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第11回日本助産学会学術集会集録 ポスターセッション・ビデオセッション第9群

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Academic year: 2021

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第9群:P-1

超 音 波 診 断 よ りみ た

胎盤 剥離様式 の検 討

金 沢大 学 医学 部 保健 学 科 ○ 坂 井 明美,島 田 啓子 田淵 紀 子,小 松 み ど り 金 沢 大学 医学 部 附属 病 院 打 出喜 義, 桶 田洋 子 I.は じめに 胎児が娩出され てか ら胎 盤娩 出に至 るまでの いわゆる分娩第3期 か ら胎盤娩出後2時 間までの 時期は,産 科出 血の面 で非常に重要 な時期であ り 産褥出 血量を減 らす 目的で,胎盤の娩 出方法 や時 期なとに対 し以前よ り論議がなされている。出血 量を減少 させる目的で児娩 出直後 よ り臍 帯牽引 を行い胎盤の早期娩 出を勧め る報告1)もあるが, 胎盤 の剥離をまたず,む やみに臍帯牽引 を行 うと 子宮内反症や出血量の増加 が起こる ことも予 想 され,胎盤の剥離時期を正 確に推定 するこ とは, 産科領域 において は重要な事 項であ る と考 え ら れ る。従 来よ り助産 ・看護学 の教科 書では何種類 かの胎盤剥 離徴候が記載 されているが,これ らの 剥離徴候 が リアル タイムに剥 離を反映 したもの が否がに対す る疑問は以前か らいわれてお り,秋 山2)は臍帯血の抵抗感覚よ り,臨床で用 い られて いるアールフェル ド徴候,キュス トネル徴候 では 真の胎盤剥 離時期は推定で きず,実際は もっ と早 い時 期に剥離 が進行 していると述べ てい る。そ こ で,今 回我 々は,日常診療 では常用 されている超 音波診断装 置を用い,児娩出直後 よ り胎盤が娩出 され るまでの胎盤剥 離経過 を観察 する機 会を得 たので,若 干の検討 を加 え報 告す る。 II.対 象及 び方法 1996年1月 か ら9月 に当院で単 胎を正期産 し た合併症の ない褥婦 こ対 し,超音波に よる観察 を行 った症例13例 を超音波使 用群 とした。超音 波装 置としてはア ロカSSDZOOOを 用 い,経腹的 に児娩 出直後か ら胎盤娩 出まで の間,胎盤 とそ の付着部位を連続的に観 察 し,その 変化を経時的 に記録 した。 また,同 時期に出産 した正常褥婦 で超音波観 察が行われ なかった62例 を超音波非使用群 とし これ ら両群 について分娩時出血量,分 娩瑚 所 要 時間,分娩後2時 間出血量を比 較検討 してみ た。 III.結 果 1)症 例の概要 表1に 示す よ うに,超 音波使 用群 の年 齢は22 歳∼38歳 分娩 歴は初産5名,経 産8名,児 体重 は3138±439gで あった(表1).一 方,表 には 示 していないが,超 音波 非使 用群の年齢 は21歳 ∼38歳 分娩歴は初産30名 ,経 産32名,児 体重 は3128±397gで あ り,両 群間には有 意の差はみ られなかった。 2)胎 盤娩出 の超音波所見 超 音波装置に よ り胎盤の娩出形態を連続的 に 観察 した結果,以下の よ うな所見 が得 られた。児 娩出直後の子 宮内は図1に 見 られ るように,子 宮前壁の胎盤は一様の厚 さで内子宮は径約1cm と半閉鎖の状態 であ った。30秒 程経過す る と子 宮筋層 の厚 さが増す とともに頚 管の開大が始 ま り(図2),そ の20秒 後には子宮 口に近い胎盤 の部分か ら頚管への胎盤の進 入が観察 されだ 図 3)。胎盤の頚管内くの 進 入は時 間 と共に徐 々に 進行 し,図3の1分 後には子宮底部の収縮はよ り 著明 とな り,胎 盤のほほ半分が 内子宮 口を通 過 した(図4)。 その後20秒 程 経過す る と子宮体

