,2011)。方略は,単純抑制と代替思考方 略に分けられるが, 前者は逆説的効果を生じさせ,後 者は侵入思考を減少させる (及川,2011)。しかし, 服部ら (2014) の研究では方略の違いが考慮されてい ないため,メタ認知的信念ではなく方略の違いが逆説 的効果の発生に影響していた可能性がある。つまり, メタ認知的信念が強い者は,単純抑制の使用に従事し ていたことが考えられる。 そこで,本研究では,方略の影響もふまえ,思考抑 制に関するメタ認知的信念が及ぼす影響について改め て検討する。そのために,逆説的効果に関するメタ認 知的信念が強い者は弱い者と比べ,単純抑制から代替 思考方略へ上手く切り替えられず, 逆説的効果が生じ やすいとの仮説を立て,検証した。 方法 実験参加者 参加に同意した大学生45名の内,32名 (男性 6 名, 女性26名;平均年齢20.72歳,SD = 1.05) を分析対象 者とした。 実験材料 「 2 分間ミステリ」(Sobol, 1991 武藤訳 2003) か ら「怒れるシェフ事件」を選出し, 改変した。そして, 心理学を専攻する大学生14名が, 感情価 (不快― 快), 喚起度 (落ち着いた―激しい), 完結度 (未完結 ―完結) について 5 段階で評定した。その結果, 未完 結性と不快性を有し (M = 1.71, SD = 1.27 ; M = 2.43, SD = 0.76), どちらかといえば激しい印象を与 えることが判明し (M = 3.23, SD = 0.89), 実験にお ける抑制対象として用いた。 質問項目 ( 1 ) 思考抑制に関するメタ認知的信念尺度 (服部 他, 2014,「気晴らし」「逆説的効果」「後悔」「集中」 の信念からなる), ( 2 ) 日本版 自己評価式抑うつ尺 度 (福田・小林, 1973), ( 3 ) 単純抑制と代替思考方 略の使用意図 (順に,「ストーリーに関する思考が浮 かんだ際, それを意識から締め出そうとした」,「ス トーリーに関する思考が浮かんだ際, 他のことを考え ることに集中しようとした」, 6 段階で回答) 手続き まず, 参加者に質問項目 1 と 2 への回答を求めた。 そして,参加者に抑制対象を提示し, 黙読させた。そ の後, 単純抑制を促す教示をし, 抑制ピリオド 1 ( 3 分間) を設けた。抑制ピリオド 1 終了後,参加者は質 問項目 3 へ回答した。その後,代替思考方略を促す教 示をし,抑制ピリオド 2 ( 3 分間) を設けた。抑制ピ リオド 2 終了後, 参加者は質問項目 3 へ回答した。な お, 各抑制ピリオドにおいて抑制対象と関連した思考 が浮かんだ際は紙に印を記すよう参加者に予め伝え, 侵入思考数を測定した。 実験計画 逆説的効果に関するメタ認知的信念 (高群, 低群) × 抑制ピリオド (抑制ピリオド 1 , 抑制ピリオド 2 ) の 2 要因混合計画であった。逆説的効果に関する メタ認知的信念は対応なし, 抑制ピリオドは対応あり であった。 研究倫理 学部内の日本心理学会倫理規定に基づく倫理審査お よび承認を受けた。また, インフォームドコンセント 等十分な倫理的配慮を行った。 結果 参加者が教示に従っていたかを確認するために, 抑 制ピリオド 1 における単純抑制の使用度が 3 以下で あった者, 抑制ピリオド 2 における代替思考方略の使 用意図が 3 以下であった者を分析から除外した。その 後, 逆説的効果に関するメタ認知的信念の平均得点32 点を基準に, 高群 (N = 17;男性 3 名, 女性14名) と

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-43 207 -低群 (N = 15;男性 3 名, 女性12名) に分けた。 仮説の検討のために, 独立変数を群 (高群, 低群) と抑制ピリオド (抑制ピリオド 1 , 抑制ピリオド 2 ), 従属変数を侵入思考数, 共変量をSDS得点とした 2 要因の共分散分析を行った。その結果, 群の主効果 および抑制ピリオドの主効果が有意であった (順にF (1, 30) = 5.13, p < .05 ; F (1, 30) = 8.44, p < .01)。しかし, 交互作用は有意ではなかった (F (1, 62) = 0.75, ns )。抑制ピリオド間における侵入 思考数の推移をFigure 1に, 各抑制ピリオドにおける 侵入思考数の平均値および標準偏差と分析結果を Table 1に示した。 次に, 思考抑制に関するメタ認知的信念が, 各抑制 ピリオド内における侵入思考数にどのような影響を及 ぼしていたかを補助的に検討した。その結果,逆説的 効果に関するメタ認知的信念の強さと抑制ピリオド 2 の侵入思考数において中程度の正の相関が示された (r = .49, p < .01)。つまり, 逆説的効果に関する メタ認知的信念が強いほど, 代替思考方略を用いさせ た抑制ピリオド 2 における侵入思考数が多かったこと が示された。 考察 本研究では, 単純抑制を用いさせる期間 (抑制ピリ オド 1 ) と代替思考方略を用いさせる期間 (抑制ピリ オド 2 ) を設けた思考抑制課題を実施し, 各抑制ピリ オドにおける侵入思考数を測定した。逆説的効果に関 するメタ認知的信念が強い者は弱い者と比べ,単純抑 制から代替思考方略へ上手く切り替えられず, 逆説的 効果が生じやすいとの仮説を立て,検証した。その結 果, 仮説は支持されず, 逆説的効果に関するメタ認知 的信念の強さは思考抑制方略の切り替えには影響を及 ぼさないことが示された。また,逆説的効果に関する メタ認知的信念の主効果が有意であったことから,服 部ら (2014) の研究と同様,メタ認知的信念が逆説的 効果の発生を促す可能性が示された。しかし, 補助的 検討によって,逆説的効果に関するメタ認知的信念が 強いほど, 代替思考方略の効果が発揮されない可能性 が示された。 仮説は支持されなかったが,本研究の結果から, 逆 説的効果を体験する者に対して思考抑制方略の心理教 育を行うのみでは不十分であり,メタ認知的信念を変 容させる必要があると考えられた。ただし,本研究で は, 抑制対象および思考抑制方略を用いる順番を予め 固定していたため, 練習効果や順序効果の影響は排除 できず, 結果については慎重に捉える必要がある。 本研究によって,思考抑制への介入としてメタ認知 的信念の変容の必要性が改めて示唆されたといえ,今 後更なる知見の蓄積が求められる。

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