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部筋層の収縮は 更に顕著 とな り(図5),そ の1 分半後には図6に 見 られ るよ うに,子宮体部筋層 は完 全に収縮 し,胎 盤は頚管 を押 し広げた格好 で,子 宮体部か ら後膣円 蓋部に排出 された。 こ の症例の胎盤は上記の経過 を確 認 した後,臍 帯 牽引によ り娩出 されたが,胎 盤の 娩出様 式は シ ュル ツエ式であった。 ここで示した例 以外の12 例において も子 宮体部か らの胎盤の排出は子宮 収縮に伴 う胎盤の 「づれ 」によ り起 こってお り, 最終的胎盤娩出様式はシ ェルツエ式であった に もか かわ らず我 々が行った13例 全てにおいては これ までに言われ ているような胎盤後血腫は超 音波断 層装置では確 認されなかった。 3)超音波使用群 と非 使用群における分 娩時 出 血量 の比較(図7) 超 音波 使 用群 の 分娩 時 出血 量 は,287.5± 220.8ml(平 均±標準偏差)で あ り,非 使用群は 430.4±293.8mlと超音波 による観 察がな され て いない非使用群においてや や分 娩時出血量は 多 い傾向が見 られた。 4)超 音波使 用群 と非使用群に おけ る分娩第3 期 所要時 間の比較(図8) 超音波使 用群の分娩第3期 所要時間は8.46± 4.0分であ り,非 使用群は8.48±4.8分 と両群間 には差異は認 められなかった。 5)超 音波使 用群 と非使用群 におけ る分 娩後2 時 間出血量 の比較(図9) 分娩後2時 間出血量は超音波使 用群113.2± 71.1ml,非使用群77.9±67.5mlと,非使用群が少 ない傾向が見 られた。 図1 超音波診断装 置に よる胎盤の 画像 表1 対 象 の分 娩経 過概 要

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図2 図3 図4 図5 図6 IV.考 察 としては胎盤 と子宮 内膜機能 層(脱落膜)との間に徐 々に貯留 した血液 が胎盤 を離 させ,子 宮の収縮 と相 まっ て胎盤を娩出 さ せ るもの とされ てお り,胎盤後面に有効 な血 腫 が形成 され れば シュルツエ式に,ま た血腫が 形 成 されずその まま胎盤が娩 出 されれ ばダンカ ン 式 にな るもの と一般にはいわれ ている。しか し, 図7超 音波 装置 の使用 と 分娩時 出血量 の比 較 図8超 音波装 置の使 用 と分娩第3期 所要 時間 の比較 図9超 音 波装 置の使 用 と 分娩 後2時 間 出血 量の比 較

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今回我 々の観察 した13例 の胎盤娩出 様式は,全 てシュル ツ工式 であったに もか かわ らず,超 音 波で観察 された結果では明 らかな胎盤 後血腫 は 認め られず,子宮体部 筋 の収縮に ともな う胎盤 の 「づれ」によ り胎 盤の剥離 が起 こってお り,胎 盤剥離様式 と娩出様 式との間には明 らかな相 違 が認め られ た.近 年 では胎盤の剥離様式 と娩出 様 式 とを区別 して扱 う教 科書も散見 され るよ う にな ったが,今回の我々の 結果 か らも,胎盤剥離 様 式 と娩出様式は,は っきりと区別 して扱わ れ るべ きもの と考 え られた。 胎盤娩出 手技 と分娩時出 血量 との 関係につい て,島田3)は出血量 を減少 させ るため には児娩出 後 できるだけ早い時期に胎盤 を娩出 させ る事 を 勧 めてい る。また,西 平4)らはこの方針の下に胎 盤娩出 を計る ことによ り分娩第3期 所要時間の 短縮 と,しいては,分 娩第3期 出血量の減 少に効 果があった と報告 してい る。 今回 我々は超音 波断層装 置で胎盤の剥離過程 を観 察 し,剥 離確認後 は比較的速や かな胎 盤娩 出を試 み,分娩 第3所 要時間 と出血量につ いて検 討を加 えてみたが,図8の ように超音波使 用群 と 非使 用群 との間には分娩第3期 所要時間には有 意差は認 め られなかったものの,分娩 第3期出血 量は超音波使 用群にや や少ない傾向がみ られ た。 この ことか ら胎盤剥 離時期に,子宮収縮状況な ど をよ り詳細に観察すれば分娩 第3期 出血量の減 少が期待 され るもの と考え られる。しか し,この 方法 を実 用化 するには,分 娩時 に この装置が常 に使用可能 な状 況にあ り,さ らに超音波観察 用 の余 分の人員 と判読出 来る能 力を備えるこ とが 必要 である。 助産学においても,超 音波診断装置の使用 機 会は増加 して きている。 超音波診断装置を用い て観 察す ることによ り,従来よ りも早期に胎 盤 剥離 がわか り,分娩第3期 時間の短縮に繋 が る もの と期待 され,褥 婦管理 上か らも重要な事 項 の うちの 一つ である産 褥出 血の早期発見 と予 防 に対 し,従来の方法に比 し,よ り有用な検査法 で ある と考 え られた。 V.結 論 超音波診断装置 を用い,児 娩 出直後よ り胎 盤 が娩出 され るまでの胎盤剥離経過 を13例 につ い て観察 し以 下の結果 を得た。 1)胎 盤の剥離 は,子宮収縮に伴 う胎 盤の 「づ れ」によ り引 き起 こされ てお り,従来よ り言わ れ て きた胎盤 後血腫は胎盤剥 離過程にはそれ程 関 与 しないもの と考え られ た。 2)胎盤 の娩出様式 と剥 離様式 とは異なってお り,これ までの シュル ツエ ダンカンと呼ばれて い る様 式は,共 に胎盤娩出様式 と表現すべ き も の と考 え られた。 引用文献 1) 島田信宏: 写真 でみ る周産期の母児 管理 一初診か ら分娩 まで一, 274-281, 南山堂, 1980. 2) 秋山敞: 胎盤剥 離な らび娩出についての 一考 察, 助産婦, 33(7), 20-25, 1979. 3) 上掲1) 4) 西 平佐代子, 瀬 口和: 胎盤娩出手技によ る出血軽 減の比較調査, 助産婦雑誌43(10)61-64, 1989.

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第9群:P-2

妊娠期女性 の食事鉄 の摂取状況

徳島大学医学部附属病院 ○橋本 公子 徳島大学医療技術短期大学部 竹内美恵子 徳島大学医学部附属病院 浅野水器子 は じめ に 妊 娠期 は妊婦 の健 康 の 増 進 と共 に胎 児 の 発 育 を 促す た め に、 妊 婦 の食 事 に関 す る セ ル フケ ア 能 力 を高 める重 要な機 会で あ る。 当院 で は,妊 婦 に3日 間 の 食 事 調 査 を行 い 、 実 際 に摂 取 した栄 養 素分 析 の 結 果 を基 に して そ の後 の指導 に役立 て て い る が 、妊 婦 の 鉄 摂取 量 は 非 常 に少 な く、1日 あ た り初産 婦 は10.0mg,経 産 婦 は9.9mgで あ った。 本研 究 の 目的 は妊婦 の鉄 摂 取 状 況 と鉄 欠乏 の 因果 関係 を調 べ る た め に、 妊 婦 の 鉄 摂 取量 を調 査 し,さ らに鉄 の吸 収 率 の 異な るヘ ム鉄 と,非 ヘ ム 鉄 に 分 類 して 貧 血 との 関 係 を み た。貧 血 の診 断 は ヘ モ グ ロ ビ ン値(Hb値)の み でな く,赤 血 球 恒 数(MCH)か ら も,関 連 性 を 検 討 した結果,食 事 指 導 を行 う ため の基 礎 資 料 を 得た ので 報告す る。 I.研究 の方 法 調査期間;平 成6年 か ら8年 対象;食 事 調 査 を希 望 した 妊 婦 で,正 常 な妊 娠 経 過 をた どった103例 の妊 婦 で 、 初産 婦69例 と経 産 婦34例 で ある。 平 均 年齢 は 初産 婦29.2才 、経 産 婦 32.1才 で ある。 調 査方 法;食 事 調査 は妊 婦 の つ わ りが終 了 した時 期 に,素 材 のグ ラム数 の測 定 方 法 や 記 載方 法 を よ く 説 明 し、充 分 な理 解 を促 し,3日 間 の食 事記 入 を 依頼 した。 鉄摂 取 量 の 測 定 は 、 四訂 日本 食 品標 準 成分 表 を基 に 作成 され た 日本 医療 情 報 シス テ ムk kの 食 品成 分登 録 シス テ ム を 使用 し、吸 収 率 の異 な るヘ ム鉄,非 ヘム 鉄 に 分 類 した。 分 析 は献 立計 算 シス テム を使 用 し,各 群 間 の有 意 差 検 定 に はカ イ2乗 お よびt検 定 を もち い た 。 な お,貧 血 の診 断 にHb値 は11g/dl未 満 を 「貧血 」 と し, 11g/dl以 上 を 「貧 血 な し」 と して 測 定 し た。MCHの 基 準 値 は 当院 で 定 め る28pg未 満 を 「貧 血」、28pg以 上 を 「貧 血 な し」 と して 測定 した。 な お,検 討は次 の3点 か ら行 っ た。 1.妊 娠経 過中 の食事 鉄摂 取状 況 2.Hb値 な らび にMCH値 で みた 妊婦 貧血 の出現 頻度 3.妊 娠経 過 中のMCH値 の増 減 と食事 鉄 の関係 I.結果 お よ び 考 察 1.妊娠 経過 中 の食 事鉄 摂取 状況(表1) 妊 婦 の食 事 鉄摂 取 量 の 平均 は初 産 婦10.1mg, 経産 婦9.9mgで あ った 。 妊 娠 前 半 期 は初 産 婦 9.9mg,経 産婦9.7mgま た 、 妊 娠 後 半期 は初 産 婦10.8mg、 経産 婦10.3mgで あ り,妊 婦 の鉄 の必 要摂 取 量 であ る妊 娠 前 半期 の15mgお よ び, 妊娠 後 半期 の20mgに 比 べ て 非常 に少 な い 。 ヘム 鉄摂 取 量 は、 妊 娠全 期 間 を通 じて 変 わ らな い が、 ヘム 鉄 比 率で み る と,初 産 婦,経 産 婦 とも に,妊 娠 後 半 期 に比 べ て妊 娠 前 半期 の 摂 取 量 が多 くな っ てい た。 表1妊 婦の食事 鉄摂取量 2.Hb値 な らび にMCH値 で み た妊 婦貧 血 の 出現頻 度 妊 娠 中 には妊 婦 の貧 血検 査 は3回 行 った 。検 査 時期 は妊 娠初 期 は9週 前後,妊 娠 中期 は28週 前 後,妊 娠後 期 は36週 前後 で あ る。 図1は 妊娠 中のHb値11g/dlを 貧 血 と して 妊 婦 貧血 の出現 頻度 を み た も ので あ る。 妊 娠 初期 の貧 血 妊婦 の 出現 数 は13例 で あ り、妊 娠 中期 は55 例 で 最 も多 く、妊 娠 後 期 に は44例 と中期 よ り減 少 して いた。 図2はMCH値28pg以 下 を貧 血 と し て の妊 娠各 期 の変 動 を みた もの で あ る が 、妊 婦 の 貧 血 出 現 数 は妊 娠 初期 は9例 で あ り、 妊 娠 中期15 例,妊 娠 後期23例 と後 期 に な る につ れ て 妊婦 の貧 血 出現者 数が 増えて い た。 以 上 のHb値 とMCH値 で の 貧 血 出現 をみ る と,Hb値 で 貧 血診 断 され た も の のな か にはMC H値 で は正 常 値 で あ った もの が 妊 娠 初 期4例 ,妊

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娠 中期23例,妊 娠後期2例 い た。 この ことは 、 全血 液 量 が 妊 娠 時 に30%-40% 増 加 す る が,血 球 や 血 漿 蛋 白 の 増 加 は 警 備 で あ り,妊 婦 は 生理 的 な 水 血 症 の 状 態が うか が え る 。 と ころ がMCHは 赤 血 球1個 あ た りのHb値 で あ り,水 血症 時 に お いて も生 体 内 のHbを 適 正 に反 映 する こ とにな る。 図1Hb値 か らみ た妊娠 期 別 の貧血 の有 無 図2MCHか らみ た妊 娠期 別 の貧 血 の有 無 な お,食 事 鉄 摂 取量 と,MCH値 の 値 か ら,28 pg未 満 を貧 血,28pg以 上 を貧 血 な しと して, 両 群 に お ける,食 事 鉄,ヘ ム鉄 の摂 取 状 況 を検 討 した 。 ヘム 鉄 で は、 「貧 血群jの 方 が 「貧 血 な し 群 」 よ りヘ ム鉄 を多 く摂 取 して いた が 、 食 事 鉄 総 量 で は 「貧 血 な し群 」 の 方 が 「貧 血 群 」 よ り摂 取 量 は多 い。 表2食 事 鉄 摂 取 量 とMCH値 の 関 係 3.妊娠 経過 中 のMCH値 の増 減 と食 事鉄 の関 係 につ いて,次 の3点 か ら検 討 した。 ① 妊 娠 初期 か ら 中期 に か け て のMCH値 の増 減 と総鉄 量,ヘ ム鉄,ヘ ム 鉄 比率 との関 係 ② 妊 娠 中期 か ら後期 に か け て のMCH値 の 増 減 と総鉄 量,ヘ ム鉄,ヘ ム鉄 比 率 の関 係 ③ 妊 娠初 期 か ら後期 に か け て のMCH値 の 増 減 と総 鉄量,ヘ ム鉄,ヘ ム鉄 比率 との 関係 をみ た。 妊 娠 初 期か ら中 期 に か けて のMCH値 の増 減 と, 総 鉄 量,ヘ ム 鉄,ヘ ム 鉄 比 率 と の 関 係 につ いて は,ヘ ム鉄 とヘ ム鉄 比 率 にお いて,有 意 な 傾 向 が あ っ た(図4)(図6)。 妊 娠 中期 か ら後 期 にか け て のMCH値 の増 減 と,総 鉄 量,ヘ ム 鉄,非 ヘ ム 鉄 の 関係 に お いて は,有 意 な 関 係 は 認 め られ な か っ た 。③ 妊 娠 初期 か ら妊 娠 後 期 にか け て のMC H値 の増 減 と総 鉄 量,ヘ ム 鉄,ヘ ム 鉄 比 率 にお い て は,総 鉄 量 との 明 らか な関 係 はみ られ な か った (図3)が,ヘ ム鉄 比 率 にお いて 有 意 な 関 係 が 認 め られ た(図5)。 この こ とか ら,MCHの 増 減 には,ヘ ム 鉄 の 摂取 が 関 係 す る ので はな いか と思 わ れる。 図3総 鉄量 とMCHの 増 減 の相 関

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図4ヘ ム鉄 とMCH増 減 の関 係 図5ヘ ム鉄 とMCHの 増 減 の関 係初 期 か ら後期 図6ヘ ム 鉄 とMCH値 と の 関 係 ま とめ 1.妊婦 の1日 の食事 鉄摂 取 量 は初 産 婦10.1mg/ dl,経 産婦 は9.9mg/dlと 妊 娠 期 栄養 所 要量 に比 して低 い。 2.Hbに よる,貧 血 出現 数 は,妊 娠 中期 が最 も多 い が,MCH値 で は,妊 娠 後 期 に な る に つ れ て 徐 々 に貧 血 が 増加 し,Hb値 の貧 血 出現 数 よ り少 な くな る,Hb値 で 貧 血 を診 断 さ れ た妊 婦 の な か に は,MCH値 では 正 常 と診 断 さ れ る 症 例 が,妊 娠初 期 で は4例,妊 娠 中期 で は15例,妊 娠 後期 で は2例 い た 。 こ の こ と は,血 漿 量 の 増 加 に と も な って,見 か け上 の貧 血が含 まれる と考 える。 3.妊 娠経 過 中 のMCH値 の 増減 と食 事 鉄 の 関 係 に.妊婦 貧血 の指 導 はHb値 の結果 のみ で はな く, MCHの 結 果 を参考 に妊 婦 の 食 生 活 の背 景 を考 え て行 う ことが必要 で はな いだ ろ うか 4.妊 娠 各期 のMCH値 の増 減 と鉄 摂取 量 との関 係 で は,総 鉄 量 には 明 らか な 関 係 は み られ な い が, ヘ ム 鉄,非 ヘ ム 鉄 に お い て,妊 娠 初 期 か ら 中 期 と,妊 娠 初 期か ら後 期 の増 減 に有 意 に 関 係 して い た。 5.妊 婦 貧 血 の指 導 はHb植 の結 果 の み で は な く,MCH値 の結 果 を参考 に妊 婦 の食 生 活 の背 景 を考 え た指導 が必要 で はな いだ ろ うか。 お わ りに 貧 血 の評 価 は,同 時 に測 定 さ れ るMCHも 判 断 材 料 の1つ と して加 え る こ とに よ り,個 々 の貧 血 妊 婦 へ の栄 養 指 導 に役 立 て る こ とが 可能 で あ る. しか し,今 回 の調 査結 果 で は 妊 娠期 女 性 の鉄 摂取 量 は低 か った が,記 入 方 法 の適 正 性 を再 検 討 し, 今後 の研究 の精 度 を高め てい きた い。 参 考 文 献 1) 石井 明治; 妊婦 の貧 血, 臨 床栄 養, P146∼ 164医 歯薬 出版株 式会社 2) 内 田明 夫; 臨床 栄 養, P129∼134医 歯薬 出版株 式会 社Vol.70No1987 3) 大 原 ま さお 桜 田恵右 宮崎 保; 貧 血, 臨床 栄養, P507∼514Vol83No.41996 4) 椹 木 勇 産 婦 人科; 金芳 堂1994 5) 日本 人 の栄 養所 要 量; P97∼100, 厚 生省 保 健 医療 局健康 増進 栄養 課監修 6) 溝 口英 昭; 鉄 欠 乏性 貧 血, 臨 床 栄養, P552 ∼554, Vol.189No .41996 7) ミネ ラル元 素 の栄養 学, 第1出 版 8) 山 口和 子 中村 丁 次; 臨 床栄 養 学, 理 論 と学 習, p143∼14

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第9群:P-3

サ ー モ グ ラ フ ィ に よ る 皮 膚 温 と

冷 え 症 状 との 関 連 性

徳島県立看護専門学校 ○妹尾 栄

岡島 真理子

1.緒言 日頃,看 護 学生 が 訴 える不 定愁 訴 と して 月経 痛, 月経 不順,便 秘 等が 多 く,中には授 業や 実習 に支 障 を来す 人 がい る。 これ らの不 定 愁訴 の うち 身体の 冷 えが原 因 とな った り,冷 えが 随伴 して い る もの が ある と言 われて い る。1) 今 回,こ の冷 え につ いて,健 康 な女性 で あ る看護 学生 を対 象 にサー モ グ ラフィ を用い て夏期 と冬期 の2回,全 身 の皮膚 温 を測定 し,その傾 向 お よび皮 膚温 と冷 えの 訴 え との関係 を調 べた。 この結 果 を 今後 の冷 え の改善 に役 立て たい。 1I.方法 対象 は本校 看護 学生 の うち,協 力 の得 られ た学生 で7月 は117名,2月 は58名 で あ った。18歳 か ら 30歳 まで(平 均年 齢20.6±2.0歳)の 女性 で あ る。 測 定時 期は1994年7月 と1995年2月 の2回 で あ る。冷 え症 は平均 外気 温15℃ 以下 にな る と発 症 しや す い と高 取が 報告 して い るので2)冬 期 と外気 温 の高い 夏期 の2つ の 時期 を選 んだ。 測 定 と同時 に 冷 えの 自覚 の有 無 と部位 につ いて のア ンケ ー ト 調査 を行 った。 測 定方 法は 日本 ア ビオ ニ ク ス社 の 医用 サ ーモ グ ラフ ィTVS-2000を 用 いて,非 接触状 態 で立位 にて全 身 前面,後 面,座 位 にて足 底の 皮膚 温 を定 した。2月 の室 温に 関 して設備 面 か ら25℃ 以上 に保 つ こ とが 困難 なた め,室 温23℃ で20分 以 上馴 化 させ て測定 した。 得 られ たデ ー タは温 度計 測 ソフ トを使 って 図1の よ うに全 身前 面 お よび後 面 を32カ 所,足 底 を20カ 所 の最 高温度 ・最低 温度 を算 出 した。得 られ たデー タか ら冷 え を訴 える群 (以下冷 え(+)群 と記 す)と 訴 えの ない 群(以 下冷 え(-)群 と記す)に つ いて 訴 え と皮 膚温 と の 関連性 につ いて 検討 した。 なお,有 意 差 検 定に は t検 定 を用 いた。 図1.全 身前面 お よび後 面,足 底 の 測定 部位

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表1皮 膚温 全体 の最 高温 度 と最低 温 度 図2.最 高温度 と最 低温度 の 温度 較差 III.結果 1.皮 膚 温 全 体 の 最 高 温 度 と最 低 温 度 全 身 の 最 高 温 度 と最 低 温 度 は(表1),そ れ ぞ れ 7月 は35.0℃,31.5℃,2月 は34.6℃,23.1℃ で あ っ た 。7月 と2月 の 最 高 温 度 差 は0.4℃ と あ ま り変 わ ら な い が,最 低 温 度 差 は,8.4℃ と大 き く 変 化 した 。 測 定 当 日の 平 均 気 温 も7月 の30.2℃ に 比 べ て2月 で は7.1℃ と 大 き く 下 が っ て い た 。 2.最 高 温 度 と最 低 温 度 の 温 度 較 差 最 高 温 度 と最 低 温 度 の 温 度 較 差 は,7月 は 最 小 値 1.8℃,最 大 値6.5℃ で あ り,2月 は 最 小 値6.3℃,最 表2測 定 部位 別割 合 にみ た 各人 の最 高 温 度 と 最低 温 度 複 数 の部位 が 最 高温度 また は最低 温 度 を示す 時、 それ らすべ て を集 計 した 。 大 値16.8℃ で あ っ た 。7月 と2月 の 最 小 値 と最 大 値 の 差 は そ れ ぞ れ4.7℃ と10.5℃ と な り約2倍 の 差 が あ っ た 。 図2の よ うに7月 は 約96%が2∼6℃ の 範 囲 に 集 中 して い る の に 対 し て,2月 は6∼16℃ ま で 温 度 較 差 が 大 き く な る と 同 時 に 分 散 して い た 。 言 い 換 え れ ば,2月 は7月 に 比 べ て 個 人 差 が 大 き く な っ て い た 。 3.測 定 部 位 別 割 合 に み た 各 人 の 最 高 温 度 と 最 低 温 度 表2の よ うに 最 高 温 度 を 示 した 部 位 は7月 は 腹 部39.1%,肩14.8%,胸 部13.3%で あ っ た 。 ま た,足 底 の 高 い 人 が い る が,こ の 場 合 は 足 底 の 中 心 部 分 が 高 か っ た 。 最 低 温 度 の 部 位 は 足 底62.2%,腰 部23 .7 %,下 腿10.4%で あ っ た 。 足 底 の 部 位 の 中 で 趾 が 最

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図3.冷 えを訴 え る部位 低 温 度 の 人 が87%あ っ た 。 一 方,2月 で は 最 高 温 度 を 示 した 部 位 は 胸 部52.1%,肩23.3%,首17.8%で あ っ た 。 最 低 温 度 の 部 位 は 足 底,下 腿 の み で あ っ た 。7月 と 同 様 に 足 底 部 の 中 で 趾 が 最 低 温 度 の 人 が86%あ っ た。 7月 と2月 を 比 較 す る と,最 高 温 度 は7月 が 腹 部 か ら上,2月 が 胸 部 か ら 上 の 上 半 身 に 多 く,最 低 温 度 は7月 で 腰 部 か ら下,2月 で は 下 腿 か ら 下 の 部 位 に 多 くみ ら れ た 。 ま た,2月 は 最 高 温 度 も最 低 温 度 の 部 位 も7月 に 比 べ て よ り限 局 す る 傾 向 に あ っ た 。 4.冷 え を 訴 え る割 合 冷 え を訴 え る 人 は7月 は117名 中53名(45.3%), 2月 は58名 中52名89.7%で あ っ た 。7月 よ り も2 月 の 方 が 約2倍 の 人 が 冷 え を訴 えて い た 。 5.冷 え を 訴 え る 部 位 冷 え を 訴 え る 部 位 の 数 の1人 平 均 は7月 が1.8カ 所,2月 は1.7カ 所 で あ り,2カ 所 以 上 訴 え る 人 は7 月 は28人(52.8%),2月 は31人(59.6%)で あ り,冷 え の 部 位 を 複 数 訴 え る 人 が 半 数 以 上 い た 。 図3の よ う に 冷 え を 訴 え る部 位 に つ い て7月 は 足 底36.6%,手 掌15.1%,腰 部12.9%で あ っ た 。2月 表3冷 えを訴 え る部位 の皮 膚 温 は 足 底43.2%,手 掌23.9%,手 背14.8%下 腿10.2%で あ っ た 。 ま た,7月 と2月 の 両 方 と もサ ー モ グ ラ フ ィ で 測 定 した 最 低 温 度 部 位 に 入 っ て い な か っ た 手 掌 や 手 背 な ど に 冷 え を 感 じ,冷 え を感 じる 部 位 が 多 く な っ た 。7月 に 比 べ て2月 は 足 底,手 掌,手 背 な どの

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四肢 末端 部 の冷 えの訴 え が多 くな り,反対 に腹 部,腰 部 の訴 えは減 少す る傾 向 にあ った。 6.冷 え を訴 える部位 の皮 膚 温 冷 え(+)群 と冷 え(-)群 に分 けて,冷 え を訴 え る部位毎 の皮 膚温 の比 較 を行 った 。表3に 見 ら れ る ように,7月 で有 意差 が認 め られ た のは腰 部 の みで あった(p=0.0235)。2月 は手掌 部 で低 下傾 向 が 見 られた が(P=0.0526),有 意 な変 化 では なか っ た。 lV.考察 今 回得 られ た結 果 で,こ れ まで の研 究 と一致 して い た ことは,全 身の皮 膚 温 の最高 温度 と最 低 温度 の 較差 が外気 温 が低 くな る ほ ど大 き くな る こ と2),最 低 温度 の部 位 は四肢 末端 に多い こ と2),冷えの訴 え は寒 い ときに 多い こ と2).3),冷え を訴 える部位 は四 肢 末端 部分 が 多い こ と2).3).4).複数 の部 位 に冷 えの 訴 え が多い こ と5)などで ある。 冷 えの訴 え と皮膚温 に つい て も う少 し一 致す る ことを期待 したが,一 致 した のは 夏 の腰部 のみ で あ った。 温 度 感覚に は個 人差 が あ り,無感 温度 が 関 係 す るので,こ の よ うな結 果 にな った と考 え られ る。 そのた め に,臨床 的 な応 用 と して 冷 えを訴 え る 部分 のみ に注 目して はい けない こ とがわ かっ た。 温度 較差 と冷 え を訴 える割 合の 結果 か ら,格差が 大 きいほ ど,冷え を訴 える割 合が 多 い ことが言 え る。 また,温 度 較差 が大 き くな るの は,最 高温度 は ほ ぼ一定 で,最 低温度 が低 くな るた め に起 こって い る ことが わか る。 した が って,最 低温 度 を上 げ る こ とに よっ て温度 較差 を少 な くし,冷 えの訴 えを少 な くす るこ とにつな がる。 この較差 を少 な くす る方 法 を工夫 したい。 今回 の検討 は,全 体的 評価 に よ る結 果 であ り,今 後,個 人 の皮膚 温 の夏 と冬 の変化 と冷 え症 状 との関 係,ま た冷 えの諸症 状 と皮膚 温 との 関連性 や 足底 部,特 に趾 と冷 え症 状 との 関連性 もみ たい。 V.結論 平 均年 齢20.6±2.0歳 の女 性 を対象 に7月 と2 月 の2回 に わ た りサ ー モ グ ラ フ ィ に よ る皮 膚 温 測 定 と 冷 え の 部 位 に つ い て の ア ン ケ ー ト調 査 を 行 っ た 。 そ の 結 果,各 個 人 の 最 高 温 度 と最 低 温 度 は2 月 は7月 に 比 べ て 最 高 温 度 差 は0.4℃ で あ る が 最 低 温 度 差 は8.4℃ と大 き くな っ た 。 温 度 較 差 は7月 は1.8∼6.5℃,2月 は6.3∼16.8℃ で2月 は7月 に 比 べ て 較 差 が 大 き か っ た 。 最 高 温 度 の 部 位 は7月, 2月 と も に 上 半 身 に 多 く,最 低 温 度 は 下 半 身 に 多 か っ た 。2月 に お い て は 最 高 は 胸 部,最 低 は 足 底 に 限 局 し て い た 。2月 で は90%の 人 が 冷 え を 訴 え, 7月 の2倍 で あ っ た 。 冷 え を 訴 え る 部 位 は 両 月 と も に 四 肢 末 端 部 が 多 か っ た が,2月 は7月 に 比 べ 腰 部 が減 少 した 。 皮 膚 温 と冷 え の 訴 え 部 位 との 関 係 で は,7月 の 腰 部 に の み 冷 え を 訴 え る群 が 冷 え を訴 え な い 群 に 比 べ て 有 意 に 高 い 値 を 示 し た 。 こ の こ と か ら,冷 え を 訴 え て い る 人 が,必 ず し もそ の 部 位 に 皮 膚 温 低 下 を 患 っ て い る と は 限 ら な い こ と が 示 唆 さ れ た 。 引 用 文 献 1) 矢 野 忠: 女 性 の 健 康 とツ ボ 療 法, 161, 一 風 社, 1991. 2) 高 取 明 正: サ ー モ グ ラ フ ィ に よ る 冷 え性 の 診 断 の 確 立, 日本 産 婦 人 科 学 会 雑 誌, 44(5), 559, 1992. 3) 桑 原 惣 隆: 冷 え 症, 産 婦 人 科 の 実 際, 39(5), 1990. 4) 長 谷 川 直 義: 婦 人 の 不 定 愁 訴 症 候 群, 臨 床 産 婦 人 科 全 書, 岩 井 正 二 他 編, 金 原 出 版, 73-98, 1969. 5) 河 井 洋: 不 定 愁 訴 症 候 群 とそ の 周 辺 領 域 に 対 す る漢 方 療 法, 現 代 医 療 に お け る 漢 方 製 剤, 東 洋 学 術 出 版, 261-269, 1986. ―180―

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